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2023.02.09

【インタビュー】パリ国際ランジェリー展とは何か 35年間取材続けた武田尚子氏に聞く

 ポストコロナに向けてかつての賑わいが戻りつつある欧州のトレードショー。その中で活況を呈しているのがそれぞれのカテゴリーのトップたちだ。今回はランジェリー業界におけるトレンドリーダー的役割を果たしている「パリ国際ランジェリー展」の取材を終え帰国したばかりのジャーナリスト武田尚子氏に、現在のランジェリー業界や「パリ国際ランジェリー展」の所感、そして2023年3月8日にオンライン開催する「2023パリ国際ランジェリー展トレンドセミナー」の概要について聞いた。

 

 

 

―インナーウェア業界との出会いについて教えてください

 

 1983年から1988年までの5年間、インナーウエアの専門誌の取材記者をしたのがインナーウエア業界との出会いです。1988年からフリーランスとなり、仕事のフィールドを広げて現在に至っています。やはり自分にとっては、海外取材を続けることによって視野を広げたことが大きいと思います。

 

 その会社在籍中だった1987年から「パリ国際ランジェリー展」の取材をはじめ、2020年1月まで一度も休むことなく、基本的に年2回の取材を続けてきました。そういうジャーナリストは世界にもあまりいないと思います。ずっと顔を合わせていた人たちもいつのまにか見なくなりました。

 

 その後、2年半は新型コロナウイルス蔓延のためにリアル展示会の開催中止と共に私の取材も中断を余儀なくされましたが、2022年6月に再開、今回の2023年1月も取材を果たすことができました。

 

 「ランジェリー」というと何か特殊な分野で、そこにかかわる人たちも(特にインポート愛好者は)どこかランジェリーマニア、ランジェリーフリークのような人が多いですが、私にはまったくマニア性がありません。美しいものには何でも興味があり、私にとってはランジェリーも文化の一つのフィルターであり、時代を見るフィルターとしてはとても興味深い切り口だと思っています。

写真:前回の「2022パリ国際ランジェリー展」の模様(武田尚子氏「アパログ」より)

 

 

 

―現在のインナーウェア業界をどのように捉えられていますか

 

 それは今回のセミナーでもお伝えしたいことですが、大きな時代の変革期に当たると思います。分かりやすくいうと、「世代交代」ですね。

 

 世界はもとより、日本からも女性起業家による多くの新しいブランドが生まれています。従来からの伝統的なブランドと、小規模の独立系デザイナーブランドが完全に二極化。それぞれに役割が全く異なるわけですが、今はどちらかというとベンチャー的な起業家ブランドに有利性があるというか、伸びしろがあるのではないでしょうか。

 

 新しい世代というのは、企業のマーケティング戦略に乗るよりも、個人的な共感で結びつくものを求めているわけですから。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のような巨大投資可能な超有名ブランドになると別ですが。

 

―「パリ国際ランジェリー展」とはどのようなもので、インナーウェア業界にどのような影響を及ぼしているのでしょうか

 

 世界のランジェリー(インナーウエア)業界のトレンドリーダー役で、業界の縮図のようなものです。もちろん出展していないブランドも多くありますが、フランスのトレンド情報発信力によって、世界から小売店バイヤー、メーカーやサプライヤー、プレスまでビジネス関係者を集めています。ランジェリーのパリコレのような製品コレクションだけではなく、ランジェリーのプルミエールビジョンに当たる素材展を併設しているのが特徴です。

 

 ちょうど私が取材を始めた1980年代後半から国際展示会としての主導権を高め、現在に至っています。それ以前はドイツのIGEDOに求心力がありました。展示会主催者は何度か変わっています。

 

 国内の業界関係者にとっても、視察に行くべきところという評価が定着しています。今まではどちらかというと、視察に行く「インプット」が中心でしたが、今回のように出展者が増えて「アウトプット」が強まったのは喜ばしいことと思っています。インナーウエアもやっとそういう時代が来たのだと感慨深いです。それは新しい世代の台頭およびデジタル時代の成果でもありますね。

  • 2023パリ国際ランジェリー展(武田尚子氏撮影)

  • 2023パリ国際ランジェリー展(武田尚子氏撮影)

  • 2023パリ国際ランジェリー展(武田尚子氏撮影)

  • 2023パリ国際ランジェリー展(武田尚子氏撮影)

―今回のセミナーで特に伝えたいことは

 

 重要な要素やキーワードはあまり変化していないかもしれませんが、時代が大きく変化しているということですね。

 

 単に商品的な「トレンド」という表層的なものを追いかけるのではなく、お伝えする多くの事例を通して、時代がどういうふうに変化しているのかをリアルに感じていただきたいです。そしてそれぞれのブランド戦略の参考にしていただけると幸いです。

■「2023パリ国際ランジェリー展トレンドセミナー」

日時:2023年3月8日(水)15:00~17:00(120分間)


配信方法:Zoomによるオンライン配信


登壇講師:武田尚子氏(フリージャーナリスト)

参加料金:1人あたり4,000円(学生及び会員割引あり)

セミナー申し込みページはこちら

武田尚子(たけだなおこ)
ジャーナリスト・コーディネイター

ボディファッション業界専門誌記者を経て、1988年にフリーランスとして独立。
ファッション・ライフスタイルトータルかつ文化的な視点から、インナーウエアの国 内外の動向を見続けている。
執筆をはじめ、セミナー講師やアドバイザー業務も。
特に世界のインナーウエアトレンドの発信拠点「パリ国際ランジェリー展」の取材を 1987年から始め、年2回の定期的な海外取材は35年以上に及ぶ(2020年のコロナ禍で 一時中断したが、2022年から復活)。
著書:『鴨居羊子とその時代・下着を変えた女』(平凡社)、『もう一つの衣服、ホームウエア ― 家で着るアパレル史』(みすず書房)

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