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2022.01.28

両親はミレニアル世代
米国小売企業はスタートしているジェネレーション・アルファ戦略

 ジェネレーション・アルファ世代とは、2010年~2024年の間に生まれたグループで、最年少は乳幼児、最年長は10代に突入しています。親世代であるミレニアル世代とは人口統計や購買行動が類似しており、”ミニミレニアル”とも呼ばれています。推定250万人のアルファ世代が世界中で毎週誕生し、2025年までに20億人に達すると言われています。世代の特徴としては、他のどの世代よりも民族的に多様性があり、2020年のパンデミックでは、「#BLACKLIVESMATTER」、「#METOO」などの社会活動を目撃、SNSがもたらす社会の変化を経験しています。人種・年齢・性別を分けないインクルージョンをサポートするブランドが不可欠となることに加え、気候変動により荒廃した現代で育っているため、サステナブルを重要視する意識が自然と高い世代と言えます。また、生まれながらにして、高度にデジタル化された生活の中でAIやロボットとも触れ合い遊んでおり、仮想現実と物理現実の間をシームレスに移動して過ごしています。直接の購買層のターゲットとして考えるには早すぎるのですが、アルファ世代である成長期の子供への消費がその世帯の購入意思決定の鍵を握っており、米国企業はすでにアルファ世代を視野に入れたマーケティングを実施しています。

ザ・ノースフェイスの「The North Face Summer BaseCamp」の公式サイトより

アウトドアスポーツはメンタルヘルスと共に最優先事項

ノースフェスの「The North Face Summer BaseCamp」

 Morning Consultの調査によると、2013年〜2017年に生まれた子どもの3人に1人がテレビやストリーミングでスポーツ観戦をしており、アルファ世代もスポーツ好きとされています。しかし、マス向けの広告はこの世代が望む人生体験と異なるため、The North Face(ザ・ノースフェイス)は、テクノロジーを活用してアルファ世代が望む体験を提供しています。アルファ世代にとって、日頃からデジタル機器とのつながりが深い分、アウトドアスポーツや自然と関わるためには企業や親の意識的な努力が必要となっています。「The North Face Summer BaseCamp」は、世界中のアスリートのグループを結集して制作されたオンラインキャンプです。2週間のアウトドア教育プログラムでは以下のようなものがあり、子どもたちはどこにいても安全に参加できます。様々なジャンルのプロと一緒に行う半日コースのインタラクティブなアクティビティも含まれており、子どもたちが自宅の庭を利用して安全に参加しながら、アウトドアに対する好奇心を掻き立てるプログラムを展開しています。

アドベンチャーフォトグラフ

プロ登山家で写真家のジミー・チンに学ぶ、

壮大な自然のショットを撮るクラッシュコース。

Nina Williamsと一緒に

幾何学デザイン

登山家ニナ・ウィリアムスによる、裏庭で見つけた自然物から幾何学デザインをクリエイトする方法。

ASHIMA SHIRAISHIのSnack to Pack

(パッキングすべきスナック)

日系アメリカ人でクライミング選手のASHIMA SHIRAISHIによる、

登山に適したヘルシーで美味しいスナックの作り方。

Coree Walteringとマップ作成

ランナーのコリー・ウォルタリングによる、道に迷うことなく外に出るためのマップ作成とナビゲーション。

 ManoahAinuuによる

サバイバル・スキル

登山家マノア・アイヌウと学ぶ、荒野で生き残るための基本的なサバイバルスキル。

Hilaree Nelsonと一緒に

裏庭ベースキャンプ

山岳スキープレイヤーのヒラリー・ネルソンに学ぶ、エベレスト登山の大変さと、家庭でのキャンプ・パッキング方法。

アルファ世代をターゲットにしたブランドやマケティング例

 大手ビューティー企業のCOTY(コティ)は、2019年に買収した「カイリーコスメティクス」の姉妹ブランドKylie Baby(カイリーベイビー)を昨年10月にローンチ。香料・添加物フリーで、デリケートで敏感な頭皮にも安全に使用できるシャンプーやボディウォッシュなどの消費材を販売しています。ミレニアル世代をターゲットにした例も多く、P&Gでは、オムツのブランド「AllGood」をウォルマートで独占販売、また、キッズのサブスク企業DOPPLE(ドップル)は、Stitch Fix(ステッチフィックス)や、Fabletics(ファブレテイックス)などに類似したキュレーションスタイルのサブスクスタイルのオンライン企業で、2020年の収益を2018年から5倍に急成長させました。DOPPLEでは、Jannie&Jack(ジャニー&ジャック)のような子供向けブランドから、Stella McCartney(ステラマッカートニー)、Chloé(クロエ)、Versace(ヴェルサーチ)のようなハイブランドまで、現在は200以上のブランドの中からパーソナライズされた商品を提案するという体験を提供しています。ユニークな点として、両親も着用できそうなデザインを取り入れ、部分的にも親子でペアルックを実現させています。

DOPPLE(ドップル)の公式サイトより

SuperSmall(スーパースモール)の公式Instagramアカウントより

 また、雑誌ELLEのディレクターが立ち上げた「SuperSmall(スーパースモール)」は、Harry Winston(ハリー・ウィンストン)やTiffany&Co.(ティファニー)などのハイブランドジュエリーのミニプレイ版として、大胆でキラキラしたリングやネックレスなどをキッズ向けにデザインしています。例えば、ネイルキットに入っているイエローのドライヤーはパックマンのキャラクターを起用しており、親世代が子どもの頃に体験したノスタルジックなキャラクターやデザインを利用しています。SuperSmallの特徴的なビビッドイエローのパッケージはとても重要な役割を果たしており、Tiffany&Co.のボックスをもらった時に感じるゴージャスな特別感やワクワクするような体験を提供しています。フォーブス誌のインタビューによると、SuperSmallの商品の平均単価は27ドル程度で、高額な他のおもちゃに比べると手の届きやすい納得の価格帯に設定されており、2020年のホリデーシーズンの売上は、前年比416%と飛躍しました。

Piccolina(ピッコリーナ)

キッズアパレル&ファッション雑貨。従来、キッズ服では男子用、女子用とカテゴリーやイメージが固定されがちだったが、それらにとらわれず、昆虫学、ロボット、地質学など、テーマに基づいたデザイン性の高い服を提供。様々な女性先駆者を紹介するシリーズもあり、Piccolinaのコンセプトは昨年のファストカンパニーの最も革新的な企業10社に選出された。

Yoto Player(ヨト・プレーヤー)

YouTubeやゲームなどに没頭する時間の代替アイテムとして登場。カードを差し込んで、キッズ向けのオーディオブックやポッドキャストを聞くことができる、キューブ型のプレーヤー。幼児向けの「くまのプーさん」から、小学生キッズ向けのストーリーなど、様々なコンテンツが充実。カードの価格は一つあたり6~12ドル。

Loop Baby(ループベビー)

ベビーカーやおもちゃなどの月額レンタルサービス。月に2アイテムのレンタルで18ドル、年間契約の月額はアイテム数無制限で月額12.42ドル。成長の早い子どもに様々なプロダクトを触れさせたい両親に支持を得ている。

Maisoneette(メゾネット)

2017年に、2人のママにより設立。世界中の最高峰のブランドから高品質で安全なスタイリッシュな洋服、おもちゃ、ギア、ホーム雑貨など約800種類をキューレーションしたサイト。

Ten Little (テン・リトル)

医師が承認したキッズシューズ。無料のfitfinder機能を使い、簡単な質問に答えることで、子どもの足にフィットするサイズを見つけることができる。Sole4Soulとの提携で、成長して履かなくなった靴を無料で寄付することができる社会貢献事業も展開。

参考:その他、ミレニアル世代の親をターゲットにしたキッズブランド

 米国最大の玩具メーカーマテル社でも「ゴーグリーン!」戦略により、1971年の発売以来ロングランヒットを続けているカードゲームUNO(ウノ)において、セロファン包装をやめ、完全にリサイクル可能な素材や大豆ベースのインクを使用した環境に優しい「Nothin’ButPaper」シリーズをリリースしました。こういった例は始まったばかりですが、次世代の小売マーケティングの未来と言えます。ライフスタイルや環境が変われば、望まれるものも変化しなければなりません。かつては筆者も、米国のスナック菓子やのど飴などがむき出しで箱に入っている雑なパッケージに驚いたものですが、これからは逆にそれらが環境に良いと支持されるようになるのかもしれません。

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