PICK UP

2015.08.27

【インタビュー】キッズ展「プレイタイム」グローバル成長のカギ――創始者セバスチャン・ドゥ・ユッテン氏

セバスチャン・ドゥ・ユッテン氏
イベントスペースに展示された人形作家ヌイコさんの作品の前で

 子どもとマタニティー関連用品の国際合同展「第13回プレイタイム東京」(8月25~27日)の開催にあわせ、プレイタイム創設者のセバスチャン・ドゥ・ユッテン氏が来日した。2007年ファミリービジネスとして地元パリでスタートした同展は現在、東京展、NY展を含め850ブランドが出展する国際トレードショーに成長。2014年には業界初のオンライン展示会「プレイオロジー」を発表した。グローバルかつ加速度的に事業を広げるプレイタイムの魅力とビジョンについて聞いた。

 

 

■アートへのこだわり

 

―「プレイタイム東京」も今回で13回目を迎えた。

 東京展は、パリ展から約2年ほど遅れてスタートし、爆発的な成長を見せているパリ展に比べると緩やかだが、着実に成長している。特に2月の前回展では、こども向けライフスタイルグッズの活動体「KODOMONO」とコラボレーションした「プレイタイム ミーツ コドモノ」を初めて企画し、非常に好評だった。規模が大きくなっているだけでなく、内容もさらに充実してきている。

 

―プレイタイムを始めた経緯は?

 もともと母とともにレディスウエアの展示会を開いていたが、その一部だった子ども服の展示を独立させたのが、プレイタイムの始まりだ。その後、さらに様々な商品を打ち出し、よりグローバルに発展させたいという思いから、子どもだけでなく、ベビーやマタニティーにも対象を広げ、アパレルから雑貨、ギフト、デザイン・オブジェ、育児用品まで扱うようになった。2007年のパリ展1回目は45ブランドからスタートしたが、2回目は90ブランドに倍増した。その次は130ブランド、と倍々に伸び、前回は470ブランドが出展する規模にまで成長した。

 

―プレイタイムの強みは?

 子ども服だけではなく、子どもやベビー、マタニティに関わるすべてのものを揃えた展示会であるということ。2つめは、セレクティフ、つまりプレイタイムが厳選したブランドだけが出展できるということ。そして3つめは、買い付けだけを行う単なるビジネスの場ではなく、次のトレンドを示唆する場であるということ。会場の各所に設置したトレンドスペースは、トレンドテーマに沿ったアーティスト作品を展示している。来場した人たちが、トレンドを肌で感じ、インスパイアされ、様々な意見を交換してもらえるようなアーティスティックな空間として提案している。

 

―東京展に設置する機材やパーツなども、すべてパリから持ち込んでいると聞いた。アートに対するこだわりが会場全体の設えにも感じる。

 モードとアートはとても近い関係にあり、お互いに影響しあって発展するもの。モードの場には、インスピレーションを感じる要素が不可欠だと考えている。

 

 共同経営者の姉(マリー・チャプスカ)がアーティスティック・ディレクターとして東京、NYを含むすべての展示会を統括していて、シーズントレンドや展示のコンセプトについてもパリで決定している。ただ、トレンドスペースで展示する作品については、日本、アメリカと、開催する国のアーティストにそれぞれ依頼しているのが特徴だ。

 

「第13回プレイタイム東京」(8月25~27日)の会場

■プレイオロジーは子ども&マタニティー以外にも分野拡

 

―業界初のオンライン展示会「プレイオロジー」を2014年にスタートした。

 長年をかけ構想してきたプロジェクトだ。きっかけは、プレイタイムに出展している多くのブランドがもっとインターナショナルにバイヤーにアピールする場があればと感じたこと。特に、まだ規模が小さな若手のブランドにとって、世界のマーケットにアピールする場は非常に少ない。そうしたブランドに対し、ビジネスチャンスを提供する場を作りたかった。

 

 プレイオロジー立ち上げのもう1つの理由は、オーダーに関する情報を一極化し、ビジネスを効率的に取りまとめる場が必要だと感じたからだ。バイヤーにとって、3日間の会期の中ですべての出展者を見て、買い付け計画を立てるのは、物理的に難しい。実際は、会場では出展者の資料だけを手に入れ、会期後にコンタクトを取ったりオーダーするというケースが多い。

 

 プレイタイムでは出展ブランドを一通りチェックし、プレイオロジーでは、冷静に時間をかけながらオーダーができるという仕組みだ。プレイオロジーの情報は、展示会で得た情報と一元化されていて、かつ簡単な手続きだけでオーダーができるため、作業時間の短縮や業務の効率化を図ることも期待できる。

 

 現在プレイオロジーに参加しているのは、約100社。プレイタイムに出展しているブランドもあれば、プレイオロジーに絞って参加しているブランドもある。

 

 

―プレイオロジーの位置づけは?リアルな展示会であるプレイタイムとは、また違った事業展開を見せることはあるか?

 

 シンプルで使いやすく、効率的に行うためのツールであることに特化して開発しているので、トレンドスペースのようなコンテンツは今は掲載していない。とはいいつつ、単なるツールに終わるのではなく、サイトのデザインにアーティスト作品を採用するなど、“見ても楽しい”というエスプリは、プレイタイムと共通している。

 

 またプレイオロジーは、プレイタイムのコピーでもなく、対抗するものではない。プレイタイムに見られるモードの世界を違う形でサポートするものであり、補完的な関係にあることは今後も変わりはない。

 

 1つニュースをあげるならば、今年年末には、子ども服やマタニティーに加えて、レディス、メンズ、デコの分野にまで取り扱うブランドの範囲を広げる予定だ。将来的には、モードに関わるすべての分野をグローバルにカバーするシステムにしたいと考えている。

 

 

■成長を支えるファミリー型ビジネス

 

―自社で開発している強みは大きい。

 

 私たちはとても小さい規模で運営していて、現在パリは12人、東京は3人、そしてニューヨークが2人という体制。最初のパリ展はわずか3人でスタートしたため、何でも自分たちでやらなければならなかったし、予算も限られている(笑)。確かに最初は私自身がいちからサイトを作ったが、今はもちろん専門家たちが開発している。ただし全員、社内に作った開発部門のメンバーだ。さらに姉のマリーがアーティスティックディレクターとして、アートやデザインについてすべて指揮をとっている。

 

 私たちの会社は小さく、ファミリーみんなが手づくりでやっている感覚は今でも変わらない。私たちのウェブサイトでは、会社の歴史とともに、ビジネスに関わってきた兄弟や母親のことも紹介している。人間らしい血の通ったビジネスを行ってきたことを感じてもらえると思うし、この会社のコンセプトや歴史にもそれが反映されていると思う。

 

―将来的なビジョンは?

 

 プレイオロジーについては、レディス、メンズ、デコの分野を加え、将来的には800~1,000ブランドまで参加ブランドを増やすのが目標だ。もちろん、私たちのセレクションに適ったブランドだけが出展する。これは変わらない。

 

 さらに10月には商品写真を360度撮影できるシステムをを導入する。オフィスも移転し、社内で撮影業務を行うセクションも作る。

 

 

―東京も同じような撮影システムを取り入れる予定はあるか?

 

 東京はまだ規模が小さいので、今すぐには難しいと思うが、プレイオロジーもプレイタイムとともに事業を拡大している。将来的には可能性はある。

 

取材:戸田美子

メールマガジン登録