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2018.07.04

増える日本ブランドのグループ出展 パリはファッショントレードビジネス革命前夜??――19年春夏・パリメンズファッションウイーク(1)トレードショー編

「トラノイ」会場

 19年春夏シーズンのパリメンズファッションウイークは、2018年6月19日から開かれ、併せてショールームやトレードショー(22~24日)も開催された。「トラノイ(TRANOI)」 (139ブランド)は、メンズとウィメンズプレビューをパレ・ド・ラ・ブルス会場1ヶ所に集約し、大幅縮小となった。「マン」もウィメンズプレビューの「ウーマン」と合体し「マン/ウーマン(MAN/WOMAN)」(102ブランド)としてヴァンドーム広場を会場に開催。前回まで開催された米国の「カプセル(capsule)」は遂にウィメンズ共々、パリから姿を消した。この他トラノイのショールームバージョン「トラノイウイーク(TRANOI WEEK)」がマレ地区で開かれたが、マンの同バージョン「マン/ウーマンショールーム(MAN/WOMAN SHOWROOM)」は無くなり、マン/ウーマンに吸収された模様だ。また日本ブランドを集めた団体出展、ショールームも各地で開かれ、日本ブランドのプレゼンスが上がっている。

【トラノイ】―トレードショー

CA4LA
ハチドリの刺繍のストローハットは4万円(税別小売価格・以下同)、トレンチコートをイメージしたPVCのバケットハットは1万5,000円

 「カシラ(CA4LA)」 は、10年以上出展するベテラン。イタリア、韓国、米国など10ヶ国ほどに販売している。今回はアジア、中国、フランスのバイヤーが目立ち、イビサ島からの来場もあったという。トラノイに出続ける理由としては、ショールームはお客が少ない為、自分の商品が売れるかどうかの判断がつかないが、トレードショーなら、それなりの数が来るので判断ができるという。

 

サイドスロープ
クランベリーのニットポロは、一部ポリエステル部分が染まらず、変化をつけたディテールが楽しめる(2万8,000円)

 「サイドスロープ(SIDE SLOPE)」(フォワード・アパレル・カンパニー)は15年前から海外進出を果たし、トラノイ出展は新規を見つけるためのPRの場所と位置付けている。20ヶ国と取引し、新規はフランス、イタリア、スペインなど。「他に無い物を作らないとダメ」とニットでは初めてのボタニカルダイで特許を得た染料を使った独特の発色のシリーズを持ち込んだ。クランベリー、ジンジャー、オリーブなどがある。

トラノイに参加「ソレイユトーキョー」

トラノイに参加した「ソレイユトーキョー」ブース

ソレイユトーキョー
(左)厚過ぎず薄過ぎないソックスのソクシスト(右)大胆でカラフルな高級カシミヤニットが目を引くカシヤージュ

ソレイユトーキョー
ショコラと見間違えて手に取られる石鹸のジュスイ

 トラノイに団体出展した合同展「ソレイユトーキョー(SOLEIL TOKYO)」 は、バイヤー、ジャーナリストの投票でアワードに選ばれた3ブランドを出展させた。横尾忠則の作品をモチーフにしたカシミヤニットが目を引く「カシヤージュ(CASHYAGE)」、カラフルで国産品質のソックス「ソクシスト(SOCKSist)」 、見た目がパリで売られているショコラやお菓子のようなナチュラルソープ「ジュスイ(Je suis)」 の3ブランドを展示した。ベルギーの大手セレクトショップやフランス、グアテマラなど世界から反応があり、「テーストやアイテムも違う3ブランドだったが、それぞれに興味を持ってもらったバイヤーにすべてのブランドを見てもらえて相乗効果につながった」(ソクシスト)と合同で見せたメリットを感じたそうだ。またカシヤージュ、ジュスイともに「まずはリサーチ」という視点から取り組んだこともあり、反応が得られたことで次のステップへと進めていくそうだ。

カジナイロン

カジナイロン
ストレッチも入り、小さな穴が織り段階で入ったエアリージャケットは、3万9,000円

 北陸の機屋、カジナイロンが製品事業「ティモーネ(TIMONE)」 でトラノイに初出展を果たした。今季からリブランディングを掛け、ややモード感も取り入れた事から、以前出展していた「ピッティ・イマジネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」 よりもパリが合うと舵を切った形だ。機屋がやっているブランドということもあり、メディアの受けも良かったという。

キクス ドキュメント.のブース

キクス ドキュメント.
風合いの良さを意識して作ったオリジナル生地の丸首シャツは、2万4,000円

 「キクス ドキュメント.(KICS DOCUMANT.)」 は、「トーキョーアイ(TOKYO EYE)」でのトラノイ出展から2年半振りの返り咲き。これまではニューヨーク(NY)のショールームや「リバティーフェア(LIBERTY FAIR)」に挑戦してきた。英国、米国など5件の既存を持つが、NYよりパリの方が合っていると実感しているそうだ。また「パリまで来るバイヤーは資金力もあり、グローバルな視点を持っている」と感じている。

【マン/ウーマン】―トレードショー

ザ・エイチ・ダブリュー・ドッグ・アンド・コー

ザ・エイチ・ダブリュー・ドッグ・アンド・コー
ストローハットは3万5,000円

 帽子ブランドの「ザ・エイチ・ダブリュー・ドッグ・アンド・コー(The H W Dog & co.)」はマン/ウーマンショールームから続いて3回目の出展。「メルシー(MERCI)」などフランス3社、スイス、英国、米国などに5社の取引先を持つ。素材の良さで価格が変わるのは当然で、分かってくれる人もいるが、価格抵抗感は強くなっていると実感している。

ナナミカのブース

ナナミカ
反応の良かったポリエステルのウィンドブレーカーは、2万9,000円

 「ナナミカ(nanamica)」 は、ピッティ7年目、マン5年目のベテラン。英国、韓国、米国など20ヶ国と取引しており、最近はECが多くなったという。最初の1年間はリサーチという視点で臨み、特にサイジングについて勉強したそうだ。ピッティから回ってくると結局「パリで見て」となり、結果として7月末のオーダー締めまで引っ張られる形が増えているという。

バトナーのブース

バトナー
襟の始末をスリット編みにしたファインゲージのニットTシャツは1万6,000円

 「バトナー(BATONER)」 は、山形県寒河江市のニットメーカー、奥山メリヤスのファクトリーブランドでトラノイ、マンともに2回の出展経験があり、NYのマンとリバティーにも出たことがある。フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、ロシア、米国など既存の15件は、ほぼパリで獲得したアカウント。国内のブランド事業がうまく行ってはいるが、先を見据えた手を探りながら、海外販路開拓を進めており中期的には30%を目指している。

ティー・エス・エスのブース

ティー・エス・エス
オリジナル生地のコットン・シルク・ジャケットは5万3,000円

 「ティー・エス・エス(ts(s))」 は、10年ピッティに出展し続けるベテランで、マンも7回目となる。今回初めて一部ウィメンズプレコレのサンプルも持ち込んだが、メンズの売り上げはすでに海外が半分に近づいている。

スノーピーク
アウトドアの機能性が高いシームシールの防水ジャケットは定番

 「スノーピーク(snow peak)」はNYのカプセル、ピッティ、ベルリンにも出展経験があり、マンの後、「コペンハーゲン・インターナショナル・ファッション・フェア(CIFF)」 にも初出展する予定だ。欧州10ヶ国に30口座以上の既存取引先を持ち、ギア以外のファッション分野では香港、英国、オーストラリア、ドイツ、スウェーデンなどが主要な輸出国となっている。また既に米国、韓国、台湾には支社・子会社を持ち、店舗展開もしているため、本社としては、中期的に欧州での直営店出店を目標として掲げている。

ソーライブ

ソーライブ
先染め生地を抜染したパッチワークシャツは3万6,000円

 ジャパンブルーの「ソーライブ(SOULIVE)」 は、良い意味で日本っぽさが分かりやすく評価されている。すでに70%が海外卸となっており、備蓄型アパレルは海外販路開拓に挑戦しやすいと判断している。ピッティ、ベルリンの「セルビッチラン(SELVEDGE RUN)」、マンと欧州のサーキットを維持し、20ヶ国60件の口座を維持している。

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久保 雅裕(くぼ・まさひろ)
アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

 

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。複数のメディアに執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストア、国内合同展の企画なども行い、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

 

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