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2025.04.03
【2025秋冬東京 ハイライト6】楽天ファッションウィーク東京終了後のショーを特集

写真左から「フミエ タナカ」「ジュン アシダ」「アカネ ウツノミヤ」「ファンダメンタル」
楽天ファッションウィーク東京終了後も注目ブランドのコレクションが続いている。会場や時間、モデルなどを自由に選べるようにファッションウィークの会期外を選ぶデザイナーやブランドもある。
フミエ タナカ(FUMIE TANAKA)


「フミエ タナカ」は、ブランドの原点とも言える東京・恵比寿ガーデンプレイスでコレクションを発表した。今回のテーマは“つぼみ”。咲く直前の花のように、内に秘めた情熱や希望、愛情を表現した。
冒頭は、グレーのジャケットを中心とした一連のルックでスタート。パターンを崩した構成で「ありのままでいい」というメッセージが込められている。マニッシュな素材にフリルを加え、ずらしたり変形させたりすることで、硬さと柔らかさが同居するフェミニンなバランスをつくり出した。
中盤では、ヒョウ柄とバラのモチーフを組み合わせたアイテムが登場。可憐さではなく、強さや情熱を印象づける構成となっている。注目を集めたのは、「トーキングアバウト ジ アブストラクション(TALKING ABOUT THE ABSTRACTION)」
さらに、自作の絵柄を糸で染めて織り上げたジャカード素材のヒョウ柄ボア、花のつぼみのようなグラフィックをあしらったプリント、ファーやミリタリーテイストにレースを重ねるなど、多彩な技術を駆使したデザインが続く。モデルが身に着けたイヤリングもすべて異なるデザインで、田中が個々のモデルに合わせて手作業で選び、仕上げたものだという。
ラストは、色鮮やかなビジューをあしらった白いドレスが登場。1粒ずつ手刺繍で縫い上げられたビーズは、1つにつき40分から1時間をかけたという丹念な手仕事。重さを感じさせない軽やかな仕上がりが、テーマに込めた希望や光を象徴するかのようだった。
フィナーレでは、光る玉を手にしたモデルたちが登場。強いメッセージ性を帯びた演出で、観客の注目を集めた。
田中文江は「テーマの“つぼみ”には、『ありのままでいい』という思いを込めました。最初は『かわいい』と期待されるのかなと思いましたが、あえて力強さを前面に出しました。咲いた花よりも、そこに至る過程や環境にこそ、美しさや情熱、愛情があると思っています。私自身もまだ“つぼみ”の途中。もっと光を目指して進みたいという気持ちを込めたショーでした。『届いてくれたらいいな』という思いでつくりました」と説明。
会場について聞くと「以前も恵比寿ガーデンプレイスのこの場所でショーを続けてきましたが、一度区切りをつけて、赤坂プリンスクラシックハウスなど他の会場でも発表してきました。今回は、あらためて自分らしくいられる場所としてここに戻ってきました。ここは気持ちが落ち着いて、自分らしさを出せる場所。今回のテーマ“つぼみ”に込めた『ありのままでいい』という想いにも合っていたんです。何か第3章みたいですけど、ここから離れることはもうないんじゃないかなっていうぐらい、やっぱり1番心地いいです」と話した。
ジュン アシダ(jun ashida)


「ジュン アシダ」は東京・代官山の本店内スペース「Flair」でコレクションを発表した。テーマは“ドリームパララックス ― 視差の夢”。「視差」という視覚の歪みをキーワードに、人と衣服の多面性を描き出す実験的なショーを展開した。
会場には波打つような大きな鏡がステージを挟むように置かれ、観客はそこに何層にも映る自身の姿に囲まれる。
コレクションはシンプルでクラシックなデザインを現代的に軽く生まれ変わられたようなデザインが中心。前半はグレーやベージュなど落ち着いたワントーンコーディネート
中盤ではダブルフェイス素材によって「光と影」のコントラストを表現。終盤にかけては、カクテルドレスから日常にも着用できそうなイブニングドレスへと移行し、着用シーンの幅を感じさせた。
特に印象的だったのは、オーガンジー素材の赤い花柄ドレス。ドレスの下部は花柄のカットジャカードで構成され、上に向かってチェック柄へと自然に変化していくデザインは、ブランドの高い縫製技術と素材加工の粋を凝縮した1着だった。ツイードのジャケットやクロコダイル調のテクスチャー、光沢素材にビジューを施したドレスなども登場し、全体としては派手さを抑えながらも「質」へのこだわりが貫かれていた。
会場での演出はすべてノンデジタル。映像加工やARを用いず、物理的な鏡と光、音だけで構成されたステージは、AIやCGが台頭する現在だからこそ際立つアナログの深みを感じさせた。
芦田多恵は「変化の時代に、何をどういうところに着ていくかということを、多面的に見ていただくようなイメージで作りました」とコメント。また、演出にいては「私のコレクション(タエ アシダ)がすごくデジタルだったので、それとの対比としてデジタルではないものにし、夢のような雰囲気と、服の多面性を表現しました」と語り、デジタル全盛の時代にあえて 「反射」というアナログな手法を選んだ背景を明かした。
今回のコレクションは、より視覚的に洗練された映像作品として一般公開される予定。
アカネ ウツノミヤ(AKANE UTSUNOMIYA)


「アカネ ウツノミヤ」は、2025秋冬コレクションを東京・品川のWarehouse TERRADA E HALLで発表した。15年ぶりのランウェー形式での開催となった今シーズンは、ブランド設立15周年を記念した節目のショーでもある。テーマは“WOMEN WITH HUMOR”。古典的な女性らしさを、ユーモアと現代の視点で再構築するという意思が込められた。
デザイナーの蓮井茜は、「2010秋冬のシンマイクリエイターズプロジェクトで初めてランウェーを経験して以来、ショーは開催してきませんでしたが、ブランドの空気感を伝えたいと思い、一年半前から準備を始めました」と説明。今回は、服づくりのプロセスだけでなく、女性の「着こなし」や「崩し方」、モデルそれぞれのキャラクターによって生まれる「アンバランスさ」を大切にしたという。
ショーは黒のランジェリースタイルでスタート。続いて、ゆったりとしたニットにグレーのマニッシュなジャケットとパンツ、プリーツスカートを組み合わせたルックが登場した。得意とするニットは、柔らかな質感と構築性を併せ持ち、身体の線を優しく際立たせた。
中盤には、1960年代の未来派を想起させる、腰部分に円形の空間を設けたトップスや、ボディコンシャスなドレスが登場。構築的なフォルムとセンシュアルなラインが共存する造形は、女性の身体性を肯定的に捉える姿勢を表していた。クロップド丈のニットにミニスカート、ハードなロングブーツを合わせた若々しいスタイルや、黒のドレスにグリーンのブラトップを重ねるスタイリングなど、フェミニンとマニッシュ、構築性と抜け感が交差するコーディネートが並んだ。
また、茶色のニットにはアフリカ的な力強さを感じさせた。
今回初めて導入されたシューズも見どころの一つ。蓮井は「服と靴のバランス、フォルムのアンバランスさを意識しました」と語っており、足元まで含めたスタイリングも新しさを生み出した。
蓮井は、「今回は違う脳みその部分を使うというか、洋服をどのように見せるかを、形やディテールではなく、空気感や全体の雰囲気で捉えることが多く、そこが個人的にはとても楽しかったです。ショーをやるといろんな人と関わるがことが多いので、自分の中にインプットすることも多かったです。今後のショーについては未定ですが表現方法としては、今までのルックによる発表とは違う新しい方法も増やしてもいいのかなとも感じました」と語った。
ファンダメンタル(FDMTL)


「ファンダメンタル」は、2025秋冬コレクションを東京タワーメディアセンター内のStudio Earthで発表した。今季のテーマは“バタフライ・エフェクト(Butterfly Effect)”。ブランド設立20周年を迎えた節目の年に、
ショーはバイオリンやドラム、
また、ワークウエア風のステッチがアクセントとなったアイテムや、シャツを重ねてスカートに見せる構造的なデザインも登場。片方の身頃だけにシャツを重ねたようなだまし絵のような表現や、袖部分だけ刺し子風に仕上げたブルーのMA-1ジャケットなど、トロンプルイユ的な構成も印象的だった。
今季は、前回のブルー基調からさらに発展し、カーキを取り入れたミリタリー風の要素も加わった。クロップド丈のコートにシャツをドッキングしたデザインや、カーキのコート、円形パーツで構成されたデニムのジャケットとパンツなど、表現の幅が大きく広がった。
デニムの可能性を追求する姿勢はそのままに、複数素材を組み合わせた構築的なアイテムや、柔道着や袴、着物など日本の伝統衣装を想起させるシルエットも展開された。ゆったりとした構造のジャケットやパンツ、ダメージ加工、藍染や刺し子風のテクスチャーが、ブランドの出自と進化を物語る。
“Butterfly Effect”というテーマのもと、小さな変化の積み重ねがやがて大きな転換を生むという思考を、衣服に落とし込んだ「ファンダメンタル」。津吉が語るように「終わり」の覚悟を超え、「継続」への決意へと転じた今季のショーは、20年の軌跡と未来への展望を力強く提示する場となった。
シシオ(SISIO)


「シシオ」は2025秋冬コレクションを、東京・国立代々木競技場第二体育館で発表した。今季のテーマは“諸行無常”。デザイナーがグリーンランドを旅した際に見た風景や花々からインスピレーションを受け、自然の移ろいや生命の循環を衣服で表現した。
ショーは、虫の声や水の音が響く幻想的な演出のなかで始まった。会場には夏の夜を思わせる空気が漂い、ダンサーによるパフォーマンスがコレクションの幕開けを飾った。レーザー光線による照明は、未来的でありながらも海中にいるような静謐な世界をつくり出していた。
登場したルックは、自然の花や植物を想起させるものが中心。プリーツドレスやジャケット、スカートに加え、ブルーのニットやデニムのパンツが披露された。山や雲、氷河をイメージしたドレスやジャケットには、美しいグラデーションや色彩が施されていた。フリルや立体的な造形が随所に用いられ、衣服に生命感をもたらしていた。
なかでも印象的だったのが、紫陽花の花でつくられたドレスと、フィナーレに登場した変化する構造のドレスだ。成長し、形を変える植物のように展開する姿は、テーマである“無常”を象徴するものとなった。
“諸行無常”という思想を通じて、絶えず変化し続ける自然や人間のあり方を可視化。構築的なフォルムと繊細な装飾が融合し、まるでオートクチュールや衣装のようなコレクション。
敬称略
取材・文:樋口真一