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2013.02.21

ストアに居てもオンライン

 2010年春に英国のオールセインツ(AllSaints)がニューヨークのソーホーにフラッグシップストアをオープンした時、さりげなく店内にはiPadが設置されていた。その頃マディソンアヴェニューに在るラルフローレン(Ralph Lauren)へ行くと店員が片手にiPadを持って接客をするのを目にしていましたが、オールセインツの様に店内の至るところにiPadを設置し、ストアへ訪れた人が自由にそのiPadを使ってECサイトもチェックすることが出来たのは他のリテールに比べかなり早い取り組みだったと思う。

 数年が経ちiPad自体も新しいバージョンへと進化を続け、今ではバーニーズニューヨークのフラッグシップストアでもiPadを館内に設置するなど、様々なリテールでも目にするようになってきた。

 

 ストアでのiPadの活用の他にも先日訪れたヘラルドスクエアにあるメイシーズ(Macy’s)では、新しいデジタルな体験が実現されていた。

 

 館内に入り目に飛び込んで来たのがマイケルコース(Michael Kors , 通称:MK)のショップ・イン・ショップ。この店舗は現在も継続されるメイシーズの大改装でリニューアルされ、176平方メートル(1,897-square-foot)の広さを持ち、メイシーズ独占で実施されているサービス、”KORS CONCIERGE“(コース・コンシェルジュ)のデジタル体験を楽しむことが出来ます。

 

 デジタル体験というだけあり売り場には、床から天井までの巨大なLEDディスプレイが設置されブランドの広告の映像が流れています。

 そして注目したいのは、売り場に設置されている32インチ型のタッチスクリーン。それはメイシーズのマイケルコースのショップ・イン・ショップが実施するオフラインとオンライン(O2O)をつなげるデジタル体験なのです。

 片手でタッチパネルを試しながら、もう片方でiPhoneで撮影していたので観づらい映像ではありますが、この“コース・コンシェルジュ”のサービスはとてもインタラクティブ。画面上に登場するモデルには動きがあり、自分がバッグをスタイルした時のイメージがより想像しやすい気がしました。
 またアイテムを検索できるカテゴリーも、デートの夜をシックに彩る”DATE NIGHT CHIC” 、エレガンスな夜を演出する “EVENING ELEGANCE”、ラグジュアリーなクールさの演出には “TOUGH LUX”、そして休日のおしゃれには “OFF-DUTY GLAMOUR”といった4つのシーンに分かれ、あなたの求めている理想のバッグをこの32インチのタッチスクリーンがショッピングのお手伝いをしてくれるのです。

 

常に多くの人で賑わうメイシーズだけにこの時はゆっくりこのデジタル体験を試すことが出来ませんでしたが、“シーンごとの商品のカテゴリー分け”は探している雰囲気の物がスムーズに探し出すことが出来るという印象がありました。
また店頭で購入には至らなかったとしてもMK codeを発行することで情報はお持ち帰りしてもらい、自宅に帰ってからもオンラインで再びブランドとお客様を場をつなげる場をこのコースコンシェルジュでは可能にしたのです。

 

 ストアで体験して頂いたことを、自宅へ帰ってから再び体験してもらう。
 メイシーズのマイケルコースのショップではお客様の関心を無駄にすることなく、コース・コンシェルジュを使うことでオフラインとオンラインをひとつの輪を描くように繋げ、常にファンを魅了するサービスに務めているのです。

 

MICHAEL KORS at Macy’s Herald Square
151 W 34th Street, New York, NY

http://www.michaelkors.com/
http://korsconcierge.com/

 

 試している時には気づかなかったのですが、コース・コンシェルジュでは検索して見つけたお気に入りの商品の情報をショップでプリントアウトすることが可能で、またそれらの情報をソーシャルメディアへシェア出来るのはもちろん、携帯へもその情報を送る事も可能ということで、コース・コンシェルジュでお気に入りのアイテムとして保存したリスト情報は特別なコードが発行され、後でそのコードをkorsconcierge.comのサイトで入力し、改めて商品をチェックする事が可能となっています。

 

 常に多くの人で賑わうメイシーズだけにこの時はなかなかゆっくりデジタル体験をすることが出来ませんでしたが、“シーンごとの商品のカテゴリー分け”は探している雰囲気の物が非常にスムーズに探し出すことが出来ました。
 また特別なコードの発行やその情報をプリントアウトしてくれるサービスは、その時店頭で購入にはならなかったとしても情報のお持ち帰りをしてもらうことで、自宅に帰ってからもkorsconcierge.comへアクセスしてもらい、再びブランドとお客様を場をつなげる場を作るのです。

 

 ストアで体験して頂いたことを、自宅へ帰ってから再び体験してもらう。
 メイシーズのマイケルコースのショップでは、訪れたお客様の関心を無駄にすることなく様々形でアプローチしていることが分かります。

 

 実はコース・コンシェルジェの様なタッチパネルのサービスが、ソーホーにあるブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)でも去年から行われておりました。
 こちらはブルーミングデールズのECサイトで評判の良いデニム・シーカー (Denim Seeker)というサービスで、自分の体系に合ったジーンズを探せるツールを店内に設置したタッチパネルでも検索することが出来るというものでした。

 ブルーミングデールズのデニム・シーカーのタッチパネルはあまりにもただ売り場に置いてあるというだけで、メイシーズのマイケルコースのショップと違いショップとの一体感がなく残念に感じました。実際に自分に合ったデニムを探せるツールというサービスは悪くないですし、bloomingdales.com上で使ってみても便利さも感じました。しかしせっかくのサービスも、最新デジタルツールもどのように売り場の一部として導入するのかでは宝の持ち腐れとなってしうものです。

 

 このふたつのタッチパネルのサービスのケースをご紹介したことで今一度、ストアでのサービスにしても、ECサイトやブログ、ソーシャルメディアを通して発信するサービスにしても宝の持ち腐れになっていないかということ確認して頂ければと思います。
 一方的なアプローチ、一方通行の発信にならぬようオンラインとオフラインで提供するサービスがひとつの輪を描く様につながり、影響し合うものを目指してみましょう。


 

RINA  

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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