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2021.04.08
“買い物する場所”の基準が変わる時代に考える、進化することの大切さ
RINAのFASHION x IT レポート from NYC Vol.131
RINA
「Ulta Beauty(アルタビューティー)」の店舗
パンデミック、自粛生活、リモートワーク…。デジタル中心の生活が加速してから一年が経ちました。国や地域で状況は異なるものの、(アメリカでは)ワクチン接種も始まった事で、少しずつ前向な変化が起こっています。とはいえ、店舗での試食や、コスメなどの商品を肌で試す等は引き続き店舗では難しいかもしれません。
そして、自分と向きあう時間も多くなった一年。自宅で過ごす時間が増えたことで、鏡をみる回数も増え、これまで以上に肌の乾燥やくすみ、シワなんかに敏感になった方も多いのでないでしょうか。へアサロンにはこれまでのサイクルで行けなくなり、増えた白髪に頭を悩ませたと言う方も多いでしょう。何を隠そう私もその一人です。コロナ禍でテクノロジーの活用が倍速で進み、その進化とともに楽しさも届けてくれるのがビューティー業界。今月のコラムでは、アメリカのビューティーブランドチェーン「Ulta Beauty(アルタビューティー)」についてお話したいと思います。
- 米国最大のビューティーリテーラー
- 全米に1200以上の店舗を持つ
- 2021年より全米に店舗進出するTARGET(ターゲット)の100店舗にアルタビューティーのショップ・イン・ショップを出店する計画。同時にオンラインサイトcomでも展開。
マンハッタン1号店は意外なエリアに出店!?
全米で1200店舗以上を展開する最大のビューティーリテーラーですが、これまでマンハッタンには出店していませんでした。しかし2017年にようやくマンハッタン初となる店舗がアッパーイーストサイドに出店されました。地下鉄の急行も停車するこのエリアは、ホールフーズマーケットやシェイクシャックもあり、出店した並びにはSEPHORA(セフォラ)もあります。マンハッタンには賑わうエリアが様々ありますが、なぜアッパーイーストサイドに、そしてセフォラの並びに1号店を決めたのか当時は疑問に思っていました。しかし、オープン後、仕事や学校が終わる夕方や人出が特に多い週末にそのエリアへ行ってみると、そこにはセフォラに劣らない人の入りが!さらに、放課後の時間帯には若い女の子達で賑わっていて、通りがかりにその光景を見てついつい私も店舗へ引き寄せられたことが幾度となくありました。
マンハッタン、2号店はヘラルドスクエアに
アッパーイースト店の盛況を見て、マンハッタン出店がこれで終わるはずがないと思ってから数年後、メイシーズ本店があるヘラルドスクエアにマンハッタン2店舗目の出店が発表されました。当時のメディアによるとオープン時期は2019年予定でしたが、パンデミック発生でその予定はずれ込み、2021年3月5日にようやくグランドオープンを迎えました。
メイシーズの本店があるエリアをもう少し詳しく説明しますと、34丁目沿いのヴィクトリアズ・シークレットの隣のビルがアルタビューティーの出店先です(2021年4月現在、ヴィクトリアズ・シークレットの店舗は閉店しています)。おおよそ1,114平方メートル(12,000ft2)の広さのこの店舗は、天井が高いこともありさらに広く感じます。店舗に入ると右側には人気のBenefit Cosmetics( ベネフィットコスメティックス)の売り場があり、左にはCHANEL(シャネル)の売り場があります。雰囲気は百貨店のコスメ売り場とほぼ変わらず、ブランドやカテゴリーが分かりやすく、広い店内でも求めている物がとても探しやすいというのが印象です。アッパーイースト店にも併設されていますが、この店舗にもヘアサロンがあります。レジ脇にはオンラインオーダーのピックアップカウンターも設置されていました。オンラインオーダーを通常レジではなく、独立したカウンターで対応してくれるのは顧客にとってはとても有り難いサービスです。
「Ulta Beauty(アルタビューティー)」のECサイト
試せなくても、アプリがあれば大丈夫!
ワクワクするブランドや商品がぎっしりと並ぶ店舗に行くと、ついいつもの調子でコスメを試したくなります。しかし、コロナをきっかけに店頭で商品のお試しが出来なくなってしまった今、コスメやスキンケアを店舗に訪れてまで買うという理由が半減してしまいました。
「GLAMLab」のポップ
そのような中、アルタビューティーでは自社アプリが益々進化。アプリでシームレスな買い物が出来るのはもちろんですが、「GLAMLab」という機能を使うと、ファンデーションやコンシーラーのカラー検索や、リップやアイシャドウなどのメイク商品もARで試せます。アイラッシュ、アイブロウ、そしてヘアーカラーも試すことが可能で、この性能が非常にリアルなのです。特に気に入っているのはアイブロウの機能。「眉のシェイプ」を選んだ後に「カラーを選ぶ」のですが、スマートフォンに写った自分の顔の中心にラインが引かれていて、中心から片側だけにコスメを試した様子が表示され左右比較ができます。特に、素顔の状態で試すことで眉のシェイプやカラーがイメージしやすく購買意欲が一気に沸きます。
「GLAMLab」のAR機能専用のQRコートが商品紹介に表示されている
今後、ワクチン接種が浸透することで、店舗で気ままに買い物をするような心のゆとりがどれだけ戻ってくるのでしょうか。少なくとも、“今まで通り”ではないことは確かです。あらゆるものをデジタル化する必要性はないと思いますが、これからのフィジカルの世界では、テクノロジーを取り入れたサービスがますます不可欠だと思います。デジタルかフィジカルか、ではなく、しっかりと両者を繋いでいくという考え方を持つ事が大切なのです。
最近、週末にアルタへ訪れると、会計では10人以上の順番待ちをしました。店員は親切で、店舗で取り扱うブランドもドラッグストアコスメだけでなく、メジャーブランドや、クリーンビューティーも増えてきていますので行ってもいいかなと思いました。その上で、さらにアルタにはセルフチェックアウトを設置して欲しいですね!そうすると多少並んだとしてもお会計はスムーズです。ただし、並ぶ時間がない人や、今では店内で長い時間待つことに不安を抱く人もいます。私ももう少しのところで手に取っていた商品を棚に戻すところでした。この会計機能を一つ取っても、売り上げのチャンスを左右しますよね。何らかのオプションは必要だと思います。セルフチェックアウトを展開するターゲットとのパートナーシップには、もしかするとそういう意図もあるのかもしれません。
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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