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2018.09.19

今秋大掛かりな改装に着手 「グランフロント大阪」 が強化する“こだわり”とは

 大阪・梅田の複合商業施設「グランフロント大阪」が今秋、大掛かりな改装を進めている。8月に6店、9月には6店が先行オープンし、10月5日には23店が一斉にオープンを迎える。目的は、高い集客力が期待できる旗艦店および“こだわり”の個性派テナントを強化することだ。強みをさらに強化する狙いがある。

旗艦店、こだわりのショップを拡充

商業施設の集積度が今後も高まるJR大阪駅周辺

 2017年度の売上高は473億円(1.7%増)、来館者数が5474万人(136万人増)と堅調に推移した。初年度の2013年度が436億円だったので、着実に売上規模が大きくなっている。売上規模、来館者数共に過去最高値である。徐々に認知が高まってきたことや、顧客が付いてきたことも大きなプラス要因だが、アパレル関連テナントを中心に旗艦店の充実、“こだわり”の個性派テナントを強化してきたことが大きな成長エンジンになっているという。

 

 また、同施設のテナントが徐々に埋まり、オフィスワーカーの利用が増えていることも後押ししている。北館地階のコンベンションセンターの稼働率が高いこともプラス要素だ。当初、「梅田に街をつくる」というコンセプトを掲げて開業したグランフロント大阪だが、5年が経過し、目指す理想像へ徐々に近づきつつある。

 

 今秋の改装も、そうした館の集客力を向上させる目的で実施している。「さらに“強み”を強くしようと考えた」(阪急阪神ビルマネジメント うめきた営業部SC運営事務所、冨田聖二課長)。改装は8月から、五月雨式に進んでいる。最も多い店舗数――25店(新店23店、改装2店)は105日にオープンする予定だ。

 

 具体的に改装を実施するカテゴリーだが、やはりアパレル関連テナントが中心になる。区画は南館がメーンである。新店23店のうち、日本初が2店、11店が梅田エリア初のテナント。うち3店が新業態である。個人的な主観で注目すべき(したい、と言うべきか)テナントを列挙すると、三陽商会が手掛けるセレクトショップ「ラブレス」の新業態や、関西初のアウトドアブランド「チャムス」、フィットネスブランド「ダンスキン」の関西初店舗などが興味深い。新規・リニューアルを含め、最も多いテナントはファッション系だが、ファッション雑貨の「イルビゾンテ」、インテリア・生活雑貨の「カリモク60」、腕時計の「G-SHOCK STORE」など生活全般にわたる幅広いショップが出店する。

導線が弱い部分のテコ入れも視野に

グランフロント大阪、南館1階。高効率のテナントが集まっている

 今回の改装では、南館の3階南側など一部、導線の弱かったところを強化する狙いもある。南館地下1階北側もその1つだが、改装オープンは来年、2019年3月予定だ。南館地下1階南側には個性派の飲食関連テナントが集積する「UMEKITA CELLAR」(ウメキタセラー)がある。南館地下1階北側は、集客力の高い「UMEKITA CELLAR」との一体感が薄かった。こうした点も来春へ向けて、テコ入れする計画だ。今後、強化するカテゴリーは食品やライフスタイル関連テナント。元々、飲食店の多い施設だが、回遊性の向上や品揃えの強化を目指して、各種テナントを誘致する。

 

 そのほか、興味深い取り組みの1つが、南館5階のスポーツ関連売り場。既存テナントの「ザ・ノース・フェイス」や「ニューバランス」などは好調に推移しているが、ファッショントレンドの1つにスポーツという根強い流れがある上、2020年には東京五輪を控えている。つまり、追い風が吹いている状態だ。ゴルフブランド「つるや」のゴルフスクール(新業態)や、アウトドアブランド「ミレー」のショップも10月にオープンする。

 

 今後も梅田地区における商業施設の集積度は高まる一方だ(7月18日付、「ますます集積度が高まる“梅田”商圏」を参照)。しかし同施設では、「競合が増える中、梅田の(商業施設の)集積度が高まることはプラス」(冨田課長)だと見ている。梅田地区への集客が増えるからだ。しかしその一方で、「オーバーストアは確実」(同)と冷静に現実を見据えている。インバウンドの取り込みや、ソフト面――接客のスキル向上など、様々な強化策を模索中である。まずは、10月の新規テナントを楽しみにしたいと思う。

 

 


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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