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2022.02.25
メタバース、スーパーボウルから見えたWEB3.0時代の可能性
2月のアメリカというと、二つの大きなイベントがあります。ひとつは「ニューヨークファッションウィーク(以下、NYFW)」、そしてもう一つは「スーパーボウル」です。世界各国、さまざまな業界で新たな時代「WEB3.0」への関心が高まる中、この二つのイベントにおいても注目しておきたい変化を感じましたので、いくつか紹介していきたいと思います。
ニューヨークファッションウィーク(NYFW)
Alo Yoga x Roblox
2月11日~16日の6日間にわたり開催されたNYFWでは、ブランドのメタバースを取り入れたイベントの試みが行われました。
LA発のヨガのライフスタイルブランド「Alo Yoga(アロヨガ)」は昨シーズンに続き、NYFWオフィシャルウェルネスパートナーとして参加。同ブランドは、メンズ&レディースのアクティブウェア、ヨガマットなどのアクセサリー類を展開、最近ではビューティー商品も発売しています。いくつか店舗も出店していますが、その中でもLAやNYの店舗は、スタジオやカフェを備えた複合型店舗です。
今回そのAlo Yogaがオンラインゲーミングプラットフォームの「Roblox(ロブロックス)」とコラボレーションし、2月10日に「Alo Sanctuary(アロ サンクチュアリー)」というイマーシブな体験ができるメタバースをローンチしました。プレイするにはまずRobloxのユーザー登録が必要となります。筆者はこれまでRoblox上でNIKEやVans、Forever21などのゲームを試したことがあったので、今回はスムーズに参加できました。他のメタバースと同様に、ゲーム内では自分のアバターを使いプレイします。ゲームに参加し、Alo Yogaの「ストア」へ真っ先に行ってみました。フィジカルの世界の雰囲気を感じさせるデザインの店舗では、5色のヨガマットが棚に並び、その中から一つを選べます。好きな色を選択し、アバターはマットを片手に持ちながらゲームを楽しむ設定ですが、このマットは後にメタバース上でのヨガクラスに参加する際に必要となります。
実際にiPadを使って「Alo Yoga x Roblox」にアクセス
Alo Yoga x Robloxの特徴
- オンラインゲーミングプラットフォーム「Roblox」とコラボし、ゲームとウェルネスを融合。
- ウェルビーイングとメディテーションについての意識を高める大切さをゴールとしたイニシアチブ。
- ヨガやメディテーションが体験できる。
- リアル商品を購入するショッピング機能は無し。
- ファッションウィーク期間中は、フィジカルでもメディテーションのイベントを開催。
- 8種のヨガのポーズを教えてくれるエリアを探し、学ぶことでゲームをクリアしていく。
- 24個光る球を集めていくことでゲームをクリアしていく。
- メディテーションを体験することでゲームをクリアしていく。
ゲームに慣れていないと、どうやってプレイを楽しんだら良いのか焦ってしまう人もいるかもしれませんが、メタバースの中で他のプレイヤーがどのように動き回っているのか真似をしてみたり、また、チャットなどで他のプレイヤーに質問してみたりすることで、“なるほど“とすぐに遊び方は分かってきます。最初に選択したヨガマットを持ち、屋外でヨガを体験できる広場にも行ってみました。広場にはマットを広げられる場所がマークしてあります。“マットを敷く”ボタンを選択すると先ほどまで肩に担いでいたヨガマットを広げることができ、レッスンに参加する姿勢に入ります。広場に設置された大きなスクリーン上には、インストラクターによるヨガクラスが流れ、画面を拡大すると1-on-1のオンラインレッスンのような状態にも出来ます。プレイヤーはヨガクラスへの参加やメディテーションを試すことで、ゲーム内で一旦休憩しリフレッシュすることができるという狙いです。ヨガはどのくらい参加するかは自由ですが、メディテーションは1分、3分、5分と3段階用意されていました。
ゲームを進めることで得られる報酬として、1日メディテーションするとブランドのロゴが入ったスウェットを獲得することが出来ます。また、24個すべての光の球を見つけることでキャップを獲得、メディテーションを3日間行うことでレギンス、ソックス、タンクトップを獲得できます。さらに、5日間のメディテーションを達成するとジャケットが獲得できるといったように、複雑なルールはなく、誰でも楽しめるゲームだったと思います。
ブランド名の「Alo」は、Air(空気)、Land(大地)、Ocean(海)の頭文字を繋げたネーミング。その名の通り、メタバース上には海があり、樹々や岩、草が茂った丘があり、そして色使いや音からは澄んだ空気を感じられる空間が広がっていました。Alo Yogaは、WEB3.0時代の一つのキーワードである「メタバース」の世界に挑戦しながら、ウェルビーイングやメディテーションの大切さをユーザーに広く知ってもらう機会を今回作りました。ゲームを楽しみながらも、ヨガやメディテーションを通じてマインドをクールダウンすることの大切さを、ゲームという空間で体験させてくれたのです。
他の事例として、昨年9月に開催されたNYFWでは、Yahoo!がREBECCA MINKOFF (レベッカミンコフ)と3D NFTでコラボレート。そして今シーズンも再び、NYFWのオフィシャルイノベーションパートナーとして、Maisie Wilen(メイジーウィレン)と組み、ホログラフィックを使ったショーの発表とショッピングエクスペリエンスを展開しました。ホログラフィックを使ったショーはこれまでも度々開催されていることから、今後もコレクションやイベントで見る機会が増えると感じています。また、Altuzarra(アルチュザラ)はエコフレンドリーなNFTプラットフォームBubblehouse.com、そしてJonathan Simkhai(ジョナサン・シンカイ)はEveryrealmと組み、NFTをリリースしています。
スーパーボウル
スーパーボウルでのテレビCM放映後、各WEB3.0関連企業のアプリダウンロード数が急増
米国時間2月13日にカリフォルニアのSoFiスタジアムで開催された第56回NFLスーパーボウル。今回の試合ではシンシナティ・ベンガルズとロサンゼルス・ラムズが対戦し、ラムズが王者となった。白熱した試合もさることながら、ハーフタイムショーはJay-Z(ジェイZ)のプロデュースにより、ヒップホップにフォーカスされ盛り上がりました。Snoop Dogg(スヌープドッグ)、Dr.Dre(ドクタードレー)、Eminem(エミネム)、Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)、50 Cent(50セント)、そしてメアリー・J・ブライジが、パワフルなパフォーマンスで観客を魅了しました。試合やハーフタイムショーの他に注目されるのは、テレビ放映中に流れるコマーシャルです。このコマーシャル放映枠は超高額で、どのような企業やブランドが参加するのか、また、どのような特別な内容が放映されるのか、毎年話題となります。その中で今年は“クリプト”企業のコマーシャルが流れるだろうと事前に話題となり、その辺りも含め筆者も注目していました。
スーパーボウル中、FTXのテレビCM
スーパーボウル中に放映された仮想通貨関連のコマーシャル
- FTX
- COINBASE
- E TRADE
- CRYPTOCOM
- E TORO
中でも注目を集めたのは真っ黒な背景にQRコードだけが浮遊する「COINBASE」のコマーシャル。WEB3.0に関心がある人たちの間で、放映後は瞬く間にツイートされました。このコマーシャルでは最大およそ3億円分のビットコインを配布するというキャンペーンが告知され、コマーシャルのQRコードをスキャンすることが参加資格だったからです。こうしたキャンペーンはコインベースの他に、FTXでも実施されました。コマーシャルの効果は絶大だったようで、翌日iOSのアプリランキングを確認してみたところコインベースのアプリは2位にランクインしていました。
NFT、メタバースなどWeb3.0を代表する流れはNYFWから世界的なスポーツイベントまで認知が広がりつつある中、どう新しい顧客体験を創造するのか、消費者にどのように活用してもらいたいのか、今後のイノベーションの焦点にありそうです。
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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