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2024.03.20

【2024秋冬東京 ハイライト3】東京のコレクションシーンの盛り上がりに貢献するメンズデザイナーのクリエーション

写真左から「アンリアレイジ」「タナカ」「ソウシオオツキ」「カミヤ」

 

 楽天ファッションウィーク東京(以下RFWT)の2024秋冬シーズンはウィメンズデザイナーの実力派が揃ったことが注目の的であったが、東京の強みであるメンズデザイナーたちも数は劣るものの秀逸なコレクションを発表した。欧州のジェネラルトレンドではクワイエット・ラグジュアリーに勢いがあるが、より若くよりリアルな提案を得意とする東京メンズではそれらとは異なり、ヴィンテージやワーク、ボヘミアン、アングラカルチャー、和をテーマにしたコレクションやルックが見られる。また東京のストリートの空気を吹き込んだ服や東京ならではの演出なども見所の一つであった。

 

ハイドサイン(HIDESIGN)

Courtesy of HIDESIGN

 

 今シーズンのRFWTのオープニングを飾ったのが「ハイドサイン」だ。制服や作業着のデザインを行う同社がブルーカラーならぬ”グレーカラー”というテーマを掲げてローンチした同ブランド。4回目のコレクションは、全60ルックをランウェイ形式で発表した。

 

 モデルたちが直立不動でポーズをとる中を、違うモデルたちがウォーキング。直立不動のモデルたちが着用するのがカスタマイズできるアイテム、ウォーキングするモデルたちが着用するのが既製服のアイテムだ。

 

 制菌、吸水速乾、軽量などの素材使い、フードや袖を外すことができるブルゾンやポケットが取り外しできるボンバージャケットやパンツなど今回も利便性を追求。カラーはクリーンなものが目立ち、メタリックなどの素材を取り入れるなどトレンドへの目配りを感じることもできる。

 

 今シーズンから量産を開始し、バイヤー向けの展示会も行った。以前からこの機能をいくらで実現できるのかが話題となっていたが、アウターで10万円前後、ジャケットで5〜7万円、シャツで3〜4万円程度で販売する予定だという。

 

カミヤ(KAMIYA)

Courtesy of KAMIYA

 

 先シーズン、鮮烈なファッションウィークデビューを飾った「カミヤ」が2シーズン目となるランウェイショーを行った。舞台は渋谷百軒店商店街。老舗喫茶店や飲み屋が立ち並ぶ商店街をランウェイに見立て、一見アンマッチに思えるマーチングバンドの生演奏の中、ショーは展開された。

 

 今シーズンのテーマは“Time is blind”。「愛は盲目」を意味するLove is blindをもじった造語だ。ブランドらしいヴィンテージスタイルを軸に、得意のダメージ加工など表情変化を駆使したクリエイティブなアイテムを次々と打ち出した。スウェットやデニムの色落ちやダメージ、切りっぱなしの加工など、古着を現代の技法やシルエットで再現。今期は特に同色系のバリエーションアップを突き詰めたという。一言に「カーキ」や「ブラウン」と言っても素材や染め、加工などによって、強さだったりエレガンスだったり、様々な表情を導き出していた。

 

 また、今シーズンはグッとラグジュアリ感とセンシュアリティが高まった。リアルムートンのアウターや艶感のあるビスコースのブルゾン、そしてデザイナーが「これまでのカミヤからは想像のできないものを作って驚かせたかった」というベルベットのラメ入りジャケットなど、良い意味でこれまでとは違った「カミヤ」らしさを見せていた。

 

 ショーについてデザイナーの神谷康司は「ブランドらしいという意味では渋谷がよくて、それでも突拍子もない場所でショーをしたかった。この場所は古いものが残っているし新しいものもあって賑やか。そこにマーチングバンドの勢いを加えることで盛り上がると思った」と語った。

 

タナカ(TANAKA)

Courtesy of TANAKA

 

 タナカサヨリとクボシタアキラが手掛ける「タナカ」は1年ぶり2回目のランウェイショーを渋谷区の代々木第二体育館で開催した。”これまでの100年とこれからの100年を紡ぐ衣服“というブランドコンセプトのもとサステナビリティを意識したユニセックスアイテムを展開している。

 

 今シーズンは、戦争などで自由を制限されている人たちが多いという事実に対する憤りから「デニムは自由の象徴である」ということを追求したという。元々ブランドを象徴するアイテムがデニムであるが、今季は「デニムを題材にしたアートにまで昇華したい」と、素材に対するリスペクトは変わらず大切にしながらも、いつもと違うアプローチを試みた。ブランドの定番になっている型も一から見直して改良したり、多数のギャザーを施して立体感のある表情を生み出したり、レザーとの融合やビジューの煌めきを加えるなど、ブランドの勢いを体現するかのような強いアイテムが次々と登場した。

 

 また、リサイクルコットンを使ったデニムの使用やサステナブルな生産加工に加えて今期はリメイクというストーリーも加わった。昨年から続けているニューヨークのアーティスト、FAILEとのコラボレーションだが、彼らのアートワークをアメリカンキルトにのせてパッチワークにしたショーピースは圧巻だ。

 

 パリでの展示会での反応もよく、手ごたえを感じたという「タナカ」。世界的な視野でものづくりを行っている日本のブランドとして今後の活躍にも大きな期待が寄せられている。

 

ヴィルドホワイレン(WILDFRÄULEIN)

Courtesy of Japan Fashion Week Organization

 

 クチュール、テーラーを中心とした立体裁断のパターンを基本とし、着る人の本質を引き出す為の洋服をコンセプトとしている「ヴィルドゥホワイレン」が2回目のランウェイショーを行った。

 

 今シーズン、デザイナーのループ志村は特別な思いをもってこのショーに臨んだという。その理由は、ブランドとしてランウェイを始めたきっかけになった顧客の死。毎日のようにアトリエを訪れていた彼女のための服をブラッシュアップしたのが今回のコレクションで、ブランドを愛してくれたその人を裏切らないためにショーの直前までアイテムの調整は続き、すべての力をこのショーに注いだ。

 

 テーマは“メメントモリ”。ブランドの特徴でもあるクチュール、テーラーを中心とした立体裁断。それが今シーズンはより複雑さを増し、コレクションにアート性と力強さをもたらした。テーラードジャケットはショルダー部分を強調しシャープな印象に、一方でミリタリーブルゾンは張りのある素材でボリューム感を出し丸く立体感のあるシルエットに仕上げ、メリハリのあるバランスにしていた。またデザイナー、ループ志村が画家としての経験を活かしたオリジナルグラフィックを用いたプリントとして、一角獣をモチーフにしたデザインが登場し、コレクションに温もりを加えていた。

 

 ショー終了後、ループ志村は、「万人受けするデザインだとは思わないが、ショーを通じて感動して、着たいと思ってもらえたら」とショーを開催することの意義についてコメントした。

 

へオース(HEōS)

Courtesy of HeōS

 

 中国出身の暁川翔真がデザイナーを務める「へオース」。ブランド名はギリシャ神話に登場する「暁」の神の名前で、その最も神秘的で美しい時間帯を体現するようなエレガンスを打ち出している。

 

 今シーズンは“SPEAK MY LANGUAGE”をテーマに、エキゾチックなムードを纏ったコレクションを発表した。どこか民族衣装を思わせるようなロングシャツやボックスシルエットのジャケット、縦長のシルエット。カラーも暖色系のパレットで温かみがありながらも、ベルベットやジャガードなどの素材には煌めく糸を混ぜてエレガントな雰囲気をプラスした。またボリュームのある立体的なストールやニットなどでスタイリングにラグジュアリさを出していた。

 

メアグラーティア(meagratia)

Courtesy of meagratia

 

 デザイナー関根隆文が手掛ける「メアグラーティア」、今シーズンのテーマは“Vitality”。アトリエの近くで見つけたアスファルトの隙間から生える雑草の、その生命力の強さにインスピレーションを得たという。ブラック・ホワイトのモノトーンカラーをベースに、柔らかいアースカラーで自然の優しさを、そして「血の色から構想した」というハッとするような鮮やかなレッドを差し色にして生命力の強さを表現した。

 

 コレクションには、ブランドらしいディテールやギミック、クラフト感が詰め込まれている。古着のデニムジャケットにインスピレーションを得て、ジャガードでそれを表現したというパッチワークジャケットや、ラストの2ルックで登場したビジューで作ったツイードのアウターなど、こだわりが詰め込まれた独創的なアイテムが登場した。中でも印象的なのは、スウェット生地のパーカーが途中でライダースジャケットに切り替わっていくようなフーディー。これは独自の泊プリントでレザー感を出したのだという。

 

 ショーではアーティストの風弦(whogen)によるライブパフォーマンスと相まって力強い生命力とブランドの意志を見せつけた。

 

アンリアレイジ オム(anrealage homme)

Courtesy of ANREALAGE

 

 今シーズン大きな話題となったのが「アンリアレイジ(ANREALAGE)」が新たにローンチしたメンズブランド「アンリアレイジ オム」のファーストコレクションショーだ。これまでも「アンリアレイジ」でメンズアイテムは販売してきたが、今回発表したのはそれらとは異なるものだ。

 

 テレコムセンタービルディングのアトリウムにある通路をランウェイとして使用。無機質な空間の中、モデルたちが曲線を描きながらウォーキングしコレクションをお披露目した。ファーストルックは無数のボタンを縫い付けたピンクのスーツ。歩くたびに数々のボタンが揺れ動的なムードを醸し出す。その後もデザイナーの森永邦彦らしい遊び心あふれるピースが次々と登場。アップリケやエンブレムを装着したジャケット、ニットで編み上げたスタジアムジャンパー、得意とするパッチワークのカーディガン、ツギハギのフーデットジャケットなど、カラフルと手仕事をデフォルメしたトラッドアイテムが目立つ。中には「リーボック(Reebok)」のロゴをあしらったアイテムも。

 

 久しく「アンリアレイジ」をパリコレクションで発表し続けている森永デザイナーだが、この「アンリアレイジ オム」は今後も東京での発表続けるという。東京のコレクションシーンの盛り上がりに大いに貢献しそうだ。

 

 

以上、開催順に掲載

 

東京ファッションアワード 2024受賞のメンズデザイナーたち

 

 

 

ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)

Courtesy of SOSHIOTSUKI

 

 今シーズンは、須田一政の作品集「風姿花伝」にインスパイアされ、デザイナー大月壮士が「品」と「死生観」について深く考察した結果生み出したという。人間特有の「品」、特に日本人が基本的に持っている思いやりを含む「品」に焦点を当て、その根底に流れる日本人独自の宗教観や道徳観、日常の中に存在する神を服や服の細部に込めた。

 

 大月の父親が脳梗塞で倒れたことが、コレクション制作の途中で起こった出来事。これにより、大月自身の宗教観の意味合いがよりパーソナルで、よりエモーショナルなものへと変化したという。人種や人格がどうであれ、地球上の全ての人間や生物が死に向かっているという認識を再度確認し、その変化した「死生観」を服作りに反映した。

 

 2013年に発表した“FINAL HOMME”、2015秋冬シーズン“NINJA STYLE”など、大月のこれまでも父親の影響を受けたコレクションを発表している。今回はなんと父親本人をモデルとして起用。俳優の嶋田久作やショーモデルとともに、陰影のあるライトの下ランウェイをウォーキングした。

 

 コレクションでは、ダブルブレストやアンコンジャケットのダークスーツ、フォーマルなベストをミニマルにしたピース、ステンカラーコートやマントなど、フォーマルウェアを再構築したピースやルックが目立つ。サイズの合っていないかのようなシワを描くジャケット、紋章ブローチや数珠など、葬儀の装いのようにも見える。それらのフォーマルなルックとともに登場するのが色鮮やかな総柄シャツ。晴れ着を仕立て直したかのようなノスタルジーを感じるピースをガウンやダブルブレストスーツの中に差し込んだ。

 

 ディテールではドレープを多用。着物袖のパターンが布感によってドレープを生み出し、ケープのようなシェイプのトレンチコートやポンチョを創り出した。袖の下には、腕や物を入れる所作の提案がなされている。スーベニアジャケットやワークジャケットには、腕を上げやすいようにマチが入れられ、それがドレープとなり、ケープにも変形する仕組みに。メインファブリックとして用いた尾州産のウールは、オゾン加工により滑らかな触感と落ち感を強調。

 

 「コウタオクダ(KOTA OKUDA)」とコラボレーションしたアクセサリー、「ムーンスター(MOONSTAR)」のビジネスシューズライン「バランス ワークス(BALANCE WORKS)」のシューズも目をひいた。

 

コウタグシケン(Kota Gushiken)

Courtesy of Kota Gushiken

 

 2019秋冬コレクションより本格的に始動した具志堅幸太が手掛けるニットブランド「コウタグシケン」。「東京ファッションアワード 2024(TOKYO FASHION AWARD 2024)」の受賞を受けて今回RFWTにてブランドとして初のプレゼンテーションを行った。

 

 “整理整頓”をテーマに繰り広げられたそのプレゼンテーションはとてもユニークだった。お笑い芸人の又吉直樹と好井まさおが登場し、絶妙な掛け合いでコレクションを紹介していくのだ。まるでお笑いライブを見ているかのような展開。人気のポートレートシリーズなどでも見られるブランドのユーモアをプレゼンテーションでも体現したかたちだ。

 

 紹介されたコレクションは、2024秋冬の新作と過去のアーカイブがミックスされていて、初のプレゼンテーションということもありブランドの自己紹介的な意味合いも含まれていた。ニットブランドとしての実力はその人気ぶりからも窺い知ることができるが、今シーズン登場したニットのリバーシブルスカジャンはその高い技術力と発想力を特に見せつけるものだった。

 

 具志堅幸太は「又吉さんや好井さんたちはアイデアがすごくて、ものを作ることに真摯に向き合っている人たちと一緒に仕事ができて幸せでしたし勉強になった。プレゼンテーションは、これまでのアーカイブを含め整理整頓という意味合いもあるし、自分は悲しみや楽しみ、絶望や幸せなど色々な感情を洋服にまるっと詰め込むので、そういった感情の整理整頓という意味もあった」と語った。

 

 現状は日本での販売のみだが、パリでの展示会も大きな刺激になったといい、今後も東京とパリでの発表は続けていきたいと今後の意気込みも語っていた。

 

シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)

Courtesy of SHINYAKOZUKA

 

 「東京ファッションアワード 2024」を受賞した「シンヤコヅカ」は、今回RFWT開催前にランウェイショーを開催し、期間中にはインスタレーションでコレクションを発表した。

 

 “DIVE INTO WINTER FEAST”をテーマにした今シーズン、ランウェイは雨の降るプールを舞台に行われた。そしてそのブルーのイメージをそのままに、インスタレーションでは「デザインのプロセスも一緒に見せたい」という想いから、青い部屋の中でコレクションアイテムとインスピレーションとなったデザイナー小塚信哉が自ら描いた絵と一緒に展示した。

 

 コレクションは、ブランドらしいアート性に今シーズンは艶っぽさがプラスされた。冬の定番であるノルディック柄やアラン模様のニットはネイビーやブルーであえて冷たい感じを加えてクールな印象に。ダッフルコートには箔プリントで煌めきを与えていた。また、光沢のあるオーガンジーのポンチョをレイヤードしたりスパンコールのジャケットが登場したりと、どこか色気を感じさせるようなアイテムでより大人になったブランドの表情をのぞかせた。

 

 アワードを獲得し、日本だけでなくアジアでも知名度を上げている「シンヤコヅカ」。パリの展示会でも手ごたえを感じたといい、今後はヨーロッパでの展開も期待される。

 

エフエーエフ(FAF)

Courtesy of Japan Fashion Week Organization

 

 東京を拠点に活動するクリエイティブユニット「ユースクエイク(YouthQuake)」に所属するデザイナーの荒井一帆とディレクターの高林司が手掛ける「エフエーエフ」。2018年にカットソー、プリントを中心としたアパレルの制作活動をスタートさせ、2021秋冬よりコレクションベースでの発表を行っている。“都市と自然のコントラスト”をブランドテーマとし、ものづくりの可能性を追求し現代のライフスタイルに寄り添ったアイテムを展開。今回「東京ファッションアワード 2024」の受賞を受け、ブランドとして初のショーを開催した。

 

 コレクションは、ブランドの強みであるカットソーを主軸に、東京らしいストリートスタイルをユニセックスで表現。優しいアースカラーのカラーパレットに、強いグリーンやピンク、ビビッドなカモフラパターンを合わせることで自然と都市のコントラストを表現していた。

 

 

取材・文:山中健、apparel-web.com編集部

 

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