PICK UP

2018.04.04

【宮田理江のランウェイ解読 Vol.48】2018-19年秋冬東京コレクション

 ファッションを通したメッセージ性や表現力が強まったのは、2018-19年秋冬シーズンの東京コレクション(Amazon Fashion Week TOKYO)の目立った傾向だ。参加ブランドの数やテイストの広がりが東コレに厚みをもたらした。日本の伝統的な美意識や職人技が盛り込まれたり、ストリートカルチャーや工業・ケミカルテイストが打ち出されたりして、東コレ全体として好ましい混沌(カオス)が生まれた。

◆マメ(mame kurogouchi)

 パリ・ファッションウイークに初参加した、黒河内真衣子デザイナーの「マメ(mame kurogouchi)」は東コレにスタイリングを変えて臨んだ。パリではプレゼンテーション形式で発表したが、東京ではブランド初となるランウェイショーを開いた。「アマゾン ファッション ウィーク東京」の冠スポンサーであるアマゾンジャパンが東京・品川にオープンした撮影スタジオが会場となった。

 

 重層的なレイヤードルックはモデルの動きにつれてディテールが揺れ動き、入り組んだ重なり具合を印象づけた。これまでのコレクションにも増して、日本の職人や工場の技術へのリスペクトをコレクション全体に注ぎ込んでいる。日本の伝統的な民芸の美を取り込んで、適度な野趣も帯びた。

 

 日本の民具や工芸を愛したフランス人デザイナーのシャルロット・ペリアン(1903~99年)の図録に触発された。もともと国内各地に息づく職人仕事への敬意をクリエーションに写し込んでいるクリエイターだけに、今回も凝った編み地のニットウエアをはじめ、随所に和のハンドクラフトを生かし、タイムレスな薫りをまとわせている。

 

 和風柄やメッシュ、フリンジなどが複雑に組み込まれたレイヤードはハイブリッドの上を行く「キメラ=chimera(由来が異なる複数要素の混在)」のたたずまい。質感の異なる素材を巧みに交じり合わせて、着姿に物語性をまとわせている。

 

 メタリックなワンピースはユリの花のようなジャパネスク植物柄が沈み込ませてあり、工芸品ライクな表情。スーパーロングの袖先には日本的な房飾り風のタッセルが躍る。立ち襟のレースは和室を飾る欄間のよう。東洋と西洋の時を超えたクロスオーバーがプラウドなムードを立ちのぼらせている。

 

 水引や組紐といった、和の「結ぶ系」ディテールを盛り込んで、装いにアクセントを添えた。透けるバッグは切り子細工の面影を残す。日本の伝統的な服飾・工芸美をモダナイズした提案は、スタジオのテクノロジー感や工業的ムードとコントラストを際立たせ、劇的な効果を生んでいた。

 

◆ハイク(HYKE)

 2017年の毎日ファッション大賞を受けた「ハイク(HYKE)」は内外から一段と関心を集める存在となっている。18-19年秋冬コレクションの着想源にしたのは、軍装を指す「MILITARY CLOTHING」。ダッフルコートやピーコート、ボンバージャケットなどのアウターを軸にミリタリーウエアをウィットフルに再構成している。

 

 ミリタリーの面影を残しつつ、コートのフォルムをひねった。極端なハイカラーや袖へのファー使いなどのディテールが軍装からの「ずらし」を演出。風変わりなポジションや形のトグルボタンも目を誘う。ボトムスはつややかなレザーの細身パンツでシャープに引き締めている。

 

 アウトドアの人気ブランド「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」とのコラボレーションから生まれたダウンコートやアウターを披露。フォルムはオーバーサイズがファニーな見え具合。プリーツスカートを引き合わせるスタイリングが程よい「ずれ感」を漂わせている。

 

 コートの裾をやたらと長くしたり、アウターをパフィにふくらませたりと、過剰な量感でシルエットを弾ませた。あごまで隠す幅広のネックウォーマーのように、小物類でもボリュームはトゥーマッチの限界を試した。コクーン形のロングコートは朗らかな風情を寄り添わせていた。

 

 ネイビーやオリーブといったミリタリー色をベースに置いた。目立ちやすいことから、レスキューカラーとされるオレンジを投入して、ポジティブ感を乗せている。本来は武骨なはずのミリタリー系ウエアをボリュームとディテールで揺さぶって、ドレッシーやフェミニンに寄せ、性別にしばられないストリートクチュールの着姿に整えていた。

◆ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)

 プレイフルな技巧を凝らすデザインはグローバルモードでも盛り上がっている。ポジティブなムードの延長線上に位置付けられているのは、ウィットやギミック。東コレでこのような目を驚かせるアレンジを披露したのは、北澤武志氏と佐藤絵美子氏の「ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)」だ。

 

 ファーストルックは真っ白いシャツワンピースだが、ブラを重ねているかのようなディテールで官能的に仕上げた。肩甲骨とウエストの高さに横スリットを入れ、ボタンで開け閉めできるようなバックスタイルも披露。黒ジャケットも背中の中央部を四角くくり抜いて、窓のようにボタンで開閉できる。隠したりさらしたりといったミステリアスな演出が装いのムードを深くしている。

 

 スーパーショート丈のトップスや脚線を映すニーハイブーツもフェティッシュなムードを寄り添わせていた。「I’m sexy」のメッセージを、Tシャツのプリントでうたった。ジャケットとスイムウエアを融け合わせたようなオールインワンは切れ上がったレッグラインを印象づける。

 

 シャツをキーアイテムに据え、新しい表情を引き出した。ストライプシャツの上からクリーム色のスリップドレスを重ね、マニッシュとセクシーをねじり合わせている。オレンジのボンバージャケット風ブルゾンの足元はポインテッドトゥのハイヒールをセット。ショー構成もメンズとウィメンズのモデルが入り交じって登場した。

◆アンブッシュ(AMBUSH)

 ラッパーでDJのVERBALと、デザイナーでパートナーのYOONの夫妻が手がけるブランド「アンブッシュ(AMBUSH)」は2018年で10周年。この節目に初のランウェイショーを東コレで開いた。アマゾン ファッションが主催するプログラム「アット トーキョー(AT TOKYO)」枠での参加だ。

 

 ジュエリーブランドとして08年にスタートしたが、「ジュエリーに似合う服」という逆転の発想でデザインするアパレルもシーズンごとに評価を高めてきた。17年にはLVMHプライズでファイナリストに選ばれ、実力を証明。最近はパリでプレゼンテーション形式のコレクション発表を続けている。

 

 ストリート感で知られる「アンブッシュ」だが、今回はアウトドア色を濃くした。健全なスポーティー感覚のアスレジャーとは一線を画し、ややアンニュイでロックなムード。メンズとウィメンズを同じランウェイで発表し、自然なジェンダーレス感を示している。

 

 YOONが育った米国・シアトルの空気感をまとわせ、ユースカルチャーを写し込んでいる。シアトルをベースにしたグランジロックを象徴する伝説的バンド「ニルヴァーナ」の曲が流れ、けだるい90年代気分も漂わせていた。

 

 ケミカルなつやめき・防水加工を施したレインコート。フィリング(詰め物)をたっぷり詰めて量感を高めたパフィなキルティングジャケット。頭をすっぽり覆い隠すオーバーサイズのレインパーカ(フーディー)。マントのようにたなびく末広がりのポンチョ風アウター。どれもが悪天候の音楽フェスティバル仕様を思わせる。

 

 パーカをはじめ、プリント柄Tシャツ、スウェットパンツなど、ストリートのアイコン的なアイテムが効かせ色やギミックディテールなどのスパイスで別の表情を見せた。ベースボールキャップのつばを、女優帽のようにデフォルメ(特大化)したり、テーラードの端正なスーツとナイロン系のケミカル素材を交わらせてみたり。スニーカーはシューレースの白さを印象づけていた。

 

 チェックのネルシャツのような、グランジのお約束的なアイテムを差し込んで、オルタナティブロックへの郷愁を語りかけている。パッチワークやドローコードも程よいルーズ感を帯びた。袖にはビッグロゴを配して10年間での成長を物静かに祝っているようだった。

◆ファイブノット(5-knot)

 ロケーションを屋外に求める創り手が目立ったのも、今回の東コレの変化点だ。天王洲アイルの運河に浮かんだクルーズ船の上でランウェイショーを開いたのは「ファイブノット(5-knot)」。旅から触発されるクリエーションで知られる鬼澤瑛菜氏と西野岳人氏のデュオは、城壁に囲まれた、ポルトガルの古都オビドスに着想を求めた。オビドスは、この地に魅せられた王妃のために王が村ごとプレゼントしたエピソードでも知られる。

 

 異なる素材や印象の違う色同士を重ね合わせるレイヤードが繰り返し登場。古風なモチーフは紋章やタイル、タペストリーなどを思わせる。チェック柄やネオンカラーも組み込んで、ヴィンテージムードを濃くしている。マテリアルの面でもジャカードとPVCビニール、起毛素材、ファーなどをミックス。重層的な質感のハーモニーを奏でた。

 

 シルエットは縦に長い。ロングコートとマキシ丈スカート、ワイドパンツなどを重ね、縦落ち感を引き出している。ロングジレとミニスカートの長短コンビネーションも試した。ディテールでは、デニム地で仕立てたロングコートは張り出しポケットが立体感を加えていた。ワンピースは裾をジップで開き、裏地をのぞかせている。

 

 小物使いで着姿を華やがせた。チョーカー風に首に巻いたのは、ネクタイ風のネックウエア。片方の肩に掛けたロングストールには、ブランドのビッグロゴを躍らせた。ロンググローブはケミカルな質感やグリッターなつやめきを帯びている。

 

 形の異なる、小ぶりのウエストポーチをベルトに沿って横に2個並べた。タッセルやフリンジをあちこちから垂らして動きを添えた。ネオンカラーの差し色も利いている。足元はバブーシュ風のスリッポンがノマド(遊牧民)ムードを呼び込んでいる。

 

 全体にレトロスポーティーで複雑なミックステイストが薫る。テキスタイルと色・柄の心地よい混沌が成熟した風情をまとわせていた。

◆ティート トウキョウ(tiit tokyo)

 岩田翔氏と滝澤裕史氏のブランド「ティート トウキョウ(tiit tokyo)」はブルーやグリーンのパステル調をキートーンに据えて、ファンタジー感を帯びたコレクションを披露した。「SOMEWHERE」というテーマが示す通り、「ここではないどこか」へ誘うかのような、ふわふわした気分を形にしている。

 

 淡いグリーンにチェック柄を重ねた、ジャケットとパンツのセットアップでスタート。上質なツイードの風合いがパステルトーンに品格をもたらしている。同じ柄でイエローのトップスと組み合わせて「チェックonチェック」のレイヤードを組み上げた。

 

 ニットの表現力を試した。曲線を描く、手の込んだ編み地がニット・セットアップに優美なシルエットを与えた。ドレッシーなオールニットの装いは目新しい。ガウン風ワンピースの上から「巻きビスチェ」のようなトップスをオン。着姿を引き締めた。あちこちから細い布や紐を垂らし、揺らめきを添えている。指まで隠す長めの袖丈、袖先から垂らしたフリンジ風の帯が着姿を揺さぶった。

 

 質感のやわらかい素材を用いて、朗らかでなだらかなシルエットを描き出している。音楽フェスティバルに着ていくポンチョを思わせるレインコート風アウターはエレガントな着映え。タイツとサイハイ・ブーツを融け合わせたようなレッグウエアはつやめきを帯びた。

 

 布の表情を巧みに引き出している。しわやたるみを施して、程よい起伏をもたらした。デジタルプリントを配したフェイクファーも加えて、コレクション全体で質感の奥行きを深くしていた。日本各地の職人と手を携えて、ツイードやニットの潜在力を引き出し、新たな女性像と引き合わせてみせた。

◆ザ・ダラス(THE Dallas)

 ブランド初のランウェイショーを、東コレで開いたウィメンズブランド「ザ・ダラス(THE Dallas)」。田中文江デザイナーはヴィンテージへの思い入れが深い。初コレクションでもヴィンテージの風情を随所に漂わせている。アクセサリーの絡ませ方も巧みで、深いVラインを描くロングネックレスや、ウエストでなまめかしく主張する太いレッドベルトが装いにあでやかさを添えている。人気のアンティークパーツを使ったイヤーアクセサリーも用意した。

 

 エスニックとボヘミアンが響き合うようなたたずまい。袖にはたてがみ風にフリンジをあしらい、南米のポンチョライクなアウターは朗らかなシルエットを生んでいた。

 

 ニットの編み地に起伏を持たせ、ワンピースに仕立てた。チェック柄のパンツスーツは共布のベルトでウエストを絞って、めりはりを効かせている。ビッグアウターとレギンス風タイトパンツの組み合わせは量感のコントラストが際立っていた。ボーホーからスーツまで幅広く提案し、引き出しの豊かさを証明。成熟したファーストコレクションを披露した。

◆ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)

 制服アレンジやユース志向で知られる、吉田圭佑デザイナーの「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」はこれまでのイメージからの「背伸び」を試みた。東コレではエレガンスを前面に押し出し、ラッフルやスリットを盛り込んで、大人っぽい着姿に仕上げている。

 

 ハイブリッドや不ぞろい、解体など、整った着映えを揺さぶる技法を用いて、異形の服を生み出した。あえて力ませたようなパワーショルダーと、のどかに長く垂らしたストリングスのちぐはぐ感も程よくファニー。

 

 シャツワンピースやコートドレスのように、2種類以上の服を融け合わせたハイブリッド系の服が何種類も現れた。テーラードジャケットはロングドレスに化けた。トレンチコートは正面の打ち合わせが曲線を描いてうねっていて、両手の指を互い違いに組み合わせるかのよう。白いワンピースはタンクトップ風で、胸から上と下で景色が全く異なる。モデルが掛けていたサングラスも左右でレンズの色がずれている。

 

 柄にもプレイフルなムードが漂う。野菜の春菊や果実のバナナ、パイナップルなどのモチーフは、たおやかな装いの取り澄ましたムードをぐらつかせる。「明るいのか暗いのかわからない青春の空気と、そこにいる彼らの装い。」というコンセプトを掲げるブランドならではの、若さと成熟の端境期テイストが着姿に表現された。

◆リョウタムラカミ(RYOTAMURAKAMI)

 関西出身の村上亮太デザイナーは「大阪のおばちゃんとガーリー」をテーマに選んで、「リョウタムラカミ(RYOTAMURAKAMI)」のコレクションをプレイフルに盛り上げた。おばちゃんたちの自由な着こなし、心意気、大阪の街並みなどからインスピレーションを得て、エネルギッシュでややキッチュな装いを打ち出した。

 

 ジャイアント襟やビッグボウが首周りを華やがせた。SFや宇宙人を思わせるお面風ヘッドピースやフェイスアクセサリーは顔に添えたウイッグのよう。ビッグシルエットの服も宇宙服っぽい。

 

 ニットに強みを持つこのブランドらしいレトロ風味のニットトップスが用意された。花柄を編み込んだ、ゆるい編み地のニットトップスは伸びやかでユーモラスな風情を帯びた。太いストライプ柄がワンピースにパワーを与えた。18-19年秋冬の注目カラーとされるレインボー柄はケープ風アウターで迎えた。新聞記事をプリントした柄も取り入れている。

 

 たっぷりしたシルエットにゆがみや着余りを織り込んで動きを引き出した。袖や裾のスリットもアクセントになっている。サーキュラースカートが裾広がりのフレアを印象づけた。切りっぱなし風の始末が「作りかけ感」を演出。ワンショルダーのようなアシンメトリーも着姿を揺さぶった。

 

 全体にファニーな気分を帯びていて、ファッションの楽しさをうたい上げた。ニット会社のサトーと組んで、省エネに貢献するプロジェクト「Save The Energy Project(STEP)」に参加。エシカルなアプローチにも取り組んでいた。

 

◆グローイング ペインズ(GROWING PAINS)

 ファッションアイコンのユリアがデザイナーを務めているブランド「グローイング ペインズ(GROWING PAINS)」がショーを開いたのは、東京・渋谷にあるプラネタリウムの「COSMO PLANETARIUM SHIBUYA」。来場者は星空を見上げる代わりに新ルックを鑑賞するという趣向だ。

 

 「流星」を意味する「METEOR(メテオール)」をテーマに据えて、彼女が幼い頃から心に思い描いてきた宇宙観や、宇宙にまつわるアニメ・映画などをインスピレーションソースに、フューチャリスティック(未来感覚的)なコレクションを組み上げている。

 

 宇宙服を街に持ち出したかのような、ビッグシルエットが軸になった。オーバーサイズに仕上げたロングコートがキーアイテム。量感たっぷりなキルティングアウターをはじめ、ミリタリージャケット、MA-1の着丈を長くしてトレンチコートと融け合わせたような変形バージョンも登場した。

 

 まばゆいメタリックな質感でもグローバルトレンドを受け止めた。ラメを全身に散らしたワンピースは満天の星を写し込んだかのよう。ストリート系のウエアにもグリッターを宿して、強めイメージを帯びさせている。PVCビニール素材のビッグ・トートバッグや、パテントレザー風のつやめきを備えたボトムス・靴にも、ケミカル感が漂う。

 

 いたずらっぽい柄やロゴも披露した。宇宙人キャラクターにはおさげ髪を添えた。シャツワンピースには少女漫画風の瞳を描き込んだ。長袖Tシャツの袖には大きく「メテオール」とカタカナをプリント。宇宙に存在するとされる暗黒物質を指す英語「DARK MATTER」もプリント文字としてあしらわれた。

◆アクオド バイ チャヌ(ACUOD by CHANU)

 ファスナーの使い方が巧みな「アクオド バイ チャヌ(ACUOD by CHANU)」は「UPDATE CLASSICS」をテーマに据えて、世界的トレンドになりつつある「ハイストリートモード」に向かった。キーパーツの役目はやはりファスナー。ナポレオンジャケットでは両胸の刺繍飾りの代わりに、ファスナーが左右の胸に6本ずつ並んだ。黒のスキニーパンツも膝上で横にファスナーが走る。メタリックなきらめきが装いにパンキッシュな雰囲気をまとわせる。
 
 クールな着映えは性別を選ばない。ファスナー特有のシャイニーで硬質な印象がジェンダーレスな空気になじむ。コラボレーションの幅も広げた。ニューヨークで人気の高いジュエリーブランド「CHRISHABANA(クリスハバナ)」とも組んで、リッチ感を加えている。
 
 シグネチャー的なファスナーの生かし方がさらに進化した。シャツでは襟を飾り、コートではトグルと絡ませている。靴は足の甲を縦に貫き、スカートでは縦寸いっぱいにファスナーが走った。フリンジ風のアレンジは装いに勢いを乗せていた。

◆ジーヴィジーヴィ(G.V.G.V.)

 ブランド創設から20年の節目が迫る「ジーヴィジーヴィ(G.V.G.V.)」はアメリカでヒッピームーブメントが盛り上がった1970年代に目を向けた。当時のヒッピーカルチャーを象徴するサイケデリックな色やモチーフをモダナイズして、グラフィカルな装いでランウェイを彩った。

 

 ショー会場に選んだのは、東京・水道橋の東京ドームシティにあるローラースケートのリンク。ローラーゲームも70年代に流行したスポーツだ。レトロは世界モードでも目立つ傾向だが、デザイナーのMUG氏はセブンティーズとヒッピー時代に絞り込んで、「反抗する若者」だったフラワーチルドレンの気骨までもよみがえらせている。

 

 黒×白のボーダー柄アウターと、同じ配色のチェス盤柄パンツの「柄on柄」ルックで幕開け。抽象画家のヴィクトル・ヴァザルリが得意とした、目の錯覚を織り込んだ「オプ・アート」風のモチーフも組み込んで、モノトーンに動きを加えている。

 

 フラワーチルドレンのシンボル的な、マルチカラーの総花柄を繰り返し登場させた。サイケデリック柄のパンツ・セットアップはモダンヒッピーのたたずまい。ジグザグ模様、ポルカドット、稲妻モチーフなど、ヒッピーと縁の深い柄も、サイケデリックカラーと交わらせ、着姿に熱量をもたらしていた。マルチカラーに加えて、強い色を投入。グラムロックの気分を醸し出している。パープルの差し色使いがポップで妖しいムードを演出。レッドやオレンジ、カーキなども絡ませた。

 

 服以外の小物類にもメッセージを託した。サイハイ・ブーツは太ももの付け根あたりまで覆い隠す。特大のフープイヤリングはヒッピーカルチャーを映す。ウエストバッグを巻いたり、ハーネスをボディーに添えたりして、着姿を引き締めた。あちこちから垂らしたフリンジも70年代感を帯びた。

 

 ベルベットのつやめきや、ワイドパンツのたっぷり感がセブンティーズの空気を呼び込んだ。サスペンダースカート、ペプラム付きオーバーオールなどもヴィンテージテイストをまとった。社会への抗議に立ち上がった当時の若者はファッションでも主張した。思い切った70年代リバイバルはそれ自体が強烈なメッセージを発しているようにも見えた。

◆まとふ(matohu)

 「東コレの重心」を取るかのように揺るぎない軸を守っていた、堀畑裕之氏と関口真希子氏のデザイナーデュオの「まとふ(matohu)」。2010年から続けてきた、日本の美意識をファッションに展開するシリーズ「日本の眼」は18-19年秋冬シーズンで完結する。最後に選んだテーマは「なごり」だ。

 

 明るい彩りが目立ち、装飾美をうたい上げた前回の「かざり」を頂点に、その余熱でぬくもるかのようなコレクションとなった。和の伝統色をかすりやろうけつ染めの淡い色味で重ね合わせ、千代紙を思わせる彩りに仕上げている。ほのかなグラデーションや濃淡のコントラストを利かせて、時のうつろいを写し込んだ。「日本の眼」の総集編的な印象もあり、タイムレスな「まとふ」らしさがランウェイを包んだ。

 

 「かざり」で見付けたポジティブな色使いが受け継がれている。イエローをキーカラーに据えて、オレンジやグリーンなど、植物の生命感を写し取った天然色を色鉛筆のようなやわらかいトーンで響き合わせた。多彩なカラーブロックでレイヤードを染め上げている。イエローとブルー、暖色と寒色といった、意外感の高い色合わせも試した。

 

 シグネチャーアイテムのアウター「長着」を軸にしたレイヤードが「まとふルック」の背骨になっている。お得意の縦落ちシルエットが長着ベースの重ね着でさらに強調された。ワイドパンツとワンピースを融け合わせたようなコンビネゾン風アイテム、貴婦人ライクなケープ、カジュアルなブルゾンなども加えて、フォルムのバリエーションを広げている。

 

 ツイードや起毛生地の穏やかな風合いがパズルライクなカラーブロック、シャープなシルエットとの対比を成した。和柄を洋服にプリントするといった、単純な「和洋折衷」を慎重に遠ざけつつ、日本古来の技法や素材をモダナイズして、「古今」と「東西」を橋渡し。

 

 「日本の眼」シリーズが締めくくりを迎えたのを受け、これまでの解説文をまとめたセット本の販売を準備しているという。19年以降には展覧会も予定されていて、交遊文化サイト「Ren」も含めた、新たな取り組みにも期待がかかる。

◆サポートサーフェス(support surface)

 東コレ全体の顔ぶれが多彩になる中、各ブランドはおのおのの強みや持ち味に立ち返る動きを見せた。立体裁断、カッティングの冴えに定評がある、研壁宣男デザイナーが手がける「サポートサーフェス(support surface)」も18-19年秋冬は公式の日取りに名を連ねた。

 

 今回のコレクションでも、奇をてらわない、一見、シンプルな着映えでありながら、優美でノーブルなシルエットを描き出している。ハイウエストのスカートは、飾らない仕立てでありつつ、自然なドレープを帯び、ノンシャランとした上質感を漂わせていた。

 

 計算されたフォルムメーキングがコートドレスにミニマルとグラマラスを同居させる。いたずらに華やがせる小細工は避けているのに、丁寧に布をつまんだり、切り替えを施したりして、穏やかな物語を紡いでいる。

 

 正面側がフェイクファーで、後ろはチェック柄という、素材の表情が全く異なるスカートはサプライズを仕掛け、本格派の技巧を物静かに見せつけた。前後のダイナミックな変化は今回のキーアイデアになっていて、ストライプが様々な方向に流れるワンピースでも背中にもドラマを宿した。

 

 格子が大きめのチェック柄を繰り返し用いて、布の動きを印象づけている。チェック柄のスカート・セットアップやワンピースは落ち着きと躍動感を兼ね備えている。

 

 コンパクトなワンボタン・ジャケットとパンツという組み合わせではテーラーリングの確かさを裏付け、エレガントな着映えを生んでいた。コートは打ち合わせラインをわずかに正面からずらしたり、やや斜めに打ち合わせたり。細部への目配りが装いに格上感を寄り添わせていた。

◆ハナエ モリ マニュスクリ(Hanae Mori manuscrit)

 「ハナエ モリ マニュスクリ(Hanae Mori manuscrit)」の天津憂デザイナーは「Reminiscence(追憶)」をテーマに選んで、装いにノスタルジーをまとわせた。「世界で最も美しい本」と呼ばれる「ケルズの書」を所蔵する、アイルランドの「トリニティ・カレッジ図書館」に着想を得て、アンティークなムードを醸し出している。

 

 図書館のセットをバックにショーは始まった。深みを帯びた赤のバーガンディレッドがキーカラーとして繰り返し、ドレスを染め上げた。アシンメトリーのドレスやコートが立体的なエレガンスを歌い上げる。

 

 クチュール的な技巧を随所に凝らしている。クラシックなドレスの正面に深々とスリットを切れ込ませ、重層的な着映えに仕上げた。スリーブレスのワンピースはウエストを程よく絞り、艶美な曲線シルエットを描いた。

 

 ディテールがロマンティックに服を飾った。ラッフルが身頃を横切り、布があちこちで重なり合う。計算されたドレープやたるみは布の表情を深くした。ブラウスは背中側の二の腕部分で肌見せを仕掛けている。押し花のモチーフをジャカードで表現した。

 

 小物のスタイリングで動きを添えた。ストールのような縦に長い1枚布を肩の片側に掛けて垂らし、ベルトで巻き留めた。四角い額縁のようなネックレスは顔周りに意外な直線イメージを差し込んでいる。

◆ミントデザインズ(mintdesigns)

 「Miss Gatsby」をテーマに掲げた「ミントデザインズ(mintdesigns)」は『華麗なるギャツビー』を現代女性に置き換えて、贅沢に装うことを楽しむ、チャーミングでパワフルな女性像を描き出した。

 

 もともとプリント柄を得意とするデザイナー(勝井北斗、八木奈央)は15世紀の宗教版画やクラシックな花柄をコラージュ。異なるムードをクロスオーバーさせた。外国の新聞記事をモチーフとして写し込み、理知的なムードもまとわせている。

 

 スポーティーなブルゾンやアウトドア気分のパーカを羽織らせて、アクティブな雰囲気を持ち込んだ。フェミニンなワンピースやスカートと引き合わせて、マルチテイストのドッキングレイヤードを組み立てている。

 

 着る人が自在に着方を変えられる「DIY」はロングトレンドとなってきた。「ミントデザインズ」はジップやボタンを使って、服のあちこちを開け閉めして、自分好みのカスタマイズを楽しめる工夫を盛り込んだ。二の腕に大きく口を開けたアウターはまるで肌見せのカットアウトを施したかのよう。

 

 細部に視線を引き込むアレンジを随所に見せた。細いベルトはウエストマークで装いを引き締めている。袖先にはレースをあふれさせた。深く折り返したようなパンツはチアフルな着映え。パテントレザーのブーツは足元をつやめかせている。イージーなシルエットはのどかな景色。パープルやピンク、イエローなどの色が効いている。

 

 ランウェイショーの会場に選んだのは、東京・青山にある「フレッドペリー(Fred Perry) ショップ 東京」。「フレッドペリー」のコラボレーションアイテムは従来の「アスレジャー」の上を行くスポーティークチュールのムードを醸し出していた。

 

 長い歴史を持つ「東京コレクション」が「アマゾン ファッション ウィーク東京」の位置付けを得て、様変わりしつつある。今回の東コレでは創り手のオリジンや強みを再確認して、クリエーションの根っこに据えるアプローチが目立った。「アット トーキョー(AT TOKYO)」のような強力なサポートが背中を押した結果、表現者それぞれが持ち味や方向性を前面に押し出したことも、進化した「東コレらしさ」を増幅して見えた。

メールマガジン登録