THE MAXREの米国ファッションビジネストレンド Vol.23

MAXRE Corporation

　インターネットでTシャツを一枚買うにも、8,000以上のマーケットプレイスがあるEコマース戦国時代。ブランド力、価格、送料無料と選択する理由は様々ありますが、そんな中でもスタート僅か4年のエバーレーンは成長率3倍のEC特化型ストアとして注目されている。Tシャツ1型からスタートしたサンフランシスコをベースとした企業が靴は1年で3万足、Tシャツは月に100万枚販売、今や200型の商品を扱う企業に成長しています。はっきりとした年商は明かされていないのですが、PrivCo社の調べでは、2013年の年商は$12M（1200万ドル）、2014年は$36M（3600万ドル）と推定されており昨年対比は3倍増。次のジェイクルーとも噂され、ミレニアル世代を始めとするコアなファン層を掴んでいる「エバーレーン」をご紹介したいと思います。

タイムレスなラグジュアリーベーシックを低価格で提供

　エバーレーンは自社でデザイン企画を行い工場に直に注文をしているため中間コストをカット、バーニーズNYレベルの商品を低価格で提供できるEC版のSPA。実店舗もなく宣伝費もかけないため、大幅なコストカットを実現しています。取り扱っているアイテムは、白、黒、ベージュ、カーキなどのニュートラルカラーのボタンダウンシャツや、Vネックセーター、トラウザーなどでユニセックスなカッティングの商品。イタリア製のレザーやカシミヤなど高品質の素材を使用した、いわゆるラグジュアリーベーシック。ミニマリストやノームコアファッションにマッチするデザインが、競合店より遥かに安い価格で販売されています。

熱狂的ファンを創出する小ロット生産

　米国の工場をはじめ現在5カ国、14の工場と直接取り引きしておりシーズンごとのコレクション展開はありませんが、小ロットの新アイテムを年に数回リリースしているため、在庫は抱えない売り切りスタイル。サイトには、「Coming Soon」のセクションが儲けられ、ウェイトリスト登録が可能となっています。2012年に初めてパンツをリリースした際には1万2,000人がウェイトリストに登録したそう。当時、ニュースレターには35万人のコアな消費者が登録、雑誌などへの広告は行っていないのですが、タンブラーやインスタグラムでの販促によりファン層が徐々に広がっています。

生産背景を全て見せる、究極の透明性

エバーレーンのトレンチコートのページより

　この企業の大きな特徴の一つは、全ての商品の生産背景を明らかにしていること。リリース後、大ヒットとなったトレンチコートの販売ページでは上の図の様に生地（$38.25）や付属パーツ（$3.26）、縫製工賃（$17.10）、輸入税（$5.22）、輸送費（$0.90）。トータルの生産コストが＄65であることを示しており競合店で$325となるところエバーレーンでは、$175で販売しています。更に、この商品がどこの工場で、どんな状況下で生産されているのか写真で見ることができます。清潔感のある工場で笑顔で働く従業員の姿が写し出されています。数字を含め、どこまでが事実かは分かりませんが、ここまで透明化した商法により消費者の信頼を創出しているのでしょう。同社が狙うターゲットには、食品に対しても生産背景を常に気にかけているミレニアル層が含まれており、彼らの半数以上はラグジュアリーブランドよりも社会的に考慮された製品を好むソーシャルコンシャスです。

シームレスな顧客サービス

　今年3月には、フェイスブックのメッセンジャーを利用し、顧客とダイレクトにコネクト。７月には、お天気をチェックできる機能を備えたiPhoneアプリをリリース、携帯からショッピングが可能なだけでなく、その日の天気によって何を着用したら良いか提案されているという。この機能で毎日チェックするお天気と共に同社のショッピングサイトで新入荷商品も毎日見ると言う状況を産み出しています。

　ユニクロを始めギャップ、ジョー・フレッシュ、ジェイクルーなど、ベーシック商品を扱うSPAはあれど、その生産背景をここまで透明化している企業はなく知名度もブランド力もないEコマースのスタートアップが、ここまで成長するにはSNSの力なくしては難しかったかもしれません。小ロット生産することで顧客からのレヴューを聞き取りながら数年をかけて改良を重ね、増量生産へと導く。その中からもトレンチコートのような爆発的ヒット商品が生まれており、商品に対する絶大なる信頼性が生まれることで在庫を抱え、セール販売で利益を縮小することもないのです。今のところ実店舗はありませんが、ベーシック回帰で復調を臨むジェイクルー辺りの競合となりそうです。

エバーレーン: https://www.everlane.com/