PICK UP

2021.08.04

価格だけでなく、利便性も追求するNORDSTROM RACK

「NORDSTROM RACK(ノードストロームラック)」の店舗

 1月にヴァーチャルで開催された全米小売業協会(NRF)のリテールカンファレンス「チャプターワン」。それに引き続き、6月にはキーノートやセッションが実施され、通常であれば展示スペースに出展する企業も、ヴァーチャル上で今起こっている小売業界の変化について語っていました。そのキーノートの中から今回は、米百貨店NORDSTROM(ノードストローム)のオフプライス業態「NORDSTROM RACK(ノードストロームラック)」についてお伝えしたいと思います。

「パーソナルコネクション」と「利便性」どちらもカバーするNORDSTROM

 リテールカンファレンスのキーノートスピーカーの一人として、NORDSTROMのオフプライス業態「NORDSTROM RACK」社長であるギーヴィー・トーマス氏が登壇。NORDSTROM RACKは、遡ること70年代、当時、シアトルのダウンタウンエリアにあったNORDSTROM店舗の地下フロアに、シーズン落ちした商品を取り扱うコンセプトとして誕生しました。今もなお、現代のモダンな顧客に対して新たなオフプライスのビジネスモデルを構築し、進化し続けています。

「NORDSTROM RACK」社長であるギーヴィー・トーマス氏(右)

 トーマス氏によると「NORDSTROM」と「NORDSTROM RACK」は、それぞれがパワフルなブランドだといいます。互いに調和性を持ちながら協力し合い、統合されたチームワークで業務を行っているそうです。実はフルプライスのNORDSTROMとオフプライスのNORDSTROM RACKの店舗は近い位置に出店されていることも例を用いて説明されました。実際に、ニューヨーク・マンハッタンでも、フルプライスストアは西側の57丁目にあり、最も近いオフプライスの店舗はそこから南下した33丁目に位置しています。フィジカルの面から見ても、消費者の買い物のし易さを考え出店場所が定められており、また、いずれの業態もECとモバイルアプリを用意し、消費者は常にオンラインとオフラインをシームレスに行き来するような購買体験が可能です。“アウトレットストアは郊外”という方程式は今もありますが、時代は変わり、顧客が買い物をしやすい場所に存在することがビジネスとして重要であるとキーノートを聞き納得しました。20年前であれば、ニューヨークを訪れた際はニューヨーク州の郊外にあるウッドベリーコモンへ行きたい!と思っていた人も多いはず。現代ではもうそんな移動をしなくても、オンラインでスワイプするだけで、もしくはフィジカルでも便利にアクセスできることが当たり前となってきています。

「NORDSTROM RACK(ノードストロームラック)」のECサイトより

百貨店の進化とオフプライス業態への挑戦

BLOOOMINGDALE’S OUTLET(ブルーミングデールズ・アウトレット)」のECサイトより

 

 そしてNORDSTROMには「NORDSTROM RACK」、SAKS FIFTH AVENUEには「SAKS OFF 5TH(サックス・オフ・フィフス)」、MACY’Sには「MACY’S BACKSTAGE(メイシーズ・バックステージ)」、BLOOMINGDALE’S には「BLOOOMINGDALE’S OUTLET(ブルーミングデールズ・アウトレット)」というオフプライス業態があり、いずれもマンハッタンや近郊エリアであるクイーンズに出店されています。こうした形が確立するまで当然数年の月日がかかりました。消費者目線で見ても、いま一つに感じられてしまうこともありました。しかし、経済の変化やそれに伴う私たちのライフスタイルの変化を見据えながら、アメリカの百貨店は常に進化していくことを意識し、改革を繰り返し実行しているのです。

ReCommerce(リコマース)にも注目している

 トーマス氏は加えて、ReCommerce(リコマース、再販事業)のビジネスの重要性も忘れているわけではないと言及しました。Nordstrom Rackでは、ドレスのレンタルサブスクリプションサービスの「Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)」とパートナーシップを組むことで、Rent the Runwayの二次流通商品を一部店舗で販売する試みを過去に行ったと話していました。若年世代の顧客は、例えば環境や社会問題など、自分たちが大切だと考える問題を通じてブランドとのつながりを探しているといいます。リコマースの取り組みは、そうした若い世代の関心を踏まえて、顧客とブランドが接点を持ち共に考えていくべき重要な観点なのでしょう。トーマス氏によると、現在は新たなリコマースビジネスの準備中だということも話しています。米国では既存の小売大手が相次いで再販市場へ参入する中、Nordstromのリコマース事業のビジネスモデルがどのようなアプローチで差別化を図っていくのか、今後も注目していきます。

NORDSTROM RACKでは、2020年10月には「Closer to You」と題したキャンペーンをローンチし、

EC注文の店舗受け取りなどを強化している

 

#NRFCoverage2021
https://convergeplatform.com/

 


 

 

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

アパレルウェブ ブログ
■ お仕事のご依頼
取材/記事執筆、マーケティングリサーチ、コンサルティング、その他お問い合わせ、ご相談はこちらから。

メールマガジン登録