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2021.09.15

【2022春夏NYコレ ハイライト1】フィジカルショーを再開したNYFW ダイバーシティーとサステナブルへの取り組みがさらに増加

 ニューヨークでは、2021年9月8日から12日までニューヨークファッションウィーク(NYFW)が開催された。前回はほとんどがデジタル配信だったが、今回は対面式のリアルなランウェイや展示会を打ったブランドも出てきたのが特徴だ。

 

 ワクチン接種が進んだニューヨークでは、18歳以上の住民でいうと、70%が接種済みとなっている。しかしながら、デルタ株による感染が増えているのも事実だ。その事態を考慮して、対面式でランウェイを行う場合は、屋外で行ったり、人数を制限したりするようにしており、また入り口ではワクチン接種済みを表す「ワクチンパスポート(エクセルシオールパス)」の提示が求められる。現在、レストランの飲食も室内ダイニングにはワクチンパスポートの提示が必要とされ、美術館や劇場、コンサートでも同じく提示が必要とされる。ワクチン接種者と、未接種者を分けて、デルタ株感染拡大を防ぎつつ、ビジネスを回していこうとするニューヨークの姿勢が見てとれる。

 

 また美術館では、ブルックリン美術館で「クリスチャン・ディオール:夢のクチュリエ」展が開催され、ことに「ディオール(Dior)」とニューヨークとの関係にフォーカスした展示が見られる。メトロポリタン美術館でも服飾研究所による「In America: A Lexicon of Fashion(アメリカにて:ファッションの語彙目録)」展覧会が13日から開催された。ニューヨークの二大美術館で相次いでファッションの展覧会が開かれ、観光客も多く訪れることになりそうだ。

 

 2022春夏コレクションの流れをいうと、モデルのキャスティングから、服のジェンダーの在り方までダイバーシティが進み、サステナブルへの取組みも高まっているさまが見られた。ファッション界がようやく動きだしたニューヨークから、2022春夏コレクションのハイライトをレポートしよう。

モスキーノ(MOSCHINO)

 雨降りのブライアントパークで、9日にランウェイを行ったのが、「モスキーノ」だ。芝生に並べられたフロントローには、タレントの渡辺直美、けみお、そしてハリウッド女優のタラジ・P・ヘンソンも登場。

 

 クリエイティブ・ディレクターのジェレミー・スコットは、コットンキャンディのような色彩パレットで、ファンタジーのような世界を描いてみせた。かつてブランドの創業者であるフランコ・モスキーノが手がけたよう60年代調のセットアップスーツに、ジェレミーらしいウィットとユーモアを織りまぜる。目を引くモチーフは、まるで子供服についているようなアニマルプリントだ。凧あげをするクマや、花冠をかぶったプードル、花をもったスカンクといったキャラクターがドレスやスーツにあしらわれ、あるいはボタンがアニマルの形をしているといった、まさにKAWAII世界が広がる。

 

 ミニのスーツはビスチェのブラを組み合わせ、サテンキルトのベイビードールコートにはアニマルプリントが施され、セクシーさとチャイルドドリームをミックスさせる。バッグもかわいらしく、「メリーさんの羊」のバッグや積み木の形のバッグが登場する。コレクションの最後を飾るのは、刺繍で描かれた動物園だ。3Dのポニーが肩からデコルテから飛びだしたドレスや、うさぎの耳が飛びだしたドレスなど、甘さとユーモアを取り混ぜたスタイルでフィナーレを飾った。

 

 モデルたちの多様性も特筆すべきところで、プラスサイズのモデルや、まだら肌のモデルとして著名なウィニー・ハーロウに加えて、電動車椅子のモデルも登場した。インクルーシヴを打ち出すジェレミーらしいメッセージとなっていた。

アディアム(ADEAM)

 「アディアム」は、8日にデジタルランウェイでコレクションを発表した。今シーズンのテーマは“ADEAM アイランド”。CG合成で、バーチャルな南国の島を作り、そこをモデルたちが歩いて行くという趣向だ。

 

 トロピカルなモチーフのプリントがちりばめられ、クロップト丈の格子縞ジャケットには、ゆったりとしたシルエットでウエストを締めつけないラグーンパンツを合わせる。サマーツイードのワンピースやショーツも、リラックスした南国気分をかもしだす。

 

 カラーパレットはピーチ、ベージュ、ミストブルーといった色彩が軽やかだ。また「アディアム」らしく絞り素材を異素材ミックスさせるディテールも心憎い。南の島のテーマにふさわしく、リラックスした空気のあるコレクションとなった。

タダシ ショージ (TADASHI SHOJI)

 NYファッションウィーク常連の「タダシ ショージ」は8日に、2022春夏コレクションをデジタルで発表した。1920年代のジャズエイジにインスピレーションを求め、当時の映像と、現在のルックを組みあわせて演出してみせたのが面白い。コロナ禍のせいで全世界が自粛生活で我慢を強いられてきたが、それが終わる時が来たら、自粛していたパーティーをしようという前向きの願いがこめられていて、コレクションはとても華やかだ。

 

 フラワープリントや繊細なレースをあしらったエレガントなスタイルを提案して、エメラルドグリーン、クォーツピンク、コバルトブルーといった色彩パレットもゴージャスだ。刺繍もデコラティブで、20年代によく見られた弧を描くような刺繍に、きらめくスパンコールのフリンジは動きを引き立てる。シルエットはロング&リーンなスタイルが多く、ジャズエイジらしい流動的なエレガントを表現した。

サンク ア セット(Cinq à Sept)

 「サンク ア セット」は、8日に対面式のプレゼンテーションを披露した。ビルの63階にあるバルコニーで、マンハッタンの眺望を見下ろしながら、2022春夏コレクション25ルックを見せた。今季のインスピレーション源は、90年代のガールズドラマ「アンジェラ、15歳の日々」で、また人々が出会ってドレスアップするという明るいイメージを打ち出してみせた。

 

 ファーストルックのグループは花柄やフリルドレスや、ピンクのベビードールのミニドレス、パステルのペイズリープリントが施された綾織地のジャケットとショートパンツなど、スイートでフェミニンだ。今季のキーはドレスで、レモンメレンゲのベースに黒いレースをかぶせたミニドレスやレモンイエローのシルクで作られたロングドレスなど、フェミニンさが表現されている。格子縞のラッフルショーツやキルト地のラップジャケットなども目を引く。

 

 カラーパレットはクォーツピンクや淡いパープルなどのパステル、さらにコーラルなどの明るい色など、明るい色調が主流で、花柄や格子柄が打ち出されている。フレッシュで明るく、リラックス感あるコレクションとなった。

3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)

 「3.1 フィリップ リム」は今季、店舗でのアポイントメント方式で、2022春夏コレクションを発表した。今季はテーマを“ウーマン・イン・ブルー”として、女性のパーソナリティが進化。あるいは自己変革していくことを表現したという。

 

 メンズライクなジャケットやコートに、袖口や裾にフリルをあしらったドレスなど、フェミニンとマスキュリンをかけ合わせたスタイルを打ち出している。また機能性を兼ねそなえていて、たとえばアイテムについているベルトや紐を垂らしたり、結んだりすることで、着こなしの変化が楽しめるのも特徴だ。

 

 素材にはリサイクルのポリエステル、あるいはリサイクルポリエステルとウールなどを積極的に使ってサスティナブルな取組をしている。色彩パレットはベージュなどのベーシックなカラーに、グリーン、オレンジ、ブルー、ピンクといった鮮やかな色彩が混ぜ合わされ、またグリーンとオレンジ、ピンクとパープルとグリーンという個性的な格子縞も目を引いた。

ケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)

 「ケイト・スペード ニューヨーク」は8 日に、ミートパンキングエリアのガーンズボートプラザで、インスタレーションを披露した。ブランドのホームタウンであるニューヨークのニックネーム、「ザ・ビッグ・アップル」にひっかけて、期間限定りんご園をオープン。2021秋冬シーズンの限定カプセルコレクション I LOVE ニューヨークコレクションをお披露目した。

 

 ケイティ・ホームズやビーニー・フェルドスタイン、渡辺直美らが、「ケイト・スペード ニューヨーク」のコレクションに身を包んで、登場。遊び心溢れる新作を発表した。

コーチ(COACH)

 「コーチ」は、マンハッタンに新しくできた人口の島「ハドソンリバーパーク」で、11日にリアルなランウェイを打った。今季、クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァースは、初代デザイナーであるボニー・カシンのアーカイブからデザインを掘り起こし、現代の視点で生まれ変わらせてみせた。

 

 明るい色調のアメリカンスポーツウェアに、ボクシーなカットのアウター、膝丈のハーフパンツ、ローライズのデニムから下着を覗かせる着こなしなど、スケボーカルチャーの要素が盛りこまれ、クラシックを次世代へとつなげてみせる。トロンプルイユのトップスに格子縞のフレアードパンツ、あるいはニューヨークのサブウェイや名所のセレンディピディ3のロゴを施したTシャツなど、レトロなモチーフをアップデイトしてみせる手腕も鮮やかだ。

 

 またSDGsにも積極的だ。アップサイクルデニムで仕立てたレディトゥウェアや、環境に責任をもつレスポンシブルレザーと、野球のグローブをアップサイクルしたレザーを使用した「カシン・キャリー・トート」も登場して、ブランドのサスティナビリティな姿勢を打ち出した。

マイケル・コース(MICHAEL KORS)

 「マイケル・コース」は、10日にセントラルパークにあるタバーン・オン・ザ・グリーンで、リアルなランウェイを開催した。今季は“アーバン・ロマンス”をテーマとして、フェミニンなテーラリングと、ロマンチックなモチーフを披露した。

 

 ファーストルックは、ケンダール・ジェナーが着こなすブラトップと、ハイウエストのタイトスカートで、緻密なテイラリングが美しい。襟元を広げたオープンポートレイトカラーのジャケットやコート、たっぷりとしたサーキュラースカート、アイレットやレースのアイテムで、ロマンチックな世界を繰り広げる。ブラトップやクロップ丈のトップでミッドリフを見せ、オフショルダーのネックラインでセクシーさを添え、ギンガムチェックのシャツをスリムでクロップ丈のトレドールパンツと合わせてみせた。

 

 パターンは、シャドウの花柄モチーフ、豹柄、ギンガムチェックなどを、色彩パレットは都会的なブラックから、ペタルピンク、ヌードやペタルピンク、パウダーブルーといった軽やかな色彩をちりばめ、明るいロマンチックさを提案してみせた。

 

取材・文:黒部エリ

 

「ニューヨーク」2022春夏コレクション

https://apparel-web.com/collection/NY

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