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2021.08.26

進化し続ける小型デパート! ブルーミングデールズの新コンセプトストア「Bloomie」

Bloomieがオープンする、バージニア州のモザイク地区

 消費者行動を分析するplacer.aiによると、今年に入りショッピングモールへの客足は着実に伸びており、客数は昨年の6月に比べ、インドアモールが14.4%増加、アウトドアモールは12.8%増加していると報告されています。また、アメリカン・エキスプレスの第2四半期の業績はパンデミック前の98%まで回復しており、特に旅行に関する消費が顕著だといいます。ワクチン接種が進むに連れて外出意欲がアップしている事は確かです。

 

 NRF(全米小売業協会)の発表によると、今年9月の新学期に向け、バックトゥスクール消費は記録的な売り上げになると予想されており、アパレルでは、コロナ禍の自粛期間中の体重増加による買い替え需要が伸びていると伝えられています。店舗の大量閉鎖が行われる一方で、バックトゥスクール商戦、ホリデー商戦を控え、これらのポストコロナの市場を見据えた出店に注力する企業が増加しています。そのような背景において、米国デパートのBloomingdales(ブルーミングデールズ)は、ニックネームとして親しまれてきた「Bloomie(ブルーミー)」という名の新コンセプトストアを8月26日、バージニア州、フェアファックスのモザイク地区にオープンすると発表しました。

モザイク地区にあるショッピングモール

従来に無いスモールフォーマット

 Bloomieが出店するモザイク地区は、地域開発を経て、ショッピング、ダイニング、フィットネス、エンターテイメントの施設に住宅の要素が集まるハイグレードなローカルスポットとして注目のエリアです。Bloomieの店舗面積は22,000sqft(約618坪)で、従来の店舗が平均4,215〜7,025坪であるのに対しかなり小型にデザインされています。店舗内には大きな窓があり、店内に光が流れ込むことで生き生きとした表情をもたらす効果があります。店舗を小型化するメリットは、パンデミック禍の実験店としてのリスクを抑えるだけでなく、幅広く何でも揃ういわゆるデパートというよりは、バイヤーによって厳選された高度な品揃えと競合デパートには無いプレミアム感が特徴です。商品入荷は週に数回行われ、常に新しい商品が発見できるストアとして訪問回数の増加が期待されています。ハイブランドを揃えながらも新進ブランドを交える手法は、かつてマンハッタンで訪問毎に変化するユニークなセレクションが人気を博した「Jeffrey」や「Scoop NYC」を想起させます。

コロナ禍がもたらした「オフ・モール」トレンド

 米国では、ウイルス懸念により屋外のショッピングセンターへの需要が増加し、大型モールよりも道路沿いの地元に密着したショッピングセンターが人気となっています。その為、SEPHORA(セフォラ)やULTA(アルタ)などのビューティーチェーンにおいても、大型モールから離れた大手ディスカウンターTarget(ターゲット)や百貨店Kohl’s(コールズ)との提携が話題になっています。店舗側は出店費用が軽減され、一方で消費者は、食品スーパーやホームデポのようなホームセンター、ペットケア店などで用事を済ませられる点が利点といえます。

「Bloomie(ブルーミー)」ではBOPIS(オンライン注文品の店頭ピックアップ)だけではなく、

無料のスタリングサービスを提供している(Bloomieの公式ページより)

利便性の高いテクノロジーとサービス主導

 Bloomieでは、パンデミックを経て小売店では必須のサービスとなった、BOPIS(オンライン注文品の店頭ピックアップ)やカーブサイドピックアップはもちろん、ドロップボックスの設置など顧客のそれぞれの要望に適したシームレスなショッピング体験を提供します。また、Bloomieの売り場では、出店テナントについて豊富な商品知識を持つ「エキスパートスタイリスト」と呼ばれる専属スタッフが常駐しています。顧客の要望に沿った提案ができるデジタルツールを備えており、例えば、売り場の試着室ではボタンを押すとスタイリストを呼びサービスを受けることが出来ます。

飲食業態も充実(Bloomieの公式ページより)

訪問する目的を作る為の、ローカライズされた魅惑のダイニング

 ショッピングモールで顧客が最後に立ち寄るのが食料品店ということが珍しくなくなってきました。そこでBloomieではワシントンD.Cで人気のキューバカフェ「Colada Shop」を取り入れ、顧客は屋内・屋外の座席で朝から晩まで、特製カクテル、焙煎コーヒー、カラフルでSNS映えするようなキューバー料理を楽しめます。新たなに話題の店舗としての集客を試みるようです。開放的なカリブ海のイメージは、若年層やファミリーにとっても憩いの場として人気を博しそうです。

「Market by Macy’s(マーケットバイメイシーズ)」、公式サイトより

小型化チャレンジは成功するか!?

企画を盛り込んだグランドオープニング・ブロックパーテイ

Bloomingdalesの姉妹店Macy’s(メイシーズ)は昨年125店舗を閉鎖し、オフプライスストアBackstage(バックステージ)とオフプライスモールMarket by Macy’s(マーケットバイメイシーズ)を拡大しています。一方で、競合店である百貨店Nordstrom(ノードストローム)では、店舗のフォーマットやサイズ、出店場所などの実験を重ねています。そして、店舗に在庫を置かず、試着とスタイリストによるコンサルティングサービスを提供、コーヒーやアルコールを楽しめるバーが創設された新業態を試験的に展開しています。

 

 通常より遥かに狭いスペースで“体験”を詰め込むのは容易ではありせんが、Bloomieの8月26日の正式オープン時には、3日間にわたるブロックパーティを開催する予定です。パーティーでは顧客に対して様々な体験を用意しており、等身大の屋外ゲーム、バブル&スケッチアーティスト、美容系のデモンストレーション、バルーンアーティストやエアーブラシのタトゥ、購入商品に刺繍やワッペンを付けるサービス、ハッピーアワー価格のドリンクやスナック購入時に抽選でギフトチケットが当たるなど、盛りだくさんの企画が予定されています。

Cuyanaの移動式ポップアップショップ

売り方も多様化する時代

 Bloomingdalesをはじめとする大手企業が実店舗の出店に試行錯誤する一方で、資金力の少ないD2Cブランドにおいては、移動式トラックで商品を魅せるいわゆるモバイルショールーム業態が増加しています。例えば、ファッションD2CブランドのCuyana(クヤーナ)は、この夏、トヨタのマーケティングプロジェクトR&D(空いている都市空間を利用し小売り活動を模索するプログラム)が開発した、移動式ポップアップショップでのロードトリップを行っています。他にも、Bonobos(ボノボス)では、卒業を予定している消費者のワードローブを探す際の手助けにと、様々なキャンパスを訪問、アイウェアブランドのkrewe(クルー)も、モバイルショールームTintyHouseを利用してサングラスを販売してきました。

 

 以前に、Jcrew(ジェイクルー)の姉妹店であるMadewell(メイドウェル)も移動式トラックを使い、全米のキャンパスを回ったという経緯がありますが、多くの場所を訪れる事でより早く知名度の獲得とデータ収集が可能となります。ECに特化した企業であるからこそ、ブランドコンセプトやターゲットに適した場所で直接販売する事は、顧客にとってもより特別な体験となるのでしょう。デメリットとしては、ガソリン代金の高騰や、一度に運べる商品在庫数に限りがあることです。訪問毎にいかに新しい商品を展開するかも継続の鍵になってくるのではないでしょうか。

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