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2015.09.16
山口正人社長インタビュー 当初目標の7,000万人超が来場「ルクア イーレ」半年間を振り返る
樋口尚平の「ヒントは現場に落ちている」 vol.21
「イーレ」開業の相乗効果が表れた「ルクア」
JR西日本SC開発(大阪市北区梅田)が手掛ける商業施設「ルクア イーレ」の開業から、約半年が経過した。旧東館の「ルクア」にも「イーレ」の開業による相乗効果が見られ、15年春夏商戦は順調な推移だったという。狙い通り、幅広い年齢層を集客できている。入館客数も当初目標の7,000万人を上回るペースだ。JR西日本SC開発の山口正人 代表取締役社長のコメントを元に、新生「ルクア」の半年を振り返ってみる。
相乗効果が大きかった旧東館「ルクア」
今年4月にグランドオープンした「ルクア イーレ」の恩恵を最も享受したのは、旧東館の「ルクア」である。主力テナントのセレクト系ショップを中心に、計画値を上回る売上動向だったという。「イーレ」の開業後、「ルクア」との買い回りが活発になった。「ルクア」は25~29歳女性が主力ターゲットで、「イーレ」はその上――30~40歳代をメーンに据えているが、ほぼ想定通りのエンドユーザーを取り込めている。この買い回りの活性化による思わぬ相乗効果が見られたと山口社長は語る。
「”イーレ”は比較的、年齢層の高い方が多く、当初ヤング層が中心の”ルクア”との買い回りはあまりないのではと考えていましたが、思いのほかお買い上げが多いようです。”ルクア”館の売り上げも増えており、”イーレ”の開業効果が表れました」
ヤングマインドの年配層が多いと考えられる。「イーレ」の売り上げだけではなく、ヤング層の顧客に続いて「ルクア」の業績にも貢献している。ちなみに来館客数は両館併せて1カ月平均700万人で、当初目標の7,000万人を上回るペースだ。開業前は「イーレ」と「ルクア」の回遊性が本当に高まるのか懸念する声もあったが、ふたを開けてみれば、むしろその効果は高まっている。
「両館の売上傾向がどのようになるのか、我々も想定し切れませんでした。(隣接する)”グランフロント大阪”の開業時のように“煽り”を食うのではないかという不安もありましたが、杞憂に終わりました。5階と7階にある両館をつなぐ連絡通路の利用も多くなっています」
「”イーレ”の顧客化に力を入れたい」と語る山口正人社長
2階フロアがけん引役に
地下2層、地上10層の計12階構造の「ルクア イーレ」。JR大阪駅と連絡する2階が“売り”のフロアである。百貨店「isetan」の自主編集売り場と専門店テナントが融合する、同施設を象徴する区画だ。「isetan」部分では化粧品と個性派のファッション雑貨類を扱うが、安定した売り上げだという。
「各フロアでテーマや編集が異なるので、一概に比較はできませんが、集客のためにシーズンに合わせて品揃えを替えるテナントのノウハウが生きていると思います。シーズン物と実需をうまく揃えています」
「エストネーション」が核テナントになっている3階フロアのほか、4階の「isetan」らしい編集売り場「イセタン クローゼット」が堅調。また、4階では催事スペース「ザ・ステージ」の貢献度も高い。異なった動きを見せているのが、8階のメンズフロア。少し初速が遅かったそうだが、認知度が高まるにつれ、じわじわと売り上げが伸びてきている。
施設、出店テナントの認知度アップが課題
7階の連絡通路(旧東館側から「ルクア イーレ」を臨む)
今後の課題には、「施設、出店テナントの認知度アップ」を掲げる。開業前から告知に力を入れ、またセールや新規出店などのタイミングを見計らって、各ショップの情報発信を推し進めてきた。認知度の向上とともに、「イーレ」の来店客の顧客化も強化ポイントだ。
「我々が思う以上に、”ルクア”の出店テナントは認知されていません。TVなどを活用して告知に努めていますが、認知度アップはなかなか難しい。また現在、来店いただいている方に顧客になってもらえるよう努力もしています。両館を合わせたカード会員は現在、33万5,000人。うち、旧東館の”ルクア”顧客が29万人で、”イーレ”開業後は約4万人増えている計算です。まだまだ少ないので、顧客開拓に力を入れていきたいと思います」
「ルクア」では、開業から4年で29万人のカード会員を創出した。その主力は20代後半の女性客である。同様に「イーレ」でも、ターゲットの30~40代を主体にカード会員の獲得を進める。
「これからはシルバーウイークや冬のセールが続きますし、来春の1周年もすぐです。『ルクア』全体の認知度を高めて、顧客化を進めていくとても大事な時期だと考えています。特に今期中(2016年3月末)は、認知度向上と顧客化に力を入れたいと思います」
売り場の確立という第一段階が終了し、これから同施設の知名度向上、顧客化という実務的な取り組みが本格化する。トレンドを追い掛けている、あるいは新規の商業施設に関心のある人から見れば少々、地味かもしれないが、安定した収益を得るためには最も重要な点ではないかと、個人的には考えている。
樋口 尚平
ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。
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