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2025.09.19
【2026春夏ニューヨークハイライト1】軽やかで、エアリーなシルエットで、柔らかさと強さのある女性像を描く

写真左から「コーチ」「セオリー」「トリー バーチ」「マイケル・コース」
米・ニューヨークでは、2025年9月11日から16日までニューヨークファッションウィークが開催された。今季の話題としては、「アレキサンダーワン(alexanderwang)」が久しぶりに大がかりなランウェイにカムバックしたことだろう。アメリカではリセールマーケットが伸びる傾向を見せているが、ラグジュリアスなブランドの強さも、改めて今季のファッションウィークで感じられた。
2026春夏トレンドのひとつとして、ゆるやかなテーラリング、軽やかな素材、ボリュームあるパンツやスカート、リラックスしたコンフォートさが多く見受けられた。バルーンパンツやサルエルパンツ、あるいはパンチングで軽さを出したり、生地をひるがえさせたりと、エアリーでフローイーなスタイルが魅力的だ。柔らかくフェミニンであるが、かといって弱くはなくて、強く、自然体を求める女性像が浮かんでくる。
「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」が打ち出した「エスケーピズム(旅への逃避願望)」に代表されるような、現実からしばし逃れて、心地よく、自然にありたい希求があるのだろう。
ニューヨークファッションウィーク第一弾として、インターナショナルブランドと、日本発のブランドからピックアップしてコレクションをレポートしよう。
マイケル・コース(MICHAEL KORS)


9月11日に、「マイケル・コース」は2026春夏ランウェイショーをマンハッタンのターミナル・ウェアハウスにて開催した。今季のテーマには“アーシー エレガンス(EARTHY ELEGANCE)”。
現実から逃れて旅に出て、自然に圧倒されながら、エレガンスや洗練さを調和させることをこのコレクションで表現したかった」という。流れるようになめらかなドレーピングとソフトなテーラリングが主役となり、パレオやパジャマ風のルック、ドレープの効いたキュロットなどが、気負わないグラマラスさを表現。風をはらむようなラインのカフタンや流れるようなチュニックが軽やかだ。
流れるようなドレープやソフトな仕立て、軽やかなシルエット。フリンジやタッセルなど躍動感のあるディテールも多用され、風を感じさせるデザインが目立つ。
またパンチングレザーやゴールドのトレンチコートといった都会的なラインをミックス。ドレープのロングドレス、タッセル付きスカートやフリンジ付きトップス、ナチュラルカラーのリネンセットアップなどがリラックス感あるラグジュリーを表現。透け感のあるシルクボイルにスパンコールの輝きを添えたルックがクライマックスを飾った。
カラーパレットはアーストーンで構成され、ブランチ、エスプレッソ、エクリューといったシックな色合いに、パロミノ、クォーツ、グアバといったサンセットカラーと調和。
ナチュラルでありながら「マイケル・コース」らしいラグジュアリー、リラックスしながらも都会的なエレガンスを兼ね備えたコレクションとなった。
コーチ(COACH)


「コーチ」は、イーストリバー沿いのピア36の巨大な会場を使って、2026春夏コレクションのランウェイを打った。
クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァースは、今季ニューヨークが持つ「輝き」と 「荒々しさ」のバランスを意識したコレクションを展開。「ニューヨークは毎朝、街が新たに息を吹き返す」というヴィヴァースの言葉らしく、ランウェイに登場するルックは、加工されたレザージャケットやリサイクルデニム、すなわち再生されたアイテムが存在感を放つ。
革のアウター類が魅力的で、スエードやナッパ、ワックス加工レザーのモトジャケット、ベスト、ブルゾンなどが登場。スエードやナッパレザーなど、丁寧に加工されたレザーを使用して、使い込まれた風合い、箔の擦れ加工などが施されている。デニムも脱色やパッチワークによるユーズド感を演出して、ワイドなシルエットが主流。異なる布を接ぎ合わせたパンツも目を引いた。
またレディスでは、ロマンティックなチュールやオーガンジーのシフトドレスが輝きを添えて、星や風船、ハート、雲などのモチーフが施され、T シャツドレスの上にレイヤードされて登場した。カラーパレットは、ホワイト、ハニーブラウン、タン、フェードブラックを基調に、パステルブルー、イエロー、グリーン、そしてメタリックのアクセントが加味。
フロントローにはエル・ファニングを始め、SNSのインフルエンサーたちが並んで、Z世代に刺さる「コーチ」らしい若さが溢れるコレクションとなった。
トリー バーチ(Tory Burch)


「トリー バーチ」が2026春夏コレクションのランウェイを打ったのは、かつて銀行だったという荘厳な建物で。今季、「トリー バーチ」はアメリカンスポーツウェアの再解釈を続けながら、女性が持つ複雑さ、フェミニティと強さ、正確性と不完全さといった多面的なスタイルについて考えたという。
ファーストルックは、ブルーのポロシャツに、ヒップハガーのミディ丈スカート、ビット付きのパンプスと、アメリカンスポーツウェアを再解釈したスタイルで幕開けした。
続くルックも、柔らかくテイラードされたジャケット、トレンチコート、ストライプシャツ、ローウエストのパンツやスカートなど、アメリカンスポーツウェアを基にしながら、異なる要素を組み合わせて再解釈したスタイルだ。
テーラリングには素朴な花柄、ダメージ加工したレザーには繊細なビーズ細工など、相反する要素を重ねあわてみせた。さらにビーズをあしらったカーディガンやメッシュドレス、スモック加工を施したビスコースなど、手仕事による新しい装飾にも力をいれて、繊細なドレスがラストを飾った。
リンシュウ(RYNSHU)


Courtesy of RYNSHU/Photo by Harol Baez
デザイナーの山地正倫周、りえこが手がける「リンシュウ」は、2026春夏コレクションを、ハイラインステージのランウェイで披露した。
ファーストルックの淡いペールミントのスーツは、生地に曲線にカットが施されていて、歩くことで波のような動きが出るところが、凝っている。
さらにサスティナブルレザーを細かなピンタックで縫い合わせてクロコダイルのような質感で仕上げた生地や、極細のゴールドテープをフリンジに縫い重ねたドレスやスカート、ジャケットの袖にスリットが施されていて、赤い布地が覗くといったディテールに凝ったスタイルが登場して、スパンコールのきらめきで華やかさを添えた。
セオリー(Theory)


「セオリー」は、展示会形式で、2026春ウィメンズコレクションを発表した。今季は、ソフトテーラリングがキーとなっていて、よりゆったりしたシルエットで、軽やかさを提案した。
ショルダーパッドは薄くなり、裏地は省かれて軽やかなタッチになっていて、フェミニンさを感じさせる。カラーも控えめで、ベーシックトーンに、柔らかなピンクが加わっている。
90年代にインスパイアされたというミニマルでクリーンなスタイルで、ウィークデイからウィークエンドまでカバーできるコレクションを披露した。
アディアム(ADEAM)


前田華子がデザイナーを務める「アディアム」は、2026春夏コレクションで、女性のワードローブの二面性― ロマンティックな感性と柔らかさ、そして構築的なエッジさを対比して描き出した。
花柄が施されたレースや、透け感あるチュールのスカート、そしてドレープで作り上げたドレスがフェミニンな面を打ち出す。
その一方で、シャープなペプラムジャケットやビスチェ、日本製のデニムを使ったジャケットなど、構築的なテーラリングが光る。
ロマンティックさとエッジさ、ドレープとテーラリング、イブニングとデイリーウェアというコントラストを行き来するコレクションが、アディアムらしさを打ち出した。
取材・文:黒部エリ
画像:各ブランド提供(開催順に掲載)
>>>2026春夏ニューヨークコレクション