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2021.03.18

【2021秋冬東京 ハイライト1】「東京だからこそ」と思いを込めるデザイナーたち(1)

 2021年3月15日、2021秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が開幕した。3月20日までの6日間で約50のブランドが新作コレクションを発表する。 

 

 デジタルでの発表が主流になる中、世界に向けてブランドを発信するためにコレクションを発表する場所は以前ほど重要ではないのかもしれない。だが、そんな時代だからこそ東京で発表することの意味を重要視するブランドもいくつか見られた。特に海外からの凱旋組は「東京だからこそ」「東京でしかできないこと」を強調していたことも印象的であった。

0日目(3月14日) 「ジョン ローレンス サリバン」がオフスケジュールでショーを開催

ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)

 「ジョン ローレンス サリバン」は、RFWT前日に11年ぶりとなる東京でのランウェイショーを行った。同ショーはRFWTでなく独立したもの。

 

 場所は東京・天王洲アイルの寺田倉庫。ここ数年発表してきた英ロンドンの会場と共通する要素があることから会場に選んだという。東京の顧客になるべく間近に見て欲しいという思いから、セットもシートも設置せず、簡素な空間で発表した。

 

 登場したのは、マスク付きカットソーを着用したモデル。白シャツにネクタイの上に黒のシアートップスを重ねた。その後もメッセージやカラーを違えた同様のルックが続く。今季のテーマ“PROTECTION”を色濃く反映したストーリーだ。この“PROTECTION” をコレクションノートでは「コロナ禍に置かれている現代生活を単に意識しているのではなく、そこにはデザイナー柳川荒士が考える様々な「防」が潜んでいます」と記している。軍服やバイクやワーク、スポーツ、レーシング、ボンデージなど「防具」のための要素が盛り込んだ。同ブランドの持ち味である美しいテーラリングとユーティリティー(利便性)を融合させた提案だ。

 

 テクニックではドッキングを多用。アイスホッケーのキーパーウェアから着想を得たキルティングパッド付きコート、日射病などを防ぐ女性用ゴルフウェアのネックゲーターから派生させたマスク付きカットソー、前身頃にチャップス的レイヤーを施したパンツやスカートなど、リフォーメーションの魅力がふんだんに楽しめた。

 

 そして、なんと「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)」のデザイナーである宮下貴裕がスタイリングを手掛け、「ジョン ローレンス サリンバン」の持ち味を拡張させた。また同系統のルックを連続で見せるという宮下デザイナーならではの提案も見られ、最後の方には宮下デザイナーが手がける「タカヒロミヤシタザレフトアイ.(TAKAHIROMIYASHITATheLeftEye.)」のサングラスを着用したモデルも登場した。

 

 「海外進出以降、ショーを直接観ることができなかった日本のファンの皆様に向けて披露したい」と今回のショーを行った柳川デザイナー。その思い通り、フラットでかつ東京ならでは雰囲気を味わえるショーであった。

1日目(3月15日) 「ビューティフルピープル」や気鋭・新人がショーを開催 

ケイスケ ヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)

 「ケイスケ ヨシダ」は、青山通りにあるワールド北青山ビル1Fロビーでコレクションを発表した。教室の様に縦4、横4列にならべた紫色の机と椅子に一人ひとりモデルが上りながらルックをお披露目するという形式でプレゼテーションは進行した。

 

 今シーズンは洗練度を増した。抽象的な絵画などをあしらったピースをねじったり重ねたりしてルックを構築。毒気のあるデザインを洗練させて見せるのは、その丈と色のバランスが絶妙さだ。ビッグショルダーやビッグ袖、オーバーフィットのアイテムを使用しながら、モノトーンやトーンオントーン、ニュートラルカラーの差し込みをするという手法が効いている。ミニ丈のスカートやクロップドパンツなどを合わせることで、シルエットが大きくなりすぎないよう、すっきりと見せている。アイテム構成は、学校制服由来のプリーツスカート、フーディー、カーディガンなど、デザイナーの吉田圭佑が「久しぶりに思春期を表現した」と話す通り、ユースなシーンを彩るものが多い。

 

 「今回はインプット時間が少なかった」と話す吉田デザイナー。その多忙な日々の中で見た、鳩の死骸とその跡に残された羽根から着想を得たという。日常の中にある、生の儚さと死への畏敬を表現したかのようなコレクションであった。

ニサイ(nisai)

 「綺麗に作りすぎないこと、左右対称すぎないこと、古着の良さを打ち消さないようにリメイクすること、そして素材を使い切ること」。サステナビリティーの浸透とともにリメイクやアップサイクルを手がけるファッションブランドが増える今、「ニサイ」のデザイナー、松田直己が主軸とするコンセプトは実にシンプルだ。同デザイナーは服飾やブランド運営を独学し、2015年に恋愛をテーマとした「ニサイ」を設立。東京コレクションには初参加となる。

 

 「アディダス(adidas)」や「アンブロ(umbro)」といったスポーツ用品ブランドのロゴを堂々と取り入れたリメイクや、アンクル丈のタイト目なパンツでトップスを強調したメンズのルックのほか、デザイナーのルーツでもあるペインティングが多層に施されたデニムが印象的だった。全体的にルーズで多彩、視線は服の構成や素材が描くコントラストに引き寄せられる。「ニサイ」はモデルのキャスティングもコレクション同様に多種多様だ。ランウェイを2本用意したのはモデルと服とをより対照的に見せる狙いもあった。

 

 「アフターコロナ」や「ウィズコロナ」のように、時勢によっていつのまにか定義された時代区分は本来ならば自分の意思で決めるもの。初参加となる「ニサイ」がクリエーションを通じて提案した次なる時代区分は、松田デザイナーが晩冬に見たという、東京の空にかかった虹のイメージと確かに繋がった。

ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)

 「ミキオサカベ」も「ケイスケ ヨシダ」と同じワールド北青山ビルの1Fロビーにメタリックのランウェイを設えてショーを開催した。

 

 ショーにはミニマルなテーラリングルック、ブライトカラーのスポーツミックスのルック、ロマンチックなワンピースルックなどが登場し、同ブランドの引き出しの多さを見せた。中でもテーラリングの美しさは目をひく。また小物とルックの連動性も秀逸。ウェアと同色調や共地のプリントのボディバッグや、ウェアの装飾のように見えるアクセサリー、異なったトーンのスニーカーなど、時には融合性、時にはハイブリットさを感じさせた。

セヴシグ(SEVESKIG)

 国産のリアルレザーにこだわり、構築的なデザインとヴィンテージのような質感を融合させたコレクションを持ち味とする「セヴシグ」はオンライン形式での発表となった。

 

 コレクションフィルムにおいて、モデルをボックスで囲う演出は「セヴシグ」の店舗内のディスプレイから屋外に抜け出すイメージによるもので、玩具箱をモチーフにしているという。またフィルムには、今シーズンのキーモチーフの一つであるアニマルモチーフのグラフィックがコミカルに落とし込まれていた。

 

 デザイナーの長野 剛識は「コロナ禍で今まで自分たちがやってきたことが、なかなか実行に移せなくなってしまったという閉塞的な思いがあり、そこから派生した考えを洋服に落とし込みました」と、RFWT初参加となった今シーズンのクリエーションを振り返った。

リンシュウ(RYNSHU)

 デザイナーとして35周年を迎える山地正倫周が手がける「リンシュウ」の2021秋冬コレクション。特別な節目となる今シーズンを、白と黒の大理石が美しいアニヴェルセル表参道で発表した。

 

 “ドレスコード”というテーマで、コロナ禍を生きる私たちに、場所と装いの関係性、そして“ドレスコード”そのものの価値を再考するきっかけをエレガンスに提示した。メンズはカシミヤ・シルクシフォンオーガンジーやマルチストレッチ素材をベースとし、よりリラックスなムードに。ドレスコードの象徴であるテーラードはバリエーション豊かに揃え、ロングジャケットやタキシードはカジュアルなスタイリングでまとめた。ウィメンズではドレスやワンピース、ビスチェなどのオーソドックスなアイテムを発展させ、ドレスコードにおけるペアコーディネートの幅を広げた。

 

 今シーズンのキーモチーフである白と黒のハンドメイドのフラワーモチーフは絶妙なバランスでルックに配され、まさに「リンシュウ」35周年のドレスコードにふさわしい、花を添えているといえる。

 

 また国内外で活躍しているバレリーナの上野水香や阿部碧、バレエダンサーの浅田良和をモデルとして起用。ショーのフィナーレにかけてはモデルがバレエのポーズを取ったり、曲に合わせて微笑みながら登場したりと、打ち解けた雰囲気に包まれながら幕が閉じた。

ミー(me)

 「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」のデザイナー、坂部三樹郎が設立したファッションの専門学校「me」の学生による合同展示会とプレゼンテーションがワールド北青山ビルで開催された。「me」はファッション業界においてビジネスとして成功すること、厳しいシステムの中でも成長し活躍できる人材を育成することを主目的とした「学びが発動する場」だという。

 

 今回ショーを行ったブランドは「エンティティー フィールズ(entity fields)」、「リュウノスケハタ(RYUNOSUKEHATA)」、「ニジカタムラ(NIZIKATAMURA)」、「サット(SAT)」の4つで、坂部デザイナーが学校の趣旨に沿って選考した。一方で展示会を開催したのは上記のブランドを除く17ブランドで、将来を見据えるフレッシュなクリエイターたちが一堂に会した。

ビューティフル ピープル(BEAUTIFUL PEOPLE) 

 熊切秀典が手掛ける「ビューティフルピープル」は、フィジカルのランウェイショーを開催した。今回は、2021フォールコレクションで発表した洋服の上下を入れ替えても着用できるという「ダブルエンド(double-end)」コレクションの続編。3月4日にパリ・ファッションウィークにてデジタルショー形式で披露された動画「SELF-LOVE MOVIE」と今回の「SELF-LOVE LIVE」の両方を見ることでコレクションのストーリーが完成するという。 

 

 ショーでは同じ服やアクセサリー、バッグを上下入れ替えで着用したモデルがペアで登場。同じ服でも上下を入れ替えることで男性的なシルエットと女性的なシルエットが入れ替わるスタイリングも披露。男女の境界線を感じさせないモノづくりを表現した。 

上下を入れ替えることで、トレンチコートのヨークはドレスのような立体的なシルエットに、マントは襟元を結ぶためのリボンが歩くたびにひらひら揺らめく装飾へと変化し、まったく違ったアイテムのような表情を見せていた。 

 

 また、2020春夏コレクションに続き「ミズノ(MIZUNO)」とのコラボレーションアイテムも発表。今シーズンは秋冬の素材を用いたスニーカーと、「ダブルエンド(double-end)」を施したウェア4型もラインナップに加わった。 

 

 デザイナーの熊切秀典は、「ランウェイのやりがいは、ショーを見てくれる人や関わるスタッフの全てが笑顔になれること。世界がフラットになりつつある情勢の中、日本のお客様にとって身近なロケーションでショーを行うことで、デジタルで伝えきれないものを感じてもらえると考えています」と、東京でショーを行う意味についてコメントを残した。 

ザ・リラクス(THE RERACS)

「ザ・リラクス」2021秋冬コレクション

 デザイナー、倉橋直実による11年目の「ザ・リラクス」は、2021秋冬コレクションをオンラインで発表した。先シーズンのブランドロゴ刷新に続き、またひとつ新しいフェーズに入ったようだ。

 

 基本となるアイテムは全て新作で揃えた同コレクションは、「ザ・リラクス」らしいオールブラックのルックからスタートした。洗練されたディレクションによるコレクションフィルムは、画面越しながらもルックを鮮明に捉えることができる。

 

 これまでの「ザ・リラクス」は、ソリッドカラーやモノトーンなどを基調に仕上げる無機質なイメージが強かったが、先シーズンよりエクリュなどの柔らかい色味や有機的な花柄を新たに取り入れた。またコレクション中盤の、ウィンドペンやブラックスチュアート、ノルディック柄といったクラシカルな定番の柄をアレンジしたアイテムも、今シーズンを象徴するキー素材だといえる。

 

 コレクション終盤にかけては、ボア素材のロングコートやキルティング素材のきなり色のアウターが目を引く。ボア素材のロングコートに合わせたレザーパンツは、ボーズ(BOSE)のヘッドフォンの耳当てにも使用されている特殊コーティングが施された軽量の素材で、これまで衣料用とされてこなかったものだ。通常のフェイクレザーのウィークポイントを全て補い、デザイン性と着心地、そしてイージーケアという、最先端の素材に裏付けされるユーティリティウェアに仕上げた。

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