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2022.09.28
【2023 春夏ミラノ ハイライト1】165のブランドがフィジカルでコレクションを発表
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写真左から、 ヌメロヴェントゥーノ、ディーゼル、プラダ、マックスマーラ
2022年9月20日から26日、ミラノ・ウイメンズ・ファッションウイークが開催された。イタリアファッション協会が発表したカレンダーによると、トータルで210項目、61のフィジカルショー、7つのデジタルショー、104のフィジカルプレゼンテーション、その他カクテルパーティ等のイベントが開催された。 最終日のみデジタル発表となるが、それ以外はほぼ全てのブランドがフィジカルでの発表となり、もはやミラノは完全復活を遂げた感じだ。
今シーズンは新クリエイティブ・ディレクターによる初コレクションを発表するビッグメゾンに注目が集まっており、「エトロ(ETRO)」はマルコ・デ・ヴィンチェンツォを、「フェラガモ(FERRAGAMO)」がマクシミリアン・デイヴィスを、「ミッソーニ(MISSONI)」はフィリッポ・グラツィオーリを迎えてコレクションを発表する。
また、「バリー(BALLY)」はルイージ・ビラセノールにより初のランウエイデビューを行う。さらに「モンクレール(MONCLER)」の70周年、「アンテプリマ(ANTEPRIMA)」の30周年のアニバーサリーもあり、何かと話題の多いファッションウィークとなった。
第一弾では、9月21日、22日前半のショーと展示会のハイライトをレポートする。
ディーゼル(DIESEL)
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クリエイティブ・ディレクターのグレン・マーティンスによる第二回目のコレクション。前回に続き、ショー会場には空気で膨らませた人形が登場。今回はギネス世界記録を更新する世界最大級なのだそうで、それが「アリアンツクラウド」という多目的屋内アリーナの真ん中に設置され、その周りをモデルたちが歩く仕組みだ。
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コレクションは「ディーゼル」を象徴するデニムが、実験的な破壊と構築を加えて組み立てられている。ローライズのベルボトムパンツ、マイクロミニやマイクロショーツ、コートドレスやロングタイトスカートなどのアイテムが、アシッドウォッシュや日焼け加工を施したり、ブロークン加工されたデニムで作られている。または、透け感のある下地をベースにしたコルセットウエストや、デニムにチュールを重ねて刺繡を施し、ステッチラインとシアーなライニングを施すようなディテールも見られる。
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デニムのフリンジドレスやカットと激しいダメージを施したデニムのファー、ディストレスデニムをスキャンしたトロンプルイユのセカンドスキンなど、デニム由来ではありながら全く姿を変えたディテールも目を引く。15.000枚以上の赤いブランドラベルで作られたコートや、レースで縁取られたアシッドフラワーのスリップドレス、メタリックのスリップドレス、フリルのディテールをあしらったミニドレスなどカラフルでフェミニンなアイテムも登場する。
「誰もがディーゼルの一部になれる」「ファッションショーに行ったことのない人たちにもディーゼルを知ってもらいたい」というグレン・マーティンスの考えから、計4800人の観客のうち3000人以上はチケットをオンラインで無料配布して招待した一般の人たちで、ファッション学校の生徒も招待したとか。今や世界的なスポーツラグジュアリーブランドであり、多くのセレブにも愛される「ディーゼル」だが、初期の頃は遊び心ある斬新なアプローチが若者に受けて、ストリートで絶大な人気を得て広まったと記憶している。今回のショーに訪れた一般客の7割は18~25歳の若者だったそうで、そんなローンチ当時の勢いは今も変わらず続いている。
ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)
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お馴染みの自社施設、ガレージヴェントゥーノにてメンズ、ウイメンズ混合ショーを行った「ヌメロヴェントゥーノ」。今回のテーマは“LOVERS”。“愛人”というのはなにかと問題が多いお題だが、アレッサンドロ・デラクアらしいシニカルで抒情的な理解によって、気分、感情、心の状態を表す繊細なコレクションとなっている。
デラクアはモラル的な面から軽蔑視される不倫関係だが、愛したり憎まれたり、隠れたり大胆になったりといった、当事者たちのロマンティックな感情の揺れの部分にフォーカスする。そして映画のような非日常的な(不倫を美しく描くと言う意味での)世界観は、デラクアがこれまでも何度もミューズとしてきたモニカ・ヴィッティやアンナ・マニャーニといったイタリア女優たちからのインスピレーションもあるようだ。
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半分脱げているような完全に固定されていないスカートや適当に巻き付けたようなドレス、ボタンを掛け違えたり一つしかボタンをしていないくしゃくしゃのメンズシャツとフレアスカートやタイトスカートなどフェミニンなボトムのコーディネートなど、密会の後、慌てて服を着たような感じを演出。または下着の透ける黒や赤のシフォンドレスやスパンコールのセットアップ、大きくフロントを開けたりワンショルダーにしたドレスやシャツからブラ見せをするテクニックなど、煌びやかで誘惑的なルックも多い。
デラクアらしいヌードカラーや黒に、下着、サンダル、バッグなど部分的に赤を差し込んでいるのも印象的。そんな中、最後に登場する純白のヴィンテージのブライダルドレスをアレンジしたスカートやビスチェはかなりシニカルだ。
オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)
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2021秋冬、2022春夏とデジタルにて発表した後、前シーズン、初のフィジカルショーを開催した「オニツカタイガー」。とはいえ、前回はまだコロナ禍で規制も多かったため、今回、大々的にショーやアフターパーティを開催した。
コレクションテーマは「ジャパニーズ・ミニマリズム」。無駄をそぎ落とす引き算の美学を、「オニツカタイガー」らしいスポーティテイストの中に活かす。前回のコレクションでは白のディテールを入れ込んだオールブラックのコレクションだったが、今回は白と黒にイエロー、グリーンといった鮮やかな原色が加わる。が、コーディネートはすべてモノトーンなので、シンプルさが際立っている。
日本の伝統着からのアイデアがさりげなくディテールに活かされており、バルーンスカートのように見えるキュロットは袴から、シャツの幅広で大きく開いた袖は着物からのインスピレーションなのだとか。またはランニングとショーツというスポーティの王道アイテムにタオル地の着物風マントを合わせたり、足元には雪駄風のフリップフロップがコーディネートされている。
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スポーツウェアの象徴的ディテールであるドローストリングスが全体的に使われ、ゆったりしたシルエットをそれによって絞ることで立体感をだしたり、ミニマルなデザインにアクセントを添えている。トラックスーツも大胆なバギータイプでモード感を出し、上質なニットや白シャツと合わせることでエレガンスを感じさせる。
スポーツという原点から離れることなく、クチュール感をうまく入れ込むアンドレア・ポンピリオの本領は回を追うごとにパワーを増して発揮されていく。
ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)
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今シーズンもミラノショールームでフィジカル展示会を行った「ブルネロ クチネリ」。テーマを“TAILORED TO EXPLORE”とし、「女性探検家」がモチーフとなっている。航海士や冒険家のユニフォームからのインスピレーションで、最高品質の素材、職人技、そして同ブランドらしいエレガンスに機能的な要素を加えている。
「ブルネロ クチネリ」らしいベージュのバリエーションに、ブラック、パステルカラー、ラベンダー、セージ、ウォーターとローズやナチュラルホワイトなどが加わる。サテンやきらめくラメリネンに大工や探検家風のディテールが加わり、ダーツやサスペンダーなどマスキュリンな要素を取り入れたデザインも。
そんな中にも、スパンコールや刺繍が施されたジャケットなどが登場し、フェミニンなラグジュアリー感も漂う。
ヘルノ(HERNO)
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ミラノショールームで展示会を行った「ヘルノ」。今回のコレクションは、コア、ファッション、ラグジュアリーという3つのテーマで展開する。
コアは、トレンチやモノグラムなど、シグニチャー的要素を入れ込み、色はヘルノらしいベージュと赤をコーディネート。ファッションは時に力を入れているカテゴリーで、これまであまりなかったブラックを基調にナイトアウトを意識。
またはライムやフーシャなどのパンチの効いた色が差し込まれ、フォルムもクロップ丈やノースリーブなどトレンドを入れ込んでいる。そして、ラグジュアリーは「ヘルノ」らしい中間色やアースカラーを、ドロップショルダーなどトレンドを入れ込んで,スポーティラグジュアリーを強化している。
ニュースとしては、パンツに続き、スカートが登場。スニーカーもバリエーションが増え、アウターブランドからトータルルックブランドへと着々と進んでいる。もしかしたらショー形式で発表する日も来るのだろうか。
マックスマーラ(Max Mara)
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今回はミラノの証券取引所を会場に選んだ「マックスマーラ」。“THE BLUE HORIZON(青い水平線)”というテーマで、リヴィエラ・スタイルを着こなした女性たち、特に写真家ジャック=アンリ・ラルティーグのミューズであり恋人で、彼の写真の被写体としてたびたび登場していたルネ・ペルルと、建築家およびインテリアデザイナーだったアイリーン・グレイからインスピレーションを受けているとか。
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例えば、背中の大きく開いたタンクトップや、キャンバス地のセーラーパンツ、つば広の日よけ帽、裾がフレアになったマーメイドシルエットのロングスカートなどはペルルの定番の装いから来ている。
またグレイのテイストは、彼女の20年代後半の代表作である南フランスの別荘「E1027」の近代的でシンプルながら心地よい雰囲気を反映している。それは切りっぱなしの裾フリンジを施した、加工や染色を施していないリネンのトータルルックのシリーズ、ウォッシュド加工を施したスーツやジャケット、構造的ながらソフトなコートなどに現れる。そんな中にパステルカラーのスイムウエアと「マックスマーラ」のアイコン的コートのコーディネート、手書き風のフラワープリントで甘さを加えている。
全体的にシンプルで、長めのラインを強調したエレガントなシルエット。今シーズンのキーワードになりそうなミニマルテイストを、「マックスマーラ」らしいクラス感たっぷりに表現した。
アンテプリマ(ANTEPRIMA)
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2023 年に 30 周年を迎えるにあたり、センピオーネ公園にてアニバーサリーショーを行った「アンテプリマ」。公園内にあるアレーナ・チビカという19世紀初頭にできた競技場の外壁に沿ってランウェイを設置。屋外ショーとなるため、インビテーションには傘も同封されていたが、汗ばむほどの快晴となり、天気も祝賀に味方した様子。公園内で開催されたショーゆえに、一般客も見られる仕組みになっており、ミラノ市民たちも共にブランドの30年を祝った。
コレクションテーマ“はUNBOUNDED ENERGY (溢れ出すエネルギー)”。「これまでも現代に生きる女性に向け、そのエネルギーとバイタリティ、静と動のコントラストなどをファッションやバッグなど、コレクションに反映し皆さまにお届けしてきました。この 30 周年では、アンテプリマのコンセプト“Smart, Precious with LOVE”をベースに、もう一度その価値観を“溢れ出すエネルギー”と共に強調していきたいと思います」とクリエイティブディレクターの荻野いづみは言う。
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コレクションでは白または黒と、赤、黄、青などの原色との組み合わせが基調となっている。それによって、ストライプやオプティカル柄などをグラフィカルに描いたり、シームなどのディテールの色だけを変えてアクセントをつけている。
このカラーは建築家、彫刻家、グラフィックデザイナーのマルチェロ・モランディーニのデザイン作品からのインスパイアされたもので、このコレクションのためにモランディーニがオリジナルグラフィックを制作したとか。
シルエットはブラトップやクロップド丈のトップに、フレアや大きなプリーツのロングスカートまたはワイドパンツというコーディネートで強弱を効かせたり、透け感のあるドレスや大胆なスリットの入ったロングスカートなどもあるが、全体的に清潔感と品が漂う。
イタリア語でデビュー前、プレビューを意味する「アンテプリマ」というブランド名は、荻野いづみが元々は主婦で、何の経験もないところから始めたことに因んで名付けたと言う。それから30年、「アンテプリマ」はいまやミラノコレクションで長年発表を続ける唯一の日本ブランドとして、イタリアでもゆるぎない地位を築いている。
プラダ(PRADA)
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今シーズンは、いつもショーを行うプラダ財団のスペースを黒い紙で覆い、それを手で破ったようにして作られた窓から、映画監督のニコラス・ウィンディング・レフンによるコレクションにまつわる映像が流れるというセット。観客の椅子や床も紙で作られており、それは洋服の原点である型紙にも通じるイメージだ。それはコレクションテーマである“Touch of Crude(粗い手触り)”を象徴している。
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コレクションでは、そんな紙の手触りを感じさせるような素材やディテールが登場。コットン、シルクオーガンジーなど粗くてハリ感のある素材を使い、しわや、小さな切れ目、ねじれなどがあえてつけられている。
粗い手触りのモヘアニットやポリエステルのシャリ感のあるスカート、座りジワや畳みジワのような自然なシワのあるコートやシャツ、裾が切りっぱなしで中から裏地が見えているようなサテンドレス、そしてバッグもシワ加工のトートなどが登場する。これはミウッチャ・プラダが祖母のクローゼットで見たシワの付いた服に美しさを感じたところから始まっているそうだ。その服を着る人の体や動作が衣服の形を作り、それによって布地に美の記憶が埋め込まれるという、洋服が表現する人間らしさに焦点を当てる。
さらにラフ・シモンズの加入以来登場してきたロングジョンのコットンのシリーズも登場。これもセカンドスキンのように人間の体の動きを伝えると言う部分でテーマに繋がっていく。
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また日中と夜のワードローブをミックスしたシリーズも登場。シルクオーガンジーのナイトガウンやベイビードールをコートの上に貼ったりレイヤードしたり、テーラードジャケットにトレーンをつけたり。Tシャツにコサージュをつけてドレスにしたシリーズや、スリップドレスをリサイクルナイロンでイブニングドレスにしあげたルックもある。ここでは昼と夜、ミニマムと装飾といった相反するものを融合することで、予期せぬようなことが起こり得る人間の実生活に重ねている。
取材・文:田中美貴
画像:各ブランド提供(発表順に掲載)
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田中 美貴
大学卒業後、雑誌編集者として女性誌、男性ファッション誌等にたずさった後、イタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。アパレルWEBでは、コレクション取材歴約15年の経験を活かし、メンズ、ウイメンズのミラノコレクションのハイライト記事やインタビュー等を担当。 TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントのオーガナイズやPR、企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳なども行う。 副業はベリーダンサー、ベリーダンス講師。