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2022.05.20
Eスポーツ、ゲームなどのサブカルチャーが台頭
2022年中国Z世代女性の消費動向、ライフスタイル大解剖
アパレルウェブ「AIR VOL. 58」(2022年4月発刊)より
Z世代の消費者が世界の消費をけん引するといわれている中、多くの企業がこの世代の趣味嗜好、消費習慣を研究し、商品開発やマーケティング活動に活かしています。Z世代とは、1995年~2009年の期間に生まれた消費者を指し、現在約半分は学生ですが、仕事や勉強などの時間を除いたとしても、一日平均約5.5時間をインターネットに費やしている世代といわれています。今号では、3月に中国のマーケティング調査会社MobTechが発表した、2022年中国Z世代女性の消費動向、ライフスタイルの特徴をまとめたレポートの中から、注目ポイントをピックアップして解説していきます。
中国SNS激戦Wechatに次ぎTikTokが大躍進
在宅消費が定着し、多種多様なエンターテインメント、オンライン学習が広がりを見せています。インターネットの娯楽における視聴カテゴリのトップ5は、トップに美容関連のライブ配信、または配信の視聴、2位にプログラミングやデザインなどのオンライン学習、3位にはオンラインゲーム、4位に音楽や映画鑑賞、そして5位にはフィットネス、ヨガなどが並びます。次に、SNSの利用状況を見ていくと、注目ポイントはTikTok(中国国内では抖音、ドウインと呼ぶ)の躍進です。利用率でみるとWeChatが依然トップで80.8%ですが、2位のTikTokが78.6%まで拡大しています。これまでWeChatは圧倒的なトッププラットフォームでしたが、TikTokはライブ配信、ライブコマースの若者カルチャーの創出を武器に、ここ数年で認知度、ユーザー数ともに大きく伸ばしています。
中国でもゲーム文化の普及はめざましく、ゲームは一般的に男性ユーザーの多いエンターテインメントだと思われがちですが、今回の調査ではZ世代女性が最も時間をかけているゲームのトップ3に、王者栄耀(おうじゃえいよう)、和平精英(わへいせいえい)、League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)と、Eスポーツ競技のゲームタイトルがランクインしています。特にLeague of Legendsは世界で屈指のEスポーツ大会が行われるほど人気があり、中国でも女性専属のリーグやEスポーツチームが参加しています。TikTokなどのプラットフォームとの連携によって、Z世代女性のEスポーツ選手、ゲーム実況配信者も多く登場しています。中国では、ゲームは男女問わず、サブカルチャーからメインストリームになってきています。ちなみに、オフラインにおけるライフスタイル、娯楽のトップ3は、1位カラオケ、2位「密室脱出」(アトラクションゲーム)、3位ボードゲームとなります。
コスメ、ファッションともに中国国産ブランドへの支持が圧倒的
最後に、中国Z世代女性の消費動向を見ていきます。大きな特徴の一つとして、ファッションとコスメの両分野で「国潮(ぐおちゃう)」と呼ばれる、Z世代を対象とした国産ブランドカテゴリへの支持が大きく躍進、欧米の高級ブランドの支持を上回る傾向がみられます。図表3の支持するファッションブランドのカテゴリでは、トップにNIKEなどのスポーツブランド、2位に国潮と呼ばれる国産ブランドがランクインしています。代表的なブランドは、これまで本レポートで取り上げた「LI-NING(リーニン)」「Clot(クロット)」「SUPERTOFU(スーパートウフ)」があります。3位にはZARAをはじめとするファストファッションブランド、4位にはSupreme(シュプリーム)など海外のストリートブランド、そして5位に続くのがGucciをはじめとする海外の高級ブランドという結果になっています。
中国の国産ブランドが独自のカルチャーの形成に成功した背景には、海外ブランドに対する憧れやニーズが相対的に減少していると示唆されています。また高級ブランドに対する経済的要因も大きいです。図表2は、一カ月間のファッションに対する消費金額を表していますが、最も多い45%が501~2,000人民元(約9,600~38,000円)、次いで40%が500人民元(約9,600円)以下で、2,000人民元以下のこの2つの価格帯が、先述した中国国産ブランドのメインの価格帯に当てはまります。
また、図表4は、中国Z世代女性が支持するコスメブランドのカテゴリですが、ファッションと同様、コスメ、スキンケアそれぞれ、58%と42%で、海外ブランドを抑えています。ちなみに、中国Z世代女性はライブコマースしか利用しないイメージがありますが、実はオンラインでの購入、百貨店での購入もそれぞれ60%台に達し(図表5参考)、チャネルを併用していることがわかります。
今回のレポートでは、中国Z世代女性のリアルな消費行動を紹介しました。ゲーム、国産ブランドが台頭してきた背景には、世代独自の価値観、コミュニティの形成があり、それらが消費行動に反映され、その兆候をいち早く掴み商品面、価格面に投影した中国国内の企業のビジネスマーケティングがあります。これまで中国を主要な消費市場と位置付けてきた海外ブランドにとっては風向きが変わり、今後は商品企画、マーケティングにおいてこれまで以上に緻密に工夫されたローカライゼーションが重要となってくるでしょう。
出所
https://www.cbndata.com/report/2884/detail?isReading=report&page=2