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2015.08.26
NYブルックリンで開催!人気のイノベーションイベントから学ぶ、未来のファッションの形
今年6月、「Northside Festival(ノースサイドフェスティバル)」という、音楽、フィルム、そしてイノベーション(IT)が混合されたイベントへ参加してきました。開催地はニューヨーク・ブルックリンのウィリアムズバーグというエリア。「J.crew(ジェイクルー)」や「Madewell(メイドウェル)」、最近だと、「Steven Alan Home(スティーブンアランホーム)」もストアをオープンしたブルックリンの中でも人気のエリアで、若者たちに人気のスーパー「Trader Joe’s(トーイダージョーズ)」が出店することでも話題。マンハッタンからは地下鉄でLトレインに乗り、ベッドフォード駅で降ります。
オシャレなカフェをいくつも通り越し、私が参加したイノベーションのイベント会場は、日本のニューヨーク特集の雑誌でも幾度となく紹介されているブティックホテルのWythe Hotel(ワイスホテル)。ホテルを中心に1ブロック圏内にイベントの会場が準備され、ファッションやメディア、それにまつわるITサービス、ソーシャルメディア、また、街がどのようにテクノロジーと融合し変化しているのかなど、様々な視点からトークイベントが行われました。
New Style of Retail―雑誌のような視点&ギャラリー感覚でブランドの“ストーリー”を伝える
-Rachel Shechtmanによるテーマ : Creating Physical Experiences that Matters –
マンハッタンのチェルシーにある「STORY(ストーリー)」というコンセプトショップ。“雑誌のような視点で、ギャラリーのように定期的にストアで展開される商品が変わるストア”を創設したRachel Shechtman(レイチェル・シェットマン)。創設した2002年頃、Rachel Shechtmanは、これだけテクノロジーの世界は進化し続けているのに、なぜリテールの世界は変化がないのだろうと思い、これまでになかった形式のストア「STORY」を始めました。テーマにそって展開されるストアは4週間から8週間のみの期間限定。次のコンセプトのストアの準備のため一旦閉店し、常にフレッシュさを感じさせるリテールを毎回オープンしています。ひとつのコンセプトストアがオープンする際には必ずスポンサー企業があります。雑誌でいうと、広告掲載企業のような存在です。
店内にて撮影- STORY style tech –
(左)セルフィーミラー(右)衣料品にもなっているウェアラブル商品
(店内で撮影)
例えば以前、ファッションウィーク中にオープンした、テクノロジーをテーマにしたコンセプトショップ「style tech」では、インテル社がスポンサーとなっていました。店内にはガジェット類からウェアラブルのアパレルまであり、また、3Dプリンターやユニークなセルフィーミラーが設置され、自由に写真を撮れるサービスも。ただ買い物をするだけでなく、なにか特別な“体験”も出来るストア作りがなされています。 2014年のクリスマスホリデーシーズンには、量販店の「Target(ターゲット)」がスポンサーとなり、ターゲットで展開される商品を中心に、ホリデーギフトに最適な他ブランドをミックス。キュレートとしたホリデーショップが開かれ、話題を集めました。 以前インターネットリテールからブリック&モルタルへと進出し、成功を成しているBONOBOS(ボノボス)創設者のアンディー・ダンも、人が人へと伝えたくなるストーリーがブランドには重要だと言っていたことを思い出します。 この「STORY」という新たな形のストアは、ストアのコンセプト自体にもストーリー性があり、また展開される商品ひとつひとつにも物語を感じる。こうした“その場所(お店)”に行ってみたいと思わせ、飽きさせることなく周期的にストアの内容が変わるコンセプトショップというのが、この「STORY」の面白いところだ。 ちなみに創設者のRachel Shechtmanは、雑誌「FAST COMPANY(ファストカンパニー)」で、2012年度の「ビジネス界の最もクリエイティブな100人のひとり」に選ばれている。
Millenials―ミレニアル世代を掴むストレートなメッセージ
講演内容- Marketing to the Next Generation –
(左から)司会者、アートから政治までを網羅できるニュースサイト・Mic Inc.(マイク)担当者、ユーザーの関心に合わせてコンテンツを発見してくれるサービス・StumbleUpon Inc.のANNE GHERINI、デジタルエージェンシー・HugeのYASHODA SAMPATH、ペプシコーラ・Pepsico Inc.の担当者
やはり大きな関心といえば「ミレニアル世代」へ向けていかにマーケティングするかです。 ミレニアル世代とは18歳から35歳くらいの年齢の人たちを指します。一概にミレニアル世代とはこうだ!という事は言えないのですが、そもそもインターネットやモバイルなどテクノロジーの進化と共に成長しているこの年代の人たちは、これまでと違った学習力を持ち、いろいろな意味でもエデュケートされています。
ミレニアル世代とは、単に“若者”を指すわけではありません。と言うのも、35歳であれば結婚をし、家庭を持っている人も多いからです。そのため、関心のある商品、物の買い方という意味でも幅広いわけです。移り気が激しいと見られがちなミレニアル世代ですが、決して悪い意味合いではないのです。昔と違って選択肢が多い今の時代、商品やコンテンツ、サービスに惹きつけられる魅力を感じなければ、単純に次へと移っていくという自然な行動をしています。すなわち今後、ブランドやリテールがミレニアル世代を顧客・ユーザーとしてがっちりと掴み、生き残っていくためには、“コンテンツ”マーケティングがキーとなるでしょう。
「コンテンツ」はブログなどの記事でもあり、またソーシャルネットワークにシェアされる画像や映像でもあります。ぐっと惹きつける、共感させるビジュアル。初めから商品や企業のサービスのプロモーションであっても、その事は隠さずストレートにその情報をオリジナル性ある言葉で伝える。作り込み過ぎたメッセージは逆効果となり、マイナスなイメージだけが広がってしまいます。発信する内容がもろに宣伝だって良いです。ただ、作り込み過ぎたわざとらしさは特にこの世代は嫌う性質のようです。ただ考えてみると、それはミレニアル世代だけではないように感じます。私の様なベビーブーマー世代だって、どこかと似たり寄ったりなデザインの服よりかは、DNAがしっかりと揺るがないブランドに魅力を感じますし、よりオーガニックな情報を発信しているコンテンツを読みたいなと感じます。
Kite―時事からファッションまで ニュースはモバイルで読破
イベント中に大々的に紹介されていたKite広告
以前ならウェブサイトを作ろうと思った時に、ブラウザ上で読みやすいデザインを優先してきたでしょう。しかし、スマートフォンやタブレットの普及により、今は“Mobile First(モバイル優先)”で物事が考えられる時代になりました。 企業サイトにせよ、Eコーマスにせよ、はたまたニュースサイトやブログにせよ、いかにモバイルで確認しやすいか、読みやすいのかが重要と考えられています。
ベビーブーマー世代などは、“インターネット世代”。パソコンを購入し、もっぱらネットサーフィンが当たり前でした。しかしミレニアル世代は“モバイル世代”。検索をするにも、メールをするにも、ニュースやブログ、SNSをするにもモバイルな訳です。しかしすでにそれはミレニアル世代だけでなく、他世代にも影響を与え、そうした人たちを“Millennial Mind-set Consumer”などと米国では言うそうです。
参加したノースサイドのイベントでは新たなミレニアル世代の集客を意識したニュースアプリ「Kite(カイト)」のローンチイベントも開催されました。カイトはメジャーな新聞からファッションサイトまで簡単にアクセスすることができるアプリ。また、ソーシャルメディア性を持たせたサービスでは、好きなライターをフォローするといった機能もあります。私たちは日頃から好きなブログサイトやインスタグラムのアカウントなどをフォローすることが、すでに当たり前になっていますよね。そんな感覚でニュースやコラムを書くライターをフォローするといった感じです。
これまでこのコラムで、ファッションブランドやリテールが様々な形でテクノロジーと融合したサービスやコンテンツ発信について紹介をしてきました。このコラムを2012年より始めたきっかけには、ファッション業界がテクノロジーの取り入れを見る頻度が多くなったことにあります。あれから3年がすでに経ちますが、こんなサービスあったら良いのにということがEコマース上でもストアでも、どんどん実現されています。これからまた3年、一体どのような事がオンライン、オフラインで体験出来るようになるのか、今後も追いかけていきたいと思います。
■Northside Festival(2015年6月8~14日開催)
http://www.northsidefestival.com/home
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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