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2014.01.15

グランドオープン迎える「あべのハルカス」 近鉄グループの中核担う施設に

 2014年3月7日、大阪・阿倍野に「あべのハルカス」がグランドオープンする。核テナントの近鉄百貨店をはじめ、上層階の展望台や大阪マリオット都ホテルなども一斉に開業する。春商戦の本格的な立ち上がり時期に合わせ、ようやくその全貌が姿を現わす。また、「あべのハルカス近鉄本店」の開業により、長らく続いた大阪の百貨店再開発ラッシュも一段落する。

近鉄本店が先行オープン

 当初「あべのハルカス」は、2014年春の一斉オープンを予定していた。しかし、大阪市内の百貨店や商業施設の改装、新規開業が相次いだため、「あべのハルカス近鉄本店」など一部施設で開業をおよそ9カ月前倒しした。まず、2013年6月13日に「近鉄本店」の新築部分に当たる「タワー館」が先行オープン。続いて、10月10日に旧本館部分を居抜き改装した「ウイング館」の上層階部分がオープンした。年末の12月13日には、タワー館1階部分が改装オープンした。3月7日には残りのフロア、売り場が改装を終え、「近鉄本店」の全容が明らかになる。

 

 非物販部分が全館の25%を占める近鉄本店。イベントスペースも各所に設け、時間消費型の百貨店に位置付けている。また、全売り場の40%を専門店が占めており、従来型百貨店からの脱却を狙っている。中でも「ウイング館」はその80%の売り場を専門店で構成する。1万1,000平方メートルに100店規模のテナントが展開するという試みだ。

 

 年内の売上推移は計画値を下回ったが、年明けの初売りは2ケタ増だった。売り場のレイアウトが一新され、顧客にとって各テナントの認知はこれからの状態。一部、機能していないエスカレーターもあり、導線も不十分だ。不完全な状態の売り場としては健闘していると言えるのではないか。

周辺施設との競合も

 遡ること約8年前の2005年10月。JR大阪駅ビルへ三越が出店する旨が発表された。伊勢丹グループとの合併前で当時、大阪・北浜にあった既存店舗を移転し、再開発される大阪駅ビルへ新店舗を開業する計画だった。あべのハルカスの再開発事業もこの三越の大阪駅進出が遠因になっている。

 

 しかし商圏は電車で30分圏内に住む260万世帯、およそ630万人と近隣商圏を重視しており、従来顧客の年配層がメーンターゲットだ。ニューファミリーや若い女性客など新規層も取り込もうとしているが、大阪・阿倍野の地域住民を最優先する姿勢がうかがえる。

 

 あべのハルカスが出店する阿倍野地区には競合施設が集積している。JR、近畿日本鉄道、大阪市営地下鉄など複数の公共交通機関が集中するターミナル立地のため、集客力の大きさを期待して新たに商業施設が開発されたほか、既存のファッションビルなども改装を実施した。

隣接するショッピングモールの「キューズモール」

 最も大きな施設は、イトーヨーカドーがアンカーテナントになっている「キューズモール」だろう。郊外型ショッピングセンターに近しいテナントで構成され、一品単価も低いため、近鉄本店との競合は少ないと考えられる。一方、JR系列のファッションビル、「天王寺ミオ」は昨春、改装を行った。本館に加え、主要顧客の年齢層が高かったプラザ館にヤングレディスを主体としたフロアを構築し、施設を一新した。得意にするヤング、キャリア層へ再度、アピールする狙いがある。

 

 阿倍野地区の売り場面積の増加と共に、有力テナントの誘致合戦も激しさを増した。新しい施設が開発される時はブランドにとって新業態開発のまたとない機会で、近鉄本店はもちろんのこと、前出のプラザ館にもファストファッションを意識した新業態が出店している。しかし、店舗数が増えた同一ブランド内でカニバリゼーション(自社ブランド同士の競合)が起こっていることも事実。同商圏内に複数の店舗を展開した某アウトドアブランドでは既にカニバリゼーションが起こっていると聞く。 

独自性発揮した住み分けがカギに

 1つの商圏で商業施設の集積度が高まることは、ほかの商圏との競合を考えた場合プラスに働くことが多い。何より集客力が高まるわけで、共闘できる仲間の多い方が商圏の魅力も高まる。ポイントは、同商圏内で独自性を発揮した住み分けが図れるかどうかだろう。これは梅田地区にも当てはまることだが、他店と被らない商材やサービスを提供している店舗は強い(いまさらわざわざ指摘するまでもないことかも知れないが)。

 

 近鉄グループは阿倍野地区に3つの商業施設を構えている。メーンは近鉄本店で、あとは開業から13年を経たファッションビル「Hoop」(フープ)と、4年半が経過した「and」(アンド)だ。「Hoop」は高感度ファッションを好むカップルをターゲットにする。「and」はライフスタイルが切り口の上質なテナントを集めたファッションビルだ。各施設は徒歩1分かかるかどうかという目と鼻の先にある。商材や客層で住み分けが図れれば、グループで集客力を高めることができるという大きなメリットが生まれる。

 

 あべのハルカス近鉄本店の開発と並行して、「Hoop」と「and」の手直しも進んでいる。カニバリゼーションを起こさないように、互いに補完し合う商材と売り場を構成しようとしている。あべのハルカスの動向はもちろんだが、この2館の今後も興味深い。


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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