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2024.03.19

【2024秋冬東京 ハイライト2】実力ブランドはこれまでやってこなかった新しい表現などにチャレンジ  

左から「ミューラル」「アキコアオキ」「サポートサーフェス」「ヨウヘイオオノ」

 

 
 「楽天ファッション・ウィーク東京2024秋冬(Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 A/W)」が2024年3月11日から3月16日まで開催された。2024年、年間を通したテーマを「OPEN,FASHION WEEK」とし、一般消費者の招待企画を行うなど、解放感のあるイベント開催を目指し、国内外への発信強化を推進している日本ファッション・ウィーク推進機構。「これまでは50ブランド近くが参加していたが、東京ならではの強いブランドを海外に押し出していきたい」(古茂田事務局長)という狙いから、審査を厳しくした結果、初参加のブランドが減り、参加ブランド数が43ブランドとなった今シーズン。インキュベーションを重視してきた東京がどのようなステップを見せるのかが注目されたが、すでに高く評価されている若手や中堅の実力ブランドが独自性の追求や技術的なこだわりを守りながらも、これまでやってこなかった新しい表現などやタブーにしていたことなどにチャレンジしていたことが目を引いた。デザインではドレープがポイントになっている。

ミューラル(MURRAL)

Courtesy of MURRAL

 

 村松祐輔と関口愛弓によるミューラルは“ウィズ、共に”をテーマにしたコレクションを発表した。ニードルパンチで夜景のイメージを抽象画のように浮かび上がらせたコート、黒のジャケットと都会の夜を思わせるシャツとパンツの組み合わせ、コートやドレス、ボトムなどの美しいドレープは風を感じさせ、ニットも雪が降る風景や花の咲く夜のよう。ベルベットのキルティングは刺しゅうでグランドと毛で染め分けているという。

 透明感のあるドレスやスカートも光を感じさせ、ミリタリーテイストのアイテムに付いたポケットや袖も自然を描いた抽象画のようなムード。見る人の想像力を刺激する。夜、夜景、夢、自然など、ここ数シーズン続くイメージを更に進化させながら、洗練度を高め、スタイルなどで新しさや現代に不可欠な軽さや透明感、リアリティなども追求したコレクション。

 村松は「クオリティをブラッシュアップし、そぎ落としながら、純粋とは何なのかを表現した。また、今回は関口の描きたい女性像がこれまでで一番投影されたと思う。スタイル、女性像を意図的に打ち出した」と語った。

ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)

Courtesy of YOHEI OHNO

 

 ストライプやクラシックなチェックのジャケットやパンツなどマニッシュなアイテムに、美しいドレープをプラスした1940年代のオートクチュールコレクションを思わせるルックなど、前回とは対照的なクラシックなデザインからスタート。

 
 直線的な布や襟がデフォルメされたように長く伸び、美しいドレープを生み出す。モデルたちは貴婦人のように黒や白のベールで顔を覆っている。ブルーのシャツやコートもドレープドレスのようにエレガントだ。ワインのような赤いワンピースやキャミソールドレス。クラシックなオートクチュールのような曲線と直線、テーラードとドレスの美しさが共存するようなアイテム。手袋には真珠のような白い石が付いている。日本のアバンギャルドなデザイナーやヴィヴィアン・ウエストウッドとも共通しそうなデフォルメと大胆な布使いやユーモラスなアクセサリーなどはあるものの、全体の印象はクラシックでエレガント。

 
 大野陽平は「前回の自分の幼少期や実体験とは反対の自分が経験したことのない大人の世界、ラグジュアリーやクラシックな世界をやりたいと思った。未熟な人、普通の人から見たラグジュアリー、対比を正直に描いた」と話した。

カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)

Courtesy of KANAKO SAKAI

 

 「女性性、女性的な要素が苦手だったが、それを作って、作って、乗り越えて、自分のものにすることで新しい個性、次のスタイルを作っていけたら」というサカイカナコ。ドラムの生演奏を背景に新しい表現にチャレンジした。
 
 ジャン・ポール・ゴルチェが創ったマドンナの衣装を思い出させる、1950年代にも流行したコーンブラからインスパイアされたトップスとマニッシュなパンツ、ロングコートとドレープが美しいトップスにショーツのコーディネート、タトゥーのようなレース。透けるプルオーバー。性的な目的のデザインにも見える1920年代の下着から発想したという、フェティッシュな下着のようにハート型にくりぬかれたパンツはレザーで作ることでバランスをとった。
 
 また、かつて「イッセイ ミヤケ」や「ティエリー ミュグレー」が発表したボディブレスレットを彷彿させるトップスは、銀に硫黄を付けて熱を加えることで独特の色を出すなど、日本の職人技術が使われている。白地に金の箔プリントで書かれていたのはアメリカの詩人の自分は矛盾し続ける、なぜなら私は複数を含んでいるから、というような内容の詩だという。「驚いた人もいると思いますが、これもカナコ サカイだし、前回もカナコ サカイ。矛盾しているように見えても、それはいろいろなものを自分の中に含んでいるから。前回は自己紹介、今回は自分の内面が出るようなショーにしたかった」。

アキコアオキ(AKIKOAOKI)

Courtesy of AKIKOAOKI

 

 脱げかけている、着崩れているなど、途中経過に美しさがあるということを探求した。袖をストライプのシャツのようにした黒いジャケットの背中は裏返したように縫い目が見え、ひねり、巻き付けることで、シェイプされたシャツは、ボディコンシャスでありながら、しわやねじれがドレープを描く。ドレープは今シーズン、いくつものブランドが出しているが、「アキコアオキ」のデザインはアバンギャルドに見える。
 
 そして、下着のようなドレスやヌードカラー、光をまとうプルオーバー。クラシックでマニッシュなムードとアバンギャルドでフェミニンなムードの共存。完成と未完成、裏と表、美しさと新しさも共存するコレクション。
 
 青木明子は「タイトスカート、ジャケット、シャツなど社会的な記号を使い、平面的なパターンの服が女性の体の上でセクシャリティをもって着崩れていく。女性を美しく見せるドレープではなく、ゆがみの美しさ、正統的でないものを受け入れる、穏やかさ、優しさを見せたかった。布と対話するようにプロセスの中でゴールを見つけていくのは初めての試みだったので、難しかったけど、楽しかった」と説明した。

ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)

Coutesy of HARUNOBUMURATA

 

 
 クラシックで構築的なジャケットとパンツやスカート、コート、ジャンプスーツなど、今シーズンも美しさが際立った「ハルノブムラタ」。かつての「ヨウジヤマモト」や「クロード モンタナ」とも共通しそうな美しさと思想するファッション。
 
  シェイプや背中の美しいドレス、大きな襟が印象的なビッグシルエットのコート。オフショルダーのドレスはクチュールドレスのように美しいが、前回の春夏コレクション同様に軽く、リアル。パジャマのように、柔らかくリラックスしたムードのシャツとパンツ、ガウンなども、エレガント。テーラードとドレス、ビッグコートの構築性とシャツのような軽さ、洗練とリラックスが共存する。ニットやダウンも美しさとリアル、クラシックとストリートが両立する。木の実のようなアクセサリーなど、クチュールメゾンやラグジュアリーブランドのようなムードに素朴さもプラスした。
 
 「舞踏会に向かう三人の農夫の写真から着想した。おしゃれをしてスーツを着て舞踏会に行く様は人間味にあふれている。全体的にミニマムになったのは服にフォーカスするというより人にフォーカスした結果。冷たいミニマムではなく、人間味にあふれたミニマリズムを表現出来ればと思った」と村田晴信。

ミカゲシン(MIKAGE SHIN)

Coutesy of MIKAGE SHIN

 

 ゲームチェンジャーをテーマにした今回。コレクションはヒトデや海の生物のようなたくさんのとげを付けた赤いドレスからスタートした。とげドレスは絞りやニットに見えるが、ピラミッドのように積層し、一つ一つが渦を巻くように立体的になった特別な刺しゅうの技術を実用化したもの。「なんだこれはというものでミカゲシンに対するイメージをフラットにして、コレクションを見て、考えてもらうバグを起こすソースとしてのルック」だという。

 続くのは、ジャケットと透けるスカート、ミニスカート、ファーライクなミニ、レース、背中を空けたドレス、クロップドなトップス。同じデザインやアイテムを女性と男性モデルが着る性差を超えたデザインやアイテムの境界線を無くしたようなデザイン。アシメトリー、紐の付いたジャケット、絞り風のデザインなども続いている。また、バストなど裸を描いたトップスなども登場。パンツの後ろ身頃にも尻や足が描かれている。

 「今まで抑えてきた激しい表現をやりたいと思った。コロナも終わり、人との交流が出来るようになり、ファッション業界も以前の賑わいが戻ってきた。今までのイメージだけでなくセンセーションなことをやることで、国内や海外のたくさんの人に知ってもらいたい」と進美影。

サポートサーフェス(support surface)

Courtesy of support surface

 

 花のような袖やブラウス、広がるケープ、ドレーピングが美しいデザインなど、花のように柔らかくエレガントなデザイン、前後、左右で違う表情に見えるデザインなど、独自の世界を発展させながら、自分の考えるかわいいにチャレンジした「サポートサーフェス」。
 
 前から見ても後ろから見ても、横から見ても美しいデザインはベテランならではのもの。だが、今シーズンはトレンドでもあるオートクチュール的なドレープの美しさも目を引く。コクーンシルエットやジャケットとは対照的な、宇宙ルックを発表する以前に「ピエール カルダン」が創っていたサックドレスやドレープスカートを想起させるデザインや袖を大胆なドレープにしたデザインなどドレープが続く。ラストは黒一色。素材の作る物語と造形の美しさを際立たせた。
 
 ショーの最後には研壁宣男がマイクを持って登場し、コレクションについて「かわいいというのは嫌いな言葉、僕の服はきれい、カッコイイというジャンルだが、自分なりのかわいいを表現した。素材は落ち感、縦のドレープに対して張り感、コンパクトな丈、テキスチャーをポイントにした」と説明した。

 

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