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2016.11.09
自撮り世代をけん引! メイシーズやアンソロポロジーも注力するビューティー売り場
アンソロポロジーのビューティープロダクト売り場
リアル店でのショッピングが減少しているのにもかかわらず、不思議と店頭で賑わっているのが、メイクやスキンケア等のビューティー商品の売り場。米国のビューティー関連商品は昨年、$46.2B(462億ドル)、そのうち、$13B(132億ドル)が18~34歳のミレニアル層により消費されています。中でもメイクアップ商品は前年比13%増の人気のカテゴリーとなっており、ここ数年、アパレル小売店でのビューティープロダクトの取り扱いが急激に増えているのです。
K・カーダシアン流メイクや韓国メイクに熱視線 美への投資は万国共通
ファンシーな新ブランドを投入している、アルタ(ULTA)928店舗にまで拡大し急成長が注目されています。
リアリティー番組で人気のキム・カーダシアンがインスタグラムで紹介しているメイクアップ法、陰影により彫りの深い顔立ちにする「コントワリング」や、パールを使ったハイライト法で肌をツヤツヤに見せる「ストロビング」と言われるテクニックが消費者の興味を引き、関連コスメや特殊なブラシなどが新商品として登場。また、日本から随分遅れて韓国コスメもブームをけん引しているようです。アパレル同様、目新しいメイク・トレンドが登場することで、今まで以上に熱烈なブームを引き起こしているようです。ジーンズ1本買うのは躊躇するけれど、自身をより印象的に見せることができる美への追求には財布の紐が緩むのです。
小さなブランドほど有利?1つのブランドに固執しないアラカルト思考
iPadを利用したセフォラの「ビューティーワークショップ」
消費者にとって、購入前のトライアルは極めて重要。バーチボックスのサンプル定期購入ビジネスや、複数のブランドのテスターを置いている「セフォラ」や「アルタ」の絶好調ぶりからも伺えます。個性や自己表現を重要視している若年層は、1つのブランドに固執しないアラカルト思考。新しい商品への好奇心が旺盛であるため、最近のコスメ市場では、小さなブランドが軒並み登場していることも注目すべき傾向です。「アルタ」の店頭でも、新ブランド製品が続々登場しています。メイシーズが買収したビューティーチェーンの「ブルーマーキュリー」では、トップセール商品の55%は5年前には存在しておらず、昨年は3,000種類もの新製品を出しています。つまり、目新しい商品を常に提供することが、コンスタントに集客を得るための手法となっているのです。
売り場スタンバイ型のセールスパーソンは死滅する!?テスティングやHOW TOアプリが台頭
新製品が登場するたびに、トライしたいユーチューバーやビューティーブロガー達の格好のネタとなり、トレンドをさらにけん引しています。従来の売り場では、セールスパーソンにメイクをしてもらうというスタンスで、時には強引な販売を受けることがありますが、昨今の消費は、購入前に自身でトライしたいという傾向があります。こういった風潮を受け、「M・A・C」や「カバーガール」も、自由に試せるテスティングの設置や、HOW TOアプリを提供する手法にシフトしています。セフォラでは現在、4店舗で、iPadを設置したビューティーワークショップステーションを設置。メイク法を学べるビューティークラスや、ハイテク技術を使い、それぞれの顧客に適した化粧品の選び方・使い方を学べるサービスを行っていて、店舗へ足を運ばせる新たなツールにもなっています。
ビューティー売り場を拡充している小売り店
JCペニーの「セフォラ」のインショップ展開による集客は、競合店にも影響を与えています。大型チェーン店の最近の動きをざっと挙げてみると以下の通り。
メイシーズ | 高級ビューティーチェーン「ブルーマーキュリー」を2.1億ドルで買収。店舗数は前年比2倍の103店舗に拡大。うち、メイシーズ内で展開しているのは12店舗。2017年は更に40店舗へと拡大する。 |
ノードストローム | コンシェルジェサービスを導入して、テイスティングと商品アドバイスを提供。 |
ターゲット | 自社の「ビューティー・トライアルボックスサンプル」をスタート。長期にわたり独占販売していた「SONIA KASHUK」を買収。コスメ売り場の充実が、若年層の支持を得ている要因と言われています。 |
JCペニー | 2010年の155店舗から、2015年には518店舗へと拡大。今年はさらに60店舗のセフォラのインショップを展開。集客と売り上げアップに繋がっている。 |
コールズ | 900店舗にてビューティー売り場の改装。新ブランドや新製品の追加により、未改装の店舗よりもパフォーマンスアップ。 |
アパレルチェーンでは、フォーエバー21やH&Mがいち早くPBコスメを展開しているのはご存知だと思いますが、、最近では、アメリカンイーグルの「エアリー」や、「フリーピープル」「アーバンアウトフィッターズ」などが、ビューティー商品に注力しています。また2014年に米国進出した、H&Mの姉妹店「&OTHER STORIES」は、アパレル商品や雑貨に加え、値ごろ感のあるコスメ商品を充実させた店頭の先駆けとなったブランドではないでしょうか。
本気モードのアンソロポロジー ビューティー売り場を拡大
ペンシルバニア州のキング・オブ・プルーシャモールにオープンしたアンソロポロジーの売り場
アンソロポロジーは、衣料品の低迷により雑貨やビューティープロダクトの比率を上げており、売り場も続々改装されています。大型店ではビューティー売り場だけで、56坪ものスペースを使用し、800種類の商品を販売。現在、200店舗中130店舗でビューティーラインを拡大しています。オンラインではなんと150ブランドの購入が可能となっており、その充実ぶりに目を見張ります。
もともと、扱っていた石鹸やボデイクリームなどの商品は、どちらかというとギフト対応だったのですが、現在の売り場はスキンケアやヘアケア商品が加わり、消費者自身が購入するための売り場になっています。今までになかったテスターを設置し、時折、専門のアドバイザーも登場しているのは大きな変化と言えます。
アンソロポロジーのPBライン「ALBEIT」も拡大し、リップスティックやメイクブラシのコレクションなどでお手頃な価格帯の商品を充実させています。そして注目したいのは、取り扱っている製品。セフォラをはじめとするコスメチェーンでは、黒と白を基調としたクラブのイメージですが、アンソロポロジーでは、スーパーフードをベースにしていたり、ナチュラル思考であったり、小さなブランドでも競合店が扱っていないブランドを発掘。パッケージのファンシーさも重要なポイントで、そこはアンソロポロジーならでは。時には店のイメージに合ったパッケージ変更まで行う徹底ぶり。消費者層がくつろいだ雰囲気で体験できるような売り場を目指しているようです。
衣料品のみを専門に扱っている企業には好ましくない傾向かもしれませんが、米国の売り場で現在起こっている現象の一つとして参考にしていただければと思います。
マックスリー・コーポレーション
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