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2021.04.27

注目されるファッション企業のIPOブーム

Mytheresa (マイテレサ)の公式ECサイトより

 パンデミックの影響の一つとして、ファッション企業のIPO(株式公開)がトレンドとなっています。要因としては、過去1~2年でインターネットを通じた販売が急増していること、多くの消費者がローカルな場で買い物をしていること、商品をアップサイクルする機会が増えたことが挙げられます。既に上場している、ハイブランドを扱うEC企業のFarfetch(ファーフェッチ)やStitchFix (スティッチフィックス)の株も最近は過去最高に近い水準で取引されています。昨年、ファーフェッチは中国EC大手のアリババとリシュモングループとの提携により総額6億ドルの出資を受け、アリババが運営するTモール上でのサイト開設の期待が大きくなっています。これが実現することにより、パンデミックで海外に行くことが出来なかった7億5000万人の中国人会員にリーチすることが可能となるのです。

 

 そして今年に入り上場を果たした(もしくは予定している)ファッション企業に注目。高級ブランドを取り扱うECサイトのMytheresa (マイテレサ)、再販サイトのPoshmark(ポッシュマーク)、オンラインのみの再販サイトのThredUP(スレッドアップ)。その他、時代を反映しているJoann(ジョアン)とThe Honest Company(ザ・オネスト・カンパニー)について取り上げていきます。

Mytheresa (マイテレサ)

新設したコンテンツ「VACATION SHOP」(Mytheresa の公式ECサイトより)

 Mytheresa (マイテレサ)は、1987年にドイツのミュンヘンでハイブランドを扱うセレクトショップとして始まり、2006年にオンライン販売をスタートしています。2014年にニーマンマーカスグループに売却されましたが、現在は独立し運営されています。公開価格は当初、16~18ドルの予想でしたが、初値は35.85ドルと跳ね上がり、時価総額は27億ドルとなりました。昨年のアクティブユーザーは48万人を超え、世界133カ国から109万件以上の注文を受けました。昨年6月30日までの年間売り上げは5億ドルを突破し、前年比20%の増加。パンデミック時にEC販売が急増し、客単価平均は674ドルだったといいます。株式公開から3ヶ月が経ち、D2Cブランドの「M.GEMI」でチーフブランドオフィサーを務めたHeather Kaminetsky(ヘザー・カミネスキー)を北米の社長として任命。また、ウォールストリートジャーナル誌とのパートナーシップで、デジタルイベント「The One」とのコラボキャンペーンがスタートしました。米国の有名インフルエンサーを活用し、SNSを通して市場拡大を狙っていくようです。

 

Mytheresa (マイテレサ)の公式ECサイト:
https://www.mytheresa.com/

Poshmark(ポッシュマーク)

iOSアプリでも展開しているPoshmark(ポッシュマーク)

 Poshmark(ポッシュマーク)は2011年に設立した米国とカナダで最大の中古専門オンライン業者です。今年1月に上場し、公開価格は42ドル、評価額は30億ドルです。昨年の9月時点で3,200万人のアクティブユーザーを保有しています。同じ再販オンライン業者のThreadUP(スレッドアップ)The Real Real(ザ・リアルリアル)と異なり、ポッシュマークは在庫を持たない代わりに、15ドル以上の取引に20%の手数料、15ドル以下の取引に2.95ドルの定額手数料を設けています。メルカリと同システムのフリマアプリで、SNSのようなフォロー機能が人気となっており、平均の客単価は33ドルで、リアルリアルと比較すると低価格商品を扱っています。Cowen&Co(コーエン&カンパニー)の最新の調査によると、Re-コマース(再販とレンタルを含む再販市場)は、ファッション市場全体の14%に達すると予測され、中でもアパレルの市場は成長している巨大市場だといわれています。

 

Poshmark(ポッシュマーク)の公式ECサイト:
https://poshmark.com/

ThredUp(スレッドアップ)

 ThredUp(スレッドアップ)は、2009年設立の再販オンラインサイトです。今年の3月26日に上場、公開価格は14ドル、評価額は13億ドルです。ポッシュマークやメルカリのスタイルと異なり、利用者は不要なアイテムをまとめてスレッドアップに送付するだけで、販売に関するプロセスは全てスレッドアップが請け負う手軽さが売りです。同社の最新レポートによると、オンライン中古市場は2024年までに640億ドルに達すると予想されています。それに加え、投資家が注目する同社の動きは“小売企業との提携”だと言われています。現在、ギャップ、ウォルマート、メイシーズ、メイドウェル(Jクルーの姉妹ブランド)、レント・ザ・ランウェイと提携しており、各店内にスレッドアップのインストア展開をし、不要になった古着を持ち込むとストアクレジットが貰えるというようなプログラムが実施されています。この例のように、小売企業とのビジネスを拡大する手段として資本が活用されるようです。

 

ThredUp(スレッドアップ)の公式ECサイト:
https://www.thredup.com/

JOANN(ジョアン)

JOANN(ジョアン)の公式ECサイトより

 JOANN(ジョアン)は1943年にオハイオ州で創業し、全米に855店舗を構える、ファブリックやクラフト材料を販売するチェーン業態です。1969年に株式公開したものの、2011年に上場廃止しています。昨今のDIYブームに加え、パンデミックにより家で過ごす人が増えたことでジョアンでは需要が急増し、昨年の10月30日時点(39週間)で売上は24%増加の19.2億ドルとなりました。また、モバイルアプリに投資したおかげで1,600万人以上の顧客獲得に成功し、パーソナルマーケテイングを可能としています。

Creativebug(クリエイティブバグ)の公式サイトより

 また、同社が2017年に買収したサンフランシスコを拠点とするCreativebug(クリエイティブバグ)は、クラフトのテクニックなどをオンラインワークショップで提供し、有料サブスクリプションサービスとして月間15万人のユーザを誇っています。一時期は、同様のアイテムを扱うウォルマートマイケルズの棚から商品が消えるほどの現象が起きましたが、Etsy(エッツィー)やアマゾンクラフトなど、昨今のDIY市場の活況をベースに、ジョアンは今年の4月に上場を予定しています。

 

JOANN(ジョアン)の公式ECサイト:
https://www.joann.com/

The Honest Company(ザ・オネスト・カンパニー)

The Honest Company(ザ・オネスト・カンパニー)のECサイトより

 The Honest Company(ザ・オネスト・カンパニー)は、女優で3児の母でもあるジェシカ・アルバが2012年に設立した、環境に優しく、消費者の健康を考慮したベビー&キッズケア商品、スキンケア、洗剤などの消費財を展開するブランドで、今年の5月に上場予定です。同社のビジネスの収益の大半は、Honest Diapersと呼ばれる、無添加オムツのサブスクリプション。てんとう虫や雲柄などキュートなイラストが描かれ、赤ちゃんの肌と環境に優しい素材で作られています。

The Honest Company Diapper Video(公式YouTubeチャンネルより)

 上場のきっかけとしては、無添加素材の需要が高まっていることに加え、パンデミックの影響で、ベビー用品、除菌剤などの需要が急増。昨年の12月末の売上が、昨年対比28%増の3億ドルまでに成長したことが要因の一つです。本来はEコマースベースの企業でしたが、現在は、ホールグッズやノードストロームなど32,000店舗の小売店で販売、オムニチャネル戦略を実行しています。上場後は、オンラインの強化と、サードパーテイの販売店及び、収益の高い海外市場を視野にいれているようです。

 

The Honest Company(ザ・オネスト・カンパニー)のECサイト:

https://www.honest.com/

 最近はルルレモンがリセールプログラムをスタートし、ナイキも靴を修繕して販売するプログラムを立ち上げました。昨今の再販市場の盛況ぶりや、消費者のサステナビリテイへの意識の高まりを受け、一般の小売企業も続々とリセールやリファービッシュ(改善して販売する)市場に続々参入しています。このような市場の動きが上場する企業のトレンドとして反映されているようです。

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