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2021.08.13

あの人気ブランドも実は中国!? SHEIN、Orolay、Li-Ning世界で活躍する中国ブランドが急増中

アパレルウェブ「AIR VOL.48」(2021年6月発刊)より一部の内容を抜粋して転載しております。

SHEIN(シーイン)のECサイトより

 昨年末のAIR42号でも紹介した中国発のファストファッションブランドSHEIN(シーイン)。アメリカでZ世代を中心に人気のある同ブランドが2021年も絶好調です。5月にはApp Store内の「ショッピングECアプリ」カテゴリーでダウンロード数がAmazonを上回りトップになりました。また、同社は複数の投資家から資金調達に成功、企業価値は約4.5兆円にも上ると予測されています。このSHEINを筆頭に、中国ではグローバル展開に力を入れているブランドが増えています。なぜ彼らは世界最大規模の市場である中国国内を背に、世界へ目を向けるのか?今回は中国ブランドが積極的にグローバル展開をする背景、そしてグローバル展開をして直面した問題について解説します。

世界最大の市場“中国”を後にして国外に打って出るブランドが増加

 中国ブランドの世界進出を考えるとき、まず頭に浮かぶのは「なぜ国内をターゲットとしないのか?」という疑問ではないでしょうか。中国市場は世界最大規模の市場となっており、欧米のブランドを始め、多くの海外ブランドが積極的に中国市場へ進出、中国で覇権を握ろうと模索しています。中国側もGreater Bay Projectといった海外企業向けの優遇政策を実施しており、一昔前と比べて海外ブランドの進出のハードルは下がっています。

 

 しかし、この加速する海外ブランドの中国進出こそ、中国ブランドがグローバル展開に舵を切る要因となっていたのです。中国企業を保護する政策が緩和された今、国内の市場は競争が激化しており、その結果、消費者は元々WebやSNSで知名度のあった海外ブランドに流れ、国内のブランドが苦境に立たされたのです。このような、国内市場の競争激化を背景に、中国の企業はグローバルに目を向けていくことになります。例えば、高品質、低価格が強みのダウンジャケットのブランドOrolay(オロレー)。元々は中国の浙江省の「嘉興子驰贸易有限公司」というアパレルのOEM企業の傘下のブランドでしたが、2018年にアメリカのAmazonで人気を集め、アメリカで注目を集めているブランドの一つとなっています。Orolayの創業者は2020年の中国メディアに対するインタビューで、中国ブランドのグローバル展開について、このように述べています。

アメリカのAmazonで大人気!ダウンブランドのOrolay

売上の 7 割以上がアメリカの Amazonで売れている中国発の Orolay

 「なぜ、中国という世界最大の市場を放棄し、アメリカのAmazonを選んだかというと、CANADA GOOSE(カナダグース)、Moncler(モンクレール)といった世界的なブランドが次々と中国に進出したためです。CANADA GOOSE、MonclerがTモールや中国で店舗展開をすると、 瞬く間に中国ダウン市場の覇者となりました。我々も当初、国内をターゲットにしていましたが、技術力はあるものの、資金面やブランド力で弱い我々では、国内市場だけを販路としていると先が見えないと判断しました。そこから販路を様々調査して、低価格、かつ高品質なダウンブランドが少ない、アメリカのAmazonに販路を集中、ポジションを取りにいくことを考えたのです。また、コストを試算すると、最近は広告費、物流コスト、人件費を中心に国内のコストが高騰しているので、国内販売とアメリカのAmazonでは同程度のコストになることがわかりました。この2つの観点から、Amazonでの販売に賭けました。この決断は良い方に転がり、今ではOrolayの売上の7割以上がAmazon経由となっています。」と話しました。また、Orolayの成功の影にはマーケットプレイス側の体制も関与しています。中国のブランドに出店してもらうために、ロジスティクスや決済といった分野でサポートや優遇政策を打ち出すマーケットプレイスも増えています。

Amazonで平均レビューが 4.4 と評価が高い Orolay のダウンジャケット(約 18,000 件のレビュー)

 ここまで、SHEINやOrolayといった中国発、世界を相手に成功しているブランドを取り上げましたが、この2社に共通しているポイントが“価格の優位性”を打ち出している点です。LVMHグループ傘下の投資ファンド、L Cattertonの中国・アジア太平洋地域の責任者、ワンハンジ氏とチャンサイ氏は、中国がグローバルブランドとして羽ばたくための問題点をこのように指摘しています。「中国ブランドのグローバル展開において、最大の武器は柔軟なサプライチェーンによる経営コストの削減です。一方で、最大の弱点は“Made In China”という点です。正直にお話をすると“Made In China”は模造品や品質の視点から世界からは疑問視されるケースがあります。この意識をどれだけ覆せるかがポイントとなるのです。そして、世界が中国に対して持つこの意識を変えていく方法は、2つあると私たちは考えています。それは“価格の優位性を訴求”もしくは“共感を呼ぶブランドストーリー、メッセージの訴求”です。いずれかを選択して、“Made In China”というハンデを覆す必要があります。」

 

 OrolayとSHEINの価格帯を見ていきますと、Orolayはダウンジャケットの価格帯が10,000~20,000円となっており、CANADA GOOSEなどと比較すると半値以下の価格帯となっています。商品のクオリティという面では、Amazonのレビューをみていくと平均レビューが4.4(約18,000件のレビュー)と消費者からも高い評価を受けているため、価格以上の品質はありそうです。また、SHEINではTシャツが約10ドルから販売され、そこから更にクーポン施策などを打ち出しています。両者とも“価格の優位性”を前面に打ち出し、支持を得ているようです。

中国らしさを前面に訴求!Li-Ningがパリコレでヒットした訳

Li-Ning が提案する中国李寧の 21 秋冬。
画像中央左には、特徴的な赤いボックスロゴが。

 一方で、ブランドメッセージをしっかりと打ち出し、価格以外の面で成功しているブランドが1990年創業のLi-Ning(リーニン)です。Li-Ningは元々国内でスポーツウェアやスニーカーを打ち出していましたが、2010年頃から売上が低迷。2010年代前半にピンチに陥りました。そこで新しい市場を開拓するため、海外に目を向けることにしました。 こうして生まれたのが、パリコレクションにも参加した高級ラインの「中国李寧」です。ロゴは赤いボックスロゴで「中国李寧」と打ち出し、中国の伝統の柄や文化を落とし込み、デザイン性や品質の高いアイテムを次々に開発しました。ワンハンジ氏が懸念した“Made In China”を隠すことなく、反対に中国の要素、メッセージをデザインへ強く反映させることで、「中国李寧」はパリコレクションで受け入れられ、Li Ningは世界的なブランドになりつつあります。

課題はCSR社会貢献やサステナビリティが求められる

 ここからは、中国の海外展開における課題を考えていきます。ワンハンジ氏は課題について以下の様に指摘しています。「Li-Ningを含め、中国ブランドには、課題はまだたくさんあります。例えば、サステナビリティへの取り組みや人権、労働問題といった企業としての社会的責任の領域です。」国内での競争が激化する中、 Orolay、SHEINといったグローバル展開に注力するブランドは増えていますが、これらの企業はSNSマーケティング、物流、サプライチェーンの効率化といった領域にリソースを割いており、社会貢献への意識は世界 的なファッションブランドと比較すると、高くないのが現状です。世界が求めるサステナビリティへの意識を汲み取ることができるかどうか。ここが中国ブランドのさらなる飛躍の分岐点となりそうです。

 

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