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2021.12.17

【Special INTERVIEW】
ターニングポイントはTwitterの投稿
起業4年目で日商1,000万円を達成した
女性向け下着ブランド「BELLE MACARON」

アパレルウェブ「AIR VOL. 52」(2021年10月発刊)より

 

小島 未紅 氏
株式会社 ashlyn 代表取締役
Twitterアカウント:@milkonPANDA

 2016年に誕生した女性向け下着ブランドのBELLE MACARON(株式会社 ashlyn)。デザイン性と着け心地を両立させた同社の商品「24hブラ」はシリーズ累計販売数1万枚を突破する大ヒット商品となっています。その勢いのまま2020年7月には日商1,000万円を達成、また購入者の翌月のリピート率は平均で約70%になるなど熱心なファンも急増しています。破竹の勢いで成長を続ける同社ですが、代表の小島未紅氏は元システムエンジニアという異色の経歴の持ち主で現在も1人でブランドを運営しています。有名ブランドからD2Cブランドまで多くのブランドが割拠する女性向け下着の市場で、普通のOLだった小島氏が1日に1,000万円も売るブランドをなぜ作れたのか?商品開発の裏側から認知を高めるためにした取り組みまで、その秘密を伺いました。

オシャレで機能性の高い下着がほしい!
この想いから1人で立ち上げたBELLE MACARON

BELLE MACARONを立ち上げたきっかけを教えていただけますか?

 BELLE MACARONを立ち上げる前は、システムエンジニアとして働いていました。システムエンジニア時代は、長時間働くことも珍しくありませんでした。その中でブラジャーの着用が苦しくなったり、体にブラジャーの跡が残ってしまったりなど、バスト周りのストレスがありました。着用時のストレスを軽減する機能性の高いブラジャーも当時からあったのですが、その中には私がオシャレと思うブラジャーはなく、オシャレなブラジャーを着用したいのに、着用するとストレスがたまるという葛藤がありました。この機能性とデザイン性を両立させたブラジャーをつくりたいと思ったのが、2016年の頃でした。その後、株式会社ashlynを設立して、デザイナーと工場を探し、2016年9月にブラジャーの開発を本格的に開始、2017年7月にECサイト「BELLE MACARON」を立ち上げました。

立ち上げ当初からBELLE MACARONはよく売れていたのでしょうか。

 全くそんなことはありませんでした(笑)。家には商品の入ったダンボールが積みあがり、数はいつまで経っても減らない状態でした。ただ、起業を決意したときから「ECサイトをつくるだけでは、売れない」とある程度の覚悟と想定はしていたのでリスクヘッジをする形で、派遣社員としてフルタイムで働いていました。なので、商品が売れないから食べていけないという状態ではありませんでした。その間に商品の改良に注力をして、商品の品質向上に努めました。これが2017年11月頃です。その後2019年3月にTwitterで話題となり、1日で10万円を売り上げるなど、売上が増加していき、2020年7月には日商1,000万円を達成することができました。

BELLE MACARONが設立された2016年から2021年までの出来事
(Twitter:@milkonPANDAより)

BELLE MACARONがここまで成長した要因はどこにあるのでしょうか。

 試行錯誤しながらも2つの壁を乗り越えた結果、今に至ると思っています。その壁とは“商品を作る壁”と“売るための壁”です。“商品を作る壁”は文字通り、商品を作ることに壁がありました。特別なコネクションも技術も無い普通のOLがブラジャーを作るには、まず知識の面で勉強が必要でした。その後、工場を何とか探し、商品開発と生産を平行して進めるのですが、今ECで販売している24hブラは商品開発に約2年(2016~2018年)かけています。そのうち約1年は商品改良に費やした期間です。24hブラは“体型・バストラインに合わせてぴったりフィット”“ノンワイヤー・ノンホックで夜までラクちん設計”“こだわりの補正力でバストラインはしっかりキープ”“ふんわりとした丸みのある美胸ライン”の4点を強みとしています。シンプルにレース素材でできた、ノンワイヤーブラと思われがちですが、それだけでは“バストが揺れない”という問題を解決することはできません。“バストが揺れない”ということはホールド力が高くなるので、締め付けが強くなる傾向にあるからです。そうなると今度はバスト周りのストレスが発生します。その点24hブラは、バストが揺れず、着用時のストレスが無い着け心地を、改良に改良を重ねて実現しています。この2点を両立させたことが、お客様に共感頂き、ご購入頂いている⼤きな理由だと思っています。

突破口はTwitter約5万いいね!を獲得した投稿

売れない時代から試行錯誤した結果、2018年11月に24hブラが誕生したのですね。

もう1つ壁である“売るための壁”というのは具体的にどのような壁だったのでしょうか。

 “売るための壁”というのは具体的にはどう存在をアピールしていくのか、認知を広めていくかの壁です。かなり苦労したのですが、ここで活躍してくれたのがTwitterでした。Twitterでは、当時から「こじみく24hブラのプロデューサー(@milkonPANDA)」として、ライフハック系の投稿をしていたのですが、2019年3月にツイートした“ブラジャーの干し方”が約5万いいね!を獲得してバズったのです。正直、これは想定外の反響でした。そして「おかげ様で話題になっているので」という形でBELLE MACARONに関連するコメントをしたところ、1日で約10万円分の商品がTwitter経由で売れました。また、購買した人がポジティブな感想をツイートすることで、新しいお客様がBELLEMACARONを認知、そのままご購入を頂くというサイクルも⽬にしました。この一連の体験は「Twitter経由でも商品が売れるんだ!」ということを実感した瞬間でもありました。

“体型・バストラインに合わせてぴったりフィット” “ノンワイヤー・ノンホックで夜までラクちん設計”など

4つの特徴がお客様に支持されている

ファッション企業のSNSではInstagramも重視されています。

Instagramの活用はどうでしょうか。

 Instagramも2019年から運用していたのですが、商材との相性はあまり良くないのでは?と正直感じていました。具体的にお話をすると、当時のInstagramは写真うつりや華やかさといった“映え”が相当重視されていて、アパレルのアカウントで“映え”を求めるには投稿のバリエーション、つまり商品のバリエーションが重要であると感じていました。実際に他社様の場合、商品が数十種類あり、色々なデザインの商品を投稿することで“映え”に繋がっていました。

 

 一方でBELLE MACARONの商品は24hブラしかなく、カラーバリエーションも当時は4種類しかなかったので、5回⽬以降の投稿がほぼ同じ投稿になり、“映え”を重視したバリエーションの投稿が難しかったのです。今でも当時のInstagramの投稿はユーザーからの反応が乏しかったのを覚えています。実はTwitterで反響があった“ブラジャーの干し方”も当初はInstagramで投稿していた内容だったのですが、反応がなく、もったないからTwitterにも投稿してみようというスタートでした。すると一気にいいね!やリツイートがつきました。

BELLE MACARONの場合、画像だけでなく、文章も重要になるTwitterの方が相性は良かったのですね。今や多くのフォロワーがいるアカウント(@milkonPANDA)ですが、Twitterで話題になる投稿の共通点やポイントがあれば教えてください。

 Twitterは拡散性の高さがとても魅力的だと思っていて、リツイートをしてもらえるかな?という⽬線は意識しています。ポイントは⼤きく2つあると考えています。1つは「保存してもらえる投稿かどうか」です。リツイートする際の動機として、有用な情報なので保存するためというケースは多いと思っていて、そこに当てはまる投稿かどうかはポイントだと思います。2つ⽬は「フォロワーや友達に教えたい投稿かどうか」です。面白い画像や珍しい画像が爆発的にバズっているのも、辿っていくとこの動機に当てはまると思います。この2つのどちらか、あるいは両方に該当するかどうかがポイントだと考えています。今振り返ると、バズッた投稿としてお話をした“ブラジャーの干し方”も保存をしておいて、後で見ようというユーザーが多かったからなのかなと考えています。また、既婚の方が“ブラジャーの干し方”をリツイートすることでパートナーが反応して、実際に干し方を変えてくれたというツイートもありました。まさに「保存」と「教えたい」という2つの動機に当てはまった投稿でした。

左:2019年3月に投稿された“ブラジャーの干し方”。約5万いいね!を獲得する投稿となった
右:“下着ブランドの特徴まとめ”など「保存」「他の人に教えたくなる」に関する投稿はいいね!伸びる傾向に

確かに小島さんのアカウントでは、自社の商品に関する投稿だけでなく、保存したい!教えたい!というライフハック的な要素が盛り込まれた投稿も⽬立ちます。

 そうですね。自社の商品を宣伝するだけのアカウントだと宣伝アカウントになるので、OLからブラジャーのプロデューサーになったという⽬線で、フォロワーさんの役に立つ投稿は心掛けています。また、フォロワーからは信頼性のあるアカウントと認識してもらうことで、Twitterからの購入率も上昇しているのを実感しています。ブラジャーに詳しい、課題を解決したい小島がTwitterでその思いや考えを投稿しているという、一種の透明性がフォロワーの増加、売上にも繋がっているように感じます。

最後にBELLE MACARONのそして小島さん自身の今後の⽬標を教えていただけますでしょうか。

 ⼤きく3つ⽬標はあります。1つはブランドを、年商10億円規模のブランドまで成長をさせることです。リピートをして頂いている方からは「もっと早く出会いたかった」「バスト周りのストレスから解放されて人生が変わった」というお声を多く頂戴しています。裏を返すと同じ様な悩みやストレスを抱えている方は、まだ多くいるのかなと感じており、BELLE MACARONを知らず、バスト周りで悩んでいる方にも届くぐらい⼤きなブランドになりたいですね。2つ⽬は海外展開です。今は国内のみの展開なので、海外にも販路を拡げたいです。

 

 3つ⽬は個人の⽬標になりますが、キャリアに悩んでいる女性のロールモデルや⽬標としてありたいと思っています。昔から安定志向でシステムエンジニアとして企業にも就職した自分が、ブランドを立ち上げるとは全く思っていませんでした。最近では、モデルの方や元アナウンサーの方といった華々しい経歴の方々がインフルエンサーと兼任する形でブランドをプロデュースすることも多いですが、そうした経歴を持っていない私の様な一般人でも、共感性の高いメッセージを発信して、商品の魅力を伝える場やプラットフォームがあるのは今の時代だなと感じています。この私のキャリアはユニークなキャリアだと考えていて、この道を選択して良かったなと思うことも多くあります。これから更に私自身の発信力を強め、同じ境遇で悩んでいる、迷っている女性のヒントとなる発信をしていければと思っています。

AIL取材を終えて

 魅力的な商品をどうお客様に伝えて、認知していくのか。これは各社が⼤なり小なり抱えている課題だと思います。BELLE MACARONの場合、その突破口となったのがTwitterでした。ただし、これはTwitterを活用すれば良いというシンプルな話ではなく、深掘りをしていくと、小島氏がTwitter上で信頼できるアカウント(人)だからこそ、⼤きな反響を呼んでいると思いました。この“信頼”というワードが非常に重要で、今回のケースでは「自社の宣伝だけでなく、フラットな⽬線で下着に関する、役立つ情報を投稿している」「ブランド設立の理由が小島氏の実体験や課題解決が基点となっていて、ストーリーに共感がうまれている」といった点が信頼できるアカウントに繋がっているのではないでしょうか。つまり「小島氏=女性用下着のスペシャリスト=BELLE MACARONの代表」という構図から、ユーザーの信頼を得て、BELLE MACARONの認知、売上に繋がっていると感じました。どのような想いでブランドや商品が成り立っているのか?その市場、領域のスペシャリストとしてフラットな投稿ができるのか?この両方を満たせるブランドがTwitterを活用したとき、それはもうバズが発生する一歩手前まで来ているのかもしれません。

 

株式会社ashlynの公式ページ:https://www.ashlyn.co.jp/
BELLE MACARONの公式ECサイト:https://www.bellemacaron.shop

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