PICK UP
2022.11.07
【2023秋冬展示会レポート】プレミアム・テキスタイル・ジャパン&JFW ジャパン・クリエーション サステナブルがポイントに 注目デザイナーのショーも開催
「プレミアム・テキスタイル・ジャパン(Premium Textile Japan) 2023 Autumn/Winter」と「JFW ジャパン・クリエーション(JFW JAPAN CREATION)2023」が2022年11月1日と11月2日、東京国際フォーラムで開催された。主催担当者によると「コロナ禍に加えて、不透明なウクライナ情勢、原燃料の高騰、中国のロックダウンや世界的物流の混乱など、年々厳しい要素が増えているが、開催してほしいという声が多く、300社を超える企業が出展。改めて重要なイベントとなっていることを感じさせる」という今回。過去3回は最大滞留人数を大幅に減らし、最大人数を超えた場合は入場規制を実施してきたが、今回は感染対策は続けながら、最大1250人という制限を解除したこともあり、ブースを訪れるデザイナーやビジネスラウンジで商談する関係者はもちろん、通路で話す来場者や通路を歩く来場者も増えるなど、来場者の期待も感じられた。
「プレミアム・テキスタイル・ジャパン」と「JFW ジャパン・クリエーション」は、日本ファッション・ウィーク推進機構のテキスタイル事業として行われているもの。「プレミアム・テキスタイル・ジャパン」は付加価値の高い素材を作り出すテキスタイルメーカーとアパレル・リテール企業のバイヤーやデザイナーなどとのビジネスマッチングの場を提供するビジネス商談会。
23回目を迎えた今回は昨年対比4.57%増の72社/103小間(こま)が出展。A織物短繊維、B織物長繊維、C染色、後加工、プリント、刺しゅう・レース、皮革、D服飾資材、ニットファブリック、撚糸(ねんし)、パイルファブリックの4ゾーンに分け、2023年秋冬に向けた新商品を紹介した。一方、「JFW ジャパン・クリエーション」は全国の産地・企業が集結する繊維総合見本市。31回目となる今回は同5.87%増の54件/261社/198.9小間が参加。テキスタイル、服飾資材、繊維関連・製品、皮革・毛皮の新提案を発表した。
サステナブルがポイントとなった今回。「JFW TEXTILE VIEW 2023 Autumn/Winter」に基づき、企画開発した出展者の素材を編集・展示するトレンド・コーナーと、出展各社の新商品やイチオシ素材を展示するインデックス・コーナーで構成されるトレンド&インデックス・コーナーでは、サステナブル・コーナーの展示方法を改善した。原料に関して4分類、工程に関して2分類、企業認証という形で、JFW サステナブル・プロジェクトと連動した素材を編集し、7分類の解説パネルを展示。解説パネルには二次元コードを掲示し、スマートフォンなどの携帯端末で読み込むことで、パネルに書かれた情報を来場者が自身のデバイスでも見られるようになった。会場では来場者が二次元コードを読み、確認する姿も見られた。
また、展示されている各素材サンプルには、ブースナンバーと社名、原料分類、製造工程、企業認証のどの部分でサステナブルに当てはまるかをチェックした札が付いているが、今回は札の裏に「熱回収式熱風処理機を導入、放出していた排気ガスから熱交換器を通して熱を回収し再利用。大幅な地球温暖化ガスの排出削減効果」など、なぜ該当するのかという説明も記載した。
さらに、日本ファッション・ウィーク推進機構では、一昨年よりJFWサステナブル・プロジェクトをスタートさせ、出展者のサステナブル素材を紹介してきたが、欧米に比べ日本は後れをとっていると指摘されることがあることから、今回は関連プログラムとして「JFWサステナブル・セミナー」も開催。ドイツに本部を置き、サステナブル認証の中でも最も有名なGOTSのGOTS日本地域代表松本フィオナ氏による「繊維から製品までオーガニックに~GOTS認証の基礎と事例」と、20年以上前から環境に配慮した素材を作り続けるイタリアの大手ウールメーカーREDA社の日本代表者であるレダ ジャパン代表取締役上野伸悟氏による「繊維大国イタリアのサステナブルに対する向き合い方」を行い、サステナブルへの取り組みを紹介した。
写真:ケイコニシヤマ(上左)、メアグラーティア(上右)、タクター(下)
また、11月2日には関連プログラムとして「PIGGY’S SPECIAL ピッグスキン・ファッションショー」が開催された。今回は「ケイコニシヤマ(KEIKO NISHIYAMA)」、「タクター(tactor)」、「メアグラーティア(meagratia)」の3ブランドと専門学校12校が参加。ショーはプロと学生作品を3つに分け、プロ部門で参加したブランドの各10作品と学生作品によるショーが行われた。ショーでは、箔(はく)加工などを使ったデザインとともに、自然を感じさせるデザインやフリンジ、ウエスタンムードのディテールなど、サステナブルなムードのデザインやディテールも登場した。
西山景子がデザインする「ケイコニシヤマ」は、天然革のピッグスキンにデザイナーが描いた動植物のプリントを乗せることで、素材の大切さや有り難みを表現した。昨年に続く参加となった山本奈由子による「タクター」は、大胆な箔加工とともに、パンチングにほのかに輝きを施したものなど、昨年見せた箔の表現を、強弱をつけてコレクションに落とし込んだ。また、素材や加工を近くでゆっくりと見られるように、ランウェイショーの後にもモデルをステージに立たせ、ライブマネキンを行った。関根隆文が手掛ける「メアグラーティア」は、前後や左右の違うデザインなど、ブランドのアイデンティティであるギミックデザインにピッグスキンの質感やディテールを取り入れ、転調するようなイメージの変化を生み出した。
日本ファッション・ウィーク推進機構では、「展示会を続けていくことが大切」とした上で「JFWサステナブル・セミナーが好評で、解説パネルの評判も良かった。サステナブル・コーナーの理解度が高まった」としている。
次回の「プレミアム・テキスタイル・ジャパン 2024 Spring/Summer」は2023年5月24日と25日、東京国際フォーラムで開催される。
取材・撮影・文:樋口真一