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2023.03.12

【2023秋冬パリ ハイライト2】ビッグブランドとインディペンデントが織りなすコントラスト

 パリコレクション会期後半は、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「シャネル(CHANEL)」、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」などのビッグブランドが注目を集める中、話題となった新任デザイナーによる「アン ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)」や、10年以上振りの復活となった「マルティーヌ シットボン(Martine Sitbon)」等がコレクションを発表した。

 

 

 

イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)

「イッセイ ミヤケ」2023秋冬コレクション

 

 “The Square and Beyond”と題し、画布や譜面、布地など四角い型から物作りが始まる習慣を見つめ直し、独自のフォルムを生み出すことに挑戦した近藤悟史による「イッセイ ミヤケ」。シャトレ劇場を会場としたが、観客席は敢えて使わずに舞台と舞台裏のスペースに客席を新たに設置してショーを行った。BGMは「Trio SR9」によるマリンバの生演奏。

 

 ひさしを思わせキャノピーのシリーズは、左右に角張る立体的な構造が特徴的。スクエア・スキームのシリーズは、四角く編まれたニットを組み込んだもので、不安定さとアンバランスさが一つの個性となり、不思議なバランス感が創出される。

 

 チェックが変化する様を表現したリズム・チェックのシリーズは、加工の収縮によって立体感が生まれ、一枚の布から作られていることがにわかに信じがたい仕上がりとなっている。これまでのプリーツ作品を思わせるカウンターポイントのシリーズは、前後の組織の違いによって不規則なフォルムを描く無縫製ニットのシリーズ。うねりを感じさせる造形とストライプが目を楽しませてくれた。

 

 絵画の四角い画布をイメージした、無縫製ニットのシェイプド・キャンヴァスのシリーズは、前後で色が異なり、また前後共に着用可。四角を組み合わせたレクティリニアのシリーズに続き、部分的に和紙を使用して張りを出し、顔料で四角をプリントしたスクエア・ワンのシリーズが登場。一枚のパターンで制作することにより、一切の無駄を排除した。

 

 

 

ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)

「ヨウジヤマモト」2023秋冬コレクション

 

 華やかな装飾で彩られたパリ市庁舎のボールルームの中にあって、黒を中心としたルックは際立ち、しかし静かに馴染んでいる。山本耀司による最新コレクションは、音楽も含めて一つのテアトルを描いて見せていた。

 

 前シーズンからの流れで、パープルがかったネイビーの差し色を配したマスキュリン・フェミニンなセットアップでスタート。スカートはローエッジにカットされ、無作為に重ねられたかのようだが、無計算のようで計算された絶妙なバランス具合を見せる。プリーツのパネルが重ねられたジャケットや、ある種の乱雑さを呈したドレーピングのドレスは、アンバランスの中のバランスの美を感じさせた。赤を差し色にしたコートドレスは、長いベルトを装飾的に配して新鮮な造形美を見せる。ジップアップドレスには、赤い帽子とスーツを着た山本耀司がギターを奏でる姿がプリントと刺繍で表現され、差し色による遊びがアクセントとなっていた。

 

 アイテムは徐々に削ぎ落されたフォルムとなり、最後はシンプルな黒のロングドレスで締めくくった。中盤にYMOの「ライディーン」のカバーが掛かり、山本耀司とも縁の深かった高橋幸宏への追悼を想起させた。

 

 

 

アン ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)

「アン ドゥムルメステール」2023秋冬コレクション

 クリエイティブディレクターにルドヴィック・ドゥ・サン・セルナンを迎えた「アン ドゥムルメステール」。会場となったカルノー高校の体育館に長いランウェイを設置し、音楽はハードなテクノ。全く新しいスタイルで再出発を果たした。

 

 ドゥ・サン・セルナンはパリのモード学校、デュペレを卒業後、「バルマン(BALMAIN)」に入社。2017年に自身のブランドを創設し、以後メンズコレクションを中心に、ユニセックスな作品を発表している。そのスタイルは、肌の露出の多い挑発的なもので、それが今季の「アン ドゥムルメステール」のコレクションにも反映。

 

 数々のコレクションで「アン ドゥムルメステール」のモチーフとなってきた羽をブラにしたロングシルエットのルックでスタート。上半身がほぼ裸で衝撃を与えた。その後、胸部分を手と腕で隠すという、「アン ドゥムルメステール」には無かったセクシーなルックが多く登場。胸部分がオープンになっているシースルーのグローブトップスを着用したモデルは、やはり胸を手と腕で隠している。しかし、風になびくような薄手のロングスカートが、エレガントな曲線を見せ、全体的にはこのブランドらしさをどうにか保っている。

 

 同時に発表されたメンズコレクションも、シースルーや深く開いたトップスとショーツのセットアップなど、肉体賛美ともとれるルックが見られた。今季はドゥ・サン・セルナンのスタイルに限りなく寄せたコレクションだったが、今後どのように「アン ドゥムルメステール」の「伝統」に擦り合わせて行くのか。次回のコレクションに期待が掛かる。

 

 

 

バレンシアガ(BALENCIAGA)

「バレンシアガ」2023秋冬コレクション

 

 実験的なテーラリングに果敢に挑戦したデムナによる「バレンシアガ」。かつてはパリコレクションの中心的な会場だったカルーセル・デュ・ルーヴルを舞台にショーを見せた。  

 

 オーバーサイズのジャケット類は、デッドストックのトラウザーを解体して再構築したもので、ヘムにトラウザーのベルト部分が使用されている。トラウザーは、サイドパネルを重ねてダブルのパンツに仕立て、独特のボリューム感。スカートにパンツを重ねたパンツ風スカートなど、ハイブリッドな手法も見られた。トラウザーのセンタープリーツをアクセントにしたジャケットも登場し、今季はディテールに遊びを加えたアイテムが多く見られた。店頭には、デッドストックのパンツを解体したものと、一から作ったものの2種類が並ぶ予定。

 

 レザーのバイカージャケットには、アナトミックシューズと呼ばれるスパンデックスタイツと一体型のシューズが合わせられる。実験性を追求した結果、チューブで空気を入れることが出来るインフレタブル・ライニングを装備したジャケット類が見られたが、これはモーターサイクリスト向けのプロテクターのメーカーとのコラボレーション。自らボリュームを調整でき、様々なシルエットを楽しめるようになっている。

 

 柔らかい素材に敢えてレザーのプリーツスカートを合わせ、コントラストを強調したルックが多く見られた。デムナらしいフローラルドレスも、レザーのプリーツスカートがコーディネイトされている。

 

 終盤に登場したドレスは、クリストバル・バレンシアガ作品を思わせるクチュールのテクニックを駆使したもの。シルクのフェザーにビーズを刺繍したもので埋め尽くされているドレス、ニットにビーズを刺繍したドレスなど、冒頭のテイラード、あるいはワークウェアインスパイアのアイテムなどと対照的な荘厳さを見せた。

 

 

 

レヴ バイ マルティーヌ シットボン(Rev by Martine Sitbon)

「レヴ バイ マルティーヌ シットボン」2023秋冬コレクション

 

 2004年に自身のブランドを休止し、「リュー・ドゥ・マイユ(RUE DU MAIL)」のデザイナーとして復帰したものの、ここ10年程パリコレクションから遠ざかっていたマルティーヌ・シットボンが再び戻ってきた。パリのブランド「イロ(IRO)」の創設者であるアリック&ローラン・ビトンとコラボレーションしてブランド「レヴ(REV)」を立ち上げ、イベント会場のエレファン・パナムにてミニショー形式で新作を発表。夫でアーティスティック・ディレクターのマーク・アスコリも演出で協力した。

 

 1980~90年代に一世を風靡したデザイナーも今年で御年71歳。既に最古参のデザイナーではあるが、そのエッジーさは健在。フィッシュネットとアシメトリーのトップスとのセットアップや、凝ったパターンのブラトップ、バルーンのようなシルエットのブラウスなど、目を引くアイテムは多かった。

 

 ベルベットの起毛部分を薬品で腐食してモチーフを描くデボレ素材によるワンピースやバリエーション豊かなカラータイツ、そしてメタリックカラーのシューズなど、シットボンならではのコードは随所に見られたが、ややノスタルジックで既視感を抱いたことは否めない。

 

 昨今の1990年代リバイバルの波に乗れるのかどうかも含め、今後の活動に要注目である。

 

 

 

ポール・スミス(Paul Smith)

「ポール・スミス」2023秋冬コレクション

 パリの自社ショールームにてプレゼンテーション形式で新作発表した「ポール・スミス」。このブランドらしい美しい色合いのストライプや、伝統的なチェックをアレンジしながら、明るさをプラスしたマスキュリン・フェミニンなコレクションに仕上げている。

 

 アンティークの家具や室内装飾から想を得たというボタニカルモチーフやラグイメージのモチーフは、それぞれグラフィカルにアレンジされ、ドレスやニットウェアにあしらわれている。特に花を思わせるモチーフのドレスやセットアップは、オプティミスティックな印象。テイラードの中にもカジュアルさと遊びの要素がバランスよく配され、全体的にはリラックスした雰囲気を醸していた。

 

 コレクション発表とは別に、アートディレクターとしてのポール・スミスにスポットが当たった今季。3月7日から一般公開されているピカソ美術館での「PICASSO CELEBRATION: THE COLLECTION IN A NEW LIGHT!」展で、全ての展示室の内装を手掛けているのだった。ポール・スミスらしいストライプはハンドペイントされ、圧倒的な視覚効果によってピカソ作品が突然モダンでポップなアートに変化する。ギレルモ・クイッカ、オビ・オギクボ、ミカレン・トーマス、シェリ・サンバといった現代アーティストたちのピカソに関連する作品も随所に展示され、奥行きを出しながら新しい視点を提示。会場全体が一つのインスタレーションに感じられる程である。8月27日までの開催で、その間にパリを訪れた際は是非観ておきたい。

 

 

 

ステラ マッカートニー(Stella McCartney)

「ステラ マッカートニー」2023秋冬コレクション

 

 「ステラ マッカートニー」は、自己の生活の一部となっている馬をテーマに、軍事学校の乗馬練習場を舞台にコレクションを発表した。母、リンダ・マッカートニーの「もしできるのであれば、馬に乗って旅をしたい」とする言葉が掲げられ、幼少の頃から慣れ親しんでいる馬が様々なモチーフとして登場。馬にまつわるコスチュームからインスパイアされたアイテムが随所に見られた。

 

 馬をジャカードで表現したポロシャツ、馬を思わせるエコファーのコート、乗馬用のケープを思わせるニットドレスなど直接的なものから、ナポレオンジャケットのように、間接的に馬を想起させるアイテムまで様々。

 

 これまでに自然由来のレザーとして、マッシュルームを原料にしたマイロによるバッグが発表されてきたが、今季はリンゴ由来のアップルスキンによるクロコ風のバッグや、油と水を使用しない100%植物由来のミラムレザーによるバッグが加わり、その幅の広がりを感じさせた。

 

 

 

ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)

「ルイ・ヴィトン」2023秋冬コレクション

 「ルイ・ヴィトン」のニコラ・ゲスキエールは、フレンチ・スタイルとは何であろうか、と問いかけ、オルセー美術館内の美しい装飾で彩られたサロンと廊下で、その答えを彼らしい解釈で示して見せた。

 

 芯地を入れて立体的に成形したツイードのドレスやニット地のドレス、スカート部分が四角錐になったミニドレスなどは、既存のドレスを一度解体して再構築した結果、造形的な面白さと楽しさが発出。

 

 極めてシンプルに見えるコートは、実はレザーにエンボス加工を施し、ヘリンボンモチーフをプリントしており、その感触はビニールのよう。素材のトロンプルイユ(だまし絵)が成立していた。一見プリントのように見える大きなパネルを襟に飾ったドレスは、収縮によってモチーフを浮かび上がらせた素材によるもの。

 

 今季はカッティング、素材や色のコンビネーション、そして素材そのものにも特別感が溢れ、ブティックで実際に手に取って見てこそ、そのクリエーションの素晴らしさを実感できる内容となっていた。

 

 

 

サカイ(sacai)

「サカイ」2023秋冬コレクション

 

 今季、デザイナーの阿部千登勢は“Everything in its right place”という概念を掲げ、「一見してあるべき姿ではないと思えても、人や物にはそれぞれの居場所がある」という考えを探求したという。

 

 ルノーの自動車販売所だったという大きくて無機質な会場に、シックでエレガントなアイテムをぶつけ、強いコントラストを見せた。

 

 ハイブリッドな作風はより繊細な形で昇華され、様々なディテールに生かされている。マスキュリンなファブリックはラフルとして飾られてコートがドレスに変化し、縦にカットされたコートは不思議な視覚効果を生み出す。バッグと一体化したロングドレスは、ストラップを肩に掛けることでスカート部分にスリットが生まれ、シフォンを組み合わせたホワイトシャツは予期せぬフェミニニティが生まれる。

 

 マスキュリン・フェミニンなテイラードと、凝ったディテールを擁しながらも削ぎ落されたフォルムのエッジーなドレス群。そのどれもがヨーロッパの街に馴染みそうな雰囲気を醸している。「サカイ」の新しい側面が引き出された、意欲的なコレクションとなっていた。

 

 

 

シャネル(CHANEL)

「シャネル」2023秋冬コレクション

 

 「シャネル」のアーティスティック・ディレクター、ヴィルジニー ヴィアールは説明する。「カメリアは単にひとつのテーマに留まることのない、メゾンにとっての永遠のコード」であると。冬にふさわしい花をテーマに、一つのコレクションを構築した今季。グラン・パレ・エフェメールのホールには大きなカメリアのオブジェが設置され、イネス&ヴィノードが監督した小松菜奈をヒロインに据えた映像が投影された。小松菜奈は時折ポリー・マグーのようなメイクを纏い、1960年代のムードがコレクションにも反映。また、1970年代を思わせるグラマラスな装いも登場した。

 

 カメリアモチーフのツイードのコートで幕開け。レザーのカメリアのコサージュを飾ったレザーのコート、カメリアモチーフをプリントしたスパンコール刺繍のトップスとカメリアレースのレギンス。ルックのそこかしこにカメリアが存在し、各アイテムを華やかに彩っている。

 

 シルク製カメリアをドットのように配したツイードジャケットや、フェザーでカメリアを描いたニットアンサンブルでは、花を大胆にアレンジして目を引く。カメリアイメージのグラフィカルなモチーフを編みこんだ60年代風のニットや、レースにプリントしたジレなど、パウダーピンクを差し色にしたアイテムも登場。

 

 これまで通りのバリエーションの豊かさを見せながら、最後は70年代を思わせる色濃いモードで締めくくった。

 

 

 

ウジョー(Ujoh)

「ウジョー」2023秋冬コレクション

 

 これまで以上にエレガントで流麗なシルエットのアイテムを発表した、西崎暢による「ウジョー」。会場となったマルソー大通りに位置するギャラリースペースは豪奢な内装だったが、その中にあって服自体のシンプリシティが際立って見えた。

 

 オーバーオールやサスペンダーで吊るすセパレートジャケットなどのユーティリティウェアは、絶妙なボリューム感とカッティングでドレッシーに仕上げられ、曲線的なシルエットを描き、柔らかくて優しい印象を与える。身頃が重なったコートやジャケットも、厳格さの中に暖かさを感じさせ、それは淡いピンクなどの色使いによるところも大きい。

 

 今季はその色とプリントによる視覚効果が印象的だった。花びらや赤い花のモチーフは、2002年に華道家の故・中川幸夫氏が行った伝説的なパフォーマンス「天空散華」にインスパイアされたもの。華やかさの中に静けささえ漂わせ、テイラードとの美しいハーモニーを見せた。

 

 手をモチーフにしたチャームは前シーズンでも見られたが、今季もメタルアクセサリーがジャケット類を彩っている。シリアスな遊びの要素として目を引くも、服を邪魔することなく静かに馴染んでいた。

 

 

 

Y/プロジェクト(Y/PROJECT)

「Y/プロジェクト」2023秋冬コレクション

 

 地下鉄とバスのストライキとデモ行進の真っ最中で、多くの招待客が必死になって会場入りしたグレン・マーティンスによる「Y/プロジェクト」。やっとたどり着いたと思ったら、そこはだだっ広い工事現場で、空気は白く濁り、粉塵にまみれてのショー観賞となった。

 

 大きな布団にくるまり、ボサボサ頭でパジャマ姿の男性がランウェイ中程の最前列に座っており、眠そうな顔をしながらキュウリパックをするパフォーマンスも同時進行。ショーの間中、招待客を笑わせ続けた。

 

 デニムのパンツとニーハイブーツ、そしてシースルーのタンクトップでスタート。その後もデニムを蛇腹のように繋いでタイダイしたジャケットや、ボタンベルトの位置をずらしたGジャンなど、デニムアイテムが充実。「ディーゼル(DIESEL)」のアーティスティック・ディレクターも務めるマーティンスの一側面を印象付けた。

 

 捻じれや歪みを強調したシュールな作風も変わらず。そこに今季はエロティックな写真プリントのドレスや、天竺地を切り裂いてモチーフを浮き出させたアイテムなどが新たに加わる。ヘンデル作の歌劇「リナルド」の「私を泣かせてください」の様々なバージョンを繋げて重ねたBGMと相まって、コレクション全体の非現実性が増幅されたのだった。

 

 

 

 

 各ブランドは独自の世界観を追求し、大きく束ねられるトレンドを探し出すことは難しい昨今。例えば、グリーンやピンクなど昨今のトレンドカラーはいくつかのブランドで目に付いたものの、大潮流となる程の存在ではなかった。21世紀以前は、スカートの丈の長さやシューズの先端の形が毎シーズンのように取り沙汰されたが、今となってはそこに着目する者は誰もいない。

 

 それはさておき、様々なトピックが生まれた今季。誰もが話題にする目新しいものがあったのか、と問われると返答に苦慮する。各人がそれぞれ良かったと思う事象が心の中にあっても、まとまった意見として表に出ることはほとんどない。そんなところにも、各々の個性や考え方を重んじる多様性の波が来ているのかもしれない。

 

 パリコレクションを組織するクチュール組合による公式カレンダーを眺めながら、特筆すべきことがなかったかを考えたのだが、何ら浮かず。ただ、日本人デザイナーが多く参加していることに気が付いた。その数11組。全体の参加ブランドの1割強を占めていることになる。多くのブランドが大きなグループ企業に属しているわけではなく、資本的に独立しているという共通項を持つ。

 

 一昔前のパリでは、小さな規模でブランドをスタートさせ、会社として成長して大きなコレクションを発表する、というサクセスストーリーが溢れていた。現在でも資本的に独立してブランドを維持しているデザイナーはいるにはいるが、最終的に大きなグループ企業に吸収されるケースが多く、また独立していても、コンクールを通じて大手企業から資金的な援助がなされている場合が多く見られる。独立系の若いブランドが大きく育ち、一気に注目を集めるという流れにはなりにくい状況である。

 

 その点、パリコレクションに参加する日本のブランドは、資本の独立を保ちながらファッションをビジネスとして捉え、堅実にブランドを維持し、パリに来続けている。実売が伴わなければパリにやって来ることは不可能で、それは日本国内でファッションが未だに成長しているという証でもある。ファッションに未来がある場所、それはもしかしたら日本なのかもしれない。そんなことを思った今季だった。

 

 

取材・文:清水友顕/Text by Tomoaki SHIMIZU

画像:各ブランド提供(開催順に掲載)

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