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2022.07.14

小売・レンタル・再販を一つ屋根の下で サステナブルを自社で完結するアーバンアウトフィッターズの取り組み

 サプライチェーンとインフレの影響が続く中、アーバンアウトフィッターズ社の4月末締めの第一四半期の総売上高は、前年同期比で13%増加、過去最高の10億5,000万ドルを達成しました。セグメント別の純売上高では、小売部門が前年比12%増の9億6,300万ドルで既存店の売り上げは11%増。卸売部門ではフリーピープルグループの売上が9%増加し、6,600万ドルでした。また、定額レンタルサブスクのNUULY(ニューリー)の部門は、加入者が急増したことにより、前年から1,500万ドルも増加しました。

 

 2019年の売上は800万ドルでしたが、小売業にとって厳しい年となった2020年に、2,400万ドルを突破し、翌年の2021年には4,700万ドルと、3年の間に6倍も成長しています。今年1月時点では51,000人だった会員数も4月末には8万2,000人に増加しました。数あるレンタル企業の中でも、「ニューリー」の急成長は、アーバンアウトフィッターズ社の未来にどういう影響を与えていくのでしょうか。

若年層がどはまりする「ニューリー・レント」基本情報

 基本的な利用者は、アーバンアウトフィッターズフリーピープルアンソロポロジーが好きな消費者ですが、人気の自社ブランドのほか、毎日着用できるハイブランドとビンテージを扱っており、カジュアルな若年層好みのコーディネートができるのが魅力となっています。月に88ドルの利用額で、数百以上のブランド商品から一度に6つを選択でき、商品が気に入った場合は最大75%オフの割引で購入することも可能です。インフレによりアパレルやファッション雑貨の値段が高騰する中、ファッションに興味がある若年層に選ばれたのは必然だったのかもしれません。梱包には、ペーパーやビニール袋を使用せず、再利用可能なガーメントバックを使っています。また、(00-40W)までの豊富なサイズ展開で、ビッグサイズが充実しており、サービス延滞料はありません。カスタマーサービスは、月曜日から金曜日の営業時間内にリアルなチャットオプションで対応してくれるのも魅力的です。

「NuulyThrift」

自社商品をサステナブルに循環させる。

レンタルから再販の流れを促す「NuulyThrift

 昨年10月にスタートし話題になったNuulyThrift(ニューリー・スリフト)は、レンタル部門の「ニューリー」でレンタルされた商品を、最終的に販売する場所として活用されているほか、消費者自身が所有する中古商品を売買するプラットフォームになっています。 売上金は、銀行口座に直接振り込まれるか、Nuuly Cash(ニューリーキャッシュ)に変換することができ、アーバンなど全てのブランド(BHLDN・Terreinを含む)の店舗とウェブサイトで使用することが可能となっています。ニューリーキャッシュにした場合は10%が加算されるので更にお得ですが、グループブランドのプロパー商品の購入に繋げることが可能になるので、ニューリー側にもメリットがあります。ちなみに「thredUP」を始めとする再販サイトでは、アーバンアウトフィッターズやフリーピープル、アンソロポロジーは常に上位にランクインしています。自社内で取り扱うブランドをレンタルし、再販することにより、衣類の寿命を最大限に延ばす試みにチャレンジしています。

サステナビリティとテクノロジーが融合した流通システム

 約8万2,000人の会員に月6着、トータルで約49万2,000着もの洋服がレンタルされているわけですが、それらはグーグル・クラウドで開発されたトラッキングシステムにより、どのように移動したか追跡されています。例えば、25回レンタルされた服が、その後、再販サイト「ニューリー・スリフト」で購入され、永久に保存するほど気に入られたというような報告もあるそうです。このように、一つの商品を詳細に追跡することは貴重なデータとなります。

 

 商品の発送は、現在のところ、本拠地のあるフィラデルフィア郊外の最新鋭の配送センターで行われています。衣料品は一度に6着ずつ、再利用可能なパッケージで出荷されますが、BigQuery(ビッグクエリ)とCloud Composer(クラウドコンポーザー)を使用することで、顧客の感情や配送の好みなどのデータを定期的に分析し、出荷速度が顧客に与える影響を把握しています特定の地域や曜日で配送が間に合わない場合は、より早く到着するように自動的に調整することもできるそうです。配送センターでは従業員がそれぞれにカスタマイズされたアンドロイド・デバイスを持ち、注文のトラッキングやクリーニング、修理など、衣類のライフサイクルをサポートしています。また、データサイエンスチームでは作業員のルートや反復動作も分析しており、激しい作業を軽減できるようにサポートしているそうです。機械学習により、5年間で従業員の歩数を30万マイル(約48万キロ)以上削減しており、商品同様、従業員に対するサポートに関してもサステナブルを実現しています。さらに、カスタムアプリを使用することで、商品の汚れやダメージに印を付け、修理チームの作業の効率を上げたり、小さなシミのついたガウンやジーンズを染色してアップサイクルし、元の商品よりも価値を上げたりする工夫も行っています。再加工された商品は「Re Nuuly」という一点物のコレクションとしてレンタルのサイトにアップされています。

 

 衣料品に毎月90ドル近く費やすことなど考えられなかったという女性が、2019年からニューリーを利用しているといいます。まだまだ発展途上の段階で、利益に繋げるための改良や顧客のニーズに合わせた調整など課題は残されていますが、小売企業にとって、通常は妨げとなるレンタルと再販ビジネスを傘下に置き、自社でサステナブルを完結するのは、興味深いチャレンジなのではないでしょうか。

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