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2023.02.08

【2023秋冬パリメンズ展示会レポート2】ショールーム・トーキョー・イン・パリ

 メトロ・フィユド・カルベール駅近くで開いた「ショールーム・トーキョー・イン・パリ(showroom.tokyo in Paris)」(1月19~24日)には、「東京ファッションアワード 2023(TOKYO FASHION AWARD 2023)」第8回受賞の「イレニサ(IRENISA)」「コッキ(KHOKI)」「タナカ(TANAKA)」「テンダーパーソン(TENDER PERSON)」のメンズ・ユニセックス4ブランドが出展した。また同会場内で第7回受賞者の「ダイリク(DAIRIKU)」「キディル(KIDILL)」「ヨーク(YOKE)」の3ブランドもショールームを開いた。

 

 さらに同じ住所の奥の建物では、「アタッチメント(ATTACHEMENT)」や「ベッドフォード(BED j.w. FORD)」もショールームを開くなど、日本ブランドで相乗効果を狙った模様だ。

 

 ショールーム・トーキョーを主催する一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)の今城薫コレクション事業ディレクターは、「アポイントメントが100件を超え、6月の時よりもバイヤーが戻ってきている。特にコロナが明けてきた中で、新しいブランドを探しているという声をよく聞く。中国を除くアジアで半分を占め、特に韓国は全体の20%を占めている。欧米の主要なアカウントもアポが入り、その中でもECが増えていると感じている。」と最終日時点での概況を語った。

 

 

 

KHOKI

写真:海外にトライするのは初めてという「コッキ」は、トラディショナルな生地や技法をカジュアルでモダンに仕上げるのが得意。20件ほどのコンタクトの中、香港、韓国、イタリア、米国、カナダなどから手応えを得たという。

写真:(左)タックをランダムに取ったジャケット、(右)インドの刺し子、カンタキルトを施したジップシャツジャケット

 

 

IRENISA

写真:パタンナー2人が2020秋冬から始めた「イレニサ」は、8割がオリジナル生地で、それへの評価が高い。海外セールスに委託することで、着実に取引先確保を狙っており、香港などから引き合いが来ている。

写真:(左)京友禅の引き染めコーデュロイシャツ、(右)カシミヤ・ウールとウール100%メルトンのダブルフェイスコートは、リバーシブル。端のコード始末によりパイピングのようなディテールで変化が生まれる。

 

TANAKA

写真:2018春夏のマン/ウーマンNYから販売をスタートした「タナカ」は、米国、イタリアにエージェントがおり、既に30~40件ほどの海外取引先を持つ。メンズの店舗へのリーチが弱いので、そこを強化したいとの考えだ。イタリア、フランス、スイスなどの既存店に加え、香港、韓国などのアジアや英国の百貨店などにコンタクトを広げている。

写真:(左)定番で人気のデニムは、ワイド・テーパードなど、(右)NYのアーティスト、フェイル(FAILE)とコラボしたシルクのパジャマ

 

TENDER PERSON

  • 2年前から海外販売をスタートさせ、コロナ下ながらデジタルを活用して営業してきたという「テンダーパーソン」。スイス、英国、香港、韓国、マレーシアなどがサンプルをピックアップしてくれ、10件ほどの新規に繋がりそうだ。特に人気だったのが、デザイナーのビアンカさんとお母さんが作る手編みのクロシェニットだったそう。

  • 注染のベルベットジャケットにも注目が集まった

YOKE

写真:「ヨーク」は、ニットが得意なこともあり、秋冬には強い。アジアの既存店に加えイタリア、フランス、米国、スイス、オーストリア、ロシアなど20件ほどから手応えを得た。

写真:(左)カモフラ柄の裂き織のコート、(右)英国の画家、ベン・ニコルソンにインスパイアされたカーキ3色ボアジャカードのカラーブロックブルゾン

 

KIDILL

写真:「キディル」は、オンスケでプレゼンテーションを行ったことによる効果がはっきりと表れたようで、そこからの流入に手応えを感じており、新規もドイツ、オーストラリアなど様々な国に広がっているという。「ガーリーパンク乗りが受けたのかな」とはデザイナーの末安弘明さん。「遅かれ早かれランウェイに切り替えて、勢いを落とさずに攻め続ける時期だと思う」と決意を語った。

写真:(左)裂け目のような穴の開いた「ルルムウ(rurumu:)」コラボのニットラガーシャツ、(右)「ディーシーシューズ(DC SHOES)」とのコラボは50足程度の限定的な数量に

写真:ショールーム・トーキョーの奥の建物で展示会を開いた「ベッドフォード」

写真:「ベッドフォード」と同室でセカンドブランドの「ヴェイン(VEIN)」とともに見せた「アタッチメント」

 

 

 コロナ中は、デジタルオーダーツールの「ジョア(JOOR)」を活用して、オンラインでの営業活動しかできなかったコロナ下の受賞者と比べると雲泥の差となった。昨年6月から復活したリアルショールームに参加できた受賞者は、不遜な言い方かもしれないが、ある意味ラッキーだったと言える。コロナで思うようにオーダーできなかったバイヤー側も、その反動で発注増へと舵を切っている点も奏功している。人の動きの復活と共に、リアルで会え、喜びを分かち合える環境が、ブランド、バイヤー双方をポジティブな気分にさせている。さらに円安も追い風となっていると見ることもできる。もちろん川上インフレや工賃、輸送費増によるコストプッシュがCIFやDDPの値上げとなって表れている部分も無視はできないが、日本の値上げ幅は、世界のインフレ状況から見ると軽微だと言えそうだ。

 

 また日本のメンズブランドへの評価の高まりも追い風のひとつだ。秀逸な素材背景、高度な縫製技術と緻密な加工など日本の産地の強みを生かしつつ、定着してきたショールームトーキョーのバリューをさらに上げていくことが求められている。

 

 

 

取材・写真・文/久保雅裕

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