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2021.07.21

「売って終わりではない」ニットケアサービスでユーザーとサステナブルな関係性を築く ニットウェアD2Cブランド「NORD CADRE」

NORD CADREの公式サイトより

 7月中旬、30代女性をターゲットとする受注生産型のレディースニットウェアD2Cブランド「NORD CADRE(ノール・ケアド)」が都内で2021年秋冬コレクションを発表。展示会では、EC構築プラットフォームサービスShopifyを活用して立ち上げた専用ECサイトでその場で予約注文を実施。7月21日には同ECサイトの一般受注の開始を予定しています。

 

 ブランド名「NORD CADRE」の由来は、フランス語の“NORD(北)”、“CADRE(枠)”を組み合わせた造語で、“お気に入りをフレームにおさめる”という想いがブランドコンセプトに込められています。また、もう一つのコンセプトとして“comfort work wear”を掲げ、一着の洋服を出来るだけ大切に、長く着られるようなものづくりを発信しています。

 

 今回AIL編集部では、同ブランドのサステナブルな取り組みである、店舗を持たない受注生産型のビジネスモデルや、自社のニットアイテムの生涯無償修理サービス(※他社製品も有償で対応)である「KNIT CARE CLINIC」に着目。コレクション展示会の様子とともに、同ブランドのディレクターを務める竹内昌子氏に伺ったブランド立ち上げの背景や今後の展望についてレポートします。

2021年秋冬コレクション展示会の様子 

ニットアイテムの他、ジャケットセットアップ、パンツ、コート、Tシャツなど幅広いアイテムを展開

NORD CADREの立ち上げ背景について、お聞かせください。

竹内氏(以下、省略):

 まず、私自身が以前にニューヨークで仕事をしていた際に触れたサステナビリティに関する考え方を紹介させてください。私が現地のサステナビリティ関連講座を受けた際に学んだのが、アパレル企業がサステナビリティやSDGsを推進するにあたっては、ESG(環境・社会・ガバナンス)の考えのもとアプローチすることが重要だということです。ESGの観点からみると、アパレル企業がサステナビリティの取り組みとして出来ることはかなり多岐に渡ります。再生素材の使用や梱包材への工夫だけではなく、例えば、提携先の工場がきちんと国際労働基準を満たしているのか、さらには従業員の人権や賃金、安全な労働環境を提供することなども重要な項目となってきます。となると、サステナビリティとはそう簡単に達成できるものではありません。先述した製造過程の改善、生産工場を含めた従業員の働き方改革など、様々な取り組みを積み重ねてこそ初めて達成できると思います。

 

 そこで、私の考えとして、サステナビリティの取り組みを推進するにあたっては、企業や消費者がそれぞれいきなり100%を目指すというよりも、100社、100人がまず1%でもできる範囲のことから取り組む方が結果としてインパクトが大きくなると思っています。この考えのもとブランドを立ち上げたいと思っていた時に、ちょうどNORD CADREからオファーをいただき、サステナブルなブランドづくりの部分で意気投合したことが、今回のブランド立ち上げのきっかけでした。

“comfort work wear”というコンセプトのもと、幅広いシーンで着用できるラインナップ

サステナビリティの観点から、「お客様が必要とする分だけ生産し無駄を無くす」という部分が受注生産型ビジネスモデルのメリットだと思いますが、具体的にどのように実現していますか?

 受注生産型モデルを実現できた背景としては、やはり自社工場や協力工場の存在が大きく、例えば数十枚から生産が可能となる柔軟性が強みです。また、NORD CADREはEC専売のため、店舗の運営コストなどをカットできます。削減できた部分を出来るだけ商品価格に反映して、お客様には高品質な商品をより手の届きやすい価格で提供し、さらには長く愛用して頂くための仕組みを構築したことにこだわっています。

 

 NORD CADREでは年2回の展示会をベースに、3ヵ月に一回新作を提案する流れで、厳選した旬な商品を15型前後に絞っています。その点も、無駄に生産せず、お客様に本当に喜んでいただける商品だけを想定し、お届けしています。

ニットマスクなどのアクセサリーも充実

サステナビリティの取り組みとして、例えば素材面では現在どのように取り組まれていますか?

 現段階では再生素材などを使用していないのですが、今後はもちろん一歩ずつ検討していきたいと思っています。ただし、サステナビリティのアプローチは様々で、再生素材を使用することだけに限らないと考えます。生産量と消費量を適正にして、一枚のお洋服をできるだけ長い期間愛用していただくというのも、サステナビリティを実現する方法の1つだ思います。ちなみにNORD CADREには、“Comfort Work Wear”というもう1つのコンセプトがありまして、“着心地がよく、利用シーンを選ばず、いつ、どこでも愛用していただく”という想いを込めて、在宅ワークやプライベートなど様々な場面に汎用できる商品を提案しています。

修理サービス「KNIT CARE CLINIC」のイメージ 

左下のカードは修理後に商品と一緒にお客様にお届けする

自社製品に対し、生涯無償の修理サービスを提供していると伺いましたが、取り組みの詳細を聞かせください。

 先ほど、お洋服を長く愛用することもサステナビリティの1つの形だとお伝えしたように、お客様に適正な価格で良質な商品を提供し、ブランドを長く愛用していただくことがアパレル企業にとって当たり前だと考えます。そこで、NORD CADREとしては、お客様に自社の製品を5年後でも10年後でも可能な限り愛用し続けていただきたいと考え、“KNIT CARE CLINIC(ニットケアクリニック)”という商品修理サービスを立ち上げました。

 

 このサービスでは、NORD CADREの商品に対し、例えばほつれや穴あきなどの修理を無償で提供しています。「売って終わり」ではなく、修理サービスを提供することで、ブランドとお客様の双方が洋服を長く愛用するという、ある種の習慣・文化を育んでいくこともNORD CADREならではのサステナビリティと考えます。また、この考えはできるだけ多くの方と共有したいという思いから、有料ではありますが、他社様のニット商品に対しても修理サービスを提供しています。

サンプルを見ながら、その場で予約注文をしている様子

2021年7月21日に公式サイトのオープンを予定していると伺っていますが、今後の展開にあたって、EC専売ブランドとしての工夫やマーケティング戦略についてお聞かせください。

 NORD CADREでは、ECサイト構築プラットフォームであるShopify(ショッピファイ)を使ってECサイトを構築しています。2021年7月21日に予定している公式サイトのオープンに先立ち、13日よりスタートした展示会では、このShopifyで構築した同サイト上で限定予約注文を行いました。展示会で専用サイトのQRコードを配布し、お客様がQRコードを読み込むと専用サイトが立ち上がります。そして、指定のパスコードを入力すると、注文予約ページが表示され、サンプル商品を実際に見ながらその場で予約注文が出来るという流れになっています。今後は、お客様の反応を見ながら、Shopifyならではのカスタマイズ機能などを活かして、お客様に満足いただけるようなEC購買体験を提供できればと思っています。

 

 また、EC専売ブランドとして、商品訴求という面では、IGTV、インスタライブ、YouTubeなどSNS動画を中心にブランドの情報発信をしていきます。いくつかのコンテンツ制作を予定していまして、例えば、お客様の思い出の詰まったニットとそのストーリーを募集し、KNIT CARE CLINICの修理サービスを紹介するようなコンテンツを企画しています。お客様を巻き込んだコンテンツづくりに注力し、NORD CADREの想いを少しでも多くの方に共感していただくことが目標です。ブランドの一方的な発信ではなく、お客様と共に創り上げる体験こそがNORD CADREならではのブランドストーリーとなっていくと思っています。

着用時の素材の風合い、縦ラインなどの細かいディテールにこだわっている

まとめ:

 

 「サステナビリティ」には様々な定義やアプローチがあります。取材を通して竹内氏が語っていたように、例えば、再生素材の利用はあくまで1つの方法に過ぎません。その中で、企業やブランドがそれぞれに合った「できること」を考え選択し、1つずつ実行していくことが重要です。今回、NORD CADREでは、ニットの修理サービスを商品とともに提供し、1つのアイテムを長く着用いただくことで、同時にお客様との関係性構築を実現しようとしています。「売って終わりではない」と同ブランドが考えるように、ブランドや企業が自社商品をお客様に手渡した後の責任についてどのようにアプローチをするべきか考えることもまた、サステナビリティの一環だということです。

 

 現在、ECを専売とするD2C(Direct to Consumer)ブランドが国内でも頻出しています。店舗を持たないD2Cブランドにとっては、お客様とのコミュニケーションや商品に関するアフターサービスの提供の場となるのが主にSNSとなるのではないでしょうか。SNSでの動画コンテンツ発信や、KNIT CARE CLINICによる修理サービスを中心にお客様と繋がっていくNORD CADREの今後の展開に注目していきます。

 

NORD CADRE(ノール・ケアド)の公式ECサイト:

https://nordcadre.com/

 

 

NORD CADRE(ノール・ケアド)の公式Instagram:

https://www.instagram.com/nord_cadre/

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