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2021.07.05

【2022春夏ピッティウォモ ハイライト】「ピッティ100」はフィジカル開催 復活を祝い将来に希望をつなぐ出展者たち

 2021年6月30日~7月2日、第100回「ピッティ・イマージネ・ウォモ」が伊フィレンツェのフォルテッツァ・ダ・バッソ要塞会場にて開催された。これによって、新型コロナウィルスの感染拡大により2020年1月の第97回以降中止されていたフィジカルな形でのトレードフェアが1年半ぶりに復活した。そんな今回は「ピッティ・イマージネ・ウォモ」100回目に当たる記念すべき回でもあり、テーマはずばり“ピッティ100”。

 

 中止されている間に開発されたデジタルプラットフォーム「ピッティ・コネクト」は継続しており、オンライン上での参加を続けるブランドもあった。参加ブランド総計では、フィジカルな形で出展した338ブランド(うち112ブランドが外国ブランド)とオンライン参加の57ブランドを合わせた395ブランドとなった。

 

 ピッティ・イマージネ協会の発表によると、「ピッティ・ビンボ(子供服のトレードショー)」と同時開催された今回のフェアの訪問客は6,000人以上(うち4,000人以上がバイヤー)で、外国人バイヤーの割合は全体で30%弱を占めた。また700人以上のジャーナリストが取材しており、そのうち約300人が外国からだった。

 

 会場への入場の際はPCR検査陰性証明の提示が義務付けられ、消毒やマスクの使用が徹底されるなど厳重な警戒態勢が引かれていたが、会場内の雰囲気はまるでパンデミックの前に戻ったかのようだった。パパラッチも、彼らに撮られるために集まる「ピッティピープル」も、数は少ないものの健在だった。中央パビリオンの前の広場には、多くの人が集まり、久々の再会を喜んでハグしたり肩を組み合う様子も至る所で見られた。

 今回の主な特別企画としては、まずは今回のスペシャルゲストである、2019年の「LVMH プライズ」を受賞した南アフリカ出身デザイナー、「テベ マググ(Thebe Magugu)」がインスタレーションを発表。今回、初のメンズコレクションが発表された。12人のモデルたちは、ホイッスルの音を合図に一人一人が取調室のような部屋に移動し、南アフリカの社会的な問題がナレーションで語られる演出になっている。サビルロー風の正統派クラシックスタイルを、カラフルな色遣いやプリントを使い、ウエスタンブーツやテンガロンハットなどとコーディネートして、ニューダンディの世界観を提案した。

「テベ マググ」2022春夏コレクション

 また、今回は「サステナブルスタイル」第三弾として、エコリスポンサビリティの元に活動する15ブランドによるキールックを集めたランウェイショーも開催。その中にはキャサリン・ハムネットとパトリック・マクダウェルによるカプセルコレクション「ヘルプ(HELP)」も。これらのブランドは会場内に設けられたコーナーにて他の作品も展示していた。

「サステナブルスタイル」のショーに登場した「HELP」のルック

 全体的な傾向としても、サステナブルを意識した製品作りはますます大きなテーマとなっていた。トウゴマを原料とする完全再生可能素材を使用したナイロンやポリアミドの糸で織った5年で有機物質とバイオガスに完全分解されるナイロンなどを使った新作を発表した「ヘルノグローブ(HERNO Globe)」、新リサイクルコットンや不要になった漁業用の網から作られたストレッチナイロンを使用した新作を発表した「ポール&シャーク(Paul&Shark)」、トレーサブルな新ライン「ヴィルトゥオーゾ」を発表した「ブリリア 1949(BRIGLIA 1949)」を始め、大部分のブランドがこのテーマに取り組んでいる。

 

ヘルノグローブ

ポール&シャーク

ブリリア 1949(BRIGLIA 1949)

 一方、全体的なトレンドは、ミラノコレクションでも見られたような、スマートワーキングからノーマルな生活への過渡期である現状を象徴するエフォートレスで機能性重視の提案がピッティでも目立つ。形はクラシックなジャケットではありながら、アンコン、かつ軽い素材で作られていたり、シャツとしてもジャケットとしても使えるようなデザインだったり。タイドアップの代わりにジャケットの中に着るものとして、襟付きニットやポロ、製品染めやヴィンテージ風プリントなどを駆使したシャツなどの提案も多かった。つまり形はクラシックだけど快適、というのが今のムードなのだろう。ただ、このような流れはパンデミックの前からあったもので、それがコンファームされてより発展したと言ったほうが良いかもしれない。その一方で、今後はクラシックなスタイルが戻ってくると推測する声もあった。

 例年の出展者数や訪問者数に比べれば、今回は確かにサイズダウンではあるが、外国からの訪問客がまだあまり期待できないこと、長期間のロックダウンが引き起こした不況による経済的問題や準備期間が2か月弱しかなかったという時間不足の問題、さらに通常6月半ばに開催される例年のタイミングから遅れたことにより、すでにバイングキャンペーンが始まっているという時期的な問題等、様々な不利な条件を乗り越えて、ここまでの規模のフェアが行われたことは賞賛に値する。

 

 出展者たちの多くは今回の参加について、「ビジネス的な成功もさることながら、復活を祝い、将来に希望をつなぐための投資」だと語っていた。そして多くの人が、今回のピッティを「再生、再スタートの象徴」だと言い、フィレンツェで起こった「ルネッサンス」に例えていた。感染で大きな打撃を受け、1年半の苦渋の期間を経たイタリアで、このような大規模な国際展示会が復活した意味は大きい。今回のピッティの成功は、今後のファッション界にだけでなく、例えば9月には「ミラノサローネ」開催を予定しているインテリア業界を始めとした他の業界へも明るい光を投げかけたに違いない。

 

取材・文:田中美貴

画像:ピッティ・イマージネ・ウォモ、各ブランド提供

「ピッティウォモ」2022春夏コレクション

https://apparel-web.com/collection/pitti_uomo

田中 美貴

大学卒業後、雑誌編集者として女性誌、男性ファッション誌等にたずさった後、イタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。アパレルWEBでは、コレクション取材歴約15年の経験を活かし、メンズ、ウイメンズのミラノコレクションのハイライト記事やインタビュー等を担当。 TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントのオーガナイズやPR、企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳なども行う。 副業はベリーダンサー、ベリーダンス講師。

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