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2013.01.24
【宮田理江のランウェイ解読 Vol.5】2013年春夏ファッションを盛り上げる世界6大トレンド
宮田理江のランウェイ解読 Vol.5
2013年春夏のトレンドはストライプ柄やシャイニー素材などがポジティブおしゃれの背中を押す。ランジェリーやスポーツの要素もモードに落とし込まれて、このところ勢いづいていたミニマルの潮流にも変化がもたらされそうだ。アートとファッションの融合も進み、身体をカンバスに見立てたような踏み込んだドレスアップの提案に胸が高鳴る。
オプティカルシンドローム&モチーフガラ
目の錯覚を誘って立体感やダイナミズムを感じさせる現代芸術の手法「オプアート(視覚的美術)」に着想を得たような、ドラマティックな模様やモチーフが装いを彩る。主役を張るのは、久々の大復活を遂げるストライプ(縦縞)。視線を縦に引き込むストライプは着姿をスレンダーに見せるから、幅広い支持を得る予感が募る。ボーダー(横縞)、チェック柄、市松模様、ドット(水玉)、ジオメトリック(幾何学)柄などのモチーフも、アート風で華やいだ着姿をもたらす。異なる柄同士を引き合わせる「柄×柄」のコーディネートがさらに深まり、同じ柄同士の太さ・サイズ違い、同柄の上下セットアップなども登場。柄のパーティーが始まる。
左)トム ブラウン NY 2013SS Photo by Dan and Corina Lecca
(右)エム エス ジー エム Milano 2013SS
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ノスタルジックフューチャー
1960年代ムードが帰ってくる。「スウィンギング・ロンドン」の代名詞的存在だったモデルのツィッギーが見せた、当時としては先駆的だった装いを、モダンにアレンジしてリバイバル。注目すべきトーンは、特撮人形ドラマ『サンダーバード』に通じるどこか懐かしい、あの頃の近未来感覚。宇宙服を思わせるメタリック素材のスカートや、ビニール樹脂風の透明なバッグなどが、テクノロジーへの夢と希望を信じられた当時の気分を呼び覚ます。ヒールが透けるプラスティックの靴は涼やかな風情。動きに応じて照り映えるシャイニー生地や、光と戯れるホログラムパーツ、ケミカルな風合いが人なつこいパテントレザーなど、「人工」の匂いがするマテリアルがノスタルジーとSFをつなぎ合わせる。
(左)クリスチャン ディオール Paris 2013SS
(右)アレキサンダー マックイーン Paris 2013SS
左)ジョルジオ アルマーニ Milano 2013SS
(右)ジバンシィ Paris 2013SS
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ロマンティックパラダイス
ここ数シーズンの主流だったミニマルの流れに逆行するロマンティックなムードが勢いを取り戻す。はかなげで優美なレースはそのシンボル的ディテール。清楚なイメージが強いレースだが、この春夏はシースルーのパーツとしても起用が進む。気品とセクシーを両立させる新レースルックはたおやかでありつつ、凜とした女性像を引き寄せる。楽観が濃いカラーレースは一段上のポジティブ色に着姿を染め上げる。レース以外にもトランスペアレント(透ける)な素材がおしゃれをときめかせそう。装いに立体感とざわめきを添えるラッフルやフリルは、脱ミニマルの動きを物語る。日本でも前後丈違いのテールカットがもてはやされたアシンメトリー(非対称)はさらにバリエーションが増えて、服の「かたち」を揺さぶる。
(左)クロエ Paris 2013SS
(右)ブルマリン Milano 2013SS Photo by Koji Hirano
(左)タクーン NY 2013SS
(右)グッチ Milano 2013SS
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ストリートランジェリー&スポーツモード
シーンをまたぐ着こなしが新たなモードの流儀になっていく。ブラトップ、ビスチェ、コルセットに代表されるランジェリーのエッセンスを持ち込むスタイリングは、シーンフリーなおしゃれの象徴。ベアトップ、トランスペアレント、透明レイヤードなどのヌーディーな演出も身近になってくる。一方、スポーツとモードの間柄は親密さを増す。ただし、これまでのようなカジュアルテイストでの取り入れ方ではなく、レディーの慎みを伴って。あでやかなコーデにベースボールキャップをかぶせるマッチングは広がりを見せそう。スイムウエアの上にジャケットを羽織るような大胆なコーデもリアリティーを帯びてきた。スカイダイビングのハーネス(安全ベルト)を連想させるディテールはボンデージのようなフェティッシュ系の妖しさも帯びる。
(左)ラグ&ボーン NY 2013SS
(右)ジェイソン ウー NY 2013SS
Photo by Ming Han Chung
(左)ボッテガ・ヴェネタ Milano 2013SS Photo by Koji Hirano
(右)ビーシービージーマックスアズリア NY 2013SS Photo by Ming Han Chung
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グランジエレガンス
1990年代にモード界をざわめかせた「グランジファッション」。当時はオルタナティブ系バンド「ニルヴァーナ」に触発された、着古したり穴を開けたりしたストリート感覚のスタイリングがもてはやされたが、今季はそのままリバイバルしたわけではない。隠し味は「エレガンス」。本来のグランジの対極に位置する優美なテイストを引き合わせ、約20年ぶりの復活に別の表情をまとわせた。ロックTシャツやフリンジ、チェック柄などのキーモチーフは受け継ぎながらも、シースルー・トップスやきれいめボトムスと重ねて、新たなステージに引き上げた。ルーズで反抗的な気分が濃かった当時のグランジに読み換えを試みて、スラウチでボーホーなたたずまいに仕上げている。70年代パンクにも再評価の気運が高まっていて、「大人ロック」の装いは次なるムーブメントに育つ気配を見せ始めた。
(左) サンローラン Paris 2013SS
(右) ダイアン フォン ファステンバーグ NY 2013SS
(左)3.1 フィリップ リム NY 2013SS Photo by Koji Hirano
(右)ヘルムート ラング NY 2013SS
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コスモポリタンミックス
ファッションの決まり事を踏み越える、様々な「フリー」が次の装いを運んできた。国籍、性別、シーン、シーズンなどのルールや制約をあえて書き換えるような挑発的スタイリングがモードの表舞台に進出。おしゃれの選択肢を飛躍的に増やしている。和服の構造をドレスに移植したり、浮世絵柄をプリントモチーフに選んだり、時空を超越した東西ミックスのコスモポリタンな提案が相次ぐ。ボーダーレスな服飾文化のザッピングは都会のノマド(遊牧民)にふさわしい。マニッシュとの交差はさらに浸透。ビーチ、スポーツ、ナイトウエアなどの要素を持ち込む試みも広がる。冬物を春夏に引っ越しさせる、シーズンをまたぐ着こなしも提案された。サマーコートは新ジャンルに育ちそう。レザーやファーの夏使いもおしゃれの自由度を高める。
4大コレクションのランウェイには「冒険」が戻ってきた。大人の分別をわきまえながらも、プリントやディテールで遊ぶプレイフルな装いが競い合うかのように打ち出され、モードの挑戦は息を吹き返した。この春夏のファッションはオプティミズムの熱を帯びそうだ。
(左)エミリオ プッチ Milano 2013SS
(右)エトロ Milano 2013SS
Photo by Koji Hirano
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宮田 理江(みやた・りえ)
複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビ、ウェブなど、数々のメディアでコメント提供や記事執筆を手がける。 コレクションのリポート、トレンドの解説、スタイリングの提案、セレブリティ・有名人・ストリートの着こなし分析のほか、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南本『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(共に学研)がある。
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