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2021.07.23
新たなファッションイベントの形「グッチ イン キョウト」の全貌をレポート
「グッチ(GUCCI)」が2021年7月18日と19日、ブランド創設100周年を記念して、ブランド発祥の地イタリア・フェレンツェの姉妹都市である京都を舞台に3つのエキシビジョンからなるプロジェクト「グッチ イン キョウト(GUCCI in Kyoto)」を開催した。
「グッチ イン キョウト」は、未来への尽きることのないインスピレーション源である「グッチ」の歴史と伝統にスポットライトを当てながら、ブランド創設100周年を機にクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレが最新コレクション「Aria」を通じて打ち出したビジョンと美学を体現するエキシビションプロジェクトとなる。
「グッチ イン キョウト」の第一の舞台となるのは、古都京都の文化財として世界文化遺産に登録されている清水寺だ。ここでは”bring the nature inside(自然を内に取り込む)”をテーマに、悠久の歴史を内包しながら、音羽山の深い緑に抱かれ果てしない空とつながる清水寺を通して、「Aria」コレクションに込められた創造と再生のストーリーを表現した。7月18日(日)には限られたゲストを招待し、国宝であり「清水の舞台」として知られる本堂や経堂、回廊や奥の院といった境内の複数の建物で、一夜限りのエクスクルーシブなインスタレーションのイベントを開催した。
清水寺の正門であり、重要文化財の仁王門にはゲストをもてなすセットを設置。「GUCCI ARIA」の電飾サインとともに階段を美しくライトアップした。階段をあがった場所にある鐘楼では、能装束や神寺衣装を身につけたダンサーがパフォーマンスを披露。
経堂、田村堂、本堂、奥の院には、「Aria」コレクションを着用したマネキンを多数展示したインスタレーションを実施。同コレクションは、2021年4月にムービー形式でオンライン発表したもの。今回のインスタレーションでは、フィレンツェのイベント会社「Archivio Personale Studio」がテーマにそってキュレーション。同コレクションムービーのエンディングにアレキサンドロ・ミケーレが示したユートピアを体感できるものだ。
また、同イベントには柴咲コウや永山瑛太、上野樹里、浅野忠信、小雪、冨永愛、中村アンらセレブリティーが来場。プレスやゲストと一緒にインスタレーションを楽しんだ。
第二のエキシビジョンでは、1947年の発表以来、時代を超えて愛され続けているバンブーハンドルのハンドバッグを中心に取り上げた。京都市の有形文化財に指定されている旧川崎家住宅を舞台にした体験型エキシビション「グッチ バンブーハウス」だ。京都の歴史ある町家ながら西洋のスタイルを所々取り入れた同所と「グッチ」の折衷主義が共鳴している。バンブーハンドルバッグのアーカイブや最新コレクションだけでなく、「グッチ」が再生した同所の内装や茶室、庭も見どころの一つ。
同エキシビションは、2021年7月22日(木)から8月15日(日)までの期間限定開催し、入場には事前予約が必要となる。
そして第三のエキシビションとして、「グッチ」のハイジュエリーコレクション「ホルトゥス デリキアルム」とファインウォッチの新作が披露された。ラテン語で「歓喜の庭」を意味する今回のハイジュエリーコレクションでは、「グッチ」の象徴的なモチーフを取り入れながら、刻一刻と移り変わる空の色と夜空にきらめく星々の美しさや儚くも美しい瞬間に出会うことのできる歓びを表現した。
2020年3月以降、パンデミックによりファッションイベントの多くが取り止めとなった。その代替や新たな試みとしてオンラインやデジタルでのイベントが主流になりつつある。一部でフィジカルなイベントも再開しているが、まだまだ国境を跨いでゲストを招くファッションイベントは戻りそうもない。
今回の「グッチ」の試みは、デジタル発信を先行しながらローカルなイベントに結びつけ、そしてさらにS N Sを通じ世界に発信するという点で興味深い。いち早くファッションカレンダーとは別の独自の形式でコレクション発表をし始めた同ブランドらしい取り組みだ。今回は同ブランドの100周年という祝祭要素が強いものであるが、今後のファッションイベントやファッションマーケティングの方法に大きな影響を与えたのではないだろうか。
Courtesy of GUCCI