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2023.09.07

【2024春夏東京 ハイライト2】ノスタルジーや夢、原点回帰などがキーワードに

写真:左から「チノ」「ヨウヘイ オオノ」「ミューラル」「ヴィヴィアーノ」

 

 「楽天ファッションウィーク東京2024春夏(Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 S/S)」ではノスタルジーや夢、原点回帰などがキーワードになった。デザイナーの見た夢から、子供の頃の記憶、90年代、昔の映画、4億1600万年前~3億5900万年前の海洋生物や空飛ぶ円盤まで、表現は様々だが、過去を振り返りながら、未来を見つめ、次のデザインを作ろうとしている。

ミューラル(MURRAL)

「ミューラル」2024春夏コレクション ©JFWO

 

 村松祐輔と関口愛弓による「ミューラル」は国立競技場外苑門側2Fテラスで、夜の街と光を背景に「真夏の夜の夢」と呼べそうなコレクションを発表した。

 

 デザイナーの村松が「青年期に亡くした父と夢の中で出会ったことがきっかけになり、それは夢は醒めればなくなってしまうが、今回コレクションを作り続けることで、もう一度会いたいという思いを込めて作った」という今シーズン。コレクションは白いシャツとロングスカートや白のドレスなど、光を感じさせる白でスタート。

 

 光を放つゴールドのアクセサリーや風に吹かれて美しく揺れるドレス、花のモチーフを使った「ミューラル」らしいデザインや太陽のような赤のドレスなど、夜の街と対照的な、服やアクセサリーが生み出す光のきらめきと布の陰影が夢の世界に引き込んでいく。自然の光や咲き誇る花たちを思わせる、イエローの抽象柄が美しいドレスやコート、パンツが夜の街を背景に輝き、揺れる。

 

 ぼかした柄はアイスダイという手法で作られたもの。生地の上に氷を置き、その上に染料をふりかけ、職人が湿度や温度を調節しながら、氷を溶かし、染料と混じり、膨らんでいくオートクチュール的な手法で1点1点染められているという。

 

 また、シンプルなニットや黒の上に様々な色の糸を乗せた黒いドレスなど、リラックスしたムードのカジュアルやリアルクローズとともに、フィナーレには光るゴールドのアクセサリーを服のようにまとった黒のドレスが登場。

 

 アクセサリーはワイヤー1本1本を手で折り曲げ、ディップ溶液という液体に付けて1枚1枚花を作るディップフラワーという手法で製作。ショーピースのラスト2ルックは1000メートルくらいのワイヤーを使い、1000枚近くの花を作ることで現実だが現実ではないようなものに挑戦した。

 

 真夏の夜の夢と都会の夜のリアリティが共存したコレクション。村松は「夢がキーワードになっていたので、ミューラルの夢の世界に招待したいと思ってこの会場を選んだ。また、デザイン画を描くのではなく、アイスダイのドレスは群馬の桐生産地の工場に僕が見た夢、これからこうしたいという夢や砂浜、白い空などの言葉を伝え、夢のキャッチボール、言葉のキャッチボールで作った。今回は夢がテーマだったのでアクセサリーも現実に存在しない花を自分たちの手で作りたいと思った。僕たちの意識する自由な花を表現できたかなと思います」と話した。

ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)

「ヨウヘイ オオノ」2024春夏コレクション Courtesy of YOHEI OHNO

 

 「ヨウヘイ オオノ」は“ニュータウン ニューカー(NEW TOWN NEW CAR)”をテーマに、ノスタルジックな中に新しさを見出そうとしたコレクションを発表した。会場となったのは90年代に多くのコレクションが行われていたCARATO71。

 

 螺旋階段を下りて登場するモデルたち。登場したのは裾を楕円上に膨らませたミニドレス。白にグリーンとブルー、白と赤の線を乗せたミニドレスは60年代の宇宙ルックや「ピエール・カルダン(pierre cardin)」の円盤のようなフープを入れたドレスを思わせる大胆なデザインだが、実はラグビーボールをモチーフにしたもの。デザイナーの幼少期に田舎のスポーツだったものをイメージした。頭にはティアラを付けている。

 

 続くのは「ヨウヘイ オオノ」らしい、素材や柄をコラージュしたドレスや人形の目を付けたようなドレスなどのデザイン。ジャージをエレガントに仕上げたスポーツブランドとデザイナーのコラボレーションのようなデザインもどこかレトロなムード漂う。インソールを左右に付けたようなシューズもアクセントになっている。

 

 また、家族写真を使ったデザインとともに、郊外の「ニュータウン」での家族生活を象徴する父の車やテスラのcybertruckなど、車をモチーフにしたデザインも登場。車をモチーフにしたデザインといえば、ティエリー・ミュグレー(Thierry Mugler)もやっていたものだが、色の無い車の影のようなデザインは大胆で、オブジェのようでありながら、ミュグレーの大胆な色のアメ車やバイクとは全く対照的。思い出の中のように朧気でノスタルジックだ。

 

 「夢のあるコレクションが作りたかったが、夢イコール未来ではなく、デザイナーが生きてきた平成という時代、家族のアルバムの写真に写っていた個人的な過去に、希望や新しい未来があるんじゃないかと思った。ショーをしたのはかましてやろうと思ったから。希望が失われる状況の中で夢を与えたいと思った。ピュアなものをやってもいいんじゃないかと。日本のデザイナーとしてこれが日本のコレクションだというコレクションをしたかった」と大野陽平。

ア ベイシング エイプ(A BATHING APE)

「ア ベイシング エイプ」2024春夏コレクション Courtesy of A BATHING APE

 

 楽天グループによる日本のファッションブランド支援プロジェクト「バイアール(by R)」で発表した「ア ベイシング エイプ」。今年設立30周年を迎えるのを機に、日本国内ではこれまで行っていなかったランウェイショーを代々木第二体育館で開催した。

 

 ブランドのトレードマークである猿の顔を会場の中央に配置した今回。太鼓の音や提灯など、日本やアジアのムードでいっぱいの会場には、ロゴ付きの黒のスポーツウエアやカムフラージュ柄や猿の顔、炎などのモチーフをコラージュしたようなスカジャン、スウェット、スタジアムジャンパー、アメリカンフットボールウエア風のデザイン、デニム、Tシャツなど、レトロであり新しくもあるカジュアルウエアやストリートウエアが続く。

 

 「ア ベイシング エイプ」を中心に新しいものや時代を生み出し、ストリートファッションの首都とも言われた東京ならではのセンスで作られたデザイン。そこにアジアの若い感覚をプラス。より軽く、わかりやすく、再構築したようなデザイン。着せ替え人形の服もほうふつとさせるようなチューブトップやミニスカートなどもアクセントになっている。

 

 今ではラグジュアリーブランドやオートクチュールメゾンもコレクションで発表しているデザインやアイデアの原型にも見える形。ファッションの歴史の1ページとなっている90年代の東京が今でも新しく、世界に影響を与えていることを改めて感じさせたコレクション。Rakuten Fashionでの限定商品の販売やショーは世界中でのライブ配信も行った。

ヴィヴィアーノ(VIVIANO)

「ヴィヴィアーノ」2024春夏コレクション Courtesy of VIVIANO

 

 “美しい夏(Le Bel Été)”をテーマにした「ヴィヴィアーノ」。フランスの映画「ロシュフォールの恋人たち」からインスパイアされたコレクションを発表。

 

 ブランド名を書いたセーラーカラーやセーラーハットが目を引く白やシルバーのマリンルックでスタートした。セーラーカラーを付けたデニム、ブルーのチュールを重ねた海や風を思わせるドレスやスカート、アンスリウムの花をグラフィカルに組み合わせた鮮やかな総柄プリントドレスやセーラーハット。

 

 白いドレスやトップス、スカートに書かれた赤い文字のプリントは、劇中の「夏の日の歌」の歌詞。セーラーカラーを付けた白いシャツやブルーのチュールスカートに合わせた「ヴィヴィアーノ」らしいピンクのドレスやブルゾン、夏の日差しのようなイエローのコート、ピンクとイエローを重ねたドレスなど、美しい色はカトリーヌ・ドヌーヴの鮮やかすぎる黄色の服、シャーベットピンクの消火栓など、ジャック•ペランのセーラールックなどとともに、映画からインスピレーションを受けたもの。パステルからビビッドまで、多彩なカラーパレットを使い、劇中の印象的なシーンを表現した。

 デニムのジャケットやパンツにブルーのチュールをプラスしたものなど、デニム素材のクチュールや、男性モデルがドレスを着るシーンなども登場した。

 

 映画に登場するおとぎ世界のような美しい街並みと、デザイナー自身の記憶にある夏の思い出が混じり合い、物語と郷愁の間を行き来するような感覚で作り上げたという今回。1967年に作られた映画と自分の思い出というノスタルジックの中に夢を見出したコレクション。「服を着たら幸せになるコレクションを作った」とヴィヴィアーノ・スー。海外については「世界に向けたものづくりをしたい」と答えた。

ペイデフェ(pays des fées)

「ペイデフェ」2024春夏コレクション ©︎JFWO

 

 朝藤りむがデザインする「ペイデフェ」は「underwater(水中)」と「underground(アンダーグラウンド)」からの造語“Under Wateround(現代を 「泳ぐ」ために)”をテーマに、安部公房の短編「水中都市」とデボン紀の奇妙な海洋生物たちからインスパイアされたコレクション。

 

 ショーが行われたのは、国指定重要文化財である 旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設。下水を地下のポンプ井から吸い上げるポンプが10台設置された会場に登場したのは、泡のような白のジャケットとスカート。ジャケットには水の流れのようなフリルが付いている。

 

 水中の植物のようなグリーンのリボンや貝殻のような装飾を施したドレス、4億1600万年前~3億5900万年前の海洋生物をプリントしたシャツとオールインワン。鮮やかなブルーのドレスやジャケット、パンツにもデボン紀の奇海洋生物と透けるピンクのフリルや白いメッシュが付いている。

 

 アシメトリーなシャツからは水の中に沈んだ街のような風景が描かれた。髪の毛も水中に生えた植物のように立ち上がったり、水に濡れたように張り付いたりしている。そして、ファーのような素材を使ったジャケットとパンツ、マーメードドレス。ラストに登場した水の中に生えた植物のようなドレスには、水中に差し込む光のように胸と背中にいくつもの鏡が付いていた。

 

 サステナビリティや自然の生命観を、全く独自のアプローチで、表現し、リアルクローズに仕上げたようにも見えるコレクション。何人ものデザイナーがノスタルジックな思い出からインスパイアされる中で、4億1600万年前の海洋生物まで行きつくのは朝藤りむならではと言えるが、これまでのようなダークなムードや猟奇的なまでの強さではなく、軽く、肩の力が抜けたように見えるのは、時代性なのか、気分なのか、それとも新しいディレクションなのか。

サポート サーフェス(support surface)

「サポート サーフェス2024春夏コレクション ©︎JFWO

 

 研壁宣男がデザインする「サポート サーフェス」。“大胆さと洗練(Boldness and Sophistication)”をテーマに、今シーズンも無いものを作るという、ものづくりの原点を追求した。

 

 ファーストシーンに登場したシャツとワイドパンツ。一目で「サポート サーフェス」とわかるある意味不変のスタイルだが、これまでよりもアームホールが大きくたっぷりとしていて、パンツもボリュームがある。

 

 ストライプのシャツと白いパンツ、大きく広がるストライプのワンピース、スカートなども、これまでに比べて分量や広がりがあり、袖のしわの重なりやフリル、美しいドレープの作る花や波のようなグラフィックも不思議な美しさを生み出す。

 

 花とストライプをつなげた柄のシリーズも袖が大きく、裾が広がり風をはらむ。ブルーのシャツや茶色のワンピースはワークウエアのようにボタンで袖をまくり上げた。デニムのコートやワイドパンツもステッチをアクセントにするとともにドレスのように裾を広げている。また、部分的にメッシユを使ったシャツやニットも涼しげなムード。

 

 ファーのようなムードのシャギーな素材を使った白のビッグなシャツとスカートとともに現れた、ブラックドレスも風をはらむ大きな袖や広がるシルエットとともに、スポーツウエアのようにメッシユや透ける素材をサイドや背中にも使い、風を通す。

 

 今シーズンは接触冷感素材も使ったという。ブランドらしさと新しさや今求められる機能性などを両立したデザイン。「生地を大胆に使いたかったし、大胆に使っても洗練された感じにしたかった。アームホールから風が循環するようにし、ヘムラインも広げたのは酷暑も影響しているが、やっていないバランスにしたかったから。デザイン画ではなく、ドレーピングしながら作っているので一般の人にはわからないレベルかもしれないが、自分の中で、これはやったなと思うものは敢えて避けて、作らないようにしている。変形ではなく原型レベルでの新鮮さを追求している」と研壁デザイナーは話した。

チノ(CINOH)

「チノ」2024春夏コレクション Courtesy of CINOH

 

 「デザインをする中で、機能として取り入れたものがデザインになり、ディテールやシェイプをデザインすることで機能性が追加されるなど、本来の目的と異なる結果からうまれた曖昧さ」を打ち出したコレクション。

 

 調和させないというコンセプトにこだわり、会場でのバンドの生演奏もリハーサルと同じにしないようにしたという今シーズン。ウィメンズとメンズの両方のコレクションを発表した。

 

 光るヌードカラーのブラトップや体の線を見せるトップスと同じ色のロングスカート、ヌードカラーのジレとパンツ、コートやワンピース、ペイズリー柄のシャツ。そして、ブルーから白、オレンジへと変わっていくTシャツや、袖を取り外せるワンピース。そして、オレンジとイエローなど、紐の色が左右で違う、「オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)」とのコラボレーションスニーカー。女性モデルが着ているボーダーは、腰の細さを強調する。

 

 10周年、ショー当日がデザイナーの誕生日だったという今回。茅野デザイナーは「今年1月からコロナ以前にやっていたパリでの展示会を復活できたが、海外については、もう1度1年目として、これから5年、10年と続けていきたい。東京でのショーについては、ショーをやりたいというより、プロモーションとして効果的であるかということで考えていますが、今回久しぶりにやって、たくさんのお客様に来場してもらえたので、そういう意味では必要と言えるのかもしれません」と語った。

セイヴソン(Seivson)

「セイヴソン」2024春夏コレクション Courtesy of Seivson

 

 ヅゥチン シンによる「セイヴソン」は、“secret secret secret”をテーマに、オフィスで働く女性の魅力的なオーラ、特にプロフェッショナルな女性のカリスマ性からインスピレーションを得たコレクションを見せた。

 

 肌を見せるカットワーク、脱構築、レイヤードデザインなど、アイコン的なディテールを使い、テーラードスーツやトレンチコート、ランジェリーまで、オフィスのシークレットの要素を取り込んだ今回。ヒカリエホールAの中央を覆う薄いベールを通って現れるモデルたち。

 

 セクシーな黒のランジェリーやボディコンシャスドレスを思わせるトップスとミリタリーテーストのボトムス、ショートトレンチコートとウエストを見せたミニ、ピンクや黒のハードなボディコンシャスや力強いミリタリーテーストのアイテムにはレースやドレープ、プリーツをプラス。女性の体の美しさやセクシーさと働く女性の強さなど相反する要素が共存。

 

 女性の二面性を強調し、揺れ動きながら、自由にファッションを楽しんだようなリアルでストレートなコレクション。また、コレクションに数多く登場したストライプも紙のシュレッダーを連想させ、隠された秘密を暗喩しているという。

ハイドサイン(HIDESIGN)

「ハイドサイン」2024春夏コレクション ©︎JFWO

 

 職場の温度管理、熱や炎のリスク、静電気の帯電管理など、労働環境を分析することで機能面での最適化を導き出し、働く人に最適なユニフォームを提供してきた「ハイドサイン」。企業制服では表現できない生活に寄り添ったウエア、ホワイトカラーとブルーカラーのどちらにも属さない多様なライフワークを快適にするためのワードローブを提案するため、2023春夏からコレクションを発表している。

 

 3シーズン目の今回は、“グレーカラー3”をテーマに、約10分のプレゼンテーションと質疑応答、展示でコレクションを発表。人と違う体型のための服、ショッピングのためのコート、冷たい水で体を冷やすボディバッグ、ショートジャケットがポンチョに変化するデザイン、前身頃の腹部に電動式ファンを、フロントにリモコンをそれぞれ配置することで車いすユーザーが簡単に操作できるようにしたファン付ウエア、同ブランドのベーシックウエアである用途を明確にしたポケット提案など、代表的なデザインを、構造やデザインの狙いを説明しながら紹介した。

 

 「イッセイ ミヤケ(Issey Miyake)」が80年代から90年代にコレクションで発表したバッグがコートに変わるデザインやバッグのようなポケットがたくさん付いたジャケット、養蜂場の作業着を思わせるフード付きメッシュコートなど、作業着の機能をファッションに変えたデザインは、ライフウエアやワークウエアブランドなどで現在も使われている。環境を分析し、最適化を導き出したウエアはコロナの中での長時間家で過ごす生活を経て、デザインだけでなく快適性やリラックス、機能性がこれまで以上に求められている今にはぴったり。

 

 同ブランドではライフワークに特化したユニフォームのカスタムオーダーをオンラインで受注するビジョンも掲げていて、必要な機能をパーソナライズし、個々のニーズに合ったファッションを提供していきたいとしている。

ミントデザインズ(mintdesigns)

「ミントデザインズ」2024春夏コレクション Courtesy of mintdesigns

 

 今年4月、日本ファッション・ウィーク推進機構が昨年発足した「JFW ブランドサポートプログラム」のデジタル部門「JFW DIGITAL GRAND PRIX 2023 A/W」のグランプリに選ばれた「ミントデザインズ」。今シーズンもオンライン配信でコレクションを発表した。

 

 架空の少年少女が所属する“MINTDESIGNS SPACE SHIP CLUB”をテーマにした今回。インビテーションに書かれていたのは、「第二次世界大戦後、 ウィンストン・チャーチルの要請で設立された英国国防省のUFOデスクは、60年以上にわたって、観察力のある、 時には想像力のある一般市民から寄せられた空中の奇妙な物体の目撃情報と記録を照合してきた。そのUFOファイルには、手紙や公式報告書だけでなく、関心を持った市民から送られてきた。また不思議な目撃情報の写真や図面、絵画までが収められていた。2007年、ついに英国国防省はUFO調査に関する質問を何十年も拒んできたが、現存するファイルをすべて公開することを決定したことを発表した。そして、今ここに人びとが今まで抱いていた恐怖心や好奇心からきた想像力を受け継ぎより深く究明すべく“ミントデザインズ スペースシップクラブ”が発足された・・・」というストーリー。

 

 無観客ショーのような動画の中で、SFコミックの表紙から着想を得た柄や、星座や未確認飛行物体までを線画で表現したものアンティークの天体図柄、立ち入り禁止の金網、いかにも怪しそうな「レントゲン眼鏡」の広告ビジュアルなどをモチーフに使い、懐かしい未来像、かつて人々が夢見た宇宙への憧れや恐れを、エレガントかつユーモラスに表現したコレクションを発表した。

 

 リリースの最後には「昔驚異と感じられていたものが、現代の視点では可愛らしく滑稽なもの見えることがあります。もしかしたら、今真剣に議論されている超常現象や社会問題も、将来こんな風に見える時が来るのかもしれません。大人になっても変わらない好奇心や想像力を」と書かれていた。

アブランクページ / アズ イヤーズ ゴーズ バイズ アブランクページ × エドウィン x ニシカワケオリ ラロパイブン プワデト(ablankpage. / AS YEARS GOES BYS. ABLANKPAGE X EDWIN X NISHIKAWA KEORI)

「アブランクページ」2024春夏コレクション ©JFWO

 

 今シーズンはデザイナー・ラロパイブンの出身地であるタイの大使館と共にコレクションを発表。30分間、実際のモデルとデザイナーの母国のコンビニエンスストアをイメージしたという、商品を積み上げたような展示オブジェを自由にみられるプレゼンテーション形式でコレクションを見せた。

 

 オーバーサイズのデザインのレイヤード、メタリックなコートとパンツ、商品化できないデニムや素材を使用したデザイン。非構築的なデザインの組み合わせ。コンビニエンスストアにあるスナック菓子やジャンクフードの袋を思わせる大胆な柄。

 

 フォーマルウエアを研究し、サステナビリティも継続しているが、そのオーバーサイズや大胆な色とインパクトのある柄はSNSの時代にフィットしているかもしれない。

 

 

取材・文:樋口真一

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