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2016.08.10

リアルライフが消費者を惹き付ける「ヴィニーヤード・ヴァインズ」

 バック・トゥ・スクール商戦(新学期商戦)真っ只中ですが、今年、パイパー・ジャフレー(Piper Jaffray)社が行ったアンケート調査「米国10代のファッショントレンド」の中で、メンズ・トレンドの3位には「ラルフ ローレン」、4位に「プレッピー」、そして、8位にランクしていたのが、「ヴィニーヤード・ヴァインズ」。日本ではあまり知られていないこの企業は、ピンク色のクジラのロゴがアイコンのプレッピー・ライフスタイルブランド。プライベート企業のため、明確な売り上げは不明ですが、調査会社のPrivCo社によると、以下の通り。

 

2010年:$81M(8,100 万ドル) 
2012年:$151M(1億5,100 万ドル)
2013年:$215M(2億1,500 万ドル)
2014年:$308M(3億800 万ドル)と43%増の成長を遂げています。

 

 「ラルフ ローレン」や「ジェイクルー」に比べたら、まだまだ小さな企業ですが、若年層に支持され成長をしている数少ないブランドとして注目されている「ヴィニーヤード・ヴアインズ」をご紹介したいと思います。

ヴィニーヤード・ヴァインズとは?

 1998年創業、米コネチカット州の高級住宅地グリニッジで生まれ育ったシェップとイアン兄弟によってスタート。ブランド名は、夏の間によく過ごしていた、マサチューセッツ州にあるマーサズ・ヴィニヤード島に由来しており、ヨット遊びや釣りなどの海辺のライフスタイルがベースのコンセプトとなっています。大学を卒業後、クレジットカードの借入金で、シルクのネクタイを作り、ジープの後ろに積んで販売したのが始まり。その後、メンズ、レディース、キッズのアパレルとファッションアクセサリーと、アイテムを加え、ライフスタイルブランドに拡大しました。

実店舗・オンライン・卸売り 3セクターによる運営

 全米で現在85店舗を運営、オンラインとカタログによる販売のほか、ブルーミングデールズ、サックスフィフスアヴェニュー、ノードストロームといった高級デパートなど約600店舗への卸売り販売をしており、3つのチャネルの割合はほぼ同じ。通常、卸売りを強化すると、企業としての成長は遅くなると言われますが、アーバンアウトフィッターズ社の「フリーピープル」も同様の経営方法で、非常にゆっくりとした速度で成長しており、3種類のセクターのバランスを保ちながらの運営は、消費者との繋がりが重要な現在の市場にマッチしているのかもしれません。

モデルは消費者を魅了する実在する人々

 このブランドの大きな特徴に、使用しているモデルは、プロのファッションモデルではなく、ユニークなライフスタイルを持つ実存する人々というのがあります。カタログの廃止をするブランドもあるなか、カタログはマーケティング戦略として重要な役目を果たしています。カタログやブログには、ヨット競技の選手のファミリー、ワールドヨットチャンピオン、プロゴルファーなどを起用し、それぞれのライフスタイルをストーリーとして紹介しています。最新のカタログでは、ニューヨークからカリブの島に移住したミュージシャン・カップルを取り上げ、新生活をエンジョイしている様子が紹介されています。そこには、モデルに洋服を着せ作り上げた偽装の世界とは異なる、リアルな人々のライフスタイルがあり、消費者の共感を得ているようです。

ブランド価値を高める戦略的ライセンス・ビジネス

 学生達に支持される理由の一つに、ナショナル・フットボールリーグ、メジャーリーグベースボール、ケンタッキーダービーなどとのライセンスビジネスがあります。中でも、150以上のカレッジやユニバーシティとのパートナーシップ契約により、スクールロゴ入りの蝶ネクタイやトートバッグなどを販売。“クールでプレッピー、そして各校の独特ライン”を確立したことで、学生達が好むブランドとして認知度を深める結果に繋がっています。スポーツブランドや学校とのパートナーシップ契約は、「ラルフ ローレン」のような著名ブランドとは異なる点であり、消費者が求めるパーソナライズを実現したビジネスと言えます。また、大学生は、トレンドセッター的な役割があり、高校、中学校など、下の世代へと繋げているのです。 プレッピーは上流階級で好まれ、特にキャンパスライフにおいて最も好感度があるファッションとして絶大な人気があります。しかし、クラシックなアイテムが主で、他の企業でも類似商品はいくらでもあるのに、何故このブランドが好まれるのか?コンセプトから派生する、健康的、屋外スポーツライフスタイル、著名大学とのタイアップによる高学歴・品がいいなどのイメージが、やはりリンクします。また、ピンクのクジラのロゴは、着ている人々に、そういったイメージの一員である価値観を加えています。 オムニチャネルや多角経営は、企業が成長するための戦略の一つと言えますが、ディスカウント合戦に身を投じ苦戦するアパレル企業が忘れている、ファッション企業としての本来の姿勢がここにある様な気がします。まだ噂の段階ですが、現在、投資バンクのゴールドマンサックスに、少数の株式を売却する話が進められていると伝えられており、その価値は$1ビリオン(10億ドル)と噂されています。


 

 

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