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2021.02.26

【2021秋冬ロンドン ハイライト】新進をサポートするロンドン ビッグネームや東京若手デザイナーも参加

(左から)バーバリー、シモーネ ロシャ、アーデム

 2021年2月19〜23日、ロンドン・ファッション・ウィークが開催された。従来1月に行われるメンズ・ファッション・ウイークを今年は行わず、2月のウィメンズに統合した形になっており、今回、ウィメンズ40ブランド、メンズの15ブランド、メンズ&ウィメンズ混合20ブランド、アクセサリー5ブランドの80ブランドが参加した。50ブランドがデジタルのみ、21ブランドがフィジカルとデジタルという形で、ほとんどのブランドがブリティッシュ・ファッション・カウンシルのデジタルプラットフォーム上でコレクションを発表した。

 

 前回の春夏コレクションでは大物勢を欠いたロンドン・ファッション・ウィークだったが、今回はメンズコレクションを発表する「バーバリー(BURBERRY)」や「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」などがカレンダーに復活したり、従来パリで発表している「ダンヒル(DUNHILL)」が今回はロンドンに移行するなど、盛り返しを見せた。さらに「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」の2020年度受賞デザイナーの6ブランドが参加したり、「トッズ(TOD’S)」によるセントラル・セント・マーチンの35人の学生への支援企画「トッズ・レガシー」が公開されるなど、話題のサポートプロジェクトも見られた。

 

 サポートと言えば、前回に続き、同ファッション・ウィークの公式ページからは、若いタレント支援のための寄付を募る形が取られている。15分刻みで小刻みに進められたプログラムはたくさんの新進デザイナーたちによるミニ製作に焦点を当てられているようでもあり、ファッション界を支援し、未来に投資しようという雰囲気が感じられる。

東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)

(左から)ユウキ ハシモト、リコール

 東京を拠点とするデザイナーの世界的な活躍をサポートする「東京ファッションアワード」の2020年度受賞ブランド「フミエ タナカ(FUMIE TANAKA 」、「イン(IHNN)」、「ミーンズワイル(meanswhile)」、「リコール(RE:QUAL≡)」、「シュープ(SHOOP)」、「ユウキハシモト(YUKI HASHIMOTO)」がそれぞれの映像を発表した。「イン」、「ミーンズワイル」、「リコール」、「シュープ」は、3月に行われる「楽天ファッションウィーク東京」においてもコレクションを発表する予定。「リコール」はフィジカルショーを、「シュープ」はロンドンで公開したティザー動画の本編を公開することが伝えられている。

 

 「フミエ タナカ」はフリルやプリーツ、ドレープを生かしペールカラーのワントーンで仕上げたコレクションを、講堂を舞台にしたダンサーたちによるパフォーマンスで見せた。「イン」はアメリカの画家マーク・ロスコの抽象的な分割の手法や色、そして日本の前衛アーティスト高松二郎の「影」シリーズからインスピレーション得たコレクションを、海辺を舞台とした幻想的な映像で公開。「ミーンズワイル」は1分の短い映像で、商品的には洋服のディテールやスニーカーが一瞬映るだけなのだが、積み上げられたテレビに何度も映し出されるブランド名が印象を残すティザー映像となっている。「リコール」はスカーフなど沢山の生地を組み合わせたり、ストールを丸くくりぬいたり、袖がいくつもついていたり、同じアイテムを巻き付けたり二人で着られるようになっているアイテムがあったりとかなり遊びが入っている様子だが、映像トリックを使ったシーンも多いので、「楽天ファッションウィーク東京」にてフィジカルショーで見せるコレクションに注目したい。「シュープ」は近未来的なホテルを舞台に、幽体離脱や壁抜けなどの不思議な現象を絡めたSF映画のような映像を公開。これはティザー映像とのことなので、こちらも「楽天ファッションウィーク東京」で詳細が明らかになるだろう。「ユウキハシモト」は“BLUE SKY CONSTRACTION”というテーマで、ミッドセンチュリー期のプロダクトと時代背景を着想源としたコレクションを発表。映像ではアトリエ風の空間から家具やオブジェを一つずつ部屋に運びながらモデルが登場する。コレクションにはミッドセンチュリー期のデザインの特徴であったポップな色のアイテムがあったり、その当時のファッションの雰囲気が、幾何学模様やタイダイ、ベルボトムのパンツなどで強調しすぎることなく差し込まれている。

カシミ(QASIMI)

 フール・アル・カシミがクリエイティブ・ディレクターを務める2回目のコレクションとなる「カシミ」はランウェイ風のウォーキングとパフォーマンスをミックスした映像を発表。コレクションは90年代のグランジサブカルチャーと、20世紀初頭のイギリスの知識人と芸術家による組織、ブルームズベリー・グループとの共通点を描いたという。ファブリックにはブルームズベリー・グループのメンバーが使用していた会議室のインテリアをモチーフにしたベルベット、ブロケード、モヘアなどが使われている。一方、オーバーボリュームのシャツとのレイヤードや、映像のタイトルにもなっている「WE ALL LIVE UNDER THE SAME SKY」というフレーズが入ったパーカなどはグランジからの影響だろうか。

 

カラーパレットにはクミンやサフラン、月桂樹などのニュアンスカラーを中心としたワントーンまたはトーンオントーンが多くみられる。またイエメン周辺のミリタリー服のカムフラージュモチーフやイスラム建築の壁に使われてるようなパターンが使われたり、巻物やクーフィーヤを連想させるような帽子など、様々なアラブ風の雰囲気が見られる一方、千鳥格子やチェック、ツイードなどイギリス的な要素もミックスされる。

 

 「不覚的で激動の時代に体を包み込み守る役割を果たす洋服本来のコンセプトを意識してデザインした」というコレクション。それがマットで重厚感のある素材を多用し、ミニマルかつ構築的なデザインや、レイヤードを生かしたコーディネートに反映されている。

アート スクール(ART SCHOOL)

 今シーズンも「アート スクール」らしいジェンダーレスかつ個性的なダイバーシティモデル陣を揃え、彼らが真っ暗な空間を歩いているランウェイ映像を発表。イーデン・ロウェスが一人でフルシーズンを製作した初めてのコレクションとなる今回は、デビュー当初からのコアバリューを見つめ直すものとなっている。カラーには黒、白、赤のみをほぼワントーンで使用し、レザーのビスチエやタイトスカート、チューブドレスなどを着たメンズモデルや、マイクロミニのコートドレスやボディラインを強調したシルクドレスを着たプラスサイズモデルなどが続々登場する「アート スクール」らしいパンチのきいた演出だ。

 

 今回はそんな中でもカッターで切り割かれたようなディテールやラメ使いが特徴的。でも実のところ洋服そのもののデザインはオーセンティックで、バイアスカットを生かした着心地を重視した服でもある。十八番的なAラインのたっぷりしたボリュームのドレスや、テーラード風コート、サテン使いのドレスも実はかなりエレガントだ。

 

 “Ascension”というテーマの今回のコレクションは、デザイナー自身にとっての新しい出発を象徴し、またこのような困難に直面している我々全員にとっても、一緒に暗闇から抜け出せる、という希望のメッセージが込められてるのだとか。

バーバリー(BURBERRY)

 「バーバリー」はリカルド・ティッシによるメンズに特化した初のコレクションを発表。ロンドンのリージェントストリートにある、「バーバリー」の旗艦店にて撮影されたモデルたちのウォーキング映像を公開した。

 

 “エスケープ”がテーマの同コレクションは、20世紀初頭のイギリスで、当時人々が未開の土地を求めエスケープしたアウトドア・ムーブメントからのインスパイア。屋内に閉じこもる生活の中、人々が一体となり湧き上がるクリエイティビティを思い、アウトドアを夢見ることを原動力として生まれた、自由を求め、新しい表現の形を発見してきた自然と人間との関係性へのオマージュ的なコレクションだ。

 

 そんなアウトドア的な雰囲気を強調すべく、「バーバリー」の象徴であるトレンチはもちろん、ダッフルコートやスタジアムジャケットなどアウターが重要な役割を果たしている。そしてブランケットや傘を入れたバックパックやウエストポーチ、背負うように持つメガバッグなどのアクセサリー類も開拓の旅への雰囲気を盛り上げる。これらのアウターには、裾や袖口にフリンジが施されていたり、ボタンループの部分がデフォルメされていたり、ノーラペルのVネックのようになっていたりと、モダンなテイストが加えられている。

 

 プリーツスカートやワンピースとのレイヤード、シルクスカーフのベルト、鹿の角のフォルムのニット帽やフードのディテール、トレンチ風のテディコート、丸くくりぬかれて肌の見えるサイクリングパンツやスリット入りのショートパンツ・・・等々、キュートかつちょっとユニークな、かつジェンダーレスともいえる要素もちりばめられているが、これも新しい表現への開放なのかもしれない。

 

ダンヒル(DANHILL)

 今回、コレクションの発表の場をパリから、ブランドの本拠地である英国・ロンドンに移した「ダンヒル」。今回のコレクションにおいて、クリエイティブ・ディレクターのマーク・ウェストンは、「テーマよりも、服やアクセサリーとそれらが表現するものにフォーカスした」と言う。そんな姿勢は、ルックブックのイメージが様々な形で交錯するように作られた映像からもうかがえる。そしてその全体に流れるのは、歴史あるブランドらしいクラシックなデザインの中に機能性が生かされた、フォーマルとモダンのミックスだ。

 

 それはジップで取り外したり、ライニングを外してそれだけで着ることができる多機能パーカに象徴される。またパンツの裾部分がジッパー仕上げになったパンツも多く登場し、くるみボタンのフォーマルなジャケットを始め様々なクラシックなアイテムともコーディネートされる。レザーが重要な役割を果たしており、コートやパンツからマフラーにまで使用。そしてドットやフラワーモチーフのカマーバンドバッグ、ボックス型のミニポーチ、ロゴ入りのベースボールキャップなども小さな意外性を加える。

 

 多機能性のアイデアや各所にちりばめられた遊び的要素が、厳格な伝統的テーラリングとミックスした、英国らしい二面性を持ったコレクションとなった。

シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)

 今回のコレクションを“壊れやすい反逆者”と形容する「シモーネ ロシャ」。教会のような建物の中をモデルたちがウォーキングする映像を公開した。そこにはゴシックロリータ、プレッピー、ミリタリーのテイストがミックスされている。

 

 コレクション全体において、レイヤードフリルや立体的なバラモチーフが、黒のレザーのライダースジャケットやロングコート、MA-1のようなミリタリージャケットにふんだんに使われている。また小花のエンブロイダリーやビジューが施されたアイテムもたくさん登場するが、これらはパフスリーブのワンピースにはハーネスを、チュールスカートの上からローゲージニットを、チュールドレスの上にレザーのマイクロトップをレイヤード・・・といった感じで、甘めの要素をハードなもので抑え込んでいるようにも見える。そして、白衣のようなコートドレスや白襟のディテールなどの制服的な要素も差し込まれる。そんな足元は厚底のラバーソールのアンクルブーツがコーディネートされる。

 

 お得意の甘くフェミニンな要素に、それと相反するパンクでアグレッシブな要素が共存した、挑戦的なコレクションと言えよう。

アーデム(ERDEM)

 今回のコレクションにおいて、「アーデム」がインスパイアされたのはバレエ。映像はロンドンのブリッジシアターで撮影され、モデルの中にはロイヤルバレエの4人のダンサーも登場する。バレリーナたちがステージ上とステージ外の間、プライベートとパブリックを移行する様子を、フォーマルな衣装とインフォーマルな服を絡み合わせることで探求したと言う。

 

 登場するのは、バレリーナたちの練習着のような、リブ編みのレギンスやショーツ、長いニットのロンググローブやヘアバンド、またはパジャマのようなパイピングがなされたセットアップもある。そしてブランケットをもって歩くモデルたちも。

 

 その一方で、バレエの衣装のようなバルーンスカートやチュチュのようなチュールスカート、パニエが入ったようなボリューミーなスカート、または50年代風のマイクロプリーツのドレスやラウンドカラーのジャケットなど、フォーマルなアイテムが多数登場。フェザーのジャケットや羽根つきのヘアバンド、羽根のプリントは、白鳥の湖からの連想だ。多くのアイテムに登場するビジュー使いにも舞台衣装的雰囲気が漂う。

 

 ポストパンデミックにおいて、これまでにないほどラウンジウェアが注目される中、「アーデム」はそのテイストをエレガントかつ厳格なフォーマルウェアとの絶妙なハイブリッドで提案した。

 

取材・文:田中美貴

 

「ロンドン」2021秋冬コレクション

https://apparel-web.com/collection/london

田中 美貴

大学卒業後、雑誌編集者として女性誌、男性ファッション誌等にたずさった後、イタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。アパレルWEBでは、コレクション取材歴約15年の経験を活かし、メンズ、ウイメンズのミラノコレクションのハイライト記事やインタビュー等を担当。 TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントのオーガナイズやPR、企業カタログ作成やプレスリリースの翻訳なども行う。 副業はベリーダンサー、ベリーダンス講師。

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