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2013.05.02

【宮田理江のランウェイ解読 Vol.8】2013~14年秋冬東京コレクション

 2013-14年秋冬の東京コレクションは「大人エレガンス」にシフトした。かつてランウェイをにぎわせたガーリームードは影を潜め、欧米マーケットを意識した戦略が透けて見える。アイテム面で目立ったのは、コートやジャケットを軸にしたアウターの打ち出し。小物のバリエーションも増えた。ショーの見せ方にも、従来の細いキャットウォークを往復する単調な見せ方から踏み出す試みが相次いだ。

 

 「beautiful people(ビューティフル ピープル)」はホテル「グランドハイアット東京」のバー「MADURO」にシガーバー風の空間をしつらえて、作品を披露した。登場するモデルたちには、細巻きの葉巻を手に持たせ、「スモーキングジャケット」というキーアイテムと舞台を調和させた。作品もダブルブレストとパンツのコンビネーションを軸に、アダルトな雰囲気に整えた。

 

 「mintdesigns(ミントデザインズ)」はコートをドレス風にアレンジして、新しい着姿を提案した。紳士靴とスニーカーという異なる表情を重ね合わせたシューズもこれまでとは別の方向感を象徴していた。

 「matohu(まとふ)」はテイラード仕立てのコートで大人アウターを掘り下げた。日本の伝統美を重んじるこのブランドにしては珍しくラメやスパンコールのキラキラ演出も取り入れた。

 

 無縫製ニットを得意とする「SOMARTA(ソマルタ)」はファーやレザーといった非ニット素材にも目を向けた。ワンピースやアウターを数多く投入して、フェティッシュな雰囲気を濃くした。

(左)まとふ Tokyo 2013AW / Photo by Koji Hirano
(左)ソマルタ Tokyo 2013AW / Photo by Koji Hirano
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 「motonari ono(モトナリ オノ)」は持ち味の「オタク」趣味を引っ込め、レトロでロマンティックなイメージを目指した。ゴブラン織でヴィンテージ感を漂わせ、古風なタイムスリップ錯覚を生んだ。

 小物やアクセサリーに力を注ぐ傾向も目についた。「G.V.G.V.(ジーヴィージーヴィー)」はフェティッシュに寄せた。拘束具を思わせるレザーチョーカーや、バッグ、サイハイブーツなどにもボンデージの美意識を写し取った。この分野に強いデザイナーが加わったこともあって、「THEATRE PRODUCTS(シアタープロダクツ)」は小物やアクセサリーの強化に踏み込んだ。チョーカーとロングネックレスを重ねづけしたり、両手首をバングルで彩ったり。バッグもエンベロープクラッチ(薄手封筒)タイプや、ビニール製クラッチ、パール添えバッグなどを登場させた。大半のモデルにアイウエアをまとわせたのも目立った。

 大人っぽいテイストが以前から強いブランドは持ち味にさらなる磨きを掛けた。すっきりしたシルエットが持ち味の「support surface(サポート サーフェス)」はドレープやボリュームで物静かなエレガンスを薫らせた。「KAMISHIMA CHINAMI(カミシマ チナミ)」は「艶」をテーマに、レザーやサテンなどのつやめき素材を注ぎ込んで大人のあでやかルックを提案した。「araisara(アライサラ)」はアウターの上から帯のように巻くベルト使いや、伝統の染色技術を生かしたプリントワークで装いに深みを加えていた。

 「大人エッジィ」な表情で成長を印象づける「新・御三家」と呼べそうな新鋭の一角が「A DEGREE FAHRENHEIT(エーディグリー ファーレンハイト)」。ミニマル的でありつつも、エレガントなシルエットを、グレーやブラック主体のバイカラーやモノトーンで印象づけた。「Atsushi Nakashima(アツシナカシマ)」は1着の服に2種類の表情を持たせる手の込んだ仕掛け。シャツとジャケット、ベスト(ジレ)とアウターを融合させたようなフォルムの冒険を試みた。「Yasutoshi Ezumi(ヤストシ エズミ)」はカッティングとドレープの美を際立たせた。ベルトのくっきりウエストマークが全体を引き締めていた。

 光を浴びて色が変わる特殊染料を用いて、ドラマティックな演出を見せたのは、ブランド創設から10年の節目を迎えた「ANREALAGE(アンリアレイジ)」。ジャケットの襟やポケットだけ、靴の前半分だけといった感じで色を変えるカラーブロッキングを見せた。「ジャングルコラージュ」をテーマに掲げ、サイケデリックな色の饗宴を催した「DRESSCAMP(ドレスキャンプ)」はカムフラージュ模様やアニマル柄を躍らせた。創業デザイナーの岩谷俊和氏は復帰2シーズン目で「らしさ」を取り戻した。

 ラストを飾ったイベント「VERSUS TOKYO(ヴァーサス トーキョー)」は一般参加型のオープンな運営で、東コレの新たな方向性を示した。「FACETASM(ファセッタズム)」はストリートとモードを無理なく溶け合わせるレイヤードを披露。「GANRYU(ガンリュウ)」のストリートカジュアル、「MR.GENTLEMAN(ミスター・ジェントルマン)」のネオブリティッシュ、「NAISSANCE(ネサーンス)」のノーブルリラックスなども、東京メンズシーンの勢いを感じさせた。

(左)ファセッタズム Tokyo 2013AW / Photo by Koji Hirano
(中)ガンリュウ Tokyo 2013AW / Photo by Koji Hirano
(右)ミスタージェントルマン Tokyo 2013AW / Photo by Koji Hirano
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 グローバル市場をにらんで、ターゲット年齢層を引き上げ、テイストにも成熟した本物志向をまとわせようとした今回の東コレ。ガーリー感の強いあちこちの国内ファッションイベントと一線を画す上で、その効果はあったように見える。メンズモードの熱気の高さは東コレの新たな特質にもなりそうだ。


 

 

宮田 理江(みやた・りえ)
ファッションジャーナリスト

 

複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビ、ウェブなど、数々のメディアでコメント提供や記事執筆を手がける。

コレクションのリポート、トレンドの解説、スタイリングの提案、セレブリティ・有名人・ストリートの着こなし分析のほか、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南本『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(共に学研)がある。

 

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