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2021.03.16

音声だけじゃない! 今米国で人気沸騰中、3つの新興SNSアプリの共通点

 2021年に入り、Clubhouse(クラブハウス)をはじめ、次々と新興のSNSメディアが登場しています。今回はいま米国で注目されているSNSメディア3つをピックアップ。

 

 Z世代に大人気、使い捨てカメラをコンセプトにしたDispo(ディスポ)、友人や家族に向け、誰でもポッドキャスト感覚で利用できる新興音声メディアCappuccino(カプチーノ)、そして、情報収集ツールとして、1日300万人以上のユーザーが利用するImgur(イメージャー)について、それぞれの魅力、人気の理由について解説していきます。

Z世代が熱狂、使い捨てカメラが体験できるDispo(ディスポ)

使い捨てカメラのイメージをそのままデザインしたディスポのアプリ

  Dispo(ディスポ)とは、1800万人以上のフォロワーを持つ人気ユーチューバー、David Dobrik(デイビッド・ドブリック)氏が発案した、SNS要素を取り入れたカメラアプリです。InstagramなどSNS機能を備えたカメラアプリや写真加工アプリでは多彩な加工機能があるのが特徴ですが、ディスポはこれらとは全く逆の発想で、インスタントカメラが持つ一切の加工を不可にした“その瞬間”を捉える写真に着目しました。ユーザーは、編集ツールやフィルターを使用せず写真を撮影すると、ライブラリ内では「現像」というモードに変わり、フィードに写真が現れるのを確認するためには翌朝の9時まで待つ必要があります。作成したコミュニティロールは招待しない限り他人が見ることはできないというのがディスポの特徴です。

 

 このアイデアを発案したきっかけは、デイビッド氏がパーティーに参加した際、友人達が何台ものインスタントカメラを使い撮影し、翌日、現像された写真を見てワイワイと共有している様子を見たことから、アプリ化に至ったそうです。

 撮影した写真を即座に美しい画像に加工・修正できる時代に、敢えて現像されるまで数時間待つという体験は、今の若者世代には体験した事のない感覚でしょう。どんな写真に仕上がっているのか、ワクワクする感覚や想像を超えた驚きがあります。ディスポで撮影した写真は、まさにインスタントカメラで撮影された様なクラシックな雰囲気に仕上がっており、コミュニティロールというフィードを作成することで、他のユーザーが写真を追加し、フォローすることができます。束の間忘れていた、前日のパーティーでの自分達の姿は新鮮で想像していたものと違った驚きもあるかもしれません。修学旅行や運動会に専属カメラマンがいて、後から、卒業アルバムでその時の自分を発見して歓喜した覚えがありますが、似た様な体験といえるのではないでしょうか。使い捨てカメラ、CDプレーヤーなど80、90年代のガジェットすら触れたことの無い多くのZ世代にとっては、これまで体験したことのない新鮮さに魅了されているのかもしれません。

ブームを後押しする招待制のSNS機能

 ディスポは昨年に合計約2,400万ドルの資金を調達、SNS機能を追加し更なる進化を遂げています。カメラアプリとしては以前から存在しており、アップルストアからダウンロードすることで使用可能ですが、追加されたSNS機能は、現在はアップルのテストフライト・ベータ版からの招待制となっています。 

 

 スタート以降、日本からのダウンロードも急増(1時間に5000以上)したことで、わずか数日でβ版の上限にリーチしています。インスタグラムとの大きな違いはカメラアプリであることを強調しており、新機能ではタイトルをつけたカメラロールを友人とシェアすることで、同じロールに複数名が写真を追加できます。2019年辺りからミレニアル世代やZ世代の間では、ザラザラとした画質が特徴のインスタントカメラが流行し、様々なカメラのレビューサイトをみると人気の継続が伺えます。その特徴を取り入れたディスポの様なアプリの登場とSNS機能の追加が、若年層のライフスタイルと共鳴しているのではないでしょうか。

誰でも参加可能、ポッドキャスト感覚で利用できる新興音声メディアCappuccino(カプチーノ)

Cappuccino(カプチーノ)のアプリ

 日本ではここ数カ月、Clubhouse(クラブハウス)を筆頭に招待制を特徴にした音声メディアが注目を浴びています。一方で、「誰でも参加できる」新興音声メディアも台頭しています。その1つが、昨年8月に米国で設立されたCappuccino(カプチーノ)です。カプチーノは誰でも招待無しで利用可能で、クラブハウスがソーシャル・ネットワーキングを中心として活用されている一方、カプチーノは自分の友人や家族との会話の時間の大切さにフォーカス。通常の音声通話のほかに、独自の機能として「Beans(ビーンズ)」と呼ばれる録音機能があり、友人や家族に向けて約5~10分間のメッセージを吹き込むことができます。前日にビーンズで録音したメッセージは、アプリのBGM機能で自動的にリラックスしたBGMと合わせて翌朝には指定の相手に送信され、受信相手がポッドキャスト番組のように聞いて楽しめることがカプチーノの醍醐味です。このカプチーノの独自機能である「ビーンズ」は、相手に直接伝えにくい内容を「音声の手紙」というような感覚で相手に届けることができるためユーザーから好評を受けているようです。クラブハウスのコンセプトとは根本的に異なるため、フォロワー数を増やし知名度を拡大するといった目的ではなく、リアルな友人や家族とのコミュニケーションを楽しみ、深めるという目的のために作られたアプリです。

 

 創設者であるGilles Poupardin氏は元々Amazon AlexaやGoogle Nest Hubなどのスマートスピーカーの開発に携わった経験を持ち、2019年には既にカプチーノの構想があったといいます。パンデミックをきっかけにZoomなどデジタルコミュニケーションツールのニーズが高まったことを受け、カプチーノの事業化を加速しました。今年3月初旬の時点で、カプチーノの新規ユーザーは約22万5千人増加、約100万ドル資金調達に成功しています。今後も注目したい新興音声メディアの1つです。

次世代ピンタレスト?

1日300万人以上のユーザーが利用する写真共有SNS、Imgur

Imgurの利用画面

  Imgurとは2009年に米国で設立した、写真や動画などを投稿して他のユーザーと共有できるアプリです。ユーザーは、他のユーザーの投稿に対して「いいね」、コメント、投票をすることが可能で、「いいね」や票が多い投稿は人気コンテンツとしてアプリのホームページの上位に反映される仕組みです。ピンタレストは主に写真によるアートやファッションなどのカテゴリー投稿がメインですが、Imgurは写真、動画のほかに、gif形式の投稿にも対応しており、さらにカテゴリーも多様。ファッションはもちろん、動物、エンターテインメント、ニュースや政治関連の投稿も多く見られます。特に、ニュースや政治関連の投稿が充実しているため、Z世代とミレニアル世代の男性がコアなユーザーとなっています。昨年発生したパンデミック、米国の大統領選挙などのビックイベントを背景に、Imgurは手軽に情報収集、自分の意見を自由に表現できるツールとして注目されています。

まとめ

 

 

 今回ご紹介した3つのアプリには、それぞれが全く異なる機能ではありますが、1つ大きな共通点があります。それは、同じ趣味嗜好のユーザーを集めるコミュニティの形成に成功しているということです。ディスポの場合は、「“その瞬間”を捉えた写真がいい、ありのままがいい」というコンセプトに共感するZ世代、カプチーノの場合は、自分の友人と家族に向け親密な会話やメッセージを届けることでコミュニケーションを取りたいユーザーが利用。そして、Imgurの場合は、ニュースや政治関連の話題に関心を持ち、手軽な情報収集ツールとして活用するユーザーが集まっています。

 

 これまではFacebookをはじめ、いわゆる「万人向け」のSNSが主流でしたが、今後台頭する新興SNSの特徴は、より特定の趣味嗜好(例:ゲーム好き、カメラ好き)のユーザーを対象にした「小さなコミュニティ作り」がカギになると言えるでしょう。その場合、より細かいユーザーのニーズに対応する機能をいかに速く開発できるかという部分が差別化のポイントとなるかもしれません。

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