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2018.04.18
イオンモール堺北花田、昨春来の大規模改装が終了 テナント100店規模でリニューアルを実施
樋口尚平の「ヒントは現場に落ちている」 vol. 51
1階フロア、世界最大規模の「無印良品」
大阪・堺市の「イオンモール堺北花田」(大阪府堺市北区東浅香山町)が3月20日、およそ1年にわたる大規模改装を終えて、オープンを迎えた。以前、阪急百貨店が出店していたスペースを中心に、新規テナント30店、移転・改装69店という全館規模のリニューアルだ。約170店ある専門店の過半数に該当する。かねて地元住民から要望が多かったテナントや商材を強化した点が特徴である。
“地元密着”深める狙い
イオンモール堺北花田は大阪市内の主力地下鉄・御堂筋線の「北花田」駅から徒歩数分という好立地にある。「梅田」からも30分ほどで行ける利便性の高い場所だ。元々、住宅地の一角で、梅田をはじめとするほかの都市へ通勤する地元住民も多い。2004年10月のグランドオープン以来、足元商圏の顧客開拓に軸足を置いてきた商業施設だ。地上4層構造で、延床面積が約17万5000平方メートル、総賃貸面積が7万2000平方メートル。いわゆる“2核1モール”の構造で、かつては阪急百貨店とスーパーマーケットの「イオン」がアンカーテナントになり、その間を専門店街が連絡するショッピングモールだった。
今回の大規模改装も、地元住民のニーズをさらに反映したテナント構成に留意した。阪急百貨店との契約終了を機に、前から要望の多かったファストファッション系や家電などのテナント導入を検討。昨春(2017年)からおよそ1年をかけて、全館規模のリニューアルを実施した。阪急百貨店跡=「ウエストモールゾーン」に複数の大型テナントを誘致し、同時に専門店街も移転・改装して、見やすく買いやすいレイアウトに改め、回遊性の向上を図った。
「ウエストモールゾーン」の1階には、“世界初”の食品売り場を設けた「無印良品」が出店した。面積も約4300平方メートルで世界最大規模である。2階には、「ユニクロ」(約2500平方メートル)と「ジーユー」(約2000平方メートル)の複合店舗が出店。「ジーユー」は国内3店舗目の超大型店で、品揃えは史上最大級だという。要望の多かった商材である。
3階フロアの「ヘルス&ウェルネス」
3階は「ヘルス&ウェルネス」というコンセプトの下、美と健康のフロアを構成している。「食堂カフェpotto×タニタカフェ」とはじめ、ビューティー・ヘルス家電を品揃えする家電の「エディオン」、スポーツ関連アイテムをセレクトした「OUTSIDE THE BOX」(アウトサイト・ザ・ボックス)などが出店する。「OUTSIDE THE BOX」はグループ会社のメガスポーツ(スポーツ量販店「スポーツオーソリティ」を運営)が手がける新業態で、西日本初出店だ。
1階の「無印良品」の食品は生鮮3品のほか、加工品やイートインなど、幅広い食を扱う。衣料品や雑貨と同様、こだわった付加価値のある食材が特長だ。館内にはスーパーの「イオンスタイル」もあるが、平均の価格帯と購買層・購買目的が異なるため、競合はしていない。「イオンスタイル」の衣料品、食料品の売り上げはほとんど落ちていないという。専門店街の衣料品はファッションの色合いが濃く、「イオンスタイル」のそれは実用衣料の傾向が強いこともあるだろう。2階の「ユニクロ」「ジーユー」は梅田の「ルクア イーレ」にも同様の複合店舗が出店しているが、「無印良品」同様に競合は見られない。足元商圏の顧客がデーリーユースの施設として認知・利用しているため、わざわざ梅田へ出向くことが少ないと予想される。
来館手段の半分が徒歩と自転車
地域密着型のモールだとご紹介したが、どれだけ密着しているかと言うと、来館手段の半分が徒歩または自転車だという点。車が40%、電車に至っては8%しかない。いかに足元商圏の顧客で支えられているかが分かる数値である。駐輪場の収容台数は3,000台だが、「満杯になることが多い」(イオンモール堺北花田、外丸英男 活性化推進マネージャー)という。既存のイオンモールと比べても、地域密着度が高いという。
リニューアルオープン後は、全体的にテナントの売り上げは好調だという。昨春に改装した一部テナントは2年目に入っているが、「2年目も前年比をクリアする推移」(外丸マネージャー)で、しっかり顧客を呼び込めているようだ。主要な顧客層は40~50代が多く、加えて子育て世代の30代ファミリーも増えている。来館者の約70%は女性だが、「改装後は男性客も増えた印象がある」(同)。リニューアルに際し、メンズ系テナントを集積した効果が表れているようだ。
地域密着、デーリーユースという商業施設のため、平日の集客も少なくない。会社帰りに利用するケースもあるようで、週末との集客の格差はあまりないようだ。前述したように主力は地元住民だが、「無印良品」など日本唯一のテナントもあるため、このリニューアルを機に「広域からの集客も視野に入れている」(外丸マネージャー)。
売上目標は非公表。過去の実績などからおおよそ350億円規模だと推測されるが(個人的な推計です。間違ってたらすみません・・)、オープン景気も絡み、安定的な売上予測が当面は困難という事情があるようだ。いずれにしても、思い切った改装により、順調なスタートを切った同施設。今後どのように推移していくか、興味深い。
樋口 尚平
ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。
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