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2022.08.26

「2023秋冬 プルミエール ヴィジョン パリ」世界最高峰の生地展で注目すべき色と素材は?

 2023秋冬 プルミエール ヴィジョン パリは例年より2か月早い2022年7月4日から8日まで、デジタルとフィジカルのハイブリッド形式で行われた。この形式は2020年の9月以来5回目となり出展社をはじめ参加者が回復しつつある。

 

 同展のスタートはフランスのリヨンの絹織物組合が始めた生地展であったが、70年代にヨーロッパの中心的な展示会であったドイツのフランクフルトで行われた「インターストッフ」展と肩を並べファッション業界に大きな影響を与えるようになった。

 80年代の終わりに同展の大きなテーマとして「エコロジー」を掲げ世界に大きな衝撃を与えた。洋服作りの原点である素材を扱う展示会として世界のファッションと共にその方向性を示す情報を発信し続けている。

 コロナ渦のもとでは情報の伝え方に新しい手段としてデジタル展を積極的に推進しているが、ものつくりの基本は感覚に与えるエモーションであることを忘れずにフィカルの大切さを説いている。現在ではフランスが世界に発信するファッションのイベントとして大きな役割を持っている。

 

 そして今回、素材の方向性やシーズンの特徴を示すファッショントレンドセミナーでは今シーズンも引き続きサステナブルの重要性が問われ、エコレスポンシビリティ、環境、エシカル、トレーサビリティに関心が集まった。全体を通して次の三つの点が強調された。

 
既にあるものに着眼したクリエイティビティ「フルガル クリエティビティ(frugal creativity)」
          
 無駄を省きつつも 価格に見合った価値を持つイノベーションであること。

 

歴史の中の美の追求とデジタルを組み合わせる「コンテンポラリーリー インタープリテイション(contemporary reinterpretations)」

 中世の装飾や過去の文化遺産をアバター が身に着けて登場するメタバースの世界は、デジタルデータが新しい価値を生むことを証明する。

 
伝統を「上品」の枠から外して芸術的表現をさぐる「バースティング エクスプレッシビティ(bursting expressivity)」

 自由奔放な発想をトラディショナルにチャレンジする。想像力を掻き立てるユニークなものが求められる。

 
 従来エッセンシャルフォーラムで発信されていたシーズントレンドはデジタル展では「ファッショントレンドテイスティング」として配信された。シーズンに向けたカラーと素材提案はシーズンの方向性を把握するために必須なセミナーである。その中で気になるポイントを簡単にまとめてみた。

カラー

 

  全26色が三つのグループで提案された。

 

No.1~9 エクスペリメンタル&アーティザナル(Experimental & Artisanal)

 実験的かつ職人技を使って変貌する天然食材や素材の色。

1クラフトアート風の茶、2ハイテクのライムグリーン、3発酵したパテのベージュ 4ビタミンたっぷりの光輪のオレンジ、5優しいブルー、6玉子の黄味の色、7ソーセージの濃いピンク、8新鮮な生肉の色、9モラセスの赤味を帯びた糖蜜色
 
No.10~16 エッセンシャル&マキシマリスト(Essential & Maximalist)

 エッセンシャルであるがミニマリストではないグレーの仲間。新しいニュートラルカラー。ナチュラルであり上品なメタリックカラーを含むグレーの表現。今シーズンの最も注目すべきカラーグループ

 光り感、ぼやけ感、クラシックでもありどこかダークなイメージを持ち合わせる。影の色。メタリックと鼠、光と影、そして闇へ。ピンクや紫と混じることによりロマンティックにもなる。

10 グリーン味のある粘土のグレー、11 滴る蝋の色、12 心地よいグレー、13 深くリッチなグレー、14 静かなグレー、15 皺が寄ったような白、 16 輝くシルバー(今シーズンの代表的なメタリックカラー)
                     
 
 
No.17~26 ケイダンス&デカダンス(Cadence & Decadence)

 リズミカルであるが退廃的。ダークカラー、ペールカラー、ブライトカラーのコントラスト使いによるコンビネーション。真面目さと派手で生意気な色のぶつかり合い。クラシシズイムをひっくり返す。 

17遺跡のブルー、18水泡のブルー、19物議を醸しだすピンク、20シラーワインの赤、21グリーンエピローグ、22急進的な茶、23くっきりした赤、24直観的な青、25ナイトグリーン、26ごく普通の紫
 
 

素材

 

 今シーズンの素材はスポーツやアウトドアに対応した機能素材やクラシックへのオマージュと共にそこに新しい技術やアイディアが加えられたり、自然や本来の未加工の姿に感動を受けた表現など、見慣れたはずのものに新鮮さを覚えることが多い。
三つのテーマのもとポイントが示され素材が提案された。

 
エッセンシャル&シンギュラリティ(Essential Singularity更に価値が高められるエッセンシャル

 クラシックやオーセンティックといわれるものにユニークでありアイコニックなデザインやモチーフで新たなアイデンティティを加える。

・より複雑な織組織を持った無地、個性的なツィード
ハウンドゥースの3D効果、異なる配色、プリントやジャカードにも展開など様々なバリエーションが期待される
・アウトドアスポーツに向けたケミカルフリー素材、メカニカルストレッチ、生物由来のワックスコーティング、耐久性、堅牢性に注目
・布と肩を並べて注目されているレザーは更に機能性を高め加工技術が進み、ガーメント用として期待されている
・撥水性、抗菌加工、ウォッシャブル、クロコ風エンボス加工、ストレッチ性、パリッとした薄手レザー
・アーカイブデザインの再解釈やリミックス、オーナメンタルな幾何柄、ゴシック建築、ステンドグラス、ベルベット、チュール、プリーツやスモッキング、トワルドゥジュイ
 
オピュレント ソブラエティー(Opulent Sobriety)-抑制的でリッチ

 外見はシンプルで控えめではあるが内面からにじみ出る様な豊かさを感じる。
耐久性がありサステナブルであること。
 テーラリングの再考。よりリラックスして若々しく。

・新代替え素材としての新フェイクファー、ウールを中心にカシミア、アルパカ、モヘアなどで
・リサイクルコットンから作られたフェイクムートン
・堅牢性、メリノのフェルト、オーガンザにも堅牢性を
・クリーミーでソフトな肌触り ベルベットやベロア
ピーチスキン、エメリー加工 
・リサイクルナイロンのフリース

 
エクセプショナル インパーフェクション(Exceptional Imperfections)-本物に近づいた不完全性

不完全であることの魅力。未加工、粗削り。

・本物志向、透明性、デジタル写真とアナログ写真への関心、甘さの無いロマンチシズム
・ウエアのあらゆる場面に浸透するレザー
・ワイルドでラスティック、新しいグランジの表現、見かけはラスティック、触感はソフトでしなやか、リネンブレンド、ニードルパンチ
・不鮮明なモチーフ、ボロボロの壁の様なテクスチュア、これらに刺繍、レース、シークイン、フリンジなどの装飾加工を施す、新しいチュールレース
 

以上が色、素材の注目ポイントであるが、以下三つのキーワードがすべてに関連することも今シーズンの重要な課題である。

・「クォリティ(Quality)」良質であること
・「シンギュラリティ(Singularity)」違いがあること
・「クリエイティビティ(Creativity)」クリエイティビティであること

 

文:テキスタイル・ディレクター 北川美智子

 

Coutesy of Premiere Vision Paris

 

■「プルミエールヴィジョン」公式サイト

 

 

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