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2021.12.02
米国のサラダチェーン「Sweetgreen」上場、「ヘルシーブランディング」の秘密に迫る
この数ヶ月で、ファッションレンタル事業の先駆けである「Rent the Runway」、アイウェアD2Cブランド「Warby Parker」、フットウェアD2Cブランド「Allbirds」など、D2Cブランドが相次いで上場していますが、先日、米国のサラダチェーン「Sweetgreen (スイートグリーン)」が米国時間11月18日午後にニューヨーク証券取引所(NYSE)で上場しました。
ティッカー(銘柄コード):SG
株価幕開け:$52.00
初日最終値:$49.50
Sweetgreen は、1985年生まれの3名の共同創業者、Johnathan Neman(ジョナサン・ニーマン)、Nathaniel Ru(ネイサニエル・ルー)、そしてNicolas Jammet(ニコラス・ジャメット)によって創業されました。約15年前に名門私立ジョージタウン大学で出会った3名は、当時、ヘルシーで美味しいファストフードをもっと手軽に得ることが出来ないかと考え、サラダのファストフードチェーン「Sweetgreen(スウィートグリーン)」を創業、そして2007年、Sweetgreenの一号店がワシントンD.C.に出店されました。
Sweetgreenの公式サイト
現在は米国13都市で140の店舗を出店していますが、今後3~5年かけて倍の出店計画をしているといいます。同社の上場日、社長兼CEOのジョナサン・ニーマン氏はCNBCニュースのインタビューで、“私たちは自分たちの時代のマクドナルドを作りたい“と語っていました。
近年成長している食品や飲料水系のブランドは、健康が軸となっていることが多く、そのサービスは常に進化しています。Sweetgreenももちろんそのブランドの一つで、提携農家が生産する新鮮な食材で作られるSweetgreenのサラダは、ヘルスコンシャスな人々の間で瞬く間に人気に火がつき、出店数は着々と増加しています。筆者が暮らすニューヨークのマンハッタンにも多数出店していますが、ランチタイムには毎回長蛇の列ができていて、それでもなお、Sweetgreenのサラダが食べたい人々はすでに20~30人並んでいようが気長に列を作っています。サラダと聞くと女性客が多いと想像されるかもしれませんが、Sweetgreenの客層には男性客も非常に多く見られます。
2016年には専用のモバイルアプリがローンチされ、ライフスタイルの変化やニーズに沿ってサービスが進化しています。アプリでの注文方法はシンプルで、起動後、まずは注文をピックアップする店舗を選び、その後注文したい商品をメニューから選んでいきます。メニューから選んだサラダは、具材をカスタマイズすることも可能です。苦手な物があれば、取り除くことも、他の具材へと変更することもできます。それら全てがアプリで簡単に出来るので、今日はサラダを食べると決めているのであればアプリから事前に注文しておくのが楽だと思います。また、アプリ上でキャッシュレスサービスも利用可能となり、事前に決済方法をアプリに登録することで、注文から決済までアプリで一貫して完了することが出来ます。
メニューには、サラダ中心のものからキヌアや雑穀米が加わったメニューもあります。また、チキンやサーモンが入ったサラダなどもあり、サラダと聞くと小腹を満たす程度と思われがちですが、豊富なメニューに加え食べ応えや満足感もこのブランドの特徴です。価格は10ドル台と、鮮度やボリュームを考えると妥当な価格設定で、何よりもヘルシーだと感じられるところが魅力です。提携農家は200以上にも及ぶそうで、食材がどこから調達されているのかは店舗にあるチョークボードで確認することが出来ます。自分たちが体に取り入れる食材を自身で確認できることも顧客にとってはブランドに対する信頼に繋がり、実際に筆者もこれまでリピートしていますが、鮮度が落ちたと感じたことは一度もありませんでした。
公式サイトではサラダの栄養情報の詳細を説明
専用アプリのローンチから2年後には、オフィスに小さなキオスクを設置し注文を配達する「Outpost(アウトポスト)」というサービスを開始しました。その後、アプリの改善はもちろんですが、デリバリーサービスも開始され、メニューはサラダ以外にもサイドメニューが加わるなど幅が広がり、着々と便利になっています。
2019年にWeWorkの新業態としてマンハッタンに出店されたシェアオフィス「Made by We」では、スタートアップの創設者やビジネスの重鎮をスピーカーに招いたイベントが頻繁に開催されていました。その中でSweetgreen共同創設者のニコラス・ジャメット氏がゲストとして招かれた回があり、日頃からSweetgreenをよく利用していた筆者も参加しました。当時、店舗数はまだ100店舗に満たない数でしたが、ユニコーン企業(時価評価額10億ドルを超える未上場のベンチャー企業を表す)としてSweetgreenは既に注目されていました。
イベント当時の様子
そのイベントで印象に残っているエピソードのひとつに、ニコラス・ジャメット氏が“食業界だけにこだわらず、異業種でディスラプトを起こす企業からインスピレーションを見つけていた”と話していたことを思い出します。ビジネスヒントが欲しい時、同じ業界で成功しているブランドの事例に着目してしまいがちですが、やはり新しい風を吹き込むディスラプターは、あらゆる業界からヒントをキャッチし、マネするのではなく自己流の成功法を見出すことで抜きんでていくのだろうと刺激を受けたことを思い出します。
Sweetgreenというブランドは「健康」、「サステナビリティー」、そして「ミッションを持つブランドと繋がりたい」と顧客が抱く関心3つを全て備え、様々な角度からブランドと顧客が繋がるコミュニティを形成するノウハウを持っています。イノベーションを続け、コミュニティを広げている同社はきっと、“グローバルブランドとして確立する”という夢を叶えていくのだろうと筆者は思います。
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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