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2014.05.21

「くずはモール」商材補完を狙った大規模改装を実施 カップルが増加、客層広がる

カップル客が増加し、客層の幅が広がったくずはモール

 全館規模の増床・改装を実施し、今年3月12日にリニューアルオープンした郊外型商業施設「くずはモール」(大阪府枚方市)。2005年春のグランドオープンから採ってきた3館体制(本館・西館・KIDS館)は維持しつつ、営業面積を7万 2,000平方メートルと従来の5万平方メートルから44%増床し、不足していた商材を補完した。3館のMD構成も大幅に見直し、2つのモールで構成する本館と、元KIDS館を南館として再構築した。

関西の郊外型SCの先駆けに

 「くずはモール」は関西地区の郊外型ショッピングセンター(SC)の先駆けである。05年にグランドオープンした現施設は、1972年に開業した「くずはモール街」(営業面積1万3,000平方メートル)を母体にしている。ピーク時には年 間200億円の売上規模があったという。68年から始まった同地区の住宅街開発と並行して、商業施設も開発されていった。2000年代に入り、同地区において高層 マンションの再開発がスタート。郊外型SCが増えてパイを奪われるとともに、老朽化していた「くずはモール街」もリニューアルが必要な時期に差し掛かっていた。04年の閉館時には売り上げが80億円に縮小していた。

 

 満を持してグランドオープンしたのが現在の「くずはモール」だ。商圏は半径10キロ圏内の地域密着型。ファッション商材が強みで、別棟で子供服関連を集積したKIDS館も存在したが、レディスを中心にしたファッション館としての色合い が強かった。感度や価格は、GMSが開発するベーシック寄りのSC以上、百貨店未満というグレードを意識した。

 

 ファッションが強かった半面、ファミリーやワンストップショッピング(ドラッグや雑貨類)、住関連、家電など弱い部分も存在した。今回の増・改装では、強みのファッションをさらに強化したと同時に、こうした弱みを克服することも 目的の1つだった。

 

 今から3年前の2011年、グランドオープンから6年が経過した時点で、テナントとの定期借地契約(定借)が満期を迎えていた。それを節目に本館の約半分のテ ナントを入れ替えた。コンセプトは変えずに、残すテナントと新たに導入するテナントとのバランスを考慮した。その後の更新は3年ごとに行っているが、今回の改装も更新時期がきっかけになっている。

MDの軸足は替えず、地域顧客にも浸透

 「くずはモール」の本館はダイエー・イズミヤ(1階がダイエー、2・3階がイズミヤという珍しいフロア構成)、京阪百貨店をアンカーテナントにした2核1モールで、別棟の南館とはペデストリアンデッキ(歩行者用高架歩道)で連絡する。本館は“ハナノモール”“ミドリノモール”の2区画で構成。それぞれ“サーキット型”の導線で、本館はその2つをつないだ“8の字”型の構造だ。ファッションのほ か、雑貨、飲食、ワンストップ型テナント、ファミリー、スポーツ、イベントスペースなどを補強し、時間消費型の全方位型施設としてスケールアップした。

 

 今回の改装により、商圏や来店客層も広がった。商圏では足元が10キロから12キロに拡大し、対象人口が3倍に増加した。客層ではカップルが増加したほか、会社員が30%(以前は10%)、学生が8%(同1%)に増加した。3年前の改装では10代客が増加したという。その半面、オープン当初に半数を占めていた専業主婦の割合が30%に減少した。結果、性別や年齢にあまり偏りのない、バランスの良い集客状況になっている。

 

 同施設を管理・運営する京阪流通システムズの中島政人・常務取締役は、「都心とは異なるモールを作る必要があった。わざわざ足を運んでもらえる商業施設だ。商業に加え、ここに街を作ることがコンセプト。ここに住みたいと思ってもらえるようにするという発想だ」と方向性を説明する。リニューアルオープン後は売り上げも増えているという。「当面の完成形を構築することが出来た」(中島常務)と語るが、すでに定借の更新を迎える3年後を見据えた改装構想を練り始めているという。

中島政人・常務取締役

ファッションではセレクトショップを重視

セレクト重視のファッションゾーン

 核になる強みのファッションゾーンでは、特にセレクト業態を重視した。「スクオーバル」や「コラージュ ガリャルダガランテ」「ナポカ」など、「ここだけ、のテナントを探した」(中島常務)。本館の既存部分にも「ジャスミンスピ ークス」「リル カリアリ」といったセレクトショップがあり、年々売り上げを増やしている。

 

 ファストファッション系は積極的に導入しなかった。「ザラ」は顧客からのニーズが高かったため導入を決めた。雑貨系ショップはかなり充実している。 世界初のショップ展開「ボンベイダック」や「フライングタイガーコペンハーゲン」、個性派の「ビレッジバンガード」までテイストの幅も広い。

 

 南館はコンセプトを替え、郊外型の大箱テナントを集積した。家電の「エディオン」、「ABCマート」、「ライトオン」の新業態、「グローバルワ ーク」などで構成する。近隣にパブリックコースの「くずはゴルフ場」があるため、スポーツショップ「ゼビオスポーツエクスプレス」も導入している。

 

 年間の売上目標は500億円。都市部型テナントと郊外型テナントのミックスで、地元客を中心に近隣商圏からの集客も想定している。前回のコラムで紹介した「阪急西宮ガーデンズ」は地域密着型だが、「くずはモール」はやや商圏が広 いようだ。年間、全体の5-10%のテナントが入れ替わっているという同施設。3年後には、どんな姿に変貌しているだろうか。


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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