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2016.04.13

欲しいものは自分で作る 急増する「ジェネレーションDIY」

 一昔前は、ドウ・イット・ユアセルフ(DIY)と言えば、キルティングやレース編み、お父さんの日曜大工など、ベビーブーマーや中年層が好む趣味の一つでしたが、昨今の若年層の間で、再び新たなライフワークとして浸透しだしています。特に8千万人近く存在すると言われるミレニアル世代は、ピザやサラダだって、好きなトッピングをチョイスできる方を好む。色や柄を自由に組み合わせ注文できるスニーカー、鞄や財布にもイニシャルを入れて貰うなどのサービスを好んでおり、“パーソナライズ”は消費を促すビッグキーワードとなっている。あらゆる生活シーンにおいて、自分好みにアレンジすることを非常に好むことから「ジェネレーションDIY」とも呼ばれています。最近の消費者やメディアを見ていると、たかが趣味・趣向とは見過ごしていられない危機感さえ感じます。米国には「クラフトショップ」と呼ばれる、アートや手芸材料を販売するチェーン店が存在しますが、35歳以下のヤングアダルトがクラフトに消費する金額は、$29ビリオン(290億ドル)を超え、その消費量は驚異的に増加傾向にあります。

体験を好む世代の新たな選択肢

 当コラムでも、ミレニアル世代(18~36歳くらい)の消費トレンドについて取り上げてきましたが、普通に新品の商品を購入する以外にレンタルする、交換する、スリフトショップなどで中古品を買うなどの消費者が増えてきました。それに加えて急激に成長しているのが、「DIY」や「リメイク」という選択肢。知人の子供達(中高生)も、春休みを利用して、陶芸やバスボム(入浴剤)のワークショップに熱心に参加していますが、子供の頃からクリエートすることはライフワークの一貫。小売りと体験をどう結びつけるか、各企業が模索している中、クラフト制作や洋服のDIY・リメイクは恰好の“体験”であり、新品を購入する以外の新たな選択肢として増えています。

DIYの為のショールーミングとSNSの関係

ピンタレストから、アンソロポロジーのDIYバージョン

 ショールーミングやウェブルーミングは、商品を買う下調べだけが目的ではありません。若年層は、「アーバンアウトフィッターズ」や「フリーピープル」など、店頭やウェブをチェックし、高額で買えない物はDIYしてしまいます。ユーチューブで「DIY FREE PEOPLE」と検索すると、なんと1,000万件以上がでてきます。ティーン対象のブランドで積極的に取り入れられている「コーチェラ」などのフェスファッション。これも「DIY Music Festival」と検索すると24万件のヒット。個人のユーチューバーが、フラワーヘッドピースの作り方や海辺や山間で泊まりがけのフェスに向け、タペストリーを利用したライティング付きのテントや寝床、インテリアやファッション雑貨など、様々なカテゴリーに及び紹介しています。ピンタレストなどにもDIYのアイディアや、ハウ・トウ・ビデオが多数あり、容易にボードにまとめることができます。こういったSNSサービスの普及は、DIY人口を瞬く間に急増させ、この時代ならではの要因となっています。

ドウ・イット・ユアセルフを好む理由

 ファストファッションに慣れ親しんだでいる彼らは、安物の価値はそれなりに理解しています。それゆえに本物に対する憧れが強く、LL.ビーンのスノーブーツのビッグヒットに代表される、老舗ブランドへの憧れや職人技に対する尊敬から、価値観を見いだしているという背景があります。そんな彼らがDIYを好む理由をまとめてみました。

 

– オリジナリティ、自己表現ができる。パーソナライズできる。
– DIYした物には、高級ブランドとは異なる価値観がある。
– 気に入った商品を購入する余裕がなく、作った方が節約ができる。
– インスタグラムなどのSNSで、作品を共有する楽しさがある。
– クリエートする喜び、体験を好む。
– 他の世代に比べ節約家で、エコに貢献する傾向がある。→リメイクはエコである。
– ユーチューブやピンタレストで、アイディアやインストラクションが簡単に入手できる。

起業家スピリッツの高い世代

 人に雇われるよりもビジネスを立ち上げる起業家スピリッツが他の世代より高いのも特徴的。この世代の8%が既に起業している、16%は起業家になるべくプラン中、27%が将来起業したいと考えているという。セルフエンプロイメント(自営業)を好む若年が増加しているのだ。エッツィーに対抗し、昨年10月アマゾンがスタートした「アマゾン・ハンドメイド」もそういった需要への対応策。2億8,500万人の消費者に向け販売をスタートしている。また、後期のミレニアル世代が中古の一軒家やマンションを購入しだしており、内装の修理や家具などをハンドメイドしているというトレンドが出てきた。米国大手ホームセンターの「ザ・ホーム・デポ」はホームページ内に「DIY Project & Ideas」を設け、レンガの積み方や、フロアの貼り方など本格的なハウツービデオをカテゴリー別に紹介しています。DIYの傾向があらゆる分野に広がっています。

「ジェネレーションDIY」にどう対応していくのか?

 「TOMS」や「ナイキ」がシューズのカスタマイズを提供していますが、DIYされまくっている「フリーピープル」はと言うと、ホームページ内で「DIY」コーナーを設けて、アイデイアを共有。その他ブランドのブログや、ファッション雑誌のウェブ、ユーチューブなどでも、リップスクラブの作り方やリメイクアイデイアなどの提案が多く見られます。完成品を売るのが、ブランド企業ですが、DIYを好む世代がターゲットの消費者に含まれているとしたら、これも消費に繋げるひとつのヒント。米国企業は、新たなライフスタイルを持った消費者と付き合って行かなければなりません。日本はハンドメイドに関しては成熟した国なので、これを生かしDIY自体をビジネスにする事も可能かも?


 

 

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