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2022.04.14

RebeccaMinkoffがブロックチェーン技術を応用
WEB3.0はもう目の前
ファッションとデジタルの歩み

アパレルウェブ「AIR VOL. 55」(2022年1月発刊)より

Written by RINA

 皆さんは1993年から2002年にかけて放送された、毎回不思議な超常現象がテーマとなり世界中で大ヒットとなったSFドラマ「X-ファイル」を見たことはありますか。筆者の好きな海外ドラマの一つです。その中の「キル・スイッチ」というお話はエスタという女性と恋人のデビッドが、AIの中に自分の意識や記憶をアップロードし、電子生命として永遠に生きるという考え方を持つという内容でした。人工知能(AI)や仮想の世界が話の中に登場するもので、当時そのことにものすごく惹きつけられた事を今でも覚えています。今風に言い換えるとその頃から仮想の世界、つまりメタバースに強い関心を抱いていました。遠い未来だと思われた仮想世界ですが、デジタルテクノロジーの進化により現実となりつつあります。今回はアメリカにおけるデジタルテクノロジーの歩みやファッションとの関係性、そしてその未来を考えていきます。

デジタルでサステナブルな取り組みを

RebeccaMinkoff

 デジタルテクノロジーがファッションビジネスにイノベーションを起こすわかりやすい事例として、ファッションブランドのRebeccaMinkoff(レベッカミンコフ)とResonance(レゾナンス)の取り組みをご紹介します。2021年11月、RebeccaMinkoffはデザイナー、サプライチェーンの最適化、一括管理を実現するクラウドサービスの企業Resonanceとパートナーシップを組み、サステナブルな取り組みをスタートさせました。RebeccaMinkoffが発表したRMGreen(e)のコレクションアイテムでは、Resonanceのブロックチェーン技術を活用することで、サプライチェーン上のアクション(二酸化炭素の排出量や、生地や水の使用量、誰が関わったなど)を追跡することが可能です。また、このコレクションは受注生産のため割引のプロモーションや店舗での取り扱いは無く、商品の購入から発送までには10~25日程度となります。

サプライチェーンの最適化、一括管理を実現するクラウドサービスの企業Resonance

 実はこの構想は2017年のNYファッションウィーク中、ミートパッキング地区にあるサムソンのショップで開催されたイベントで、共同創設者であるウリ・ミンコフ氏が「ブロックチェーン技術を活用して、展開する商品のサプライチェーンを全て追跡できる様にしていく戦略を考えている」と話していたのです。このようなデジタル技術をどう自社のサービスやマーケティングに落とし込むのか。私たちの生活の中でWEBやデジタルの変化を振り返るとき、「WEB1.0」「WEB2.0」「WEB3.0」の大きく3つの時代に分けられます。まず、1990年代から2000年代初頭にあたるWEB1.0時代に、Netscape、Yahoo!やGoogleなどのポータルサイトが開始、アメリカではAOL(アメリカのインターネット接続サービス・ポータルサイト)もこの時代に誕生しました。

 当時はまだオンラインからAOLのサービスをダウンロードするのではなくIT系の雑誌などに付属されたCDでサービスをインストールしていた時代でもありました。また、日本では静かに、渋谷周辺のベンチャー経営者らが集った「ビットバレー」が誕生。時代の変化に敏感で、感度の高い企業が自社の“ホームページ”を作成していた頃です。続いて2000年中期から始まったWEB2.0時代。具体的にはSNSが誕生、情報を書いたり、読んだりという形にビジュアルが加わり、ソーシャルメディアは新たなステージへ進みました。以前からファッショントレンドはストリートから生まれていましたが、そうした情報が雑誌上だけでなく、ネット上でも発信されていったことで、ブロガーはいつしか“インフルエンサー(影響を与える人)”へ進化し、企業やブランドがパートナーシップを組みたいと願うほどの存在となりました。

2021年11月NYのタイムズスクエアで実施された「NFT.NYC」

情報を発信、検索、読む時代からソーシャルの時代へ

 当時はまだオンラインからAOLのサービスをダウンロードするのではなくIT系の雑誌などに付属されたCDでサービスをインストールしていた時代でもありました。また、日本では静かに、渋谷周辺のベンチャー経営者らが集った「ビットバレー」が誕生。時代の変化に敏感で、感度の高い企業が自社の“ホームページ”を作成していた頃です。続いて2000年中期から始まったWEB2.0時代。具体的にはSNSが私たちのライフスタイルの一部となった時代です。

 

 2004年にFacebook、2006年にTwitterが誕生、企業やブランドだけではなく、個人でも情報を発信、コミュニティをデジタル上で作ることが始まりました。デジタルで“発信する”ということが可能となったことで、ポータルサイトだけでなくブロガーの様な個人が情報を発信する(書く人)が急激に増えていった時代でもあります。更に2010年にはInstagram、2011年にはSnapchatが誕生、情報を書いたり、読んだりという形にビジュアルが加わり、ソーシャルメディアは新たなステージへ進みました。以前からファッショントレンドはストリートから生まれていましたが、そうした情報が雑誌上だけでなく、ネット上でも発信されていったことで、ブロガーはいつしか“インフルエンサー(影響を与える人)”へ進化し、企業やブランドがパートナーシップを組みたいと願うほどの存在となりました。

 

 また、WEB2.0時代の中期には、Googleがスマートグラス「GoogleGlass」をリリースし、Snapchatも2016年に「Spectacles」をリリース、この頃からVRやARを取り入れたマーケティングが行われていました。VRといえば「Oculus」がありますが、2014年にFacebookにより買収。2016年のホリデーシーズンではFacebookがOculusを紹介するポップアップイベントを開催し、当時筆者も体験しに行きました。その時の記事を振り返ってみると、「リテールとエンターテイメントで“リテールテイメント”なんて言葉を耳にするようになっているわけですから…」なんて事を書いています。既にこの頃(2016年)から少しずつWEB3.0へと時代は進み始めていたのでしょう。

再び大きく進化していく時の到来

NFTの聖地となるか!?「NFT.NYC」

 そして今、社会はデータの分散管理を目指すブロックチェーン技術を土台としたWEB3.0へシフトしていくのですが、2021年に入ってから「NFT」「メタバース」など、この新たな時代を象徴するキーワードを耳にする頻度が一気に増え始めました。そんな中、WEB3.0を語る際に頻出するNFT(非代替性トークン)について考えるイベント「NFT.NYC」がNYのタイムズスクエアで2021年11月に実施されました。初年度は参加者が約460名だったこのイベントも、3回目となる今年は約5,500人が参加し、参加チケットのウェイトリストには3,000人もの人々が登録されるまでに大きくなりました。この数字からもNFTの世界が急成長し、注目度が高まっていえると言えます。残念ながら、筆者はチケットをゲットすることが出来なかったのですが、少しでもこの歴史の変化を感じ取るべく、イベント中にタイムズスクエアの11個のビルボードに流し続けられたNFT.NYCやNFTのクリエイターたちの広告をチェックしにいってきました。

マンハッタンの金融街エリアにあるNFTを販売する店舗「NFTATM」

 NFT.NYCのイベントが開催された同時期には、マンハッタンの金融街エリアにNFTを販売するお店「NFTATM」が登場しています。「NFTATM」では、店舗で販売されているNFTがどのようなアイテムなのかがポスターで説明されており、購入する際は店内に設置されている自販機を使います。自販機で買いたいNFTを選び購入すると、タバコ箱のような物が出てきます。その中にはQRコードのカードがあり、スキャンすることSolanaのブロックチェーン上にあるNFTを所有したことになるようです。

 

 今はまだWEB2.0からWEB.3.0時代へと進化していこうとしている最中。これまでの様に私たちは成功や失敗を繰り返し、学びながら2022年も過ごしていくことになるでしょうが、そのスピードは益々加速しそうです。今各社が注力している「ECで商品を購入し、店舗で商品を受け取るカスタマージャーニー」も、“WEB2.0時代のビジネスの形”として少し前の形と言われる時代もそう遠くないと思います。WEB3.0の時代では、NFTやメタバース(仮想空間)といった新たな価値観や空間がより身近になるでしょうから、様々なサービスやマーケティングの仕方が登場し、また1から学んでいかなければならなくなりそうです。それを苦痛と感じてしまうのか、それともワクワクするのか。皆さんはどちらになりそうですか。


 

 

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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