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2018.04.25
ポップアップショップ10年 エクスペリエンスが求められる時代へ
私がポップアップショップ(期間限定ショップ)について初めてブログでお伝えしたのは、2008年頃。米小売り店の「ターゲット(TARGET)」が、NYマンハッタンの4カ所で4日間にわたり開催した「ブルズアイ・ボッデガズ(Bullseye Bodegas)」についてだったと記憶しています。「ジョン・デリアン(John Derian)」や「トーマス・オーブライアン(Thomas O’Brien)」などのインテリア雑貨やホームグッズのブランドが参加。ファッションブランドからは「アニヤ ハインドマーチ(Anya Hindmarch)」など22デザイナーがコラボレートし、限定商品を販売したのです。2011年秋には、日本の「マウジー(MOUSSY)」も、ミートパッキング地区でポップアップショップを開催。その5年後の2016年にはNYソーホーに路面店を出店しました。
NYにオープンした「マウジー」ポップアップストア(2011年)
気付けば、このニューヨークで開催されるポップアップショップをチェックしに行くようになってから10年が経ったことになり、現在はその形も進化していることがわかります。
リテールスペースにおいても、今では「長期賃貸契約でなければ」という考えだけでなく、3~5年間リースしたら、その後は、まるでウェブサイトをリニューアルするかのような感覚で店舗を移転する、というのも不思議ではない時代になりました。また、マンハッタンでも最近よく見かけるのが、「ポップアップスペース貸すよ!」のサイン。最近ではファッションやビューティー、フードなど、さまざまな業種のポップアップショップが頻繁に開催されるようになりました。
新商品の発売告知はポップアップが楽しい!
「サンデー・ライリー」ポップアップイベントの模様
上の写真は、「サンデー・ライリー(SUNDAY RILEY)」というコスメブランドのもの。超人気のスキンケア商品をいくつも展開する同ブランドから、待望のファンデーションが発売されるということで、ポップアップショップが開催されました。入り口を抜けると、今回のファンデーションのコンセプトを伝えるメッセージや商品が目に飛び込みます。。
まずは商品について学び、店内奥へと進むと、楽しさ100倍のエクスペリエンススペースへ。最近の大がかりのポップアップショップは、映像の形でも“インスタ映え”する演出が多いのです。「サンデー・ライリー」のポップアップでも、公園で見るような滑り台を設置し、お客さんが滑る瞬間を映像でダイナミックにとらえることができる工夫や、鏡を巧みに使ったフォトブースなどがあり、「こういうアイディアがあったか!」とVMDの勉強になるポイントが多数ありました。
誰が訪れても楽しめる“エクスペリエンス”と、コスメ好きなら逃したくない、いち早く発売商品の質感を試せる“チャンス”があることが、このポップアップストアの魅力でしょう。イベントでは、メイクアップアーティストが、20色のファンデーションの中から、その人に合った色を選んでくれます。そして、ファンデーションを独占販売する「セフォラ(Sephora)」で買うことができるように、選んでくれたファンデーションの品番が書かれた紙を渡してくれました。
ポップアップでは、商品の販売は行われていませんでしたが、人気スキンケア商品のサンプルを配布するサービスがありました。帰宅した後も、ブランドのことを思い出してもらえるような工夫だといえるでしょう。私もサンプルをいただきましたが、使ってみて、よければフルサイズを買ってみようかと、そんな気になりました。
業態が変わればエクスペリエンスも変わる
「M&M」ポップアップイベント
その翌週に同じ場所で行われたのが、日本でも馴染みのあるチョコレート「M&M」のポップアップです。新たに発売された3つのフレーバー「クランチーエスプレッソ」「クランチーミント」「クランチーラズベリー」を紹介するイベントでは、それぞれのフレーバーをイメージするエクスペリンスが用意されていました。
“ラズベリー”のエリアでは、大きなクッションがいくつも積み重ねられており、その上に座ったり、乗っかって飛び跳ねたりできます。“エスプレッソ”のエリアには、巨大なエスプレッソマシンを設置。ソファーに座って写真を撮るもよし、エスプレッソマシンに付けられた階段を上がり、建物の屋上にいるような感覚で撮影するのもよし。巨大なコーヒーカップの中にはクッションが詰められ、カップの中に座ってみたり、添えられた大きなスプーンで遊ぶことができ、1つのエリアにSNSでシェアしたくなるような工夫が数多く施されていました。
“ミント”のエリアでは、ドーム型スペースにサイコロ状のスポンジが詰められた、スポンジの“プール”が出現。その中に埋もれながら、子供時代に逆戻りしたような気分を楽しみました。また、各エリアには、試食用の入れ物が用意され、自由に試食することができたほか、小さな袋に入った各フレーバーの試食品も配布していました。
さまざまな体験を終えた後は、出口付近に用意されたタブレットで、どのフレーバーが好みだったか投票できる仕組み。さり気なくデータを集めるところは抜かりない取り組みだな、とどこかで感じつつも、楽しい体験をすれば、積極的に投票したくなりますよね。
これくらい大きな規模のイベントは、どんなブランドでもなかなかできるわけではありませんが、消費者とのエンゲージの築き方のインスピレーションにもなりますし、ポップアップショップはVMDのヒントに溢れていることには間違いありません。
■インスタグラム
「SUNDAY RILEY」
「M&M」
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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