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2024.03.10

【2024秋冬パリメンズ 展示会レポート】中国除きほぼ回復感漂うパリメンズ・トレードショー

 2024秋冬シーズンのパリメンズ・トレードショーが2024年1月18日~21日、さらに市内各所でコレクティブショールームや個展がこの時期一斉に開かれた。コロナ直前の2020年1月と前年同期(2023年1月)、そして今回と3回の取材では、「1年前との変化」及び「コロナ前への復活なるか」が注目点となった。

 

 今シーズンは久しぶりに雪に見舞われ、前シーズンのストライキとは違ったハードルがバイヤーたちの足元をすくった恰好となった。各トレードショーの概況と日本ブランドのショールームなどを紹介する。

 

 トレードショー3展全体で見ると前年同期比で21.2%増と大幅に伸ばし、コロナ前と比べても13.2%減というところまで戻してきており「あと一歩」の感がある。欧米や中東バイヤーの戻りが、徐々にだが活発化してきたことが後押ししてのことと見られる。一方で中国からの戻りは芳しくなく、まだ一部のトップクラスのバイヤーしか来仏していないとの声が聞かれ、中国経済の減速傾向も原因とみられる。

 

 3展別の傾向としては、「ウェルカムエディション(WELCOME EDITION)」の大躍進と「トラノイ(TRANOI)」の苦戦、「マン/ウーマン(MAN/WOMAN)」の若干の回復で、ヘリテージ系、カジュアル系の善戦とモード・アバンギャルド系の停滞という傾向が顕著になったという事だ。世界的には、モード・カッティングエッジ系は、ラグジュアリーメゾンやハイブランドを買う富裕層に支えられており、トレードショーに出展するレベルでは、やや中途半端なのかもしれない。一方でヘリテージ系を好む自然派志向の富裕層とややマスなカジュアルブランドを支える層は、それなりに塊がある点が優位に働いている模様だ。

 

 今後、中国をはじめとした新興国におけるカッティングエッジでニッチなブランドを求めるセレクトショップの台頭が進めば、トラノイを含めたこのゾーンも賑わいを取り戻すことになるだろう。

 

 また更にマスマーケットをターゲットとした「フーズネクスト(WHO’S NEXT)」が1月20日~22日にパリ南西部郊外のポルト・ド・ベルサイユ見本市会場で開かれた。多くのウィメンズブランドを含めた総合的な出展があり、アクセサリー・ジュエリーの「ビジョルカ(Bijorhca)」「国際ランジェリー展(Salon International de la Lingerie)」なども含めると1,800ブランドが出展し、131ヶ国から4万人が来場したという。こうした大型見本市の動向も今後は見ていく必要がありそうだ。

 

  • 規模では侮れない存在となるフーズネクストには、約1,800ものブランドが集積する

  • 規模では侮れない存在となるフーズネクストには、約1,800ものブランドが集積する

  • 規模では侮れない存在となるフーズネクストには、約1,800ものブランドが集積する

  • 規模では侮れない存在となるフーズネクストには、約1,800ものブランドが集積する

  • 規模では侮れない存在となるフーズネクストには、約1,800ものブランドが集積する

主導権を握ったウェルカムエディション

 

 

WELCOME EDITION

  • ウェルカムエディション

  • ウェルカムエディション

 3展の中では、ウェルカムエディションの拡大傾向に拍車が掛かっており、コロナ前比で74.4%増、前年同期比で61.3%増となった。日本のデニムブランドなどが複数抜けて、コレクティブショールームを別に開催するなどしたが、出展者数は増え続け、今回は、ラッペ通りのメイン会場に加えて、バスチーユ駅にさらに近いロケット通りに新会場を設けて、2会場体制となった。日本ブランドでは、メイン会場に「ナイジェルケーボン(Nigel Cabourn)」など継続出展者が揃い、新会場には、「リベア・バイ・ジョンブル(rebear by johnbull)」「クチュール・ド・アダム(COUTURE D’ADAM)」など新規出展者が登場した。

 

 人気も受注も堅調な「ナイジェルケーボン」は、日本のアウターリミッツが展開しており、日本製が8割程となっている。欧米、アジア中心に20件ほどの既存に加え、米国の地方、ベルギー、ドイツ、英国内でもヨークシャーやスコットランド、スイス、インドネシアといった既存と被らないエリアに20件ほどの新規を獲得した。

 

  • 好調なアウターリミッツの「ナイジェルケーボン」

 サザビーリーグのグループ会社で輸入卸のグリニッジは、ジョンブルが展開するアップサイクルブランドの「リベア・バイ・ジョンブル」、テーラリングをベースにしたウィメンズの「クチュール・ド・アダム」など複数ブランドで初出展した。

 

  • グリニッジ

MAN/WOMAN

  • ヴァンドーム広場の南西角にあるイベントスペースの1階と地下の2フロアで構成された「マン/ウーマン・パリ」

 「マン/ウーマン(MAN/WOMAN)」は、1月19日~21日に開かれ、前年同期比で3.9%増の80ブランドと微増ながら復調に転じた。ヴァンドーム広場の南西角にあるメイン会場に加え、以前も使用したことのある北西角のオペラ駅寄りの会場を丸々「ネペンテス(NEPENTHES)」に貸し出し、それを呼び水にする形で展示会を迎えた。日本からは「ジャンブル・パリ(JUMBLE PARIS)」による11ブランドの合同出展も含め28ブランドが参加し、なんと35%を日本ブランドが占めるに至った。

 

  • 「ニードルス(Needles)」「エンジニアドガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)」など7ブランドでヴァンドーム広場北西部のワンフロアを借り切った「ネペンテス」は、MAN/WOMANのNを「ネペンテス」のロゴに置き換えたセンスを感じる看板で出迎えた

  • 「ネペンテス」のパンク系ストリートブランド「エーアイイー(aïe)」

  • ニットファクトリーの強みを生かして安定してきた奥山メリヤスの「バトナー(BATONER)」

  • 原宿に直営店を持つデザイナーの今泉悠が設立したアイウェアブランドの「アヤメ(ayame)」もマンの常連だ

  • 久留米発のスニーカーブランドとして定着してきた「ムーンスター(MOONSTAR)」

  • 日本でインポートショールームを営む「ノウショールーム(KNOW SHOWROOM)」がアングローバルの展開する「キタン(quitan)」を含めて展示した

  • 大手スポーツメーカーの「ゴールドウィン(GOLDWIN)」もブースを構える

  • ジャンブル・パリに出展したミノオ・ラボのユニセックスブランド「ハブ・ア・グッデイ(have a good day)」

  • 「カプセル・パリ」時代から長くパリに出展している「マスターピース(master-piece)は、近年はジャンブル・パリが定位置となっている

  • デニムのパッチワークで定評のある「ファンダメンタル(FDMTL)」もジャンブル・パリのレギュラーメンバー

  • ジャンブル・パリのメンバーとして継続出展する「ナーディーズ(The NERDYS)」は、秋冬だがTシャツなどカルチャー寄りの軽衣料が目立つ

  • 「イズネス(is-ness)」もジャンブル・パリの常連

TRANOI

  • 出展者を大幅に減らしたトラノイ

  • 出展者を大幅に減らしたトラノイ

 トラノイは、コロナ前はブルス駅前のパレ・ブロンニャール、1年前のマレ地区のガラージュ・アムロ、そして前シーズンのゲテ・リリックと会場を変更してきたが、今回は、前シーズンと同じゲテ・リリックでの開催となった。

 

 「プルミエールビジョン(PV)」を擁するGLイベンツ傘下となり、パリコレクションを主宰するフランスオートクチュール・モード連盟唯一公認のトレードショーとして出展者数を厳選して開いていくとのことだが、今回の出展者数は前年同期比25%減の39ブランドとなった。1年前の出展者は52で、これに英国ファッション協会(BFC)による「ロンドンショールーム」の17ブランドやコレクティブショールームなどを合わせて総数では75ブランド在ったことを考えると半減という状況だ。モード系やアバンギャルドなブランドの出展先として、他のトレードショーには無い役割が求められており、再興が望まれると言っても過言ではないだろう。

 

 日本からはレザーウェアブランドの「エーレザー(A LEATHER)」とアクセサリーの「イエルズ(ieLS)」、テックウェアの「テクラー(TECLOR)」の3ブランドが出展した。なおトラノイは、今年9月に東京で「トラノイ東京」を開催する予定だ。

 

  • 岐阜のスーツメーカーが作る圧着縫製技術を使ったテック系ウェアの「テクラー」

  • アクセサリーメーカーのクークロワッサンが展開する「イエルズ」

  • 日本製にこだわるレザーウェアの「エーレザー」

取材・文:久保雅裕

 

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