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2023.11.21

【マーケットアイVol.3】アパレルバブルの街ロサンゼルス その魅力とは  

 アメリカのファッションキャピタル(ファッション業界の重要都市)と言えばニューヨーク。それが日本の業界の常識だ。しかし、近年世界のトップメゾンがロサンゼルス(以下LA)でショーを開くケースが増えてきている。かつては、ハリウッドとの関係性の強い、もしくは同地にゆかりのあるデザイナーが開催するぐらいだったが、様子が変わってきている。本記事では、LAと東京の2拠点生活を行ないクリエイティブ・ディレクターとして活躍する齊山陽子氏によるレポートとストリートスナップでLAの魅力を紐解く。

ファッションビジネスを創造する才能が集まる都市LA

写真:ストリートで、目立っていた三人組。真ん中の彼はまさにこのマーケットでグッチのミケーレ時代、ショーモデルにハントされたとか。まさにアメリカンドリームの代表だ。

 

 

 ファッション好きなあなたに「今、訪れたい都市」はLAだといったら、あなたは興味深そうに「なぜ?」と覗き込む。「ファッションウィークもないのよ」ともいいたいようだ。「ファッションウィークはなくともファッションディストリクトがあったし、ファブリックが強い」と言い返したかったがLAはもうそんな次元では語れない。ではその魅力をカルチャーと街の移り変わりと共に振り返ってみよう。

 

 そもそもLAの魅力に取り憑かれたのは8年前。残念ではあるが背景には地球温暖化は切り離せない。今まではそこそこのサーフブランドや海を意識したブランドが春夏のシーズンカタログをとる程度だったはずだ。それがLAに四季を持ち込んだ温暖化は重ね着という文化を後押しし、秋冬やクルーズ、期中も追加生産しはじめていた。

 

 「朝日を浴びながらサーフィンをし、スケボーで仲間と合流し、サンセットにスノボする。週末はジョシュアトゥリーの岩の上で満天の星でも見ようか」。COVID-19 の影響もあったのだろう。誰もが屋外のストリートの聖地で撮影をしはじめた。自然と調和する画はスタジオの撮影に疲れたモデルやフォトグラファーたちを魅了するのに時間はかからなかった。また昼間は暖かいという過ごしやすい気候は世界中のインフルエンサーすらも虜にしていたのである。滞在ビザが取りやすくなったことで、ビジネスをつくり、ワーキングクラスが成長。それらがLA、カルフォルニアの経済成長を支える。LA出身の人がボトムスを底上げしたことが大きい。ストライキやレイオフの存在は不安だが物価と比例しミドルクラスの幅は維持できている様に感じる。

アパレルバブルの街LAはどう作られたか

写真:車にいそいそと購入したものを詰め込む若者。両手に持ちきれないほど購入している。転売屋というよりも念願叶ってLAにきたという感じ。ウキウキが隠しきれない。

 

 

 
 アパレルバブルというと、消えてなくなる印象があるが、それは大きな誤解だ。なぜならLAはずっと原石だった。世界からあつまるトレンドの波、内側から湧き出す波が交互に繰り返しその原石を削り磨いて今、ただ注目されているにすぎない。
移民によって成り立っているアメリカ。なかでもLAはアジアン系が6割を持つ。ダイバーシティーの中、クリエーターが成長。また、ハリウッドの影響でアニメーター、ゲームアーティスト、ラッパー、フィルム、音楽などエンタメ産業が間近にあり、ブラック、ブラウン、アジアン、白人、エスニック、ジューイッシュのバランスがレストラン一つ、セレブ情報一つとっても世界中にミックスされた張り巡らしたアンテナをからまさにコンピューター的に生きた情報が吸い寄せられ、また新たなトレンドが解放されていく。

 

 それは積み重ねによるところだが、特に注目すべきは音楽と映画とレイカーズ、ドジャース。都会と自然、スノッブとナード、お金持ちと貧乏をストリートでミルフィーユする。それがLAなのだ。真逆のものが良く混ざる。お互いの主張をやるだけやり、時に認め合い突き放しバランスよくまとまる。これがファッション。

 

 ファッションウィークの様に「トップ→ダウン」の考えではなく、ストリートの力強いボトムスから上に突き上げる。「ファッションにファンタジーを持ち込むのは古いのか?」。夢があるLAメンタリティに少し共感している自分がいる。ファッション好きなあなたはもう気がついているだろう。自分の目で確かめてみたいと。

今訪れるべきLA最強エリア

写真:シークレットモードとY2Kを足して2で割った様な雰囲気のある彼女。女の子がフラッと一人で買い物をしている姿をみるのもLAならでは。

 

 川に流れる魚の様に勢いに乗って街をホッピングしながらファッションの街を自由に移動し、ショッピングしないか。そんなことをできる街はどこか東京に似ている。「運転が必要?」「それいつの時代?」そう言うと凄くびっくりされるのだが、車がなくとも今はLyftやUberもあるので気にせず回れる。街を移動することでスタイルはミックスされ横の繋がりをさらに広げ、街の消費は回転していく。

 14年ファッション業界にいて、旦那はLA出身ゲームとアートオタクのアメリカ人。彼と一緒にヒップホップのコンサートはシーズンに2回は行く。モードからストリートを見てきた私は「LAファッションやアートは何も考えず純粋に触れられる日常」と答えるだろう。アカデミックなファッションの歴史や堅苦しい合わせのルールやトレンドを一回深呼吸して忘れる。今の気分やバイブスを尊重してあなたが何を手に取り何色に染まるかを楽しんでほしい。「アメリカは物価が高いだけで行くのをやめる?」それ以上の価値があると断言できる。貨幣は創造価値。信じるか信じないかはあなた次第なのだ。

私が考える最強買い物ルートはこれ!

一日目はウエストハリウッドのゴールデンゾーンを押さえる 徒歩で4時間ぐらいのコース

フェアファックス(FAIRFAX)

 

 スケーターやラッパー、HIPHOPアーティストが観光客からプロまで入り混じる。昔に比べHIPHOPがメインストリームになったことにより、家族連れも良くみる。

 「HIPHOP=ギャング、女、金」と考える時代は終焉を迎え、彼らの話す内容もゲームやメンタルに関してなど私たちの生活とそれほど変わらない。小腹が空いたら「ゴールデンステイトバーガー(Golden state burger)」か、「プライムピザ(prime pizza)」へ。ラッパーのタイラー・ザ・クリエイター(Tyler The Creator)の店「ゴルフ ワン(Golf Wang)」や 「ブレインデッド(Brain Dead)」などストリートを代表する店が並ぶ。

 またフューチャーリスティック、クラブフェスファッションとして「ドールズキル(DOLLS KILL)」(https://www.dollskill.com/)が存在。サイバードッグを思いださせる出で立ちはブラックピンク(Black Pink) のジェニーらが着用しているいわばY2Kのブランド。

■ゴールデンステイトバーガー

住所:440 N Fairfax Ave, Los Angeles, CA 90036 アメリカ合衆国

■プライムピザ

住所:446 N Fairfax Ave, Los Angeles, CA 90036

■ゴルフワン

住所:350 N Fairfax Ave, Los Angeles, CA 90036

■ブレインデッド

住所:611 N Fairfax Ave, Los Angeles, CA 90036 アメリカ合衆国

メルローズ(MELROSE)

 

 「ウェイストランド(Wasteland)」などのヴィンテージショップを押さえておきたい。セレブやモデルが居住するハリウッドヒルズやウエストハリウッドに近いだけありモードやストリートを安く買いたかったら「ウェイストランド」。サンプルもあるし、未使用品もある。「アメリカンヴィンテージ」はパンクやロック、アメカジが好きな方に。またスタンドアップコメディの劇場、「メガシティワン(Mega city one)」や「ゴールデンアップルコミックス(Golden apple comics)」など老舗のコミックストアも健在だ。

 

 気分が変わって、スケートボードで、街を回りたくなったら「ブルックリンプロジェクト(Brooklyn project)」へ。丁寧に街に合ったボードを説明してくれる。このエリアを敢えて東京に例えるなら渋谷〜代官山。

■ウェイストランド

住所:7428 Melrose Ave, Los Angeles, CA 90046

ラ・ブレア(LA BREA)

 ラブレアといえば、倉庫が沢山あったことからその倉庫を居抜きにして家具屋が立ち並ぶ通りであった。この辺りはユダヤ系が多く住むこともあり、教会、学校、ビンテージからラグジュアリーまで家具屋がひしめきあう目黒のインテリア通りの様な存在だ。比較的安全なその場所に「ユニオン(Union)」が出来てからはユダヤ系にプラスし、ランボルギーニやフェラーリなど高級車に乗ったブラック系やアラブ系、アジアン系までもが来る様に。「ストーンアイランド(stone island)」 や「ステューシー(stussy)」 、「Y-3」などがある。

■ユニオン

住所:110 S La Brea Ave, Los Angeles, CA 90036

ビバリー(BEVERLY)

 

 

 ビバリーヒルズに続く道。メルローズとサードストリートの間の道というと分かりやすいか。

 

 まさか、フェアファックスにあった「シュプリーム(SUPREME)」がビバリーの画廊があった場所に移転して来るとは誰が予想したか。「シュプリーム」はラグジュアリーブランドとコラボをしたこと、VFグループに属したことで「シュプリーム」は俺たちの知っている昔とは違う」「ダサくなった」とか、「お金ばかり考えている」などという奴がいる。私は正直その手の話にウンザリしている。「シュプリーム LA」から3分の所に住んで変遷をみていた私から意見を言わせてほしい。「シュプリーム」は昔からMDの7割は超絶ダサかったし、だからこそ飛び抜けてクールなアイテムに人々は歓喜していたんだ。変化を恐れない。昔の様に転売屋もいるがコロナ以降LAの店の変化は圧倒的な家族連れの多さだ。スケートボードを不良ではなくカッコいいものであると押し上げた貢献は素晴らしいの一言しかない。

 

 ビバリーにギャラリーが点在し、「グロシエ(Glossier)」、「ヴィヴィアンウェストウッド(Vivian Westwood」) 、「イザベルマラン(Isabel Marant)」なども。トレーダージョーズもいいがセレブ御用達の「エレウァン(EREHWON)」へ。ラッキーならあなたもジジやベラハディットに会えるかも。

■シュプリーム ウエストハリウッド

住所:8801 Sunset Blvd, West Hollywood, CA 90069

■グロシエ

住所:8523 Melrose Ave, West Hollywood, CA 90069

二日目は西に位置する2エリアをLyftで効率良く

 

シルバーレイク(SILVER LAKE )

 サンセット通りをどちらに向かって歩くか。ファッション好きならもちろん週末にぶつけてフリーマーケットへ。サンセット通りを中心にヴィンテージストアが多く並ぶこの街はライブカルチャーやリッチパンクやラティーノ、フレンチカジュアルが少し混じるのが特徴だ。

 

 

ロスフェリズ(LOS FELIZ )

写真:彼らのロックでファビラスなオリジナルな世界観に引き込まれそう。彼らは会話を楽しむことをやめない。

 

 「LAでもっとも好きなヴィンテージショップはどこですか?」と聞かれたら「スクエアズヴィル(Squaresville)」を答える。余り教えたくない位に好きだ。狭い店内に映画シアターやショーの為のスパンコールが散りばめられた古着、お金が余り無い映画業界関係者の衣装、コメディアン衣装、ハリウッドスタジオ関係者のプロップなどなど、飽きさせない。その上、商品回転率が高いから次に行った時に買おうとしても、その巡り合わせはやってこない。

 私たちは何度この店でファッショニスタをみてきただろう。決して偉ぶることなく、純粋にどうこのコートと合うかどうかなど、お客の私に意見を求めるのである。「ファビラス!」というと満面の笑みだ。ヴィンテージシアターに隣接するその小さな通りに本屋、カフェ、セレクトショップなどが並ぶが今日は行きつけの「アルコーブ(Al cove)」でスムージーでも飲もうかな。
 

■スクエアズヴィル

住所:1800 N Vermont Ave, Los Angeles, CA 90027

三日目は離れた2エリアをUberでまとめて見る

アートディストリクト(ART DISTRICT)

写真:外壁の圧倒的な存在感に負けていない。バスローブすらオシャレにみせてしまう。これぞワンマイルウェア。

 

 リトルトーキョーは、日本人村的な感じで日本好きな外国人が多く集まる。その丁度裏手にあたるのが アートディストリクトだ。小さいギャラリーや小物屋/陶器などどことなくオリエンタルモードな雰囲気。またここのウォールアートから目が離せない。ランチは本場のアースカフェ(Urth Caffe)」へ。「ロサンゼルス現代美術館(MOCA)」でアート鑑賞もいい。夜はバーでビールを片手にレトロゲームを楽しもう。

 

 

アボットキニー(ABOTT KENNY)

写真:この街はクラシックカーが良く似合う。比較的年中暖かいLAならでは。まるで映画のロケ地のようだ。
 
 海のファッションが好きな人にはベニスにある、アボットキニー通りがオススメ。ビーチに似合うセレクトストアも充実。リモートワーカーじゃなくてもコーヒーショップ「インテリジェンシア(Intelligentsia)」へ。彼らの話を横で聞いているだけで、まるで一部になれるようだ。メンズのLAのオフィスカジュアルはここにいけばわかる。席が埋まりやすいので要注意だ。

■インテリジェンシア

住所:1331 Abbot Kinney Blvd, Venice, CA 90291 アメリカ合衆国

Text : Yoko Saiyama
Edit :apparel-web.com
Photograpber : Calvin Joel

 

クリエイティブ・ディレクター 齊山陽子


 LAと東京を行き来するクリエイティブ・ディレクター。アパレルブランド以外にもヘアケア、大手化粧品メーカー、映画、スポーツ、旅行、ホテル、飲食業態などの戦略パートナーとしてのマルチな活動キャリアがあり、現在はMDコンサルティング、商品企画、アパレルブランドのチームビルディング、業態が跨る新業態コンサルティング、空間演出の仕事がメイン。

 インディテックス(アパレル世界ランク現在No.1)の戦略パートナーとしての実績がメディアに取材されるなどメディアとブランド双方からの信頼が厚い。

ユーザー目線からのブランディング、特に現代必須といわれるライフスタイル分野とグローバリゼーションからくる未来への掛け合わせが強い。

カンヌ広告賞(現カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル)シルバー受賞歴や各種メディア露出や講演会も行なっている。

 

■アパログ
 

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