PICK UP
2021.09.09
畏まったメールアンケートはもう古い?!
米国の人気アンダーウェアD2CのInstagramストーリーズに見る、顧客を巻き込むSNS活用方法
Written by AIR編集部 小川祐佳

「Parade(パレード)」のECサイトより
アメリカ発のアンダーウェアD2Cブランド「Parade(パレード)」。SNSにおけるコミュニケーションに長けているのがD2Cブランドの特性でもありますが、同ブランドのInstagramの投稿やストーリーズの更新内容が、なかなかエッジが効いていて面白いので、いくつかシェアしたいと思います。
Paradeは、2019年10月、当時コロンビア大学に在籍中だったCami Tellez氏によって設立されたアンダーウェアD2Cブランドです。カラフルでハッピーなデザインに加え、豊富なサイズ展開(XS~3XL、DD-Fカップサイズに対応+オプション)が特徴で、素材についても、独自でサステナビリティ素材の開発までを手掛け、2022年末までに完全にカーボンニュートラルになることを目指したサステナブルブランドです。
同ブランドが支持される理由には、もう1点、Paradeが主張する「inclusive」というメッセージとそれに基づいたコミュニティ形成があります。このメッセージはとりわけ、人種差別、白人至上主義など数々の社会問題があるアメリカにおいては、米国の大部分を占める外来移民から支持を受けているといいます。Paradeが重要視する”inclusive“は、様々な肌の色・体型のモデルが起用されているブランドイメージからも感じられることができます。
先日、Paradeのストーリーズが細かいアンダーバーを刻んでいたので開いて見たところ、サステナビリティや素材に関する内容から、はたまた新商品にいたるまで、ストーリーズの「アンケート機能」「スライドバー機能」をうまく活用してユーザーに沢山のアンケートを投げかけていました。
そこで筆者も早速参加!UIもポップで、シンプルかつフランクなアンケートだったので、参加ハードルはかなり低いのが特徴です。また、このアンケート機能に答えたことがある人なら分かると思うのですが、自分が回答すると、全体の回答結果がすぐに表示されるのも、魅力の一つ。他のフォロワーがどんな回答なのか?知ることができます。これはもはや立派な顧客マーケティングに匹敵すると感じたので、一連の内容をご紹介します。ブランドのInstagram活用実例として、是非チェックしてみてください。
ブランドの方向性をファンと答え合わせ!
Paradeのストーリーズのアンケート内容とスクリーンショットを一挙に紹介していきます。
What is more important to you? (あなたにとってどちらがより重要?)
-Sustainability(サステナビリティ):59%
-Comfort(快適さ):41%

サステナブルを謳っているブランドですが、ユーザーは意外と、サステナビリティの意識よりも快適さを重要視する人の方が多いようです。これはアンダーウェアブランドの特性でもあるかもしれません。
How about…(天然繊維とファッションスタイルならどちらを取る?)
-Natural fibers(天然繊維):78%
-Fashion styles(ファッションスタイル):22%

前項のサステナブルと快適さを選択する質問では回答が半々にわかれましたが、こちらの質問からは、流行よりも天然素材やナチュラルスタイルを選ぶユーザーが圧倒的に多いことがわかります。
If we were to launch loungewear, which words would you resonate with you most?
(ラウンジウェアを発売する場合、どの言葉に一番共感しますか?)
-“Cloud-like”(ふわふわ):76%
-“Ultra-plush”(もこもこ):24%

個人の感覚で日本語訳してみましたが、“ふわふわ”と“もこもこ”、実際どちらも部屋着の条件には譲れないですね!皆さまはラウンジウェア(部屋着)にどちらを求めますか?個人的には“さらさら”や“しっとり”感も外せないな~と思いましたが、以前、外国籍の友人に、日本語の擬音語はイメージが難しい!と言われたのを思い出しました(余談)。
“実際にどちらも選び難い”場合、ユーザーに直接質問することは非常に有効な手法だと感じます。
What’s your favorite style of tank top?(タンクトップで好きなスタイルは?)
-“Scoop neck”(深めのラウンドネック) 61%
-“Square neck”(スクエアネック) :39%

Are you interested in seeing our styling suggestions for tanks?<br>(タンクトップのスタイリング例には興味ありますか?)
-YES :96%
-NO :4%

Do you want to know more about…(どちらをより知りたい?)
-“How sustainable our fabrics are” (繊維(素材)がどれだけサステナブルか):66%
-“CO2 savings per styles”(そのスタイル(商品)がどれだけCO2を削減しているか) :34%

こちらの質問は何気なく答えましたが、サステナビリティをブランドの観点からみると、とても奥が深い問題です。サステナブルな素材を選ぶことが必ずしもCO2排出量の少ない商品の生産に繋がる、ということにはならない場合があるからです。この回答では、Paradeのユーザーの66%は“サステナブルな素材”を支持するということが分かります。自社のブランドを支持するユーザーは一体何を重視しているのか、ブランドに何を求めているのか、ブランドが優先すべき指標の参考になります。
On the scale, show us how important sustainability is to you…
(あなたにとってサステナビリティがどれだけ重要かスライドバーで教えて)

Are you more interested in wearing loungewear as…
(ラウンジウェアを着る場合、どちらがより好ましい?)
-Outerwear(外出着として):48%
-For WFH and sleep(Work From Home(リモートワーク用)&寝るとき用):52%

コロナ禍で“部屋着”の考え方が変わってきました。やはりワンマイルウェアという感覚で、家でもちょっとした外出にも着用できる部屋着の需要が高まっているのだな、と感じました。
What are you most interested in seeing next from us?
(次の新アイテムに、最も興味があるのは?)
-Loungewear(部屋着):68%
-Tees&Tanks(Tシャツ&タンクトップ):32%

新商品の企画、ストレートに聞いてしまいましょう!これは、ブランド側の企画・MD担当者にとって貴重な意見の一つとなるだけではなく、ユーザーにとっても好きなブランドへ新アイテムのリクエストを送ることができたようなワクワク感を醸成できると思います。
THANK YOU!

さいごにはお礼とお茶目なメッセージも忘れずに!
いかがでしたでしょうか。
ユーザーは何気なく参加できるストーリーズのアンケート機能ですが、他のユーザーの意見が分かり、またブランドの新企画に一票投じた気持ちにもなれます。そしてブランド側にとっては、アクティブユーザーの意向が読み取れる、活用しない手はないといえるツールではないでしょうか。
新商品ローンチのためのPRとしても有効?!
この一連のアンケートストーリーズは大体8月上旬くらいに実施されていましたが、6日前、Instagramを確認したところ、早速アンケートでほのめかされていた新アイテム“longewear(部屋着)”の投稿がありました!その新商品は“フーディ”でした。ストーリーズの最後のお礼メッセージには“今準備中だからお楽しみに!”とありましたが、アンケートに参加したユーザーはあの時の新商品だ!と思うはずです。

発売時、Instagram投稿で専用クーポンを発行していたこともあるかもしれませんが、オンラインサイトには、すでに99もの商品レビューがありました。Instagram限定クーポンを発行することで、Instagramからの流入がどれほどあるかということも分析できます。
ストーリーズで新商品のアンケートを実施し、Instagramで新商品をローンチ、そしてInstagram専用クーポンを発行、レビュー数も上々。このストーリー性のある一連の流れと、ユーザーとのエンゲージメント度合いは流石です。

おまけ
ファンが気軽に参加、ユニークなInstagram投稿
他にもParadeでは、個人的に面白いInstagram活用例として「ネーミングチャレンジ」があります。これは、ブランドや商品とはまったく関係のない画像や動画を投稿して、“この画像に合ったイケてる名前をつけて”というユーザー参加型の企画です。ユーザーは、投稿画像から連想するネーミングをコメント欄に自由に投稿しています。この回答を見ていくと、これが結構ユニークに富んでいて面白いです。定期的に実施しているようですが、驚くべきはそのコメント数。直近のこの画像にはなんと1700件近くのネーミングチャレンジが集まっていました!
“We’re back with the Parade Color Naming Challenge. Comment your most wild and creative names for this hue and our 5 favorites will win a Parade sweatshirt. GO!”

この、男性が木を刈って整えている動画。皆さんはどんなクリエイティブな名前を付けますか?!このネーミングチャレンジ、是非一票投じてみてください。
以上、D2CブランドのSNS活用例、いかがでしたでしょうか?少しでも参考になれば幸いです。
ちなみに、現在Paradeは海外発送をストップしているようです。個人的には毎回デザインが変わる梱包パッケージ、いわゆる“箱開け体験”も楽しみの一つであるParade。そこで、海外発送を再開してください!とDMを送ってみたところ、 “お問い合わせありがとうございます。今はアメリカ国内だけの発送ですが、海外発送に向けて準備しているので、乞うご期待!”としっかり返信をいただきました。23万人のフォロワー数を抱える同ブランドですが、問い合わせに対するきめ細かいフォローも流石でした。Hope to hear good news from them soon!
引き続き、D2CブランドのSNSコミュニケーションについては注目していきます。
Parade Instagram:@parade
Parade ECサイト:https://yourparade.com/